『情け容赦ない陰謀』

 



 
 
わちしの名はケトルバーン。
偉大なる海王ダルフィン様にお仕えする、しがない魔族である。
いにゃ。
魔族の辞書に『しがない』などという言葉はない。
それは自分の存在意義を疑う言葉であり、すなわち精神体の自分に攻撃をしかけるに等しいのである。
あいたたた。
…………………………………訂正。
わちしの名はケトルバーン。
偉大なる海王ダルフィン様にお仕えする、しがない偉大な魔族である。
うむ。ここちよい。
 





    ++++++++++++++++++++++++++++++




 
「つまりね、ガウリイ。
この街の古い坑道で、出たもんを退治してくれと、こーゆー訳なのよ。
………ちょっと。聞いてる?」
「あ?……あ……あ〜あ〜あ〜、聞いてる聞いてる。」
「気安くうなずかないでよね………。
聞いてるだけで頭には入ってない、なんて言う気だったら怒るわよ。」
えええっ!
リ……リナっ……お前っ………」
「………な、なによ?」
「いつのまに、オレの頭の中が読めるようになったんだ………?
ズルいぞ、そんな新しい芸を身につけておいて、オレに言わないなんて……
あ、じゃあ、もう一つ、今オレが考えることってわかるか?」
「……………あたしのお皿に残ってるロマール海老のフライを、ひとつ食べたい……」
うおおおおおっ!!すっ!すごいじゃないか、リナ!!
明日っからお前、新しい仕事が始められるぞっ!
こう、街頭に立ってだな、『ずばり、あなたの心を当ててみせます』ってだな。」
「お年寄りをだまくらかすインチキ霊能師か、あたしわっ!!
大体、通りすがりの他人の心の中まで、知ってどーするよっ!!
あたしはね、あんたの考えそーなことだったら、わかるって言ってんのよ。」
「……へええ…………オレだけなんだ……?」
「そっ………そーいう言い方されると、何か………。
だ、だからっ、だてに二年半も一緒にいないってこと!
あんただって、あたしの今の胸の裡が大体わかるんじゃないの?
ほれほれ。目を見なさい。あたしの燃えさかってるおめめを!」
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ち……ちょっと………、ちかづきすぎ………」
「ん〜〜?近くで見ないと、よくわからん。
こら、まっすぐこっち向け。」
うひゃっ!なっ…何すんのよっ!」
「そっぽ向かないように固定しただけだ。
ええとだな……………………」
「だから近すぎだって!
あ〜〜〜もぉ…………ええ加減にせいっ!!!
がいんっ!
「ぐはっ!」

 
 
わちしがこっそり見張っているターゲットは、人間の男女である。
人間の大きさの基準はよくわからんのだが、片方は長くて、片方は短い。
両方とも髪と呼ばれる毛が生えていて、どちらも長いが色が違う。
どう見ても男の方が大きいのだが、小さな女に襲われ、床に這いつくばっている。
 
……それも無理はあるまい。
わちしの狙うターゲットとは、女の方である。
魔族に名の知れた人間の魔道士、リナ=インバース。
覇王が姿を見せなくなった原因とも、北に眠る御方様の一部を倒しただの、事実とも思えぬ騒動を起こしている輩である。
 
