「ひゅーまないず」


 
 
「ったくけしからんわねっ!!」
真昼の食堂で、リナはぶちぶちと文句を言っていた。
外はいい天気、懐もそれほど寒くはない、旅は順調この上ない。
では、彼女が文句をつけているのは、何に対してだろうか?
「物を粗末にしてっ。一寸の宝をフイにするヤツは、一寸の宝に泣くのよっ。」
 
どうも訳がわからない。
一人大声を上げて、ぐさぐさとサイコロステーキに端からフォークを突き刺して、むしゃむしゃと食べている様子に、食堂にいる他の客は敬遠がちな視線を送っている。
周囲の気配を察したか、アメリアがおそるおそるなだめ役を買ってでる。
「リ、リナさん。落ち着いて。食事は楽しく、ね?」
「わかってるわよ、アメリア。もが。んぐっ。」
「リナ、ほら、水。」
咽が詰まったリナに、ガウリイが水の入ったコップを押してよこす。
「んぐ。んぐ。んぐ。」
「まるで野生の獣だな・・・・。」
残るゼルガディスが半目開きで呟く。
 
ぴく。
リナのこめかみがひきつった。
アメリアが慌てる。
「リ、リナさん。落ち着いて。た、確かに、物を大事にしないことはよくないことですっ。ねっ?ここでテーブルひっくり返したり、お皿を投げ付けたりしたら、ほら、勿体ないでしょうっ!?」
「・・・・アメリア・・・・。」
リナのほこ先は突然、アメリアにターン。
「あたしがそんな事をすると思う・・・?」
「ひっ。」
正直に小さな悲鳴をあげるアメリア。
 
「こら。い〜加減にしろ、リナ。」
恐ろしげもなく野獣の頭(失礼・訂正)リナの頭をこつんと叩く者があった。
「気持ちはわかるが、ゼルやアメリアにまで当たるんじゃない。」
「わ、わかってるわよ。」
ガウリイに諭され、リナは決まり悪げにそっぽをむいた。
「ちょっと、頭にきてるだけじゃない。」
「よしよし。」
「だからってっ!!そんな慰め方しないでよっっっ。」
子供のように頭をナデナデされて、リナは赤くなりながら怒っていた。
「物を大事にしないヤツって、あったまくんのよねっ。
片端からぱかぱかぱかぱか捨てちゃってっ。あのアミュレット一つだって、結構手間がかかってるっていうのにっ。」
 
 
事の始まりはこうだった。
リナ達が訪れたのは、比較的、豊かな街。
どこもかしこも整備されて綺麗だったが、たまたま通り過ぎたゴミ収拾の馬車の荷を、リナが見てしまったのである。
 
「ああ。勿体ない・・・。」
呟いて頭を抱えるリナ。
横目でアメリアが呟く。
「だからって、今晩ゴミ漁りに行こうなんて、言い出さないで下さいね。」
「いや・・・いくらあたしでも、そこまでは言わないけどさ・・・・。」
ぶちぶちとまだ不満げなリナ。
捨てられたゴミの中に、よくリナが作る魔法陣を込めたアミュレットなんぞも混ざっていたからだ。
「では、いいものをお貸ししましょうか。」
リナのテーブルの脇で、黒いマントの人物が杖を持ってにこやかに立っていた。
 
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
四人の視線が一斉に集まる。
 
リナがすっとんきょうな声を出した。
「ゼロス・・・・?」
「は〜〜い、皆さん。おひさしぶりです♪」
真昼の食堂、明るく爽やかに笑顔を振りまくのは、実はおそよ一番この時間帯に似つかわしくない存在だった。
リナは遠慮なく、突然現れた魔族をびしっと指差す。
「あんた、一体いつからそこにいたっ!」
「ついさっきです。」
「どこから湧いて出た、どこからっ!」
「人を温泉みたいに言わないで下さい。」
「人じゃないでしょ、人じゃっ!!」
「リナさん、し〜〜〜〜っっ!!」
四人は一斉にキョロキョロ。
 
「こんなところに魔族がいるってわかったら、食堂中からお客さんがいなくなっちゃうじゃありませんか。」アメリア、ひそひそ。
「え?どうしてだ?」ガウリイ、ひそひそ。
「魔族と言えば、生きとし生けるものの天敵、世界を破滅に招くことしか頭にない闇の一族、それこそ世界から捨ててしまいたい生ゴミですっ!」
「あの・・・・。」
「生ゴミと一緒に楽しく食事がしたいと思いますか、ゼルガディスさんっ!」
「何故そこで俺に振る・・・・。」
「でも、生ゴミにも一応、存在する権利があります。悪の道を省みて、共に清く明るく進む気があるならっ!話くらいは聞いてあげます。」
「あ・・・ありがとうございます・・・・・。」
 
