「ヌンサのふくしう日記。」


 わ・・・・私の名前は、ヌンサだ。
 し、死んだはずだ、と思うやつがいるかも知れないが。
 ち・・・・ちっちっち。
 原作をようく読んでみることだ。死んだのはテレビシリーズの私とラハニムの方で、原作では私は死んでない。

 リ、リナ=インバースを逃してから、私はレゾ様に叱られ見捨てられてしまった。
 ・・い・・・一族きっての美形と歌われたこの私が。荒野をさすらい、一杯の水を求めて物乞いしたり、ざ、残飯を漁るようになるとは。・・・・く、屈辱だ。
 ・・・お・・・おのれ、リナ=インバース。
 この私の子を生む栄誉を蹴ったばかりか、私にこのような辛酸を舐めさせるとは。この恨み、は・・・はらさでおくべきか。
 
 復讐の思いを胸に、魂の荒野をさすらう誇・・・り高き戦士。
 そ・・・それが今の、私なのだ。
 
 
 
 −−−−−−某月某日。
 
 なんという偶然か。とある街で、私はリナ=インバースを見かけた。
 か、神よ、ご照覧あれ。あのにっくきリナ=インバースが目の前にいる。
 私は大通りの屋台の裏から、こっそり後をつけた。
 と・・・途中、魚屋に掴まって危うく食材にされかかったが、何とか逃げ出すことに成功した。ま・・町中は危険が一杯だ。
 やがて、リナ=インバースは一軒の宿屋に姿を消した。・・・そうか、こ、ここに泊まっているのだな。
 
 苦労して集めたじょ、情報によると、リナ=インバースは強力な魔法を使うと言う。あの時、魔法が使えなかったのは、に・・・・人間の、生理現象に基づくことらしい。
 に、人間とはなかなか、不便な生き物のようだ。所詮、我らが魚人族の素晴らしい生体能力には、か、かなうはずがないということだな。
 あ、相手が魔法を使う、となると、こちらも用心がいる。わ、我ら魚人族は、身体の機能が優れているおかげで、魔法など使わないのだ。こ、ここは、私が単に美形なだけでなく、ず、頭脳も優秀だと言うところを見せねば。
 そそそうだ。また、リナ=インバースが魔法を使えない時期になるまで、ま、待つのだ。よよよし。
 
 
 
 −−−−−某月某日、二日め。
 
 ヤツが宿屋から出て、きた。ひ、一人ではないようだ。人間の男が一緒だ。
 が、しかし・・・・何とまあ、不細工な顔だろうか。な、嘆かわしい。髪は長ったらしくて、ひょろひょろと体長が高い。一見して軟弱だ。
 わ、我らのように硬いウロコがないので、どうやら他の生き物のウロコを身につけて身体を守っているようだ。そ、そこからしても、軟弱さが伺える。一応剣は持っているようだが、大して役に立たないだろう。
 後をつけてみると、ま、街から出てしまった。ど、どうやら次の街へ向うようだ。
 「い、行け。」
 「はっ。」
 私が金で雇ったゴロツキが、山賊を装って攻撃をかける。
 『火炎球!』
 どかああんっっっ!!
 「ぼひぃぃっぃぃぃっっっ!!」
 ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
 
 
 あっさりとやられてしまった。だが、これでいい。
 ・・・・・うむ。まだリナ=インバースは呪文が使えるようだ。
 
 
 −−−−−某月某日、三日め。
 
 昨日の様子からしても、あの男は員数外と考えていいだろう。結局何もしなかった。
 あの後ふ、二人は野宿したのでその時に襲えば良かったのだが、暗闇の中近付いてみると、私は異様な殺気に襲われた。
 「・・・ん・・・・・ガウリイ?」
 リナ=インバースの声が聞こえた。さ、殺気はヤツが放ったものか。私は用心のため、攻撃をかけるのはやめて、その場から大人しく見守ることにした。
 
 『爆炎舞!』(ばーすとろんどっ!)
 「がああああっ!」
 『魔風!』(でぃむ・うぃんっ!)
 「どえええええっ!」
 『氷霧針!』(だすと・ちっぷぅっ!)
 「いていていててててててっ!!」
 
 ・・・・まったく、だ、だらしがない。や、やはり人間とは脆弱な生き物なのだ。私が雇った連中は、こ、ことごとくリナ=インバースにやられた。
 まあいい、目的はリナ=インバースが魔法を使えるかどうかにあるのだ。

