『ランプツリー』


 
 
 
「うぅうううううう、寒い寒い寒い〜〜〜〜」
 
森の入り口に建てられた、一軒の小さな山小屋の中で。
こんもりとした小さな山が震えていた。

……いや、それはほんのじょおだんで。
長袖の下着の上に長袖の貫頭衣を着て、その上から着たもこもこのセーターの上にコートを羽織って、さらにその上から毛布を被ったあたしの事だ。
………記述がしつこいと言うなかれ。
ほんっとーーーに寒いのだ。この小屋は。
 

「そんなに着込んでて、まだ寒いのかあ?
まったく、お前さんは寒がりだな。」
毛布も被っていなければ、着ているものも、あたしより一枚も二枚も少ない旅の相棒が呆れた声を出した。
麗しの長い金髪、青い瞳。
黙っていればハンサム、喋ればクラゲ。
へっぽこ脳搭載、超一流剣士のガウリイである。
ひょいと屈みこむと、あたしの前にたまった陶器の玉を拾いあげ。
長身を生かして、天井に格子状に渡された木に引っ掛けていく。

「寒いもんは寒いのよ。
………ったく、こんな仕事、引き受けるんじゃなかったわ。
めちゃめちゃ寒いし、おまけに報酬が安いから懐まで寒いわよ。」
「おおっ。なるほど。うまいこと言うな。」
「…………自分でもサムイと思ったギャグに……ウケが入ると……。
余計に寒さが身にしみるわ。」
「‥‥‥オレにどーしろと………。」

 
小屋の中には、たくさんの木箱に入っていた薄い焼き物が並べられていた。
ちょうど大人の男性の手に納まるくらいの大きさで、中に何も入っていない白い陶器の玉である。
「ま、最近考えついたアレンジが役に立ったけど。」
あたしは口の中で手早く呪文を唱える。
一番初歩的な魔法、明りを作る呪文だ。

『………輝き燃える、明き焔よ………』

広げた右の手のひらの上に、ぽっと魔法の光がつく。
熱くも冷たくもない。
その上で、左の手のひらで十字を切る。
 
ぽぽぽぽっ………
 
光は分散し、小さくなり、並べられた空の陶玉にすうっと入っていった。
その数、7、8個。
本来なら一つずつつけなくてはいけない魔法の明りを、これで一気に複数の玉に灯すことができる。
この明りにはさらにちょっとした仕掛けがあり、一定時間を過ぎると自動的に消滅するようになっていた。
街の街灯などで使われるのとは少し違う、ライティング魔法の使い方である。
陶の薄い壁を透かして、中の魔法の明りがぼんやりと輝く。
 

「おおおお、何度見てもすごいのう。」
腰の曲がったおじいさんが、あたしの手際のいい魔法を見て手を叩いた。
「最初はあんたを見たとき、正直言って大丈夫じゃろうかと思ったが。
なんのなんの。あんた、お若いのになかなかやるのう。」
「いえ、それほどでもありますけど。」
少ない報酬のこの仕事、素直な賞賛は余禄というものである。
………つまり、もっと言って。
「ほんに、まったくじゃ。
これなら今年はあっという間に終わりそうじゃのう。」
木箱の中から陶器の玉を出して手渡していた、おばあさんがにこにことあいづちを打った。
「毎年の事じゃが、この村では伝統のお祭りに欠かせないものでの。
昔は蝋燭に火を灯してたんじゃが、火事を起こしかけてのう。
それからは、魔道士協会に頼んで派遣してもらってたんじゃが。
今年はあんたが来てくれて、それに男手もあって大助かりじゃ。」
 

…………そうなのだ。

あたし達は立ち寄った街で、魔道士協会を訪れた。
何か仕事がないかと思ったからだ。
ところが、この村に派遣する予定の魔道士が二人ともぎっくり腰で、さてどうするかと困っている場面に出くわしてしまったのだ。
………後は、想像するに難しくないだろう。
身動きできないおじいちゃん魔道士二人に、涙目で訴えられ。
物言いたげなガウリイに、つんつんとマントを引っ張られ。
仕方なく引き受けて、こんな辺鄙な場所を訪れることになってしまったのである。
 

「じゃ、今まで、おじいさんとおばあさんでやってたんですか、これ?」
あたしが明りを灯し、ガウリイがそれを苦もなく、次々に引っ掛けていく。
陶器の玉には一箇所だけ出っ張った部分があり、そこに穴が空いていて、ヒモが通せるようになっていた。
「そうじゃよ。長い時間やってると、腰が痛くてかなわんがのう。」
おじいさんは天井まで手が届かず、先端に鈎のついた長い棒を使っている。
鈎に陶器の玉のヒモを通し、ガウリイと同じく、格子状の木に無数についている釘にそれを引っ掛ける。
「ほんにほんに。あんたさんの連れは背が高いから、楽々じゃのう。
あんた達は、見たところ…………。」
おばあさんはあたしとガウリイをにこにこと見比べていたが。
そのにこにこ顔のままですらっと言った。
「夫婦かの。」
 
ばさっ!
 
