「光さす道」

 
「気持ちいいわね〜、ここ。ちょっと休んでこ〜か。」
「ああ、風が気持ちいいしな。」
「ここんとこ天気悪かったし、こう晴れてると気分も明るくなるってもんだわね♪」
「気分って・・・・天気でそんなに変わるもんか?」
「そ〜よ?だって雨ばっかとか曇りばっかとかって、宿でぬくぬくしてる時ならい〜けど、街道歩いてる時はヤでしょ〜がっ。そ・れ・に。」
「それに?」
「人間、光に当たるのと当たらないのとじゃ大違いなんだって。病気で寝てる人も、窓のある部屋とない部屋じゃ治りが違うんだってよ?」
「・・・へえ。しっかし、お前さん何でもよく知ってんなあ。」
「ふっ。ゼフィーリアの歩く大辞典と呼んでちょ〜だい。」
「あ・・・歩く大魔神ってなんだ・・・・?」
「ちっがああああうっ!」
 
 



・・・そうだよな。
光に当たるのと、当たらないのじゃ。
大違いだよな。
 
リナと旅をするようになって、もうどれくらい経っただろう。
気がつけば当たり前のようになっていた毎日が。
リナに会うまでは全く違う毎日だったことを、オレはすっかり忘れていたに違いない。
 
少し前まで、オレは光の剣を持っていた。
伝説の英雄の武器。
光を呼び起こし、魔を払いこれを討つ。
ゆえにその名を『光の剣』という。
 
・・・・だが、オレはそいつが嫌いだった。
この世界から、無くなればいいとさえ思った時もあった。
・・・何が伝説の剣だ、何が光だ、と。
誰も救わない、誰も守れない、それどころか争いを生み、関係のない人間の命すら奪う。
これさえなければ。
そう、思っていた。
 
 
「なんかさ〜、こ〜やって寝っころがってるとさ〜〜。」
「ん〜?」
「身体中に太陽の光が当たるじゃない?」
「ん〜。」
「身体中で日光を吸収してるよ〜な気がするのよね。」
「・・・へえ?」
「そ〜。エネルギー充填っつ〜かなんつ〜か。あ〜、なんか足んないと思ってたのはコレなのね〜〜〜って感じ。今のうち、補給しとこ♪」
「それ以上エネルギー満タンにしてど〜するんだって気がしないでもないが・・・・。」
「・・・・なんか言った。」
「hっ・・・・い、いやその、た、確かにこ〜してると気持ちいいよなあって。」
「そ〜でしょそ〜でしょ。しばらくこ〜してよ〜♪」
「はいはい。」
 
 

・・・そんな、光の剣でも。
何かができるかも知れない、そう思ったのは。
偶然かも知れないがリナに会うちょっと前のことだった。

それから四日。
気の強い顔をして、オレと同じように事情があって家を飛び出してきたように見えた、たまたま出会った女の子。
それが今はこうして、並んで隣に寝ころがってるなんて。
 
オレよりずっと年下の少女は、見かけよりずっと大人だった。
気がついたら、そんな彼女の後をついて行くのが当たり前になっていて。
余計なことは、一切考える暇がなかった。
そして何より。
お前は教えてくれた。
こんなオレでも。あんな剣でも。
誰かを守ることが。何かをすることが。
できるんだということを。
 
今にしてみれば、お前に出会ったあの日は。
長い間、重く垂れ込めていた雲が突然切れて、晴れ間が差し込んできたように。
オレやあの剣が、光を浴び始めた最初の瞬間だったのかも知れない。
光の剣は、本当に光の剣となり。
少なくともオレは、オレの守りたいものを守ってこれた。
だから、オレの手からあれが永遠に失われた時も、惜しいとは思わなかった。
その役目を十分、果たしたのだから。
 
あの日、リナに出会わなければ。
それすら叶わなかったのかも知れない。

 
 

「そういやさ〜〜〜。」
「ん?」
「前から聞いてみようと思ってたんだけど、聞いてもいい?」
「何を?」
「その髪・・・さ。何で、伸ばしてるわけ?」
「へ?」
「いや、単に切るのがメンド〜だからとか、家訓で伸ばさなきゃいけなかったとか、ポリシー持ってるとか、いろいろあるとは思うんだけどさ〜〜。
何となく、どうしてかな〜と思って。」
「・・・・・えっと・・・・。」
「あ、もしかして話したくない事とか?
なら、別に無理してまで聞かないから。
ただなんとな〜くそう思っただけだから。忘れて。」
「い・・・いや、そんな大したもんじゃなくてな・・・。」
「うん・・・?」
「いや・・・・。言えば絶対怒るからやめた・・・・。」
「な、何でっ?あたしが怒るよ〜な理由って、どゆことっ?
そんな、あたしゃ別にあんたの髪のことで怒ったりなんかしないよ?
そんなの、人の好きずきだと思うしさ〜〜〜。」
「・・・・怒らないか?」
「怒るも何も。あたしが怒んなきゃいけない理由なんてないっしょ?」
「実はな・・・。」
「うんうん。」

「切るの忘れてた。」

「・・・・・・・・。」

「いや〜〜〜、前髪はさすがに邪魔だから。
伸びてきたらテキト〜に切ってたけど、後の方は全然構ってなかった。ははは♪」

ぺしいいいっっ!!