やや疲れた表情で、ゼロスは懐から何やらを取り出した。
「物を大事にしない、とリナさんは怒ってましたよね。
人間だったら、これが役に立つのではないかと思うのですが。」
小さな皮の袋だった。中身は親指の先ほども入るまい。
「・・・なによ、これ?」
リナが袋をつまみあげる。
「中に魔法の粉が入っていると思って下さい。原理はもっと複雑ですが、単純な説明の方がいいでしょう。」
「おお!ありがとな、ゼロス。」
ガウリイがにこやかにゼロスの背中をばんばんと叩いた。
「いっや〜〜〜〜、リナとかゼルとか、何でもやたらと難しく難し〜〜く説明したがるんだぜえ?それなのに最初から単純に説明してくれるなんて、お前、意外といい奴だったんだなあ。」
ばんばん。
「・・・はあ。お、お誉めにあずかり・・・hっ、ごほごほ。」
 
 
「‥‥‥‥で、単純に説明して。」
リナがぎろりとガウリイをにらみながら言った。
「ど〜ゆ〜効果があるわけなの?」
「そう、単純にご説明しますと。」
まだごほごほと咳こみながら、ゼロスがちょっと涙目になって言った。
「物体に振りかけると、人間のように感情を表します。つまり、喋るんです。」
「しゃ・・・・喋る!?」
「たとえばこの曲がったフォークなんかが、『捨てないで、あたしはもっと使えるわ』などと喋ると言うのか。」
「その通りです。いっやあゼルガディスさん、女性の声音がとてもお上手ですねぇ。」
「・・・・・!」
衝撃を受けたように青い顔をさらに青ざめさせたゼルガディスは、テーブルの端に向かって何やらぶつぶつと言い出した。
 
「ま、ものは試しです。ほら、こんな風に使ってみて下さい♪」
ゼロスが袋の口を開け、中から銀色の粉をひとつまみ取り出し、リナのショルダーガードにはまっている紅玉にかけた。
「おおっ!?」
大げさに驚くのはガウリイである。
玉に、黒い点がにょこっと二つ浮かび上がってきた。
それからもう一つ、中が空洞な小さな三角のマークが。
「・・・・!?こ、こりはっ。」
よく見ようと、リナが懸命に身体をひねる。
 
紅玉には、子供の落書きのような目と口ができていた。
三角マークがぱくぱくと動く。
『あたしはキケンな女なの。秘密だけど、ホントは爆弾なのよっ!
あたしに触ると、怪我するわよ〜〜〜っっ♪』
 
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
 
今度は四人の口が、大きくぱかっと開いた。
閉じる気配はない。
ゼロスは満足げに頷くと、ふいと姿を消した。
 
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
 
四人は紅玉を見つめたまま、なかなか二の句が告げなかった。
リナに似たかん高い声で、紅玉は喋りつづける。
『こないだなんか、あたしを無理矢理奪っていった訳のわからない女がいたけど〜。もっちろん吹き飛ばしてやったわ♪なぁんかそこに、もう一人いたよ〜な気もするけど?ま、ちっちゃいことは気にしてちゃダメよね〜♪』
「・・・・・・・・・。」
 
これを聞いたアメリアとゼルガディスがなんとなしに視線を交わす。
「それって・・・・マルチナさんと、ガウリイさんのことですよね・・・。」
「え?オレ?何のことだ?」きょとんとしているガウリイ。
アメリアとゼルの目が、ちろりとリナの顔を見る。
「・・・・持ち主そっくりな性格・・・。」
リナはというと、小刻みにぷるぷると震えていた。
 
ガウリイはぽりぽりと頬をかきながら、リナの防具を見つめた。
「しかし、リナの身体にはあちこちいろんなものがくっついてるけど。
これが皆喋ったら、ちょっと怖い気もするなあ。」
「こ・・・・・・怖いですよね・・・・・。」
「ああ、おそろしすぎる・・・・。」
アメリアとゼルは同調してこくこくと頷いている。
「ホントは全部に仕掛けがしてあったりして。イヤリングは無理矢理取ろうとすると電撃が走るとか。」
「バンダナは夜中に首を絞めるとか。」
「マントは小さなコウモリに姿を変えて飛び回るとか。」
「ブーツはひとりでに蹴りを入れるとか。」
「まあ・・・リナさんの持ち物ですから・・・。何があっても不思議じゃないっていうか・・・。」
「全くだ・・・。」
 