 「ったくっ。一体なんなのよ今日はっ。こんなに立て続けて山賊が出るなんて、ここってばまさか、国家公認絶滅危惧種『山賊』保護地区ってんぢゃないでしょ〜ねっ!」

 ・・・・ふっふっふ。リ、リナ=インバース。首を洗って待っているがよい。お前が魔法を使えなくなった時が、年貢の納め時、だ。
 「ちょっとガウリイっ。あたしにばっかやらせないで、少しは手伝いなさいよねっ?」
 ・・・・そ、そうか。ガウリイ、とは、連れの男のことなのだな。
 「そうは言うがな、リナ。オレが手を出す前に、皆お前さんが吹っ飛ばしちまうんじゃねーか。」
 「あれ。そーだっけ。たははははは。」
 「・・・ったく、あんまメチャすんじゃねーぞ。」
 「ちょ、ちょっとっ。ひ、人の頭抱え込まないでよっ!だ、誰か見てるかもしんないじゃないっ・・・!」
 「・・・・だいじょーぶだ。近くに人間はいないさ。」
 「まあ・・・あんたがそう言うなら・・・。野生の勘だけは凄いかんね、あんたわ。」
 「そんじゃもう一回。」
 「ち、違あああうっ!そ、そ〜いう意味で言ったんじゃなくってえ!!」
 
 ・・・・・・・。ううむ。
 あれは人間の挨拶の仕方なのだろうか。か、顔のあちこちにぺたぺたとく、口をつけて、何か意味があるのか。
 そ・・・そうだ、あれと同じに違いない。小さき魚が私達のウロコについた虫や藻を食べにくる、あれと同じなのかも・・・し、知れない。
 ううむ、まだ人間にも、わからないところがあるようだ。
 
 
 
 −−−−−某月某日、四日め。
 
 またも夕べの夜襲に失敗し、私は茂みの中からこっそり二人の後をつけていた。
 
 「あったまいた〜〜〜〜〜。」
 「大丈夫か?」
 「ん〜〜。」
 「だから宿を取ればよかったのに。」
 「だってあそこの宿、料金がバカ高だったでしょ?最近ちと手持ちがさみし〜し、こないだの街で受け取った品物が売れる次の街まで、少し節約しようと思って。」
 「おいおい、お前さんの身体の方が大事だろうが。」
 「あいたたた、お腹もちょっと・・・」
 「頭痛と腹痛・・・・?それってまさか・・・?」
 「なっ・・・・なによっ・・・・」
 「まさか、お前・・・・・・・・」
 「やだっ、言わないでよっ!」
 「・・・・そうだったのか。早く言えばいいのに。ほら、次の街までおぶって行ってやるよ。」
 「い、いいってばあっ!だいじょーぶだからっ!」
 「遠慮すんなよ。お前一人の身体じゃないんだし。」
 「えっ・・・・えええええっ!!なっ、なにいきなり言い出すのよっ・・・!」
 「だって、お腹に赤ん坊いるんだろ?一人の身体じゃないだろ〜が。」
 「あああああたしがいつ腹に子持ったあああああああっっっ!!!そっ、それは気分悪くなるとか吐気がするつわりのことでしょおっ!?」
 「そ〜ゆ〜カリカリしてるのを、腹に子を持った動物のような、って言うじゃないか♪」
 「・・・・・・・・・ぷち。わかったわよ・・・・おぶってくれるのよね。じゃああたしの可愛い子供達も一緒にお願いねっ!」
 「子供ってっ・・・・ホントだったのかっ!?」
 「ぶっぶ〜〜〜〜〜!!!あたしのかあいい商品達のことよっ!ぜえんぶおぶってくれるのよねっ!あたしも一緒にいっ!」
 「・・・・・ぐえ!」

 がさっ!
 「お取り込み中のところ、悪いが・・・・リナ=インバースだな?」
 「だああああっっっ!どっから湧いて出たああっ!」
 「貴様に恨みはないがいざ勝負っ!」
 「ううるさあああいいいいっ!!!いきなり火炎球!
 「ぐぼあああああっ!」
 「あ、あぢいいいいいいっ!!お、おまっ、オレの頭焦がす気か〜〜〜〜っ!!」
 「じゃかまし!このまま街まで行ってもらうからねっ!」
 「ええっ!このまま呪文ぶっぱなしでっ!?」
 「と〜〜〜〜ぜんっ!」
 

