「針と糸」

 
ちくちく。
 
「おおいリナぁ。何やってるんだぁ?そろそろ昼飯食いに・・・・」
言いながらガウリイが、あたしの部屋に入ってきた。
そこで立ち止まった。
「お前さん・・・何してるんだ?」
 
「ん?」あたしは手を止めずに答えた。「裁縫。」
ガウリイはにぱっと笑うと、頭をかいた。
「なんだそっか、裁縫かぁ・・・・・・・って!?リナが縫い物してるっ!?」
 
すざざざざざ。
近付いてきたガウリイが一気にドアまで後退。
 
「お、お、お前!?雨が降ったか雪が降ったか槍が降ったかっ!?」
「しつれーねっ!あたしだって縫い物くらいするわい。」
ガウリイに向ってスリッパを投げつけてから、あたしは言った。
あ。もろに顔面ヒットしてる。
くす。
「お、お前なぁ!いくら何でも、いきなり投げつけることはないだろっ!?」
「レディーに失礼な言葉を投げつける方が悪い。」
「れ・・・・れでー・・・・・。」
「ガウリイちゃぁん。スリッパはまだ片方残ってるのよぉ〜〜〜〜。」
「す、すいませんすいません。どぞ、作業を続けて下さぁい。」
「よろしい。」
 
ちくちく。
気付くと、ガウリイがすぐ傍まで来て、しげしげとあたしの手元を見ている。
「それ・・・何になるんだ?」
「え?」
「えらく可愛いなあ。ピラピラして。ちっちゃいし・・・・・。」
「何よ。」
「まさか・・・・・お前さんが着るんじゃ・・・ないよな・・・・・?」
どごし!
「あああっ!やっぱりもう片方使うんじゃないかぁっ!」
「あんたね!目だってよく使わないと退化するわよっ!そのうち目が見えなくなって触角で物事を判断するよーになっちゃうんだからっ!」
「オ・・・オレ、触角なんてないぞ・・・。」
「あらそ。」
 
ちくちく。

「なあ。んで結局、それは何なんだよ?」
「あ。汚い手で触んないでよね。真っ白な布なんだから。汚れちゃう。」
「え。オレ、さっき手を洗ってきたぜ。昼飯食べに行こうと思ったから。」
「もうそんな時間か。何かやってると、時間はあっという間に過ぎちゃうのよね。」
あたしは針をくるくるっと二回転し、糸止めをする。
歯でぴっと糸を切る。
「なあなあ。で、それ、何になるのか、まだ教えてもらってないぜ?」
あたしが縫い物を大事そうに籠にしまうと、ガウリイがまだしつこく聞いてきた。
「ああ、これ?」
あたしは何の気なしにそのまま答えた。
「赤ちゃんの服よ。」
 
ぴしっ。
変な音がした。
何の音?
ガウリイが固まった音。
 
「お・・・・お前・・・・・」
「なによ。」
「こ・・・・・・・・・・・・・・・子供ができたのかっ?!」
 
ずるべたごきっ。
変な音がした。
何の音?
あたしがベッドの足につまづいて転んで角に頭をぶつけた音。
 
「ガ・・・・ガウリイ〜〜〜〜〜〜あんた、何考えてんのよ〜〜〜〜〜〜っ。
んな訳ないでしょおっ!?」
「え。だって。」
「あ、あたしはっ!ここの宿屋の女将さんがあんましぶきっちょで・・・見てらんなくて・・・だからその・・・ちょっとばかり手伝ってあげよっかなって・・・・」
「・・・・・。」
「な、何黙ってんのよっ!だぁかぁらっ!他人に頼まれただけなんだってばぁっ!」
「・・・・・。」
「ガウリイっ!」
「あ・・・・すまん。今ちょっと・・・心臓が止まってた。」
おひ。ふつー、死ぬぞ。
 
「しっかし・・・まあ、リナのじゃなくてなんだが・・・・。」
「なん、とはなによ。」
「いやその・・・。それにしても人助けってのもちょっと・・びっくりっつーか・・・。」
「ガウリイ・・・・。投げたスリッパはね。拾ってまた使うこともできるのよ?」
「あう・・・。いえ、なんでもありまっしぇん・・・・。」
 
ぽりぽりと頭をかきながらドアの方向へ退散するガウリイ。
あたしは思わず呟く。
「赤ちゃんなんて・・・相手がいなくちゃできないでしょ〜が・・・。」
 
ぐりっ。
変な角度でガウリイが振り向いた。
あの・・・。首、曲ってません?
 
