「名前をつけて、だいじにしてね。」

 
 
「ガウリイ。地図。」
「・・・・あ。」
 
山の中で。
リナは嫌な予感とともに振り返った。
予想通りにそこには、たはは、とジト汗を垂らして笑うガウリイの姿が。
「あんた・・・・まさか・・・地図、無くしたっていうんじゃ・・・・ないわよね・・・・。」
おのずと声が1オクターブ低くなるリナ。
 
それに気付かないのか、気付いててもどうしようもないのか。
ガウリイはにぱぱっと笑って、笑顔のままで答える。
「すまん。無くしたみたいだ。」
「・・・・。」
 
ぎゅうううううっ!!
 
「いたたたたたたっ!いたひっ、リナちゃん!いたいいたいっ!」
どわれがリナちゃん、よっ!ちょっとその耳、貸しなさいよおっ!」
「そんなっ。ちゃんと返してくれるかぁっ!?」
「そ〜〜ゆ〜〜〜イミじゃなぁいっ!!
いい!?あんた、今度の旅に出てからとゆ〜もの、単なるもの知らずはとっくの昔に通り越し、今や脊髄で物を考えるんじゃ、なんて言われてる昨今。と〜と〜身の周りのものまで無くすよ〜じゃ、脊髄すらない軟体ど〜ぶつっっって言われても、あたしは責任とんないわよっ!」
「・・・おひ・・・。何もそこまで言わんでも・・・。わ、悪かったってば。た・・・確か、最後の茶店でダンゴ食ってた時は持ってたんだけどなあ。」
「・・・・。ダンゴ片手に、もう片方の手に地図を持って?」
「うん。」
「で、お金はどっちの手で払ったのかな?」
「え?まだダンゴは残ってたから・・・反対側(はぁと)」
「・・・・で・・・・地図を置いてきたわけね・・・・。」
 
ひきひき。
 
ひきつるリナの肩を、ガウリイがぽん、と優しく叩く。
「まあまあ。悪気があった訳じゃないし。そのくらいで許してやれば。」
「まあ・・・確かに悪気があった訳じゃ・・・・・・・ってぇ!!
許してやれってアンタのことでしょ、アンタのっ!!
「あ。バレたか。ははは。」
「はははじゃなあ〜〜〜〜〜〜〜いっ!!」
 
リナが呪文を唱え始めた。
青ざめたガウリイは、慌てて避難場所を探すが、身を隠すところがない。
リナは冷たい表情で呪文を唱え終わる。
「ひいいっ。リナさま許して〜。」
どわれがリナさまよ。ていっ!
「うわああああああ・・・・・・・・・・・・っ!?」
 
思いきり縮こまったガウリイ。
だが何も起こらない。
「あれっ!?」
 
起き上がってきょろきょろするが、辺りにも変化はない。
「リナ・・・何をしたんだ?」
するとリナは、ふっふ〜んと得意げに笑った。
「アンタの肩。見てみなさい。」
「肩?・・・って?」
きょとんとしたガウリイが、自分の肩、つまりショルダーガードを見てみる。
すると、黒光りするその防具に、小さくピンクの文字が書かれていた。
「・・・なんだ、これ?」
「ふっ。染色の呪文をちょっとアレンジしてみたの。文字までちゃんと書けるのよ♪」
「それはわかったけど・・・・なんて書いたんだ?」
「名前よ。」
「な、名前?」
「そう。」
 
リナはびしっと指差す。
「アンタがもう、忘れ物をしないように。アンタの持ち物全部に、名前をつけるのよっ!」
 
「な、なぬううっ!?」
「例えば。ショルダーガードはゼルガディス。」
「ゼ、ゼルっ!?」
「ブレストプレートはアメリア。」
「あ・・・・アメリア?」
「腰のガードはルーク。」
「へっ!?」
「リストバンドはミリーナ。」
「お、おい・・・」
「という風に、アンタの極力知ってる名前で統一するわけよ。」
「・・・・はあ。」
「朝起きたら、アンタは自分の仲間を確認するの。一人でも忘れたら、アンタは困ったことになるのよ。」
「う〜〜〜〜ん。」
「そうすれば物にも愛着が湧くってもんでしょ。ああっ、ゼルが傷ついちゃった!とか。ミリーナを忘れると腰のガードが泣くからとかっっ!」
「・・・なんか・・・かえってフクザツなよ〜な・・・・。」
「ええいうるさいっ。とにかく、しばらくそれでやってみんさい!」
「・・・ほわい・・・・。」
 
あちこちにピンクの小さな文字がついた、自分の身の周りのものをしげしげと見ていたガウリイは、ふとあることに気がついた。
「あれ。・・・じゃあ、この剣もか?」
腰に下げた、自分の剣を指差す。
 
続いて、染色の呪文を操っていたリナは、一時中断。
「あ。そね。それにも名前をつけなきゃ。」
「なんてつけるんだ?」
「え〜と。何が残ってたかな。」リナが指折り数える。
「あ、わかった。」
突然ガウリイが、ぽんと、手を叩いた。
「なによ。」
「だから。剣の名前。」
「?」
 
ガウリイは腰帯から剣を外すと、リナに掲げてみせた。
「これは、リナだ。」
 
「ええええっ!?」
何故かリナが赤くなる。
そっ・・・。
そんな一番大事なものにあたしの名前を・・・・?
 
するとガウリイは、にっこりと笑って答えた。
 
「だって。忘れると、どっちも命にかかわるからな。」
 
 




















==================おわり(笑)
「名前をつけて」で考えたお話の一本目です(笑)このネタで3本書いちゃいました(笑)元ネタは「シャンペンシャワー」(かわみなみ氏作・白泉社)で洋服に鈴木くんとか佐藤くんとか名前をつけていた某サッカー選手です(笑)そーらはディッコのファンでしたが(笑)
さてこの最後のセリフを言った後、ガウリイはどうなったんでしょうね(笑)
それは神の味噌汁・・・・・おっと、神のみぞ知る(笑・またマンガねたを)
ではまた、お目にかかりましょ〜〜〜〜(笑)

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