「ボラン顛末記」


「いったあああああいっ!
そんなにぎゅーぎゅー絞めないでよっ、アメリア!」
「我慢して下さい。これもボランさんを納得させるためです!」
「ひいいいいいいい。」
「さ、これでよし♪仕上げにお化粧もちょちょいと♪」
「あ、アメリア・・・あんた、楽しんでない・・?」
「い〜〜〜え〜〜?それもこれも、ガウリイさんのためですからあ♪」

先程のテーブルを片付けた甲板では、今度は防具類を外したガウリイと、ボランが神妙な面持ちで立っていた。
「ガウル殿・・・貴公はホントにあの娘を・・・?」
諦めきれない風なボラン。
「くどいな、あんたも。オレは滅多に嘘はつかないんだ。」
「う〜〜〜〜〜む。いや、まだこれからだ。」
「はあ。」
ガウリイ、大きなため息。
やがて船室からアメリアが出て来た。
「お待たせしました♪リラさん御登場です♪」
「ちょ、やめてよアメリナ!お〜げさなのよっ!」

「おお・・・・」
「へ・・・・?」
男性陣の前に姿を現わしたのは。
髪をすっきりとアップにまとめ、肩が半分くらい出ているクリーム色のドレスに身を包み、耳もとで大き目のイヤリングを揺らしているリナだった。
「さ、リラさん♪」
「こんなカッコまでさせて、どーする気よ?」
「いや単なる演出だ。ではここへ座ってくれたまえ。」
「へ・・・・・・!?」

今度用意されていたのは、やはりテーブルと椅子が二脚だった。
が。横長のテーブルのまん中が板で遮られている。
「こ・・・これわ一体・・・・?」
「れでぃ〜すえ〜〜〜んどじぇんとるめ〜〜〜ん♪さあいよいよ、
ドキドキカップルふぃーりんぐの時間がやって参りましたああ♪」
ギンギンの蝶ネクタイを付けた派手な服装の船員がマイクを持って進みでた。
「カ・・・・!?」
「ふ・・・・!?」
「説明しよう!」ボラン、ごほんと咳をしていきなりカメラ目線になる。
「二人がどれほどお互いのことを理解しているか、これでわかる仕組みになっているのだ!同じ言葉から連想されるものをその紙に書いて、みごと二人の息が合ったならば、このボラン、お二人を真の恋人として認めることにしよう!」
わ〜〜〜〜〜っ。
やんややんや。
すっかり船上はお祭り騒ぎである。
「ちょ、ちょおっとっ!?んなこと勝手に決めないで・・・」
「何か異論でも?それともリラさんには」ボラン、じろりとリナを見る。
「自信がないとか?」
この一言がいけなかった。
「やってやろ〜〜〜〜〜〜じゃぬわあああいっっ!!」
リナの闘争心に火をつけたのである。


だが。
闘争心だけではうまくいかないのがこの競技(?)である。
「第一問。『すきな食べ物。』」
かきかきかきっ。
「リラさんのお答は・・・おおっと、これは有名なミルサ−魚の姿煮だあっ」
「一方ガウルさんのお答は・・・・お〜〜〜、惜しい。ロアニア羊のワイン蒸しですねっ。」
ぶっぶ〜〜〜〜〜。
二人の答えが一致しないと、船員が笛から間抜けな音を出す。
もし一致すれば、船の銅鑼が鳴らされるはずである。
「つづいて第二問。『きらいな食べ物。』」
「ガウルさんの答えは・・・おっとポピュラーなところでピーマンだ。
リラさんの答えは・・・おお〜〜〜、これは何だか納得な答えだっ、『なし』だそうですっ!いや〜〜〜合いませんでしたね〜〜〜残念!」
司会代わりの船員が、一人異様な盛り上がりを見せる中。
二人の答えはことごとくハズれていくのだった。

やきもきしながら見守っていたアメリアに、ボランがため息混じりに言った。
「これはやはり・・・お互いを真に理解してはいないようだ。これではお世辞にも恋人同志など・・・」
アメリア、瞳に決意を固める。
「ボランさん、いくつ正解したら二人を認めてくれますか?」
「ん?そうだな、今のところ7問ハズしているから、倍の14問当たったらば認めよう。無理そうだがな。」
「・・・そうですか。わかりました。」
アメリア、立ち上がると司会にタイムを要求。

