『ないしょばなし』



 
めがしゃめたら、マナひとりぽっち。
おかあちゃまもいない。
おとうちゃまもいない。
 
ぴちぴちぴち。
 
まどのそとでことりしゃんがないている。
あしゃなんだ。
マナはひとりでベッドからおりて、ひとりでおきがえをする。
ボタンはまだちょっとむずかしい。
「は〜。できた。」
とおもったら、ふくが、ぐしゃぐしゃになってた。
「むむむ。」
もういっかいやりなおし。
「できた!」
 
ぜんぶちゃんとできたので、だれかにみせなくちゃ。
おかあちゃまはどこ?

 
おへやにいない。
おかあちゃまはいない。
おとうちゃまもいない。
ごはんをたべるテーブルにもいない。
 
だいどころ。
だれもいない。
おふろば。
だれもいない。
トイレもあけてみた。
だれもいない。
 
おかあちゃまはどこ?
 
「〜〜〜〜♪」
 
あ、おかあちゃまだ。
おかあちゃまのこえだ。
でもどこから?
いしょげいしょげ。
わかった、おしょとだ。
 
「おかあちゃま!」
おしょとでおかあちゃまは、せんたくものをほしていた。
うしろからどっし〜〜んってぶつかった。
「うぎゃっ!やめてっ!洗濯物が落ちるっ!!」
おかあちゃまは、あわてた。
おかあちゃまはへんなこえをだすからおもしろい。
もっかいぶつかろうかな。

「あれ?ちゃんと着替えてきたの?えっら〜〜い!」
えへへ。
そーだよーだ。
マナはきょうはちゃんとひとりできたんだよーーーだ。
しゃくせんせいこう。
こんどはおとうちゃまにみせなくちゃ。
「あのね、おかあちゃま。」
「えらいえらい、今日はちゃんとボタンもかけ違えてない。
すごいね、マナ。やればできるじゃん♪」
えへへへへへへへへ。
あたまなでなで、だーいしゅき。
「よーし、この調子で明日も頼んだわよっ!
さすがあたしの子ね、二才でちゃ〜〜んと着替えられるなんてっ♪
これはぜ〜〜ったい、ガウリイじゃなくてあたしに似たのよ♪♪」
 
おかあちゃまはにこにこしてる。
でもおこるとほんとはこわーーいんだ。
 
「まったくあのクラゲときたら、頼んでおいた買い物は忘れるわ、関係ないものを買ってきちゃうわ、おまけに親切に道案内して遅くなってくるわ。
ホント、使えないんだからっ!」
おかあちゃまはこんどはぷんぷんしている。
もうせんたくものがなくなっちゃった。
「マナを見ててって言ったのに、自分のが先にぐーぐー寝ちゃうし。
寝相は悪いし、寝言はうるさいし!
あ〜〜〜も〜〜〜イヤっ!今日から別の部屋に寝てもらおうかしらっ!」
「お、おかあちゃま?」
「早起きしたらしたで、さっさと一人で出かけちゃうわ………って、なに?マナ?」
「あの……おとうちゃまは?」
「…………………。」
 
おかあちゃまのめがはんぶんしかあいてない。
ちょっとこわい。
 
「あんたのお父ちゃまは、朝から出かけちゃったわよ。どこにいるのか知らないわ。」
「おとうちゃま、おでかけ?」
「そ。おでかけ。
ったく、男はいーわよね、男は。靴さえ履けばさっと出かけられるんだもん。
母親はそーはいかないわよ。
子供をトイレに行かせて。靴下履かせて靴履かせて。帽子かぶせて。
カバンに着替えとおむつと水筒と、ぐずった時用のおやつ入れて。
それでやっと出かけられるんだから。
それで体は一つじゃなくて、二つなのよね。
自分のペースじゃ歩けないし。長い時間は出かけられないし。
途中からダッコかオンブだしね。」

おかあちゃまは、いつもマナのことをおしゃべりだっていうけど。
おかあちゃまだっておしゃべりだ。

「おかあちゃま………」
「大体、一緒に住んでる家族に、何も言わないで出ていくのって、なんか失礼じゃない?せめて、お昼ご飯を食べるのかどーか、夕飯までに帰ってくるのかどーかくらい、言ってから出かけてほしーのよね。あの人が食べるか食べないかで、全然作る量が違うんだからっ。」
 
おかあちゃまはまだもんくをいってる。
どうしよう。
なんだかどきどきしてきちゃった。
 
「おかあちゃま?」
「なに、マナ?」
「あのね、あのね。おかあちゃまは、おとうちゃまがきらい?」
「へっ!?」
「おとうちゃまがきらいだから、もんくいってるの?」
「………………あ………あのね、マナ………」
「マナはおとうちゃまがしゅきだよ。
おかあちゃまもしゅき。
だから、おかあちゃまがおとうちゃまをきらになったらいやだ。
おとうちゃま、かえってくる?
マナのところに、かえってくる?」
「………………マナ…………」
 