 ・・・・・・。またやられたか。
 やはり、男の方はかなり情けない奴のようだ。相手にもなるまい。私の、も・・・目標はリナ=インバースただ一人。あのような男など、取るに足らんわ。
 それに、長年の研究の結果、私はすでに読み切ったぞ。
 リナ=インバース。
 『あの日』が近いな・・・・!(きら〜〜ん)
 
 
 

 −−−−−某月某日、五日め。
 
 ふっふっふ。遂にこの時がやってきた。草木も眠る丑三つ時。
 昼間、また金をやってゴロツキに襲わせた結果、リナ=インバースが魔法を使えなくなったことがわかった。『あの日』とやらが始まったに違いない。
 情けないと思った男だが、まあ多少は剣が使えるようだ。だが、わ、私の敵ではない。今こそ我が奥義、青いイナズマとまで呼ばれたスプラッシュアンドリトルマーメイドビデオ限定版アタック(略して人魚突き)をくらうがいい。
 
 「・・・う・・・ん・・・・」
 リナ=インバースの声が深夜の森に響く。しまった。気づかれたか。
 「・・・・・・・」
 ほっ。どうやら気づかれていないようだ。寝言か。
 ・・・・・ふっ。私の気配を悟るのは無理というものだ。今や私は、み、身も心も、完全に魚になりきっている。池のすぐ傍で眠って、何百という魚の中から私のけ、気配だけ感じるのは無理と言うものだろう。
 そして、今こそ!
 
 『スプラッシュアンドリトルマーメイドビデオ限定版アタァックッッ!!!』
 
 ばしゃあああああっ!!
 見よ!この見事なエビぞりをっ!まこと本物のエビだとて、これほど美しくエビぞれまいっっ!
 水面から飛び上がった私は、い、一直線に、ヤツらの寝床を・・・・・!
 
 
 ひょべちいいいっっっっ!

 
 
 「・・・・おっ・・・・おひょれぇっ・・・・・!」
 
 ぬわっ!・・・な・・なな何ということだ。わ、私の美しい攻撃が!
 「よ・・・よけるのではない・・・・・!」
 げしっ!
 「ぃやかましい、このサカナめっ!毎度毎度いいところを邪魔しやがってっっ!」
 「わ、私の頭を足蹴にしたなっ!この神をも恐れぬ不敬者がぁっ!」
 「なに、なんなのっ!?ああっ・・・あんたわ魚人族っ!?な、なんでこんなとこにっ!」
 「お、覚えているか、リナ=インバース。わ、私を。」
 「お・・・覚えているかって・・・・・。あ、あたし・・悪いけど、魚人族は全部おんなじ顔に見えるんですけど・・・・・・。」
 
 がああああああんっ!
 
 「わっ・・・・私のような一族きっての美形と、ほ、他のやつを同じ顔にだと・・・っ・・?」
 「う〜〜〜ん。ラハニムってヤツなら、ゼルが倒したけど。・・・でも、そいつと同じ顔に見えんのよね・・・・・。」
 
 があああああああんっ!(ぱあと2)
 
 よろっ・・・・。
 「わ・・・・私のような美形が・・・・あの・・・よりにもよって不細工なラハニムなどと同じ顔に見えるとは・・・・・・。く・・・・・屈辱・・・・!
 お、おのれ、リナ=インバース・・・・またしてもこの私に、屈辱を与えてくれたな・・・・。こ・・・・こうなったらもう許せん。あの時の約束、果たしてもらおう!」
 「・・・・・・・約束?」
 「な、何言ってんのよっ?」
 「・・・なあリナ、約束ってなんだ?」
 「知らないわよっ!」
 「や・・・約束したのだ。この女と、私はな。」
 「何の?」
 「ふ・・・ふふ・・・とてもめ・・・名誉なことなのだぞ。・・・・・私の、子を、な、成すと。」
 「ああああっ!?だ、だれが約束なんかしたってのおっ!!だぁからそれは不可能だって言ったでしょぉおっ!?」
 