この人間を恐怖におののかせ、負の感情を採集してくること。

それがわちしの任務である。






 
「じゃ、腹ごしらえもしたことだし、そろそろ依頼人を迎えに行きますか♪」
「………人に強烈な頭突きくらわしておいて、何ごともなかったように爽やかだな、お前………」
「ふ、人間、過去にこだわっていては大きく成長しないわっ!
前を向いて、前進あるのみっ!」
「犯罪者みたいな言い訳はさておきだな。で、依頼人って?」
「問題の坑道の持ち主で、街の外れにある大きなお屋敷の主人らしいんだけどね。
ゴースト退治はこの目で見ないと信用できないってゆーんで、わざわざ現場まで一緒に行くんだって。」
「危なくないのか?」
「まあゴースト程度なら、命の危険があるわけじゃなし。
白魔法の護法陣を用意したし、結界はって中に入れておけばだいじょーぶでしょ。
それに、手に入れた魔法剣がホントに役に立つか、試すいい機会じゃない。」
「あ、そーか。なるほど。」
「んじゃ、依頼料………じゃなくて依頼人を迎えにしゅっぱ〜つ♪」
「……今ならオレ、お前の考えは手に取るようにわかるぞ…………」
 
 


標的の二人が動き出した。
わちしも移動せねば。

無論、これをおぜん立てしたのは他ならぬわちしだ。
わちしの得意、人間を操る暗示の魔力を使ったのだ。
適当な人間に術をかけ、リナ=インバースを坑道へと誘い出すように指示してある。
人目につかぬ場所なら、必要最小限の被害で済むわけだ。
さすがは偉大なるケトルバーン様である。
我ら魔族にとって、人間など取るに足りない小さき存在。
それを今、わからしめるのだ。

「おや。あんた!こんなところにこんなものを置いて!
探してたんだよ、まったく!」

………………おや?体が浮く……?

「っか〜〜っ、あの二人組ときたら、一体いつまで食べ続けるつもりなんだろーねっ?
こっちは儲かっていいけどさ、忙しいったらありゃしない。」

なっ……何かがわちしの中に流れ込んで………冷たいのだが………

「あんた!急いでおくれよっ!こっちで湯を湧かしておくから、これを使うんだよ!」

あぢっ!あぢぢぢぢっ!
な、何が…………
火っ!?火がっ!?
うあぢぢぢぢぢぢぢぢっ!

「ぎゃああああっ!あんたっ!あんたっ!
来ておくれ、ヤっ……ヤカンが動いたぁっ!」
 
 
 
 

     +++++++++++++++++++++++++++++





 
「へ〜〜。………ここがそうなのか。
さすがに暗くて、うすら寒いところだなあ。」
「ええ、ゴーストが出るおかげで、坑夫がみんな逃げてしまって。
この先に銀の鉱脈があるのは確かなんですが、このままではどうにもなりませんで。」
「わかりました。
とりあえず、どの辺でゴーストがでたのか、大体の地図を書いてもらえますか。」
「無論です。中で枝分かれしてますから、地図がないと迷うかも知れません。
どうぞ、よければその樽の上に腰かけて下さい。
お連れ様も。
地図を書きながら、詳しくお話しいたしましょう。」


げほげほ。
じょぼじょぼ。

‥‥‥‥‥‥‥うう、あの人間め。
人の中に勝手に水を入れ、火にかけるとは。
ターゲットに集中するあまり、自分の体にまで気が回らなかった。失敗。
うむ、台所に潜むにはちょうどいい姿だと思ったのだが。
日常には危険が潜んでいるものであるな。
さて、わちしの立てた計画は…………。
 
 
 
「ある日のことでございました…………。
仕事を終えた坑夫の一人が、坑道の奥に忘れ物をしたのに気づいたのでございます……。
仲間を先に行かせて、カンテラを下げて来た道を彼は戻ったのです。
外はすでに日が暮れておりましたが、坑道の中は昼でも夜でも真っ暗闇。
しかし慣れた道でしたから、坑夫は何のためらいもなく、足を踏み入れたのでございます………」
「……………どうしたんだ、リナ。そわそわして。」
、べ、別にっ。何でもないわ、よ。」
「そうか?」
「これ、この道でございます………。最初は一本道でしてな………。
暗闇をカンテラの光が照らし出しましたが、歩きながらのせいで、光は不規則に揺れ、まるで坑道全体が揺れているように見えたそうで………。
こう、ゆら、ゆら、と…………。
通い慣れたはずの道が、まるで知らない、初めて訪れる地下の迷宮のような気がしたことでございましょう……。
そう………そしてこの辺りで、坑夫はふと、誰かに呼ばれている気がしたそうでございます……。