あたしの肩から、思わず毛布が落ちた。
「どっ………どこをどー見たらそーなるんですくわっっ!!
………兄妹だの親子だの。
猛獣と猛獣使いだの。
散々言われてきたが。
最初の一言目から夫婦と言い切った猛者は、このおばあさんくらいなもんである………。
思わずあたしがムキになるのも仕方がない。
………仕方がないったらない。
他に理由はない。
ないったらない。
「そうじゃよ、ばあさんや。滅多な事を言うもんではない。
第一、ほれ、この二人。
最初に会ったときから、ほれ、なんじゃったっけ?
男の方が一方的にどつかれたり、はたかれたり、蹴飛ばされたり、言いこめられたりしておったじゃないか。」
「!」

………てっきり味方が現れたと思ったのに…………。
このじーさん……見かけは人の良さそうな顔して………。
けっこー言うこと痛いぞ………。

「あ………あの………」
単なる旅の連れです、とあたしに説明するヒマも与えず。
今度はおばあさんの反論が続く。
「いんや、それを見たから夫婦かと思ったんじゃ。
ほれ、俗に言うじゃろ、おじいさん。
女が男をどつきまくって喋りまくる……ボケとツッコミ炸裂の………
ほれ、そう、夫婦漫才!
 
かっくんっ!
 
 
あまりに脈絡のない展開に、あたしの首ががくりと垂れ下がる。
……関節外れるかと思った…………。
「なっ………なんですか、それっ………
あ………あたし達は別に、漫才してるわけじゃなくてですね……」
「そうじゃそうじゃ。
嫁入り前の娘さんに、失礼な事を言うんじゃないよ。」
おじいさんはにこにこと頷く。
が、油断はできない。
また何気に痛い発言かますんじゃないだろーな………。
「あ……あのですね、そんな事より仕事を………」
「ほれほれ、ばあさん。わしらだってそんなに馬鹿じゃないよ。
夫婦ってのはもっと、こう、あるじゃろ。わしらみたいに。」
「わしら……って。わしら夫婦の事ですかいの?」
「そうじゃよ、ばあさん。そうじゃよ。
わしらのように」

そう言っておじいさんは、優しくおばあさんの手を取った。
その目が、まるでランプに照らされたようにきらきらと輝いている。
(実際、周囲には魔法の光だらけだが)

「夫婦ってのは、わしらみたいに!
ラブラブしとるもんなんじゃよ!」
「まあ、おじいさんっ。」
「ん〜〜〜〜っv
「あら。いやですよ、若い人の前で。」
 
ぁあああっ!!
さっさと!終わらせる!まじで!こんな仕事っっっ!!
 

引きつる顔を無理矢理眼下に戻す。
と、しゃがみ込んだガウリイが、必死に床の上の陶器の玉を体で庇っていた。
「………何しとるんだ、あんたわ。」
「………良かった……。てっきり爆発して、踏んづけて回るのかと………。」
と、あからさまにほっとした顔をする。
「オレはもう生きた心地がしなかったぞ。」
「い……いくら何でもしないわよ、をほほ。」
背後を気にして、あたしは笑顔で否定したが。
ガウリイの言葉を耳にはさんで、おじいさんとおばあさんの顔が、きっちり凍りついていた………。
 
 



 
やがて、天井にたくさんの陶器のランプが点った頃。
森の入り口にぽつぽつと人が現れ始めた。
ふかふかのフードがついた、もこもこのオーバーを着込んで、ほっぺたを真っ赤にした村の人達だった。

「こんばんわ。」
開いた窓から、一人ずつ顔を出し。
おじいさんやおばあさんから、明りの入った陶玉を一つずつ受け取る。
「いい夜ですね。」
「ああ、今年もようおいでなすった。」
顔見知りの人も、そうでない人も、一様ににこやかな顔をしていた。
玉の明りに、そうした人々の顔がぱっと照らし出される。
 

