「自称保護者VS自称婚約者!?」
まんまなタイトル(爆笑)


※↑このお話は2パターンを一日一話ずつ、毎日連続更新でアップしていました。
その時のおまけ絵を載せちゃいます(笑)


「リナちゃんっ!会いたかったんだよっ!」


マルメイデの町である。
人魚コンテストに優勝し、食べ放題つきの別荘宿泊券をゲットした一行は、すでに別荘で一泊し、町中まで散策に出てきたところであった。
その町中で突然、リナに抱きついてきた者がいたのだ。

リ、リナちゃん?
リナちゃん・・・。
リナちゃん・・・。
リナちゃん・・・。
・・・・・。
反応したのは、リナに同行していたグループだった。
ガウリイ、ゼル、アメリア、それにランツとミワンである。

対照的に硬直して声も出ないリナは、やっとのことでばたばたともがきだす。
「な、な、なにがど〜〜なっったのよっ!?ちょ、ちょっとっ!!!あ、あんた、誰っ!?
「・・・やだなあ。僕を忘れるなんて。」
その人物は暴れるリナからやっと身体を放すと、にこりと笑った。
「探してたんだよ。さあ。」
リナに向って両手を広げる。
「結婚しよう!」
『け、け、け、けっこぉんっ!?』


夏真っ盛りの晴れ渡った青空に、時ならぬ大音声が響き渡った。




「・・・・ごほん。」

町中の裏通りにある、小さな茶店。
冒頭の騒ぎで、すっかり町を行く人々の注目を浴びてしまった一団は、そそくさと裏通りに逃げてきたのである。だがまだ、まききれない野次馬が、そおっと店の外から覗き込んでいる(笑)

丸いテーブルを囲み、話を切り出そうとゼルが咳払いをした。
その隣には、何故か目がキラキラと光っているアメリア、物静かに状況を見守っているミワン、さっきからガウリイと闖入者を見比べているランツ、ガウリイ、ぜえぜえと肩で息をしているリナ、そして問題の発言をした人物の並びで座っている。
「・・・・。」
まだ息のつけないリナをちらりと見ると、ゼルガディスはため息をついて話し出した。
「ええと。こういうことは面倒であまりやりたくないのだが。」
「ゼルガディスさん、それじゃフォローになってません。」こそっとアメリア。
「・・・ほっといてくれ。ともかくこれ以上、俺達が人目について、町中を追っ掛け回されてはかなわん。どういうことか、事情を説明してもらわんとな。」
そう言うと、腕組みをして問題の人物を見据える。

全員が注目するなか、彼は立ち上がると、ぺこりっと挨拶をした。

「すいません。自己紹介がまだでしたね。
僕の名前はハル。ここにいるリナちゃんとは、」と言いながら、リナの肩を抱く。
「幼馴染みだったんです。家が隣でした。」

し〜〜〜〜〜〜〜ん。


「なあんだ、そういうことでしたか。」
「いやあ、心配しちゃいましたよ、俺ぇ。」
「だからリナちゃん、て呼んだんですね。」
「良かったですね、リナさん。幼馴染みに会えて。」
とのんきに感想を言い合う仲間を尻目に、ハルはのうのうと言ってのけた。
「そうです。幼馴染みで、いいなづけなんです♪」

し〜〜〜〜〜〜ん。


「い・・・・」
「い・・・・」
「い・・・・」
「いいなづけぇっ!?」

がたがたがたがたんっ!!

ゼル、アメリア、ランツ、リナが席を立つ。
ハルの発言より、皆の反応に驚いた顔のミワンと、顔が?マークのガウリイと当のハルだけは座ったままだ。
「なあ・・・。」
ぽりぽりっと頬をかいて、ガウリイが何かを言いかけた。
リナの目がきらんと光る。

すぱああああんっ!!

「い、いってぇぇぇっ!!な、なんで叩くんだよおっ!」
平手打ちされた頭をさすりつつ、ガウリイがぶうたれる。
「だってあんた、今、『いいなづけって・・・なんだ?漬け物か?それ旨いのか?』ってきこ〜としたでしょおっ!!」
「な・・・何故それを(汗)」
「ふんだ。長い付き合い、それっくらいわかるわよっ。」