・・・・ちっ。
 
「い・・・いま、ぷちって音がしませんでしたか?」
「し・・・した・・・・。」
「何だか、どこかでヒジョ〜〜〜によく耳にするような・・・・。」
三人がおそるおそる背後を振り返ると、下を向いて肩を震わせている人間がひとぉ〜り。
「あ・・・あんたたち・・・・・・。
あたしのこと、そんな風に思ってたのねええ・・・・・。」
「ひっ」青ざめるアメリア。
「ああ・・」ひきつるゼルガディス。
「あああ」半ば諦めたように笑みを浮かべるガウリイ。
 

リナはおもむろに袋を逆さにひっくり返すと、三人に向けてパタパタと振った。
ふわっ、きらきらきらっ!
魔法の粉が飛び散る。
「うどわぁっ!?な、何をするっ!!」
「リナさんってば!そんなにいっぺんにまいたらっ!!」
「ごほごほげほがふっ!」
リナの耳には三人の悲鳴は届いていない。
きらきらきら。
きらきらきら。
光輝きながらまい落ちる粉にうっとりと視線を送る。
「ふふふ・・・綺麗ね・・・・」
「あああ。ダメだ、リナが壊れてる・・・。」
頭を抱えたガウリイの周囲で、予想を裏切らない結果が起こった。

一斉に小さな鳥のさえずりに似た声があがったのである。
 
『悪は微塵も許さないわっ!この世の正義は私とともにあるのよっ!』
アメリアの腕に光る水晶がぴかぴかと輝いていた。
ゼルの腰からぼそぼそと声がする。
『俺の存在意義は何だ、大体俺はクールで残酷な魔剣士と呼ばれた男の剣じゃなかったのか』
『この私の輝きこそ、正義の証!』
『俺なんか意味ありげにマントを止めているのに、一度もアイテムとして使われたことがない・・・』
声は二人の身体のあらゆる場所から聞こえていた。
それぞれ、アミュレットや洋服、武器やマントやブーツまでもが喋っている。
「おわあ・・・・・。」
ガウリイが驚いた顔で辺りを見回す。
アメリアとゼルガディスに集中的にかかったらしく、二人の持ち物が喋りまくっているのだ。
 
『私はいつでも悪を見逃さないわっ!正義の道を歩むのは私の役目よっ!』
『主人は今じゃリナの便利なアイテムと化している。ということはつまり、俺自身もリナの便利なアイテムなのか。大体、俺が両刃だということを忘れているくらいの主人だ、この先自分が果して魔剣と呼ばれることはあるのだろうか』
『ふわふわしてるだけじゃなくってよ!この私とて、悪を成敗する炎を身の内に秘めているのだからっ!!』
『俺って、俺って、俺って・・・・』

ぴーちくぴーちく。
ぱーちくぱーちく。
 
当然、その声は食堂中の人間にも聞こえていた。
「魔法だ・・・」
「悪魔の仕業だ・・・」
「の、呪われる〜〜〜〜!」
口々に不吉な言葉を吐いて、彼等は逃げ出した。
後には呆然としているアメリアとゼルガディス、地団駄を踏んでぶちぶち言っているリナ、きょろきょろしているガウリイだけだった。
 
 
「ふぇ〜〜〜〜ん。どうしましょう・・・」
自分の体のあちこちから、小さな声がもじょもじょ呟くのは何とも居心地が悪い。
「・・・おいリナ、この責任は取ってくれるんだろうな。」
ゼルガディスもかなり機嫌が悪そうだ。
リナはというと、盛大にべ〜〜っと舌を出してふんぞり返る。
「何よっ。元はといえば、あたしの悪口を言ったあんた達が悪いんですからねっ。」
「だからってこれはないだろう、これは。」
「とーぜんの報いよっ!」
「お、おいおい。」見かねたガウリイが割って入った。
「リナ、実際これはどうにかしないと困るぞ。」
「ガウリイっ、あんたもどーざいだからねっ!」
「そうじゃなくて。このままず〜〜っと喋りつづけるのか、これ。」
 
『・・・・・。』
 
全員が口をつぐんでも、アイテム達の囁きは止まらない。
この状態で街道を歩いたら、不気味なことこの上ないだろう。
「第一、この街で宿を取るはずだったろ。
・・・・泊めてくれるところがあるか・・・・?」
ひきっっ。
さすがにリナも凍り付く。
だが、その後ろにのっぺりと立つ影は、さらにその十倍はひきつった顔をしていた。
「お客さん。こんなところで怪しげな魔法なんぞ使ってもらっちゃあ困るがね。
営業妨害だ、とっとと出てってけれ。」
「しゅ・・・・・しゅみましぇん・・・。」
 
