「眠れない夜を」

 
 
 
今日はたくさん歩いて、疲れている。
横になったら、すぐに眠れる。
 
と、あたしは目を閉じたまま考える。
声に出さずに、心の中で。
そう。
自分に自分で、暗示をかけるように。
 
 
 
夜の帳に包まれた、ここは鬱蒼と木々が生い茂った森の中。
以前に誰かが作った野営の後を、あたし達は今日の宿に決めた。
すすけた石のサークルの中で、焚き火だけが勢い良く燃えている。
焚き火がはぜる音と、かすかに聞こえる木々の葉ずれの音以外は、
耳が痛いくらい辺りは静かで。
 
「先に寝るからっ。」
 
あたしはそれだけ言い放つと、ガウリイの返事を待たずにさっさと横になった。
焚き火をはさんで、反対側にごろりと。
毛布を身体に巻き付け、固い地面に我慢する。
 
ガウリイは。
「おう。」とも。
「おやすみ。」とも、
言わなかった。
 
その沈黙が、何故か気にかかる。
 
 
黙ったまま。
何もしないで。
ガウリイは焚き火の前で、何を考えてんだろう。
どこを見てるんだろう?
考え過ぎかも知れない。
でも。
巻き付けた毛布ごしに、背中に感じるのは、焚き火の熱だけ?
 
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
 
ただ続くばかりの沈黙が、肺をきゅっと締め付ける。
どうしたらいいかわからない。
気のせいだと言ってしまえば、それで終りなのに。
何も言わないガウリイが。
何も尋ねられない自分自身が。
もどかしくて、イライラして、そして混乱させられる。
 
 
ガウリイのこんな沈黙に、気がついたのは最近。
今夜は野宿だと言うと、彼はあたしよりも渋い顔をしたのだ。
それから。
何となく、ガウリイの沈黙が恐い。
 
 
あたしは疲れている。
今すぐにでも眠れる。
そうやって暗示をかけて。
眠ってしまおう。
 
今はまだ、何も気付かないふりで。
そして早く朝を迎えて、そしたら次の町に急ごう。
今度は宿屋で、別々の部屋で眠れるように。
ガウリイの沈黙も、自分の混乱した頭も、気にしないで。
こんな息苦しい夜を、また繰り返さないで済むように。
 
眠れない夜を、眠ってしまおう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
==============================えんど。
 
『愛しさと息苦しさと』のちょこっと前の段階?(笑)
とある方から読ませていただいた、ガウリイの切ない男心(違う・・・?)のお話にお礼として贈呈したものを、ちょびっとアレンジしてみました。
リナちゃんも苦しくて眠れないかも知れませんが、やっぱりこの場合、くるし〜のは男の方じゃ・・・・・(笑)
では、久々の短編を読んで下さったお客様に愛を込めて♪
こんなドキドキする夜、過ごしたことありますか?
そーらがお送りしました♪

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