ハルはそんな二人のやり取りをじっと見ていた。
やがて言った。

「あの・・・・リナちゃん。その人は。」
「ちょ、ちょっとハムハム・・・。そのリナちゃん、てのやめてくんない。もお子供じゃないんだから・・・・。」
「リナちゃんこそ。僕をハムハムって呼ぶじゃないか。」
「あ。そっか。」
アメリアが口を挟んだ。
「あの・・・リナさん、ハムハムって?」
「え?あ、ああ。ハルのあだ名よ。ちっちゃい時、ハムみたいにころころ肥えてたからね。だからこんなにスリムになっちゃったハルを見て、すぐにわかんなかったくらいよ。」
「じゃあ・・・ハルさんて、ホントに幼馴染みなんですね・・・。」
「うん。あ、じゃあ、いちお〜、仲間を紹介するわね。えっと、今話してたのがアメリア。んでその隣の恐いカオのに〜ちゃんがゼル。」
「恐いに〜ちゃんは余計だ。」
「ごめんごめん(笑)んで、髪の長い美人がミワン。その隣のムサいのがランツ。」
「兄貴ぃ・・・あんなこと言ってるっすよぉ・・・・。」
「んでそのランツが今、泣き付いてるのがガウリイ。」

ハルがリナの肘をそっと引っ張った。
「リナちゃん。」
「な、なによ。」
「ガウリイさんて人・・・・。リナちゃんと、どんな関係なの。」
「へっ!?」

思わずリナが振り返ると、当のガウリイの視線とぶつかった。
リナが固まる。

すると、当人をほっぽって、アメリアとランツが俄然はりきって答え出した。

「ガウリイさんは、リナさんとずうっと一緒に旅を続けてきたんですよっ!」
「そうだぜっ!兄貴は、夜も昼もあのドラマタ娘と一緒だったんだっ!」

こらこらこらこらこらこらっ!!誤解を招くよ〜なことを言うなぁあっ!!」
慌てるリナに、アメリアとランツが食い下がる。
『ウソだと思ったら、ガウリイさん(兄貴)に直接聞いてみて下さいっ(くれっ)』

今度は全員の注目がガウリイに集まる。

し〜〜〜〜〜〜ん。

ガウリイはきょとんとし、次に、にぱぱっと笑って答えた。
「オレか?オレは、こいつの保護者だ。」
そう言って、隣のリナの頭をくしゃっと撫でた。

途端に青ざめたハルは、リナの顔を両手で挟んで、ぐいっと自分の方に向けた。
「リナちゃんっ!僕というものがありながらっ!」
「い、いたたたっ!ちょっとハムハムっ!痛いってばっ!いいいいい今のきーたでしょおっ!ガウリイはあたしの、自称保護者なのっ!」
「・・・ホントに?」
「ホントに!だからぁ、手を放してってばっ!」
「・・・・。」
解放されたリナは、ぶちぶちと文句を言う。
「大体ね、あたしが何であんたのいいなづけな訳!?そんな話、あたしはぜぇんぜん知らないわよっ。」
「ええええええっ!!」

ハルが立ち上がる。
真っ青に青ざめ、硬直している。
まるで空がにわかにかき曇り、雷が轟いているようだ。
思わず書き文字で、バックに『ガ〜〜〜〜ン!!』と書きたくなる風情である。

次に彼はがっくりと肩を落し、哀れなほどに落込みはじめた。
「ああ・・・・。僕は一体、今まで何のために・・・。リナちゃんと別れてはや十数年・・・・この日のために、己を鍛え、バイトもし、金もためた。小さいながらもすい〜とほ〜むを購入した。ところが故郷へ戻ってみれば、リナちゃんがいない・・・。リナちゃんを探して、ずっと一人で旅を続けてきたというのに・・・・。」

さめざめ。
今度の彼には、しのつく雨が似合いそうだ。

これにはさすがに困った面々。
結局、渋るリナを説得し、残りの宿泊券を使う二日の間、ハルに滞在してもらうことになったのである。





「・・・で。ど〜してこ〜いうことになるわけ。」

翌日のことである。
リナがぼおっとした頭で別荘の中庭に出てみると。
すっかりステージができあがっていた。

間にステージをはさんで、向かい合わせに置かれているひと組の椅子。
片方には、意気満々と言った感じに、頬を紅潮させているハル。
もう片方には、起き抜けでぼおっとしているガウリイが座っている。

小さなテントの下には、細長いテーブル。
そこにも椅子が置かれ、ミワンとゼルが並んでいる。
ゼルはかなり憮然とした表情だ。
二人の前には何やら書かれた札が置かれている。
『審査員席』と読める。

「ちょっと・・・・ど〜いうこと・・・・?」
中央のステージには、立てた棒の間にヒモが通してあり、横断幕がかかっていた。
リナがふるふると震えたのは、それが原因である。
すなわち。
そこにはこう書かれていたのだ。


『自称婚約者VS自称保護者!
リナさんをめぐる男達の熱き闘ひ!!』




続きをどうぞ〜♪