 
 
 
 
 
 
 
街の外に向かってとぼとぼと歩く集団。
食堂からここまでの道すがら。
周囲の驚きとどよめきに見送られ。
果ては指差して笑われるに至って、四人はすっかり疲れ果てていた。
 
さらにその間、アメリアとゼルガディスの防具や服が、それこそのべつまくなしに喋り続けるのだからたまらない。
『大体、馴れ合うのはいやだとか言いながら、いつのまにかリナのペースに巻きこまれてるじゃないか。俺の固い意思など、不要と言うわけだな。』
ゼルガディスのマント止めがぶつぶつ。
『不条理な非難に甘んじて、背を向けてすごすごと逃げ出すなど、私の正義の心が許さないわっ!私を使って、逃げるように歩かないでちょうだいっ!』
アメリアのブーツもぶつぶつ。
 
「え〜〜〜〜い、うるさ〜〜〜〜いっっ!!」
リナがアメリアにとびつくと、いきなりブーツを脱がそうとした。
「こんなもんが喋らなきゃ、あったかいおふとんとあったかいお風呂でゆっくり休めるはずだったのに〜〜〜〜!脱げ、脱ぐのよ、アメリアっ!」
「いや〜〜〜〜〜っ!やめて下さい、リナさんっ!
何するんですかっ!」
「ふっふっふ、よいではないかよいではないか。」
「きゃ〜〜〜〜〜〜!!」
どったんばったん。
 
「いい加減にしろ、リナ。
元はと言えば、お前が悪いんだろうが。」
腰に手をあてて諭すゼルガディスに、リナはくるっと振り向いた。
「うるさいわね、ゼル!
あんたに飛びついてもいいのよ・・・・?
「hっ。」
思わず固まってしまったゼル。
そのマントが呟く。
『あんな小娘に反論もできないとは・・・。俺の存在意義ってやっぱり・・・・』
 
 
 
 
騒ぎを空の上から楽しそうに眺めているのは、くだんのゼロスだった。
雲の上にふんわり座っているように見える。めるへんだ。
「いやあ・・・。思ったのとは違った結果になりましたが、これはこれで
楽しいですねえ♪」
 
・・・あの〜〜〜。
ところでゼロスさん、今回のアイテムを配ったわけはなんですか。

 
「ああ。そんなことですか。
わかってらっしゃると思ってましたけど。」
 
つまり・・・・?
 
「つまり。ただくっついて監視してるのも暇ですしねえ。」
 
はあ。
 
「いやあ、楽しいですね人間って。」
 
・・・・はあ。
 
「つい滅ぼしたくなっちゃいますねえ、これじゃ。
フィブリゾ様のお気持ちも、何となくわかる気がします♪」
 
・・・は・・・はあ・・・・そ、そんなもんですかね・・・・(汗)
 
「ま、どーせ例によって例のごとく、利き目は一晩だけですし。
しばしの暇つぶしですし♪
旅は道連れ世は情け、梅は咲いたか桜はまだかってことですよ♪」
 
・・・ぜ・・・全然わけわかんないコメントを、どうもありがとうございました・・・・。
 
 
 
 





さて遥か眼下では、まだリナがアメリアと取っ組み合っていた。
そのリナの身体が、いきなりひょいっと持ち上がる。
「あ!?」
「ガウリイさん・・・助かりました・・・。」
アメリアが露骨にほっとした顔になった。
「ちょっと、何すんのよ、降ろせ〜〜〜〜っ!!」
ぢたばたと暴れるリナを何なく小脇に抱え、ガウリイはすたすたと歩き出す。
途中でくるりと振り返った。
「お〜〜い、アメリア、ゼル。
野宿すんなら、早いとこ場所見つけないと暗くなっちまうぞ。」
「お、おう。」
「は〜〜〜い。」
その後ろからアメリアが小走りに、ゼルガディスもゆっくりと歩き出した。
 
 
「ちょっと!降ろしなさいよ、ガウリイってばっ!」
ぢたばたぢたばた。
荷物が暴れまくっていても、ガウリイは一向に気にしない。
「ははは。こ〜してると、リナがオレの持ち物みたいだなあ。
アメリアやゼルみたいに、喋ってるや。」
「何バカなこと言ってんのよ〜〜〜っっっ!
降ろせってば降〜ろ〜せ〜〜〜〜っっ!」
「ダメだ、放せばまた人間を襲うだろうが。」
「野獣扱いすな〜〜〜〜っっ!」
「はっはっは。しかし、魔法の粉ってすごいなあ♪」
「ちっが〜〜〜〜〜うっ!」
 
