「もうひとつのカウント・ダウン」


オレは・・・焦っていた。
騒々しい店の中。



スレイヤーズオールキャラなんとかで・・・オレ達が無理矢理連れて来られたのは、とある街のとある酒場。

ぶうたれていたリナが、並ぶ御馳走を目の前にして、突然にへっと笑った。
オレに見られていたのに、やっと気がつくと、振り向いてこう言う。
「なによ、ガウリイ。なんか言いたそ〜ね・・・。」
「・・・・。」
「なによ?」
「いや・・・。なんかお前さんが今、頭の中で考えてたこと、手に取るようにわかっちまった気がするんだが・・・・。」

むぎゅうううううっ!

「い、いてっ!いてっ!いてて、リナっ!」
「余計なことを言うお口はこのお口かな〜〜〜っ。」
「よっ!よけ〜なころっっれ!オ、オレはらら、ほんろ〜のころを・・・」
「まだ言うかあ!」

だってなあ。
リナの考えていることくらい、オレには足し算より簡単にわかっちまうんだから。
・・・・いや・・・。
そりゃちょっといくらなんでもマズイかな・・・(汗)


くすくす。
誰かに笑われた。

見れば、どこかで見たカオがずらり。
ええと。

アメリアに、ゼルに、シルフィールに・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

あと・・・。

誰だっけ・・・?

ヒゲづらの兄弟の名前を尋ねたら、おもいっきりリナが脱力した。



まあ・・・そんなこんなで、懐かしいヤツにも、そうでないヤツの挨拶もそこそこ。
オレ達はやっと御馳走にありつけたわけだ。
店の中ではいろいろイベントをやっていたようだが、オレ達の耳にはさっぱり入ってこなかった。


ようやくお腹がくちくなり、酒でも飲もうとテーブルにつくと、ゼルガディスが一人陰気にグラスを傾けている。
ちょっと離れたところで、アメリアがおつまみをもってきょろきょろしているのが見えたので、手招きしてやった。
ゼルの顔を見ると、アメリアの顔がぱっと明るくなる。

女の子って面白いなあ。
・・・・。
リナは・・・?

するとリナも辺りを見回して、こう言った。
「なんか人数、少なくない?」
ゼルがぼそっと答える。
「そりゃあ・・・ほとんど、死んでるからだろ・・・。」
「あ。そっか・・・・。てへへ♪」

・・・・。
てへへ、じゃないだろ・・・・。
考えてみればオレ達、よく性格暗くならずにやってこれたよなあ・・・。

思わず口に出してしまったら、リナに思いきりつま先で踏み付けられた。
「いってえええっ!!」
後にひっくり返ると、リナがおおげさだと言って怒っている。
だって、ホントに痛かったぞ。


受け止めてくれたシルフィールと話していると、ゼロスが傍に来た。
何やらリナと話している。
その反対側では、アメリアが赤くなりながら、ゼルと話をしていた。
「ゼルガディスさん・・・。そう言えば・・・知ってますか?」
「なにをだ。」
「あの・・・・。もうすぐ夜中の12時ですよね・・・。」
「それがどうした。」
「12時を過ぎたら新年ですよね・・・。」
「だから何だ。」
「いえ・・・。何でもないですう・・・。」

???
新年が来たら、何があるってんだ??


と思ったら、リナが席を立った。
目で追いながら、オレも立ち上がろうとすると、シルフィールが引き止めた。
「あの・・・・。ガウリイ様・・・。」
「へ?」
「あの・・・。もうすぐ、新年ですよね・・・。」
は??
「あの・・・・。新年を迎えるまで・・・隣にいてもいいですか・・・?」
はあ??

訳がわからないオレに、いつのまにか背後に来たゼロスが、そっと囁いた。
「ガウリイさん。このパーティーでは、新年を迎える瞬間、隣にいる人なら誰にでもキスしていいことになっているんですよ。
カウントダウン・キスとか言うそうですが。
女性からお誘いの言葉があるなんて、ガウリイさんも、随分おもてになるんですねえ♪」


な・・・・・。
なにい・・・・・・!?



新年を迎える瞬間・・・。
隣にいる人なら・・・・。
誰にでも・・・。

キス、だと・・・・・!?


ぷちいっ!!



リナはどこだ、リナは!!


オレは制止するシルフィールを振りきり、リナを探す。
冗談じゃあない。
カウントダウン・キスだあ!?
どこのどいつか知らないヤツに、リナにキスされてたまるか!
それも訳のわからん習慣とやらのおかげで!
オレだってまだほっぺにちゅ〜もしたことないんだぞおおお!
ふざけるなああああ!!

リナはどこだっ!!