『おおい………』

てっきり仲間が戻ってきて、後ろから呼んでいるのかと思ってですな……。
振り向きましたが、そこには暗闇があるばかりでございました………。
坑夫はなんとなく薄気味悪い感じを覚えましたが、耳を澄ませても声はそれきり聞こえてこず、気のせいだと思ってふたたび歩き始めたそうでございます………。」

「……リナ?何だかお前、顔色悪いぞ。」
えっ!?き、気のせいだってば!ほら、周りが暗くなってきたからでしょっ!?
ええと、そろそろ急ぎたいので、地図を早く書いてもらえますか?」
「……何だか慌ててないか、お前………」
「はい………これ、ここまで坑夫が辿ってまいりました………。
するとそこでまた、声が聞こえたのでございます………!
これ、この場所で!
「うひっ!」
「………何だ、今の変な声…………」
「またかと後ろを振り向いた坑夫は、そこで青ざめました……。
振り向いたばかりの、頭の後ろから声は聞こえてきたのでございます!

『おおい……』

何ということでしょう、声は坑道の奥からしたのです………!
勿論、仲間はすでに全員引き上げており、奥には誰もいるはずはないのです!!
「ひくっ…………」
「お、おい、リナ………?」
 
 


くくくくくく。
我が作戦は完璧である。

リナ=インバースの弱点、それは人間の言うところの怪談である。
魔族のわちしにとっては何が怖いのか全くわからんのだが、人間は通常の常識では考えられない事態を怖がる性質があるのだ。
リナ=インバースはわれら魔族を相手取り、ゴースト程度ならいとも簡単に退治するというが、何故か怪談には弱いらしい。
くくくくく。
さあ、主人よ。
もっと話を盛り上げて、リナ=インバースを恐怖の淵にたたき込むのだ。

 
『おおい………』
『おおい………………』
声はだんだんはっきりと聞こえてまいります。
坑夫は走って逃げようとしましたが、足がもつれて転んでしまい………
がしゃんんっっ!!
………と、そのはずみでカンテラを割ってしまいました。
辺りはあやめも分かたぬ真の暗闇。
もがいて立ち上がった時には、果たしてどちらの方向が出口か、わからなくなってしまいました…………。
声は途端にやんで、静けさだけが辺りに漂っています………。

    ぴちょん………


どこかから、地下水が滴る音だけが響いています……。
膝は擦りむけて血が流れ、打ちつけた腕がじんじんと痛みだしました……。
仕方なく坑夫は、自分の勘を頼りに歩き出したのでございます………。
そう…………。
紛れもなく、坑道の奥に向かって……!
あのっ!ち、地図はまだですかっ?
大体、ざっとでいいですからっ!お話はまた、帰ってきてからでも……!」
「………何を慌ててるんだ、リナ?
どこでゴーストが出るのか、確かめるんじゃなかったのか?」
いいのよ!
てきとーに入ればてきとーにどっかで出てくるでしょっ!
そしたらあんたがばさーーーっって斬れば一件落着よっ!
ねっ!ですから地図を!」

 
くくくくく!
効いているようだ!
今やリナ=インバースの顔は、真っ青である。
小刻みに震え、顔に張りついた笑顔はひきつっている。
あと一息だ。
 

「お待ち下さい………ここで道は枝分かれしております……。
坑夫が転んだのはここ…………。
彼が出口と信じて進んだのは、坑道の奥へ奥へと進むこの道でございます………。
いくら進んでも出口は見えませぬ…………。
出口ではないのですからね…………。
彼は怖さを隠すために、独り言を呟きながら進んだそうで………。
  『わしらは坑夫、生まれつきの坑夫、
  幽霊なんぞ怖くはないが♪家で待ってるかぁちゃん怖い‥‥‥♪』
彼は震える声で、歌うように言いました……。
  『毎朝毎朝、作ってくれる、弁当忘れりゃなんとなる………。
  水筒忘れりゃなんとしよう………♪』