 
からからと笑うガウリイの背後から、アメリアとゼルガディスがこそこそと喋りながら続いた。
「それにしてもガウリイさん、全然平気ですね。
あんなにリナさんに暴れられても。」
「・・ああ。俺達とは年季が違うからな、ヤツは。」
「どうします、あのままリナさんがずっと暴れていたら。」
「それも恐いが、ま、今のところこっちに被害はなさそうだしいいだろう。」
「そういう問題ですか。」
「この場合はそういう問題だ。下手に関わると、こっちの身が持たん。」
「ぜ、ゼルガディスさんてば。」
「ま、疲れるか腹がへれば大人しくなるだろう。」
「・・・・あれ??」
「どうした。」
立ち止まったアメリアを、ゼルガディスはいぶかしげに振り返った。
「あれ・・・・。大人しくなりましたよ。」
指差している方向には、じたばたがすっかりおさまって、ぶらんと荷物のようにガウリイの腕からぶら下がっているリナの姿があった。
「こんなに早くか?何かの間違いだろう。嵐の前の静けさとか。」
「さあ。何にせよ、静かになったのはいいことですが・・・・。」
 
アメリアとゼルガディスは、知らなかったのである。
魔法の粉が、一部ガウリイにもかかっていたことを。
そして、持ち物は持ち主に似るのだと。
今頃やっと利き目が効いてきて、喋り出したということを。
 
もちろんその内容は、推して測るべきで。
アメリアとゼルガディスと、大して差はなかった。
 
『いっや〜〜〜、参るよなあ、リナのやつ。』
『そうそう、もうちょっと女の子らしいとオレも楽なんだがなあ。』
『でもあのリナが女の子らしい姿なんて、想像がつかないよなあ。』
『まったくだ〜』
のほほんと和やかに会話を交わす防具や洋服たち。
たら〜〜〜〜っ。
ガウリイの額にジト汗が浮かび、リナのこめかみには青筋が立つ。
ぴきぴきっ。
「輝き燃える・・・赤き焔よ・・・・」
ぶつぶつとどこからか声が聞こえたが、それは魔法の粉の効果ではないことはガウリイにも重々わかっていた。
「は、ははは。」
力ない笑い声が、本人の口からもれる。
 
だがその後だ。
何故かリナは呪文を発動しなかった。
アメリアとゼルガディスが不審そうに見守る中。
何故かぐったりと大人しくなってしまった。
 
その答えは、リナだけに聞こえた、ガウリイのとある持ち物の声にあった。
リナが抱えられている腰の辺りから、リナだけに聞こえたのだ。
 
『う〜〜ん、確かにめちゃくちゃで、短気で、意地っ張りなヤツだけど。
・・・だけど、リナはオレが守ってやらなくちゃな。』
 
っっ!

しゅううううう・・・・・・・

 

「お、お〜い、リナ?どした?急に大人しくなって。」
「・・・・・・」
「変なヤツだなあ、ま、大人しくなったんなら、このまま野営地でも探すとするか♪」
「・・・・・・」
固まった動かないリナを抱え、ガウリイは陽気に後ろを振り返って手を振った。
「お〜〜〜〜い、ゼルガディス、アメリア。
そんなに離れてないで、もっと先を急ごうぜ〜〜!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
==================ちゃんちゃん(笑)
 
ひさびさにゼロスのアイテムネタです(笑)
以前にどなたかが掲示板に書いて下さったとき、こんなネタを考えておりました。持ち物が一斉に喋りだして、ガウリイの持ち物だけが『リナを守ってやらなきゃな』って呟いてリナが真っ赤になるという展開です(笑)
果たして何がそういう風に喋るのか、ちと頭をひねってしまいました(笑)防具でも何でもよかったのですが、何となく手袋もいいかなあとか。<いつもリナの頭撫でてるから(笑)
結局はっきりと書かなかったのは、もし光の剣だったらダークスターみたいなことを喋るのかなと青ざめてしまったからです(爆笑)それじゃ全然別の話になっちゃいそうだし(笑)<ギャグなのに一気にドしりあす
 
そういえば、そーらは赤石路代さんのマンガ好きなのですが、『フェアレディは涙を流す』って短編を思い出しました。そこに出てくるのは神主の娘さんなんですが、物の声が聞こえるという設定でした。初めて会った男性の持ち物がみんな穏やかな声で喋っているので、きっといい人なんだろうなあと思うあたり、ガウリイを連想しますね(笑)
 
では、ここまで読んで下さったお客様に愛をこめて♪
一番しゃべられたら困る持ち物は何ですか?(笑)
そーらがお送りしました♪
 
 


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