森の中を通る細い道を、めいめい明りを手にぶらさげた村人達が進んでいく。
光の道筋となって。
数日前に降って積もった雪が、真っ白に染めた光景の中を。
星明りと、魔法の明りの二つだけを頼りに。
 
「みんな、これに願いごとをして、森の中の好きな木にかけてくるのじゃよ。」
窓を開け放っているため、おじいさんが喋ると、口から白い煙が立ちのぼった。
分厚いミトンの手袋をはめたおじいさんは、玉をそっと持ち上げると、父親の腕に抱かれた小さな女の子にそれを手渡す。
「一年の終わりを締めくくり、来年もまたよい年であるようにと。
いつから始まったことだかわからんが、毎年毎年、これが楽しみでこの仕事を引き受けているようなもんなんじゃよ。」
「ほんにほんに。
入れ代わり立ち代わり、皆の顔も見れるでの。
何もこんなに寒いときにやらなくてもと思うじゃろうがな。」
別のひとつをガウリイからもらい受け、おばあさんもまた、分厚いミトンの手袋の手を動かして、新たな訪問者に受け渡す。
「空気がぴいんと張りつめた中で眺める、森の明りはそりゃあ綺麗なもんじゃよ。
また来年、これを見に来るために一年がんばろうと思うもんじゃ。」
 

そうしていくつ渡したことだろう。
いつのまにか気づくと。
天井も床も、あれだけ明るかった小屋の中が暗くなっていた。
ランプがほとんど村人の手に渡ったのだ。
 
 
「いやいや、御苦労さんじゃったのう。」
暖炉の前で、全員がかじかんだ手を暖める頃には。
すっかり夜は更けていた。
沸かしたお湯で、おばあさんが飲み物を入れてくれた。
ハーブとはちみつと、ほんの少しお酒が混ざっている。
小屋の中に、ぷうんとはちみつの香りが漂う。
「これで仕事は終わりじゃよ。戸締まりをして、村へと戻ろうかいの。」
 
「これは、灯しに行かないんですか?」
床の端に三つばかり残っていた陶器の玉を指さして、ガウリイが言った。
「村の人たちがほとんど全員行くのなら、お二人も行くんでしょう。」
「そうじゃよ。帰りがてら、灯して行こうかと思っとる。」
「一つ余ってしまったのう。勿体ない。
せっかくお嬢ちゃんがつけてくれた明りなのに。」
おばあさんはそう言うと、ぽんっと手を打った。
「一つはあんた方がお持ちなされ。
村までの道、ランプ代わりにいいじゃろう。ほれ。」
手に押し込まれた陶器の玉は、ぼんやりと瞬いていた。
 
 


小屋の前で二人と別れ、あたし達は村へと戻ることになった。
おじいさんとおばあさんは仲良く、それぞれ手から陶玉のぶらさがったヒモを下げていった。

しんしんと冷える、真夜中。
空を振仰げば、新月の夜空。
細かいガラスの破片のような星星が瞬く。
あたしの手の上の陶玉の明りだけが、闇を頼りなく押し戻していた。
 
「……………………」

村人が踏みならした道の上を歩き出すと、ふとガウリイが立ち止まって後ろを振り返った。
「……………………」
「どうかしたの?ガウリイ。」
「……いや………」
何か気になるらしい。
あたしはというと、この寒さに耳まで凍りそうだったので、果たして風の結界で一気に村まで戻った方がいいんではないかと思い始めたところだった。
「………リナ。」
ガウリイの手が、あたしの厚手のオーバーの肩口を叩いた。
「ちょっと、つきあわないか。」
「………………へ?つきあうって………どこに?」
「いいから。ちょっとだけ。」
「…………は?」
 
ただでさえ大きな手が、分厚いミトンにくるまれているとさらにでかい。
そのでかい手袋があたしの手をつかみ、軽く引っ張った。
「ち、ちょっと…………?」
進行方向とは反対側、森の中へと進む路の方にガウリイが向かう。
「ね、ねえ?」
「こっちだ。」
「………ほへ?」
辺りを見回したガウリイは、森の中を通る道ではなく、いきなり木立の中に分け入った。
長い足でざくざくと迷わずに進んでいく。
「ガ、ガウリイ、ちょっと待って………」
そこは、人が踏み固めていない雪で埋もれていた。
歩きづらいことこの上ない。
「ふが!」
吹きだまりに足を取られ、勢い余って前へとつんのめってしまう。
 
ずぼぼぼっ!
 