「タ〜〜〜〜イム!タイムですっ!お二人の側からタイムが要求されました。ここで5分間の休憩を取ります!」
ざわざわ。

アメリアは小走りに二人のもとへ駆け寄る。
「リナさん、ガウリイさんっ!」(こそっ)
「な、なによアメリア・・・あたし、も〜疲れて疲れて・・」
「このあたしに秘策があります、聞いて下さい。」
「なんだなんだ?」
「いいですか・・・?」
アメリア、リナに耳打ち。次いでガウリイにも耳打ち。
「え〜〜〜。ホントにそんなんでいいのお?」
「いいんです!ガウリイさん、わかりましたね?」
「おうっ♪」
アメリア、にやりと不敵な笑みを浮かべる。



そして。
「嘘だ・・・・」
「嘘じゃありませんよ♪」
「目の錯覚だ・・・」
「錯覚でもありません♪」
「ではこれは・・・」
「はい、現実です♪」
青ざめるボランの耳には、さっきから鳴りっぱなしの銅鑼が響き渡っている。
「い、いやおかしい。お主が先程タイムを取ってから急に当たりだした。何か仕掛けがあるんだろう!?」
詰め寄るボラン。
アメリア、にっこりと笑って答える。
「簡単なことです♪二人にそれぞれ、指示を出しただけですよ♪」
「指示?」
「そうです♪リラさんには、自分の思う通りの答えを書くように。
そして、ガウルさんにはリラさんが書くであろう答えを想像して書くようにって♪」
「そ、それだけで!?」
「そうです♪何といっても、ガウルさんはリラさんのこと、それはそれはふか〜〜〜く理解してますから♪」
アメリア、内心で自分に言い訳。
(少なくとも、これは嘘じゃないわっっ♪)
そこへ追い討ちをかけるように次々と正解の嵐が。
「正解〜〜〜〜♪」じゃんじゃあ〜〜〜〜〜〜〜ん!
「またまた正解〜〜〜〜♪」じゃじゃじゃじゃ〜〜〜〜ん!
「またまたまた正解〜〜〜〜♪これで20問正解です〜〜〜♪勇者殿、まだ続けますか?」
司会の船員がボランを振り返る。
席上では狐につままれたようなリナと、満足げなガウリイ。
二人の前には、みごとに答えが一致した紙が山積みになっていた。
ボラン、絶句。
やがてがっくりと首をうなだれて言った。
「試合、終了・・・・・」





着替えのためリナが船室に引き取ったのを確認して、ガウリイはボランに向かい合う。
ボランは沈黙のまま。
「ボランさん。真の勇者は引き際も肝心ですよ!」
アメリア、ないすぷっしゅ。
かっと瞳を開いたボランは、決意したような顔だ。
何かをふっきったような清清しいとも言える表情。
「うむ。貴公らの真の愛、見届けさせてもらった。この勇者ボランも完敗だ。貴公らの仲を認めることにしよう。」
「やり♪」
「やりましたね♪」
喜びあうガウリイとアメリア。
「いや、やはりよく見れば貴公はララアさんではない。真の勇者は一度決めた人をそうそうくつがえすべきでもないしな!わたしはララアさんを探して旅に出るつもりだ!」
ぱちぱち♪
アメリア、拍手を送る。
(ぜったいみつかんないと思うけど・・・・と、ガウリイ。)
「しかし・・・・」
ぽっと頬を染めるボラン。
「ん?」
「どうしたんですか、ボランさん。」
ボランはちらりと船室に視線を。
ガウリイ、嫌な予感。
「あの娘、リラさんと言ったか・・・着飾るとなかなかどうして美しい娘御だ・・・・・」
「げ」
「ボ、ボランさん?」
「ララアさんの妹君にどことなく似ている・・・・」
すでにボラン、妄想モード。
「あのララアさんの妹君なら、きっと美しく成長するに違いない・・・」

するとボランはくるりとガウリイに向き直り。
いきなり肩を掴んで言った。
「ガウル殿!リラさんを譲ってくれ!」
「なにいいいいいいっ!?」
「あああ。振り出しですううう。」とアメリア。
「貴公のことは諦めよう!だがその代わりに!」
「何がどうなるとそうなるんだああっ!」
「ガウル殿っ!」