するとリナは、男の集団に囲まれていた。
ちょっと待ったあっ!!

「どこへ行く、リナ=インバース。儂の酒は飲めんと言うのか!」
「ああっ!あんたわっ!・・・・って・・・誰だっけ・・・・。」
「・・・まあ・・・覚えておらんのは無理はないが・・・。しかし、君にとって私は恩人にあたると思うのだが・・・?」
「へ・・・・っ。って・・・・・」

んなでっぱらのおやぢにリナを渡してなるものかっ!!
リナっ!
んなヤツと口をきくなっ!!

・・・。
と、思ったら。
いつぞやの村長だぜ・・・・。
ほっと胸を撫で下ろすオレ。
「いやあ、村長さん。その節は御世話になりましたっ!」
「って、ガウリイっ!?あんた、覚えてんのっ!?」
リナが驚いている。
「何を言ってるんだ、リナ。ほら、お前が賞金かけられて、いきなりオレ達が掴まって、んでお前さんが襲われそ〜になった時だよ。あの時、事情を話してくれて脱走するオレ達をあっさりと見逃してくれた村長さんだぜ?」
リナはまだ疑っている顔だ。

・・・え?
何でオレがそんな昔のことをちゃんと覚えているかって?
いやその・・・・。

村長の連れにも見覚えがあった。
そのうちの一人が、オレにこう尋ねる。
「あ・・・あんた・・・。あの時言ったよな・・・。や、やっぱこの娘っこ・・・。病気持ちなのか・・・・?」

まあ・・・そういうことだ。
あの事件、やっぱオレにとっちゃ印象が強烈だってこと。
詳しくは『サイラーグの妖魔』を読み返してくれ。

とにかく、またぞろリナに興味をもたれちゃ困るので、オレはだめ押しすることにした。
つまり、リナの病気について、事細かく説明してやったのだ。
そのおかげで、リナに頭を小突き回されたのは言うまでもない。

・・・まったく。
リナの身の安全を考えてのことなのに。
オレって報われないよなあ。


ため息をついていると、またリナを見失っちまった。
ヤバい。
リナはどこだ!?
変な男に掴まる前に、確保しなくては!

「ガウリイ様・・・。」
背後からシルフィールの声。
待ってくれ、シルフィール。
オレは今、それどころじゃない・・・・。
そう言おうとした時だ。
別の声が。

「ララァさん・・・・!」

げええええええっ!!

お・・・お前わぁっ!!


別の意味できょ〜れつな印象を残したヤツが一人、ぽっと顔を赤らめて立っている。
「ララァさん・・・。カウントダウンは、是非、この勇者ボランと・・・」
ぎゃあああ!!
「や、やめろおっ!!オレは女じゃないって、あれだけ説明したろ〜がっ!」
「だから女でなくてもいいと、あれだけ説得したではありませんか・・・。」
オレ以上に筋骨たくましい、自称勇者のボランとかいうヤツが、またオレの目の前に現れようとわ!!
港に着いて、さんざんまいてやったとゆ〜のにっ!

「ララァさん・・・・(ぽっ)」
や〜〜〜め〜〜〜ろ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
そのごつい顔で、ぽっとか赤くなるなあああっ!!
オレは、リナを探さなくちゃいけないのにっ!
「離せ、しがみつくなっ!!」
「ララァさん・・・。」
「やめろってのに!!」
ああもう。

「ちょっとそこのあなた。ガウリイ様が嫌がってるじゃありませんか!乱暴はやめて下さいっ!」
「な、なんだお主は。」
「わたくしは巫女です!困っている方を見過ごすわけには参りません!」
シルフィールまで。
ああもう、ほっといてくれよぉ!
「そんなことを言って。お主もガウリイ殿を狙っているのだな!」
「ま・・・まあ・・・。狙っている、だなんて・・・(ぽっ!)
「きいいっ!!そんなに可憐にぽっと頬を染めるのではない!この俺、勇者ボランはこの方を生涯の相手と決めたのだ!邪魔はしないで貰おう!」
「まあっ!そんな勝手なことをっ!」
「やるかっ!」
「ええ、黙っているわけにはいきませんわっ!」

むうう。
にらみ合う二人。
いい加減にしてくれえ!
リナは、リナはどこへ行っちまったんだ!?
まさかもう、変なヤツにとっつかまっちまったんじゃ・・・!