おとうちゃまが、もうかえってこないきがした。
すごくかなしくなった。
かなしい。
 
「うえええええん………」
「ちょ、ちょっとマナ、ま、待ってよ、泣かないでっ。」
マナはだっこされたけど、まだかなしい。
「ち、違うんだってば。あのね?」
あかちゃんのときみたいに、ゆらゆらされた。
「ごめん、そんなつもりじゃ。え〜とその。だからね?
あたしは、あんたのお父ちゃまが嫌いだから文句言ってたんじゃなくて。」
「……………………?」
「だからね、嫌いじゃないんだよ?」
「きらいじゃない?」
「うん。」
「じゃあしゅき?」
「う、う…………うん。」
「だいしゅき?」
「うっ…………だ…………だい……すき………」
「あいしてる?」
「あああああ、あいっ!?!?あんた、どっからそんな言葉をっ!!」
「あいしてないの?おとうちゃま、あいしてないの?ひっく。」
「あああああああ!な、泣くなっ!あ、あい、あい……してるわよ……(ぼそぼそ)」
「じゃあおとうちゃま、かえってくる?」
「か……帰ってくる、帰ってくる。お腹空いたら帰ってくるわよ、きっと。」
「よかったぁ。」
 
 
「お〜〜〜〜〜〜い。」
 
あ。おとうちゃまだ。おとうちゃまのこえだ!
よーーーい、どん!
「リナ〜〜〜〜!マナ〜〜〜〜〜!
今帰ったぞ〜〜〜〜〜!」
「おとうちゃま、おかえりなしゃいっ!」
どっしーーーん。
おとうちゃまは、マナがぶつかってもぜんぜんへいき。
「お、マナ。走るの早くなったじゃないか。」
おっきくて、かたぐるましてくれるから、マナはおとうちゃまがだいしゅき。
「おとうちゃま、かたぐるま。」
「よしよし。ちょっと待ってな。あとでたくさんやってやるから。」
「?」
 
おとうちゃまは、おててになにかもっていた。
「ただいま、リナ。」
「うきゃっ!ちょ、子供が見てんのよっ?」
「いーじゃないか、ただいまのキスくらい。マナだってお父ちゃまにするよな?」
「うん、しゅる。」
「ほら、あー言ってるし。」
「そ、それより、朝からどこへ行ってたの?今日はお昼ご飯を街まで食べに行こうって言ってたんじゃなかったっけ?」

わ〜〜い、おでかけおでかけ。
おかあちゃま、だからさっきおこってたの?
おとうちゃまが、やくそくやぶったかとおもっておこってたの?
なあんだ、おかあちゃまもマナといっしょだ。

「だから早く帰ってきたじゃないか。ほら、これ。」
「?」
 
おとうちゃまはおててに、おはなをたくさんもっていた。
おはなだ、おはなだ。
わあい、きれいきれい。

「これ……………」
「この時期は、朝しか咲かない花なんだろ。だから朝しか探せないって言ってたじゃないか。」
「覚えてて………くれたの?」
「まあ、今日飾る花なら、これだろと思ってな。」
「………………………………。」
 
まっしろなおはなを、おかあちゃまはだいじそうにかかえてた。
あのおはな、マナもしってる。
でもおうちにはない。
マナはどこでみたんだっけ。
 
「三年、だっけか?いつもありがとな。
んで、これからもよろしく、奥さん。」
「……………もう………………」
おかあちゃまのおかおが、まっかっか。
おとうちゃまは、にっこにこ。
マナもにっこにこ。
 
あ。おもいだした。
おへやにかざってある、え。
おかあちゃまがまっしろなどれすをきてて。
おとうちゃまもまっしろなふくきてて。
そのとき、おかあちゃまがおててにもってたおはなだ。
 
「よ〜し、マナ。ほら、肩車するぞ〜。」
「きゃーーーーーー。たかーーーーーい。」
「じゃ、出かけようか、リナ。」
「え、ちょっと待って。お花を生けてこなくちゃ。」
「いいじゃないか。切り花にしたら、一日はもつんだろ?
そのまま抱えていけば。」
「えええええ。は、恥ずかしーわよっ。」
「ほらほら、先に行っちゃうぞ〜〜〜〜。」
「ダメよ、支度があるんだからっ!もう、ガウリイっ!!」
「はっはっは。マナ、何が食べたい?」
「おさかな!」
「よ〜し。」
 

おかあちゃまはもんくをいうけど。
おとうちゃまはわらってるけど。
ほんとはなかよし。
よかった、ふたりがなかよしだと、マナもうれしい。
 



「あのね、おとうちゃま。これはじゅーだいなひみちゅなの。」
「じゅ、重大?すごい言葉使うな、お前。まだ二才なのに。
で、ひみちゅ、じゃない、秘密ってなんだ?」
「あのね。」
マナはおとうちゃまのみみに、ないしょばなしをした。
おとうちゃまは、もっとにこにこになった。
「そうか。それは重大な秘密だ。よく教えてくれたな、マナ。」
「うん♪」
 

『おかあちゃまはね。
おとうちゃまが、だいしゅきなんだって。それでそれで、
あいしてるんだって!』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 








 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
-------------------------------えんど。

ぐはははははははは(笑)しょーもない話ですいません(笑) 
次に出す本は親子本にしようと思い、久々に話を読んでいたら、親子ものが書きたくなってしまいました(笑)また別のパターンですが(笑)
果たしてガウリイが結婚記念日を覚えているかどーかはわかりませんが(笑)肝心なことは忘れてても、意外にポイントは押さえた記憶力なので期待しましょう(笑)
長女はマナちゃんですが、この直後に弟ができてそーですな(爆笑)マナは魔力にも関係のある単語なので、リナがつけるかもと思ってつけてみました(単に呼びやすそうな名前だった、というのが本音(笑))

では、ここまで読んで下さったお客様に、愛を込めて♪
子供が生まれたら、なんて呼んでほしいですか?
16日が結婚記念日だった、そーらからお送りしました(笑)
 
 
 
 

 
 


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