「…………あ。すまんι」
「……………ふまんららい……………」
もろに顔面から雪につっこんだ、あたしのくぐもった声がする。
………う。口の中に雪入った…………
「大体、どこへ行くのかも言わないし。
どうする気……………………って、ちょっとぉっ?!
「よいしょ。」
 
ずぼっっ!!
 
後ろに回ったガウリイが、一気にあたしを雪から引き抜いた。
右腕をあたしの両足にかけ、左腕をあたしの肩に添えて、そのまま抱え上げる格好だ。
「ここを上がっていくから。
ちょっとの間、オレの首につかまっててくれ。」
「あ………上がってくって………どこに行くつもりなのよ?
………じゃなくてっ!!何でだっこなのよっ!」
「だって、お前さん歩けないだろ。これじゃ。」
「そーでなくて!
何で歩く必要があるのかと、あたしは問いているのですがっ!?」
「ま、いいから。
その明り、落とさないようにちゃんと持っててくれ。」
「い………いいからって………んな軽く……………
っっ?!?


ざく、ざく、ざく………
 
人間一人抱えているとは思えない身軽さで、ガウリイは斜面を登り出した。
片腕であたしを抱き、もう片腕で木の枝や岩をつかんで、ひょいひょいとあがっていく。
それでいて、息があがっているようには見えない。

………うーむ…………考えてみれば…………。
戦闘以外で、ガウリイの身体能力を再確認する事って少ないかも………。
などと思いつつ。
あっという間に斜面をあがりきり、あたし達はいつのまにか峠の上に立っていた。
 
「………ほら。見てみろよ。」
ガウリイがそっと言った。

指さす必要もなかった。
眼前に広がる光景に、思わずあたしも息を飲む。
 

暗い夜。
黒い森。
………………その中に。
ぽつぽつと点る、小さな明り。
あちらに一つ、こちらに一つ。
暖かそうな黄色とオレンジの、瞬く魔法の灯が。
森のあちらこちらで無数に瞬いていた。
 
「うわ………これ………全部………?」

一つ一つは小さな陶器の玉だったものが。
森を丸ごと席巻していた。
今年一年を締めくくり。
来年を思う人々の思いが。
木に吊る下げられ。
 
ちらちら。
ちかちか。
きらきらと。
言葉で語るように揺れていた。

 
「…………なあ、すごいよな。」
顔のすぐ傍で、ガウリイが唇から白い煙を吐きながら呟いた。
「これ全部、さっきお前さんがつけた魔法の灯なんだぜ。」
「……………………!」
あたしは目をぱちくりさせて、ガウリイを振り返った。

言われてみればそれはそうなのだが。
そんな事まで考えもしなかったのだ。

「そ………っか…………。」
「そうだ。森中、お前さんの魔法でいっぱいだぞ。」
「…………うん…………」
 
思いもしなかった。
魔法にも、こんな使い道があるのだということを。

朝までの短い時間とはいえ。
…………森一つを、こうして輝かせることだって。
 



「寒いけど。………いいもの見れたな。」
そう言って、微笑んだガウリイの顔は。
照らし出すものはほとんどないにも関わらず、よく見えた。
まるで目に見えない、別のランプに照らされているかのようだった。
 
「その明り、お前さんも飾ったらどうだ?」
大事に胸に抱えていた陶玉をガウリイが指さす。
「………そだね………。」
「どこにつける?」
「じゃあ、そこの一番高い木の目立つとこ。」
「………お前さんらしいな。よし。」

ガウリイがあたしを肩の上に抱えあげ。
あたしはできる限り背伸びをして、張り出した枝の先にランプのヒモを通した。
「……どうだ、届くか?」
「もうちょい右。」
「こうか?」
「うし。届いた!これで‥‥‥っとと。」

体を逸らして出きばえを見ようとした時だ。
反り返りすぎて、バランスを崩してしまった。
不安定な体勢で前後にぐらぐらと揺れてしまう。
「あぎゃゃっ!」
「うわっ!危なっ……」
 
がくんっ!
   
むぎゅっ!!