「・・・・・んな爽やかに自分のモノグサを笑ってごまかすな〜〜〜っっっ!!
てっきり大層な理由があるかと思って、つい身構えちゃったじゃないのっ!」
「怒らないって言ったじゃないか〜〜〜。」
「怒ってないわよっ!ツッコんでんのよっ!!」
「・・・そ〜ですかい・・・。」
「ったく。なんか聞いて損した気がする。」
「ははは。気のせい気のせい♪」
「あんたが言うなぁぁぁっ!」
 
 
・・・あのな、リナ。
・・・・嘘は、言ってないぜ。
本当に、切るのを忘れてたんだ。
ある願いが叶うまで伸ばしていたのに、叶ってからはそんなことは忘れちまってたから。
お前に出会ってから、毎日が目まぐるしくて。
そんなことは、すっかり忘れてたからさ。
 
 
「怒るなよ〜。なら、切ろうか。この際。」
「な、なんでっ?なんで突然?」
「いや、切るのを忘れてただけだから。思いだしたから切ろうかって。」
「べ、別にそこまですることないわよっ。
あ、あたしがいきなり思い付いただけなんだからっ。」
「ホント言うと、どっちでもいいんだ。
短くても長くても、大して変わんないし。」
「そっ・・・そりゃ、あんた自身が変わるわけじゃないけど・・・。」
「けど?何だ?」
「えっ?い、いやほらね?なんか、勿体ないかな〜〜〜って思って。」
「そうかあ?」
「せっかく似合ってるんだし。」
「・・・・え?」
「うっ・・・いやあのっ!
そっ・・そうだ!そ、そろそろお腹空かないっ?出発しよ〜かっ?」
「??
どうしたんだ、急に慌てて。
腹はまだ空いてないぞ。さっき食ったばっかだし。」
「そ、そうよね。え〜〜〜と。」
「・・・でもまあ、エネルギー充填が終わったんなら、出発するか?
天気のいいまんま歩いて行くのも、気持ちいいだろ。」
「そ・・・そうよね。うん。行こっか。」
 
 
・・・・まったく。
光に当たるのと、当たらないのじゃ。大違いだよな。
どこまで行けるか、わからないけど。
オレはこの先、なるべくずっと光に当たって生きていけるように、歩いて行くよ。
たぶん、幸運にも降ってわいた、小さな女の子の形をした光を。
 
 
「・・・楽しみだなあ。」
「・・・?何が?」
「もうすぐ、ゼフィーリアだろ。お前さんの実家のある。」
「そっ・・・・・それのどこが、楽しみなのよ・・・・?」
「だから。」
「だっ・・・・だからっ・・・?」
「・・・うまい葡萄が食えるかな〜〜って。」
「・・・・・・・(ふっ)わかったわよ・・・。
お腹こわすほど食べさせてあげるわよ・・・。」

「・・・そりゃ、ホントに楽しみだ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 








---------------------The Happy End.
 


昨年の12月、とある週のことでございました。ガウリイ大好きアンソロジ−本に向けて、ガウリイに焦点を当てた話を、と思うあまりに。
一週間で7本の短編を書いておりました(笑)懐かしいスピードでした(笑)
 
その後、目を痛めてしまったので、その中から3本を新刊『ガウリイ、好きっ(はぁと)』に収録しました。(前回の『幼い愛し方』もその残りのうちの一本です。)最後まで迷ったのは、この話と『胸のトビラ』というお話のどちらを載せるかということでした。
この二本の話は双子のようなもので、どちらもガウリイの独白で『光の剣なんてキライっ』と言ってます(ホントに・・・?)迷ったあげく、どちらかというとダークな『胸のトビラ』の方を本に載せました。

光に当たるのと当たらないのとでは病気の治りも違う、というのは本当みたいです。科学が発達してきたのに、実は『病は気から』という方のが正しいみたいですね(笑)アレルギーがある人も、お腹の底からわっはっはと毎日笑っていると違うそうです。ホントかどうか比較のしようがありませんが、どっちにしろ、毎日わっはっはと笑えるならその方がいいですよね(笑)

それにしても、ガウリイが髪にかけた願いって何でしょうね。本文中に入れようかと思ったのですが、なんとなくやめました。皆さんの御想像にお任せしようかと・・・(おひっ)

まもなくスレ☆すれ開催です。当日イベントに行かれる方、気をつけて行って来て下さいね。よかったらスペースに遊びに来て下さい♪おそらくテーブルの上には、虹に囲まれた8人のガウリイが(謎笑)
昨年のガーディアンと同じ根性を発揮して、手で100冊持っていくです〜〜(爆笑)
 
では、読んで下さった方に愛をこめて♪
あなたの周りに、あなたを照らしてくれる光はありますか。
そしてあなたは、誰かを照らしてあげていますか?
(すんません。自分で書いておきながら、懐中電灯を持ってくすくすとか笑いながら光を当てている図を想像中・笑)

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