「死守。」

 
 
「・・・・で。風に飛ばされたってわけか。」
ゼルガディスが長々とため息をついた。
 
とある町の、食堂である。
丸いテーブルを囲み、ゼル、アメリア、リナが席についていた。
そのテーブルの前に、ガウリイが申し訳なさそうに立っている。
「すまん。」
金色の頭が、ぺこりと垂れた。
 
「確かに。俺達が図書館に行ってるあいだ、突風が吹いたって話は聞いた。しかしだな。」
ゼルが詰め寄る。
「いくらなんでも、頼まれたもの全部を風に飛ばしちまうヤツがあるか。」
「ちょ、ちょっとゼルガディスさん。」
アメリアが慌てて間に入る。
 
「ガウリイさんの責任じゃありませんよ。風は、確かにすっごく強かったって、宿の人も言ってました。不可抗力ですよ。」
「しかし・・・。」
ゼルは渋面である。
「中にはなかなか手に入らない稀覯書もあったんだぞ。また探すとなったら、どれだけ時間がかかるか。」
「その気持ちはわかりますけど・・・。全部ガウリイさんに頼んだ、わたし達もいけなかったですし。」
 
「・・・おいリナ。黙ってないでお前もなんとか言えよ。お前の頼んだものもあったんだろ?」
ゼルは、先程からおし黙ったまま、何も言わないリナに方向転換。
「しかも、お前はガウリイの後から追いかけたんだろ?ガウリイ一人には任せておけないって。それでどうして、何もできなかったんだ。」
「ゼルガディスさんてば。もおいいでしょう。」
 
「すまん!」
ガウリイが再び謝る。
「飛ばされた紙を追いかけてはみたんだ。でも・・・・。これしか掴まえられなかった。」
と、一枚の羊皮紙を差し出した。
ゼルガディスがそれを受け取って驚く。
「これは、リナが頼んだやつか?俺は知らないぞ。でかしたガウリイ。これ一枚だけでも随分違う。」
ゼルは真剣にその紙を読み始める。
アメリアはガウリイににっこり笑いかけた。
「良かったですね、ガウリイさん。一枚だけでも助かって。」
「あ、ああ。」
ガウリイはぽりぽりと頬をかいた。
 
そこへ、何故か目を輝かせて嬉しそうにフィリアが入ってきた。
「聞きましたよ、ガウリイさん♪」
「フィリア?」
「フィリアさん、一体、今までどこにいたんです?」
フィリアはテーブルにつくと、紅茶を注文して言った。
「いえ。今、町中を通ってきたら、ちょっとした噂を耳にしまして♪一部始終を聞いてきたんです♪」
運ばれてきた紅茶を、美味しそうにこくりと飲む。
 
「噂って、なんです?」興味の湧いたアメリア。
するとフィリアは、意味ありげにリナの方を見ながら、にこにこと話し出した。
「いえね。さっきの突風の時、とある男性が起こした騒ぎのことで、町中の話題になっていたんです。何でも、」と、今度はガウリイの方をちらりと見る。
「背の高いハンサムな男性が、持っていた羊皮紙を風に飛ばされ、それを追いかけて町中を駆けずり回っていたそうなんです。・・・・なまじ目立つ容姿をしていたせいで、皆が注目していたらしいですよ。でも残念なことに、そのほとんどが、手の届かないところへと風に攫われてしまって。でも。」
「でも、なんです?」
「最後の一枚だけは、どうしても掴まえたかったらしくて。それはもう、死にものぐるいで追いかけ回していたとか。」
「へええ。」
 
アメリアも意味ありげに、ガウリイの方を見る。
ガウリイはぽりぽりと、まだ頬をかいている。
ゼルガディスはもう、羊皮紙に夢中。
そして、何故か沈黙のままのリナ。
 
フィリアは、もうひとくち紅茶を飲み、にっこりと笑った。
「もう、それは真剣だったみたいですよ。
『オレのリナがっ!』とかなんとか叫びながら。
・・・見たかったですねえ、リナさん。・・・・・リナさん?」
 
 
 
黙りこくっていたリナは。
実はまっかに茹で上がっていたのであった(笑)
 























===============おわり♪
「名前をつけて」の2本めです(笑)見たかったですねえ、ガウリイが町中を「リナがっ!オレのリナがっ!!」と叫びながら紙を追っ掛け回してるところ(笑)
では読んで下さったお客様に、愛を込めて♪
身の回りに、名前をつけて大事にしてるもの、ありますか?

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