そう、彼が忘れたのは、弁当箱と水筒だったのです……。
明りがなければ仕方がない、訳を話して許してもらおう、彼はそう考えていました………。
しかし、道は行けども行けども続くばかり………。
………そこでようやく、彼は冷たい汗とともに悟りました。
自分は出口ではなく、坑道の奥へと歩いていたのだと。
………暗闇の中は慣れているはずなのに。
息が苦しくなっていました。
涼しいはずの穴にいるのに、全身から汗が吹きだしてきます。
しまった、間違えた、急いで元に戻ろう………。
踵を返した時でございます!」

「うひゃぁっ!!」
「な、なんだ!?今の悲鳴はっ!?
え、リ、リナかっ!?お前………まさか…………」
もももももぉいいですからっ!!その辺でっ!!
ほ、ほら、早く行くわよ、ガウリイっ!」
「まさか…………今の話が………怖いのか、リナ………?」
「その時、坑夫の耳にあの声が!
「うっきゃあああああっっっ!!!」
「おいっ……こら、しがみつくなって……え?」
「いやーーーーっっ!!!その先は言わないでーーーっ!!!」
「すぐ後ろから、囁くような声で
『おおい』と!!」
やーーーーーっっ!!聞かない聞かないっ!!
あたしは聞かないわよっ!!!」
「お、おい、リナ………」
「いやったらいやーーーーっっ!!!
「坑夫が振り向くと、冷たい風がひゅうひゅうと吹いていました。
坑道の中に風が!
全身にかいた汗が冷たく冷えていき、彼はぞくぞくと身を震わせました。
一刻も早く、ここから逃げ出さねば!
そう思った彼の首筋に、氷のように冷たいものが…………!」
「ひぎょえええええっっっ!!!」
「いてっ!ぐりぐりするなって、痛いぞ。
あの、すいません、どうも怖がってるみたいなので………」

 
行くのだ、人間よ!
リナ=インバースから、最高の負の感情をいただくために!
これで偉大なるケトルバーン様の名は、魔族の間でも燦然と輝くことであろう。
さあ、今一歩!
 

なんとそこには!!!
青白く浮かび上がる、白い布と!!
丸くて細長い、銀色に光るものが!!
深淵の闇から冷たく坑夫を見おろして、揺らめいていたのです!!」

「ふんにゃあぁああああっっっ!!!!」

「なんだ、やっぱりゴーストじゃないか。
な、リナ。怖くないだろ?………………ん?
おい、オレの胸で何をぶつぶつ言ってるんだ?
こら、くすぐったいって………」
「坑夫はその場で硬直しました!
彼を呼んでいたのは、
人ならざる影だったのです!

恐怖に目を見開き震えることもできずにただ立ちすくむ彼に、声が聞こえました!!
手で自らの体を差しているようです!!
果たして、亡くなった坑夫の幽霊かっ!?
無念と絶望の渦に坑夫を巻き込もうと、現れたのかっ!?

『おおい………忘れ物だぞ………』

その時、坑夫は白くなっていく意識の中で気づきました。
白い布と…………銀色の細長い……円筒………?
そう!!それは!!!!
なんと坑夫が忘れた弁当箱と水筒でございました!
こんな寂しいところへ置いていかれてたまるかと、弁当と水筒が化けて出たのです!!」
「………はあ!?!?」
「弁当と水筒が言いました!
『俺たち忘れると、かぁちゃんに殺されっぞ………』
あああっ……なんという優しさでしょう!
弁当と水筒は、毎日使ってくれる坑夫をかばおうとしたのです!
命なきものにすら、こんな感情が芽生えようとは!
坑夫はむせび泣きました!」