 
       ・・・・・・・・ぷちっ・・・・・
 
 「・・・・お?な、なんの音だ?」
 「貴様・・・・名を名乗れ・・・・」
 「ほ、ほう、私とやる気か、男。」
 「名を名乗れっつってんだよ・・・・・。」
 「み・・・耳の穴かっぽじってよく聞けい。わ、我が名は・・・」
 「あ。やっぱ、ど〜でもいい。」
 「お・・・・おひ・・・・・・・?」
 「代わりに、辞世の句を聞いてやる。」
 「じ・・・辞世・・とは・・・・だ、誰か死ぬのか。」
 「貴様だっ!覚悟しろっ!!」
 「お・・・男、それはどういう意味・・・だ・・・」
 「ガウリイっ!?」
 「お前なんかにリナは渡さないからなっ!」
 「ちっ!?ちょちょちょちょちょっとガウリイっ、何言い出すのよっっ!?」
 「リナはなぁ!昼間はああだけど、暗くなってそれなりにムードが出れば、それなりにそれなりになるんだよっ!!昼間は軽い冗談で気分をほぐしておいて、夜に向ってじわじわとテンションを上げて行くんだっ!・・・・そこまで持ってくのに、オレがどんだけ苦労してると思うっ!」
 「い・・・・意味がわからん・・・のだが・・・・。お、お前・・・・何だか・・・・め、目が変だぞ・・・・。」
 「・・・・・ふっ・・・・・・ただで済むと思うなよ・・・・?」
 「のひいっ!?」
 
 
 しゅっぱあああああんっ!
 ごりごりごりごりごりっ!
 
 「うああああっっあうあうっ!う、ウロコがああああひゃああああっっ!」
 「動くなっ、ウロコを落としてから綺麗に三枚に下ろしてやるっ!」
 「いやだあああああ。ひゃ、ひゃやめろおおおおお。」
 「・・・・・・・・・魚人って・・・。やっぱおさかなのとこは、おさかなの味がすんのかしら・・・。」
 「待ってろリナ!腹の子のためにも滋養をつけさせてやるっ!」
 「ベ・・・・ベタな冗談はもおいいってのおおっ!!こんのスカタンクラゲ〜〜〜〜〜っっ!!!
 
 ぺしっ!
 ひゅううううううううん。
 ざっぶううううううううん。

 
 
 
 ・・・・・はあはあ。
 ・・・・・・はあはあ。た・・・・・・助かった・・・・・。
 
 
 
 


 −−−−−某月某日らすと。
 
 やはり、生きているということは素晴らしいのだと私は痛感した。
 朝、池の中で目が覚めると、大きなコブを作った頭をさすりながら、男がリナ=インバースの後からよたよたとついて行くのを見送った。

 ・・・・・・人間は、わからん・・・・・。
 あのように訳のわからないキレ方をする男と、何故リナ=インバースが旅をしているのか。あ、あの男は、一体何を怒っていたのだ・・・?それに何故リナ=インバースのような、危険かつ兇暴極まりない女とた、旅を続けているのか・・・・。
 やはり、女は同族に限る。
 わ・・私は、新たな希望をい、抱いて、故郷へ帰ることにした。故郷へ帰れば、わ、私はモテモテだし。
 
 ・・・・しかし、いまひとつわからんことが・・・。

 男が言った、むうどとかてんしょん、とか。それなりにそれなり、とか。一体何のことであろうか。
 な、何故あの男は怒ったのだ。人間の世界はわ・・・わからないことだらけである。それに何故眠る時にふ、服を脱ぐのか?
 う、うむ。
 こ、この謎は、子々孫々にまで語り継がせることにしよう。
 
 
 
 
 
                  
























−−−−−−−−−− 終幕。

ごめんなさいねえ(笑)あいか〜らずのおばかで(笑)
随分前に書いたまま、バックアップの中に入れっぱなしだった話です(笑)掘り出してきました(笑)行頭がインデントされてるんで、おそらく本に入れるつもりだったんでしょう(笑)
スレイヤーズってどうしてこう、書きやすいキャラクターがたくさんいるんでしょうかねえ(笑)性格が中途半端、ってヤツがほとんどいないと思いませんか?(笑)
ではここまで読んで下さったお客様へ、愛を込めて。
ゴールデンウィークの始まりが、こんなおばか話でごめんなさい(笑)どぞ、太陽にあたって厄払いしてきて下さいね(おひ.笑)

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