 
「お…………落とすかと思った…………」
ほっとしたガウリイがため息とともに吐き出した声が、耳もとで響いた。
その腕の中で、あたしはぱちぱちと瞬きをしていた。

………あり。
何でこんなにせまっくるし………………
 
っておいっ!
「どどどどどーでもいいけど、いつまで抱きしめてるつもりっ!!」
「………抱きしめたんじゃなくて、抱きとめたんだろ。
危うく落とすところだったじゃねーか。
下に雪が積もってるとはいえ、怪我するところだったんだぞ。」
「は、はいはい、わかりましたもーしませんてばてば。
………だからそーろそろ離してってば。」
「何だ?………もしかして、照れてるのか。」
ばっ………!んなわきゃないでしょーがっ!」
「顔が赤いぞ。」
「寒いからよっ!」
自然と声が高くなってくる。
 

「しかし………こーしてると………」
あたしをまだ片腕に抱いたまま、ガウリイがしみじみとした口調で言った。
次に来る言葉が容易に予想できて、思わずあたしの声が低くなる。
「………またムネがないなんて言ったら、どーなるかわかってるでしょーね。
斜面から転がり落ちて雪だるまになりたいなら、言ってもかまわないけど。」
「………まだ何も言ってないのに‥…………」
「あんたが言いそうな事はわかってんのよっ!
日の浅い付き合いじゃないんですからねっ!」
「じゃあオレ達…………実は深い付き合いなのか?」
「そーいう意味じゃないっっ!」
 

二人の口から盛大に煙があがり。
風のない夜に森は静かに眠り。
星は瞬き。
ランプの明りは揺らめいて。
谺するのは、あたし達の漫才のような掛け合いだけだった。
 

「……オレが言いたかったのは。」
空いた手の平で、むぎゅっとあたしの口を押さえたガウリイは、一瞬まじめな顔をした。
つり込まれてあたしももがくのをやめる。
「こうやってお前さんを抱っこしてると。
‥‥‥あったかいなって。」
「!」
むぎゅっ〜〜〜〜!!

そう言うと、ガウリイは唐突にあたしを体ごと抱きしめた。
「あーーーーあったけーーーーー」
「!!!!!!」
 

 
熱くない焔が燃える、魔法の明り達の中で。
あたしが暴れ、ガウリイが逃げ。
二人して斜面から転がり落ち。

……めでたく二つ並んだ雪だるまになったことは……………
お願い。誰にも言わないで。ぷりーづ。
 
「ひーーーーちべたいちべたいちべたいよーーーー」
は〜〜くしょんっ!
h〜〜〜リナのせいだぞ〜〜〜〜〜〜」
「にゃにを!!
あんたが変な事するからで………ふぇっくしょいっ!!
とてもロマンチックとは言えない雰囲気で、二人肩を並べて早々に村へと戻ったあたし達。




その頃には二人とも、すっかり忘れていた。
………森の中は、あたし達二人だけじゃなかったことを。
 
 
木立に紛れて、まだ吊るされていないランプの明りが二つ。
後ろ姿を見送っていたことを、あたし達は知らなかった。
「あれはラブラブじゃのう。」
「ほんに。ラブラブじゃのう。
やはりあの二人は夫婦だったんじゃよ。」
「そうじゃのう。立派な夫婦漫才じゃった。」
おじいさんとおばあさんはにっこりと笑って。
ランプを灯し、手をつないで、村へと続く道を、あたし達の後を追ってスキップで帰ったという。
 

再び静けさを取り戻し、たくさんの明りに照らされた森に。
二度目の雪が舞い降り始める、少し前のでき事だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 













 
 
 
 
 
-----------おしまい♪
 
 
この時期になると、各地の綺麗な夜景がテレビで紹介されたりしますが。ここ何年か、寒くてもいいからそーいう綺麗なイルミネーションをぼーーっと眺めていたいなと思ったりしてます(笑)実際のところは、夜に子供置いて外出するわけにも行かず、次の日も朝から仕事だと思うと子供連れて夜景だけ見に行くのも、と二の足を踏んでしまってかなわずにいるのですが。
なのでせめて話の中で楽しもうと(笑)願望そのまんまな内容ですな(笑)
生まれは三月の春生まれですが、四季の中で一番冬が好きだったりします。寒いけど(笑)寒いからこそ、あったかさをリアルに感じることができる季節です。
 
なかなか更新できずに、短編も久しぶりになってしまいました。
クリスマスプレゼントにはならないかな(笑)
では、ここまで読んで下さった方に愛を込めてv
そーらと同じで、クリスマスイルミネーション見に行きたいけど行けずに、テレビ見て我慢してる人に捧げます(笑)
これ読んでうんうん頷いてる皆で、一緒に見に行けたらいいねえ(笑)
 


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