「よく聞いてみると、なんだかいい話のような気もするが………。
それで何で退治を?」
「それ以来、弁当を食べている坑夫の傍に、必ず弁当と水筒の幽霊が現れるようになりましてな。
彼等が弁当と水筒を忘れないように、傍でじ〜〜〜〜〜と見張っているそうで。
忘れようものなら追いかけてくるし、さすがに坑夫もうっとうしくなったようで………」
「………なんだ…………怖いからじゃなくて、うっとうしいのか………。
お、地図もできたようだし、もう大丈夫だぞ、リナ。
…………リナ?おい?お………」

『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
 ぼひゅっ!
 
なにいっ!?攻撃呪文だとぉ!?
リナ=インバースは恐怖に震え、何もできないのではなかったのか!?
 
『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
 ぼひゅっ!
 ぼひゅっ!
 ぼひゅっ!
「うわ、待て、こらっ!
そんなにぶっぱなしたら危ないだろーがっ!」
「うひいいっ!な、何をするんですう!」
『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
『烈閃槍(エルメキア・ランス)!!』
 ひょぼぼぼぼぉっ!!!
 
なにっ!?この光はぁっ!?
いっ…………いてててててててててぇっっ!!!!!
くうっ!精神攻撃かぁ!!!
 
「ひくっ……えぐっ……!!
『烈閃砲(エルメキア・フレイム)〜〜〜〜!!』」
 ひゅがっっっっ!!!
ぼひゅんっ!!!
 

いででででででぇええええええええ!!!!
命中したではないか!!なんとゆーむちゃくちゃな女だ!!!
くう、痛みで気が遠くなる…………無念………………!!!!
 
 
「こらっ!リナっ!
オレにしがみついたまま、呪文をぶっぱなすのはやめろって!
依頼人に当たっちまっただろ!?」
「うううむうむむ…………」
ふええ。ひっく。ら、らいじょーぶよっ!
エルメキア・ランスなら、教会で処置してもらえば治るし!」
「そーいう問題じゃないだろ…………」

「うむむむむ……むむ?ここは一体?
ワシは一体何をしていたのじゃろう………。
何やらすっきりした気分だが………。
おや、お前さん方、こんなところで何を………」
「あ、いや、これには深い訳が………」
ふええええええんっ!!ガウリイっ!!」
「お、おい、だからしがみつくなって。」
「おやおや、どうやら見たところ、お邪魔のようじゃの。
何でワシはこんならぶらぶカップルと一緒におるのじゃ?
これにて失礼するわい。
おや、こんなところに焦げたヤカンが……。」
 

「いや、あの…………。あ………行っちまった。
ほら、なんか変な誤解受けたらしいぞ。
それにしても、お前さんがあんなに怪談嫌いだったとはな……。
意外というか、何というか…………」
ひっく。苦手なもんは仕方ないでしょーがああ……。」
「あーはいはい。よしよし。」
「で、何よ……。意外というか、何というか、の先は………?」
「え?」
「どう思ったのか、言ってみなさいよ。
言っておくけど、事と次第によっては考えるわよ、あたし。」
「なんだ、正気に戻ったら怖いぞ、お前。
もしかして、照れてんのか。」
「ちがわいっ!」
「………そうだな。当ててみな?
オレの考えてることくらい、わかるんだろ?」
「ここでその話を蒸し返す!?
いくらあたしでも、そこまではわかんないわよ。」
「いやあ、怪談を怖がって震えるなんて、まるで普通の女の子みたいで………」
ほほ〜。それ以上言って命縮めたいわけ。」
「最後まで聞けよ。
普通の女の子みたいで、可愛いなって……思ってな。」
え‥‥‥っ……
ガ‥‥‥ガウリイ‥‥‥?」
「まあ、普通の女の子は、ぶっそうな呪文をやたら使いまくったりしないけどなあ。
はははははは。
がちんっ!
「うおわっ!?あぶねえっ!かっ…かみつくなよっ!?お前はどーぶつかっ!?」
「人を勝手に期待させといて、そこでさわやかに笑うなーーーーーっっっ!」
「へ?期待って………何のだ?」
「何でもないわよっ!!!ってあああああっ!!!そーいえばっ!!!
礼金もらい損ねた〜〜〜〜〜っっ!」
「………お前なあ。せっかく誉めたのに。」
 