「お、おいリナ・・・。今・・・何つった・・・?」
「な、なによ。」
「赤ちゃんがどうとか・・・・相手がどうとか・・・。」
「聞こえてるなら聞かないでよっ。ちょ、ちょっとした独り言よっ。」
「・・・・リナ・・・・。」
 
ごきゅっ。
ガウリイの首が前に戻った時、変な音がした。
ア・・・アンタ・・・・人間やめてないでしょーね。
 
ガウリイは身体ごとくるっと向きを変えると、あたしの方に向ってコツコツ歩いてきた。
「な・・・・なによ。」
あたしは思わず、ベッドの上に座っていた腰を浮かせてしまう。
「お前・・・・。」
ぴたっ。
ガウリイが立ち止まった。
「赤ん坊・・・欲しいのか?」
「へっ☆□●×っ!?」
 
こっ・・・・・このじょーきょーをど〜〜〜してくれるっ!?
マジな顔で突っ立ってるガウリイと。
その前で、浮かせた腰を降ろすか立ち上がるか、どちらにもできなくて中腰で固まってるあたしと。
 
ガウリイがしゃがみこむ。
あたしは腰を降ろす。
目の高さが合ってしまう。
 
「言ってくれれば・・・協力したのに。」
「☆★●〓◇■!?」
 
ガウリイがあたしの手を取る。
自分の手で包み込む。
ち、ちょおっと待て。
待て。
い、いくらなんでも、そんな。
急激な展開にあたしの頭はすでに泥パック状態・・・・・・じゃなくて、パニック状態である。(ちと苦しいか・汗)
 
え〜〜〜とえ〜〜〜〜と・・・・
あ・・・・赤ちゃんが欲しいって言ったわけじゃないけど・・・
相手がいなくちゃできないって言ったあたしに・・・・
協力するって言ったガウリイは・・・・
え〜〜〜とえ〜〜〜と・・・・
つまりその・・・・!?
 
 
ガウリイの大きな手が、あたしの両手を包みこんだまま、ぎゅっと力を入れた。
 
「リトノウコ様リトノウコ様、どうか私達に、子供をお授け下さいぃっ!」
・・・・・・・・・・はあ!?
 
目が点になったあたしに、ガウリイはにぱぱっと笑うとこう言った。
「いやあ、オレの故郷じゃな。子供が欲しい若夫婦はこうやってお祈りするんだ。リトノウコ様ってのは子供を授けてくれる神様みたいなもんでな。願いが叶えば赤ん坊を連れてきてくれるんだってよ。」
・・・・・・・・・・へ。
「来るといいな、リナ。赤ん坊がさ。」
 
呆然としているあたしを尻目に、ガウリイはぱっと手を放し、すたすたとドアへ。
「食堂、先に行ってるぞお。」
ぱたん。
 
 
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「ガ、ガ、ガ・・・・・・ガぁウ〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!
あたしが、床に落ちたスリッパを両方とも拾い集め、ドアに向って投げつけたことは言うまでもない。
「こっ・・・・子供扱いしてバカにしたわねっっ!
ゆっ・・・許さないんだから〜〜〜〜っ!」
 
 




*************



さてその頃。
階段を降りながら、ガウリイがぺろりと舌を出して、こう言ったことはあたしは知らない。

「ふぃ〜〜〜。あぶねーあぶねー。ギリギリで躱すこのスリルがたまらんぜ。」
 
 
 
 
 
 

























=========おしまひ(笑)
つなみさん、HP開設おめでとうです。ほんの、お祝(笑)
●スなガウリイ目指してみたんですけど・・・・イケてる?(笑)
ちなみに、うちの通常仕様ガウリイだと最後のセリフが変わってきます(笑)
「今日は手加減してやったからな。次はないぞ?」
(以上、開設お祝い時のコメントでした.笑)
つなみんのコメントで『そらりんの通常スペックガウ』とか言われて腹抱えたっす(笑)
ぺんてぃあむマイナス3搭載、3000MHZ(速度だけは早い・笑)、OSはHOS、HDもRAMも0.000000001GB(笑)よってイレブンゼロと呼ばれる(謎笑)わかんない人には笑えナい説明だ(笑)

で、この続きをつなみさんが書いてくれました。うちに貰い受けましたので♪
5号室に置きましたが、ここから読めます♪


子供扱いして、とリナちんは怒ってますが、子供扱いじゃない方のオチだったらどないするのアナタ(笑)表にあげられないじゃない(ぼそ)

ちなみに針と糸。
ガウとリナのことでもあります(笑)どっちが針でどっちが糸かは・・・・もろもろを含めて詳しく説明するとアレなので(爆笑)皆様の御想像にお任せいたしましょう(笑)
二人で元気な服(か何かわからんが)を作ってくれや(笑)
 

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