「アニキ・・・・」

ぞぞぞぞぞおおおっ!!
な・・・なんか嫌な予感が・・・。

くるりと振り向いたオレの背後に、やっぱりぽっと頬を赤らめているごつい人物がもう一人。
こいつもある意味、きょ〜れつな印象を残したヤツだが・・・。
「アニキ・・・。俺、アニキに会いたかったですよ・・・・。」
「ランツっ!い、今、オレな、それどころじゃ・・・」
「アニキ・・・。俺、今年はアニキと一緒に、神聖な気持ちで新年を迎えたいと思って・・・。」
「ランツ・・・(だらだらだら)
「俺・・・・俺・・・・今年こそは心を入替えて、アニキみたいにかっこよく生きたいと思って・・・。」

かっこよくない。
オレは全然かっこよくない!
リナ一人守れなくて、こんなヤツらに囲まれているようじゃあ・・・。


リナは、リナはどこへ行っちまったんだ!?
慌てて探すオレの目に、おやぢの集団に囲まれようとしている、リナの小さな姿が見えた。
あああっ!
やべえっ!

走り出そうとしたオレの髪の毛を、誰かがくんっと引っ張る。
「ガウリイ様っ!」
「ララァさんっ!」
「アニキぃっ!」
「シルフィール、ボラン、ランツっ!離せ、頼むっ!」
「ダメです!わたくし達の中から、選んで下さるまで!」
「そうです。新年を、一体誰と迎えるのですかっ!」
「アニキ〜〜〜〜。俺だよね〜〜〜〜?」
「ガウリイ様っ!」
「ララァさんっ!」
「ア〜〜ニ〜〜キ〜〜〜!」


だ〜〜〜か〜〜〜ら〜〜〜〜〜!!!!
オレが新年を一緒に迎えたいのは、お前らじゃなくってえ・・・!
・・・やべ。血管切れそう・・・・。


「10!」
「9!」
「8!」
「7!」
「6!」
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」

「イヤ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」


ぶちいっ!!




オレは並みいるおやぢ達の中から、リナをひっつかんで外へ出た。






「はあ。ここまで来ればいいだろ・・・。」
街の中心にある、噴水広場まで来たオレは、ようやくリナを降ろした。
「まったく、参ったぜ。」

・・ホントに参った。
血管切れそう。
ちょっと目眩がする・・・。
「ちょっとガウリイ・・・。なんであんなに焦って出て来たのよ。首が痛いわよ、あたし。」
いきなり降ろされたリナはちょっと怒っているかも知れない。
「あ、すまんすまん。とにかく早く出ようと思って。」
「だから、何で。」

な・・・・。
なんでって・・・・。
そう来るか・・・・?
お前、あのままだったら、あのおやぢズにキスされまくってるとこだったんだぞ・・・?
なのに、なんでって、・・・それもオレにきくのかよ・・・。

なんか・・・。
やっぱ、オレって報われないかも・・・。
急に力が抜けた。

リナが何か言っている。
「ねえ・・・。習慣って何だか、ガウリイはわかってるの?」
ああもう。
まともに答える気にならん・・・。
「・・・新年に隣に座るのが習慣なんじゃね〜のか??」
オレの答えに、リナが吹き出した。

ちぇ。
笑ってろよ。
はあ。
新年になったってのに、オレ達はやっぱ、ずっとこのまんまかもな・・・。



その時だ。

り〜〜〜〜んご〜〜〜〜ん・・・
り〜〜〜んご〜〜〜〜〜ん・・・・・


街の教会の鐘が鳴った。
「あれ。さっき、カウント・ダウンてのやってたよな・・・。あいつら。」
「う〜〜〜ん。時間・・・間違えてたんじゃないの・・・?」
「・・・・・はは。」
「くすくす。」

新年を迎える瞬間。
新年を迎えるあらたまった気持ちと。
今年もよろしく、という気持ちを込めて、挨拶を送る時。

・・・まあ、いいか。

先のことはわからないけど。
去年と変わらず、こいつが、オレの隣にいるなら。
今年もそう悪くないかも知れない。

ちょっと悪戯心が起きた。
知らない振りをして、リナを困らせてやろうかな。
ちょっとだけだから、いいだろ。
「なあ・・・。リナ。」
「うん?」
「結局、習慣って、何だったんだ?」
「教えてあげてもいいけど。」

あれ??意外にリナのやつ、あっさりと答えそうだな。
真っ赤になって慌てるかと思ったのに。

「・・・いいけど、ってのがひっかかるな。夜食をおごれって言われても、オレ、金なんかね〜ぞ?」
「違うわよ。ちょっと・・・・屈んでくれる。」
「へっ?屈むって・・・こうか?」
「そ。」



うああああああああああっ!!!






























-----------------おわり♪

カウント・ダウン、饅頭がうりんば〜じょんです(爆笑)他にコメントのしようがありません(笑)
あいかわらずのおバカなそらりんより。
皆様に愛を込めて♪
今年が皆様にとって、ちょっとはっぴ〜らっき〜な年になりますように♪

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