 
むむむむ………うむむむむ…………
いたい……………
何やら先程の精神攻撃より、もっとじんわりとした痛みが襲ってくる………。
何故だ………今は攻撃されていないはずなのに‥………。
ターゲットの会話を聞いていると、関節が痛むような………。
ヤカンに関節はないはずだが………。
 
わ…………わちしの名はケトルバーン………。
偉大なる海王ダルフィン様の、偉大なる配下………。
偉大なる魔族………ケトルバーン様………。
こ………この痛みを明日への希望に変えて、次は必ずやあのリナ=インバースを……!
………っていてえええっ!
希望なんて前向きの言葉は使ってはならないのだった!!
くうっ、自らの言葉で身体を痛めてしまうとはっ………!
立て、ケトルバーン!
戦え、ケトルバーン!
 

「れ、ホントだ。こんなとこにきちゃないヤカンが。」
「あちこちヘコんで焦げ付いてるなあ。
そういえば、でてくる時にヤカンがなくなったとか、女将さんが言ってたっけ。
どれ、宿に持って返って磨いてやるか。」
「ち、ちょっと待ってガウリイ。」
「なんだ?」
「その、もうちょっと待って。休んでからにしない?」
「………お前………もしかして、腰が抜けた、とか………?」
「い、言わないでよっ!」
「しょーがねーなあ、おぶってやるって。」
「う………恥ずかしいけど、しょーがないわね……。
暗くなってきたし………。
って、そのヤカンやっぱり持って帰るの?」
「ああ。ほら、おぶされよ。」
「うん…………。よいしょっと。
…………なんかこのヤカン……お尻にあたってあったかいんだけど………。」
「そうか?気のせいだろ?冷たいよりいいじゃねーか。」
「うん………」
 

くぢけるな、ケトルバーン!
たとえ小さき存在の人間の尻に敷かれようと!
輝ける未来はきっとそこに!
…………っっていたいいいいいっ…………!

くう…………………。
人間の世界とは、魔族にとっていいのか、悪いのか………。
わちしにはわからんのである…………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 












--------------------------おしまい(笑)


またくだらなくてすいません(笑)
怪談嫌いなリナが、きゃーきゃー悲鳴あげてカワイイのに呪文ぶっぱなすという、ほほえましー映像を目に浮かべながら書いておりました(笑)
たとえば物陰から誰かがいきなり出てきたとか、暴れ馬が走ってきたとか(おひ)で、シルフィールだったら「きゃああああっ」と悲鳴を上げるかも知れませんが。リナはあげないだろうし。
そーいうリナっちが悲鳴をあげるところを、ちょっと見たかったなという邪な考えがあったことは見え見えです(笑)リナ萌え継続中なのでした(笑) 
でもそーいう時にはやっぱり、ガウさんに一番に抱き着いてほしい(笑)欲張りだなあ(笑)
きゃーきゃー悲鳴あげながら抱き着いてくるリナさん。怖がって、腕の中で震えていたりしたら、ガウさんはどんな気持ちになるでしょーか。震えながら凶悪呪文ぶっぱなすリナさんでも、可愛いと思うかなと(笑)その矛盾がまた可愛いんでしょうな、きっと(笑)


では、ここまで読んで下さったお客さまに、愛を込めて♪
怪談は、するのと聞くのとどっちがお好きですか?
する方が楽しかったりするそーらがお送りしました(笑)
 


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