『妄想増進小説』



 「ふう。何だか長湯しちゃったなあ。」
 頭から湯気を出しながら、アメリアが階段を昇ると。
 普段より3割増し青ざめたゼルガディスが、呆然と立っていた。
 嫌な予感がアメリアの背筋を駆け抜ける。

 「ど・・・・・どうしたんです、か・・・・」
 「あ・・・・ああ。」
 固まったままの表情で、遠い目をしたゼルが答える。
 「今ちょっと・・・散歩にでも行こうかと。」
 「え・・・・それってまさか、また・・・・?」
 「ま・・・・また・・・・」

 こないだの悪夢(?)が蘇る。
 てっきり、と思ってわざわざ外で夜を明かした二人が帰ってみれば、全くの誤解だったという事実が。
 「ま、またまた。誤解なんじゃないんですか?」
 おそるおそるアメリア。
 「そ・・・そうだと思うだろ・・・・でも・・・・」
 ジト汗を垂らすゼルガディス。
 「か・・・確認したんですか・・・・?」
 「か、確認って・・・・できるわけなかろーが・・・」
 「そ・・・それもそうですよね・・・」
 「何ならお前、行って聞いてみてこい。」
 「え・・・わたしですか!?」
 「それとも・・・・」二人は顔を見合わせる。
 「また・・・同じ方法で?」
 

 コップ持参。聴診器持参。
 さて。


 
 「えへへ・・・・」
 「なんだよ?」
 「え・・・別に、何となく。」
 「なんだか嬉しそうだな。」
 「そ、そうかな・・・?」
 「顔が笑ってるだろ。」
 「そ、そんなことないってば。だいいち見えないでしょ。」
 「声が弾んでる。」
 「や、やだなあ。そんなことないって。」
 「女の子って、結構好きだもんな。そういうこと。」
 「そっかな。あたしも・・・女の子?」
 「確認してどうする。実は男の子だったのか?」
 「んなわけないでしょ!」
 「いて。・・・・もちょっと優しくしてくれ・・・」
 「あ・・・悪い悪い。」

 
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 無言の室外の二人。

 
 「でも綺麗だね・・・・ガウリイの。」
 「そりゃあ。さっき洗ってきたばかりだし。」
 「よく洗ってきたんでしょーね?」
 「なんでだよ。念入りに洗ってこいって言うから、2度も洗っちゃったぜ。」
 「なら宜しい。汚いのはやあよ。」
 「はいはい。」
 「なんか・・・・」
 「ん〜?」
 「手触りが良くて気持ちい〜〜〜〜♪」
 「あ。やめろよ。顔をすりすりしたろ、今。くすぐったいぞ。」
 「そお?んじゃ。」
 「うりうりすなって。」
 「やめろと言われると余計にやりたくなるのが人情ってもんよね♪」
 「どういう人情だよ・・・・」
 「だあって、気持ちいいんだもん・・・♪」
 「あっそ。なら好きにしてくれ・・・。」
 「うん。好きにする♪♪♪」

 
 「・・・・おい、アメリア・・・」ひそひそ。
 「なんですか?」こそこそ。
 「そろそろ退散しないか・・・」ぼそぼそ。
 「まだ早いです。誤解だという可能性も残されてます。」こしょこしょ。

 
 「いってぇ!!噛んでる噛んでる!」
 「あ。ごっめぇん。」
 「涙出たぞぉ・・・・」
 「だから謝ってるてば。つい楽しくて。力が入っちった。」
 「やっぱり嬉しいんだろ。」
 「う〜〜〜〜〜ん。何でかね。」
 「いい顔してるぜ、お前。」
 「え・・・・・・・・。な、なに言ってんのよ!?」
 「見えたんだ。鏡で。なかなかいいぜ。」
 「ちょ・・・・・・・やめてよね!そういうの、免疫ないんだから。」
 「照れてる照れてる♪」
 「や、やめてってばぁ!」
 「やめろと言われると余計にやりたくなるのが、人情ってもんだろ?」
 「う・・・・・ずるいわよ。あげ足取ったりして。」
 「何言ってる。痛い思いさせられたお返しだ。」



 
 「・・・・アメリア・・・・」
 「はい・・・・また、星でも見に行きましょうか、ゼルガディスさん」
 「そうだな・・・・」
 今宵はここまでにしとうございます・・・・・


******************************




 
 
 「あんたたちってどうなってるの!?」

 朝食の席で。
 テーブルに、だん、と手を置いたのはリナ。
 「そうだぞ。出かけるなら出かけるって、一言言っておいた方がいいと思う。」
 「ガウリイ・・・・や、そうじゃなくて・・・」とリナ。
 「・・・・なんのことだ・・・・」
 疲れきった顔のゼルガディス。
 リナが質問を向けた相手は、ゼルガディスとアメリアだったからだ。

 「なんのことって。こないだに続いて、また今朝も朝帰りでしょ?
 どうなってんのよ、ゼルガディス。ちゃんと責任取れるんでしょうね?」
 「責任・・・・?」
 「そーよ。アメリアみたいにウブな子に手を出して、取るものはちゃんと取ってもらいますからね!」
 「おい、何の話だ・・・・」
 「だからぁ・・・」
 「そういうリナさんこそ・・・・」
 何故か赤くなったアメリアが、ぼそっと。
 「なんであたし?」
 「だって、またガウリイさんの部屋に・・・・」
 「え。」

 リナとガウリイ。顔を見合わせて。ぶっと吹き出す。
 
 「ちょっとあんたたちぃ、また変な想像してない!?」
 「お前ら、何聞いてたんだよ?」
 「何って・・・・」
 ゼルガディス、顔が紫。
 「じゃ、何してたんだ・・・・?」
 「そりゃあ。」
 「ねえ。」
 前回と同じく。きょとんとした二人。ハモる。
 

 

 「髪の毛とかしてた」とリナ。

 「髪の毛とかしてもらってた。」とガウリイ。

 

 
 「・・・・・え?」
 ひきつるアメリアとゼルガディス。
 「だぁかぁらぁ。ガウリイの髪の毛、あたしがブラッシングしてやったの。
 どっちかと言うと、トリミングに近いかもね。あはははははは。」
 (トリミング・・・って、わかるよね?イ◯とかネ◯とかの毛の手入れ・・・)
 「あははじゃない。何だか今の言葉、悪意を感じたぞ。」
 「あらそ?単語の意味はわかってなくても、そういうのはわかるのね。さすが野生の人。」
 うんうん。
 「野生って、お前な・・・・」
 「何でリナさんがガウリイさんのを・・・?」
 ショックから抜け切れないアメリア。
 
 「いやあ。」
 赤くなり、照れながら手をぱたぱたと振るリナ。
 「た、たいした意味はないのよ。たいした。」
 「そおかあ?今晩は髪の毛とかすから、ちゃんと洗って来いって念を押したのお前だろ?」
 「そりゃそうよ。とかすのに洗ってなかったらやだもん。」
 「わがままな・・・」
 「でもあんた、リンスしてこなかったでしょ!
 おかげで髪の毛が櫛に噛んじゃって大変だったのよ?」
 「大変なのはオレだよ。痛いのなんのって。」
 「とかしてもらって文句ゆーな。」
 「とかさせてくれって言ったのお前だろ?」
 「とかさせてくれなんて言ってないわよ。とかしてあげるって言ったのよ。」
 「なんでとかしたいんだよ?」
 「とかしたいんじゃなくて。とかして欲しかったんじゃないの?」
 「別に。」
 「ああそう。ふんだ。悪うござんしたね!」
 
 ガウリイに、い〜〜〜〜っと舌を出してみせたリナ。
 
 振り向くと、テーブルにのめり込むように突っ伏しているのは。
 アメリアとゼルガディス。
 
 
 「なにやってんの?二人とも。」
 
 
 
                      




 ちゃんちゃん♪




****************************************

何号室だっけかな(笑)「妄想邁進小説」の続編です。
むか〜し?出した「ば〜じょん1.0」に収録していました。CDロム「出張牢獄2002」のどっかにも入ってます(笑)

こゆのって、わからない人はわからないですよね(笑)わからなかったピュアな頃にはもう戻れない(爆笑)そう思いつつ、オチで笑っていただければ幸いです(笑)

でもできることなら、ドアの外で聞き耳を立ててみたい(笑)中にいるのがガウリナならそれがなんだろうと幸せです(笑)

こういう軽いノリの楽しい本が作りたくなったので、今回の新刊はこの妄想小説がお題の短編集になりました。「妄想邁進小説」「妄想増進小説」「妄想爆進小説」「妄想躍進小説」「妄想推理小説」に書き下ろしの「妄想お嬢様劇場」「妄想自爆小説」を足した計7本です。どっかにいろいろ8本と書いてしまいましたが、推理小説の疑惑編を解決編と別に数えてました(汗笑)

月虹の改訂版と合わせて、通販を開始しました♪
興味のある方はのぞいてみて下さい。

新刊「ぽけっとMOSO倉庫」B6版、カラー口絵4P、カラー表紙オフ100P
  「月虹-Gekkoh-」(改訂版)A5版、カラー表紙オフ 76P


では、ここまで読んで下さったお客さまに、愛を込めて♪

使うなら、コップですか?聴診器ですか?(爆笑)

そーらがお送りしました♪

<感想を掲示板に書いて下さる方はこちらから♪>

<感想をメールで下さる方はこちらから♪>