ぶちい。


「え〜〜〜〜〜〜い、
うるさああああああいっっ!」


ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・
どっぼおおおおおおおおおん。


「リラさあ〜〜〜〜〜〜ん・・・・がぼがぼごぼ。」

「あ〜あ。ボランさん、流されて行っちゃいましたよ・・・?」
手すりから覗き込んでいたアメリアは、ガウリイを振り返る。
「知るか。」
頬を紅潮させ、自分より大きい男を海に投げ込んだガウリイは、ふん、と肩をそびやかした。
「ははは・・・ボランさんてば・・・。ガウリイさんを怒らせるなんて・・・・」アメリアは汗笑い。




さて、船室では怒り心頭に達したリナが、着替え終ったドレスやらコルセットやら髪飾りやらを部屋のあちこちにバラまいていた。
「まったく!あのエセ勇者!よくもこのあたしにあんな真似をさせたわねええっ。覚えてなさいよおおおお。」
とんとん。
「誰よっ?」
「オレ。」
鍵をかけていなかった船室のドアが開かれ、ガウリイがそっと入ってきた。
「着替え、済んだか?」
「済んだわよっ。・・・で、ボランはっ!?」
「ああ。何だか旅に出るって船を降りたぞ。」

気勢をそがれ、リナは肩の力を抜く。

「へ・・・?だってここ、まだ海のど真ん中よ?」
「勇者様ならへっちゃらなんだろ?」
しれっとガウリイ。
後ろでにドアを閉める。
「あ、あっそう・・・・」
リナ、途端に気恥ずかしくなり、くるりと背中を向ける。

「悪かったな・・・」
「え・・・・?」
背後で聞こえたぼそりとした声に、リナは振り返る。
「何よ・・・?」
「いや。理由はどうあれ、あんな真似までさせて、さ。」
頬をぽりぽりとかく、お馴染みのポーズ。
「そおおおおおおおよおおおお。この借りは高くつきますからねっ!」
つんっと口をとがらせ、リナは散らばった衣装を片付け始めた。
「ちなみに、いくらくらい?」
ガウリイの声には、柔らかな笑い声が潜んでいた。
「そーねっ。船旅の間は、あたしの奴隷になるってのはどう?」
冗談まじりに言ったリナだったが、まさか返答が返ってくるとは思っていなかった。
「いいぜ。」
「・・・・・!?」
慌てて向き直るリナ。
「い、いいの!?」
「ああ。船旅の間だけな。」
「ホントにホントでっ!?」
「ホントのホント。それくらいしてもバチは当たらないさ。断わられても当然のことを、お前はしてくれたんだから。」
青い目が、楽しそうに輝きながらこちらを見ていた。
顔がかあっとなるのがわかって、リナは急いで片付けに戻る。
「ど、奴隷ってのは何っでも言うこときくのよ?」
「おう。」
「お茶って言ったら、すぐに持ってくんのよ?」
「おう。」
「肩凝った、って言ったらすぐに肩たたきよ?」
「はいはい。」
「洗濯もそーじもするのよ?」
「はいよ。」
「そ、それから・・・」
「それから?」
「そ、それから・・・えっと・・・」
「心のままに。何でも。オレにできることなら。」

背中に優しい視線を感じながら、リナはただ顔を赤らめていた。








***おまけの後日談。

「な、な、なによ、これええええっ!?」
「うおわっ!?」
翌日。それぞれの船室から出て来たリナとガウリイの目の前の光景は。
色とりどりの旗。
色とりどりのリボン。
盛装し、二列縦隊に並ぶ船員。
舵の前には、船長がにこやかに聖なる本を携えて立っている。
その脇にはアメリア。
さらにその脇には・・・・・!?

「ガウル殿〜〜〜〜〜っ、
リラさ〜〜〜〜〜んっ!」

手を振っているのは、他ならぬあの自称勇者、昨日ガウリイに海に叩き込まれたボランだ!
「ボランさんはあ、お二人のこと、認めたんですよ〜〜〜っ♪」
「さあお二方!このボランが用意した祝いの席に、さあ、さあ!」
「い、祝いの席って・・・・?」頭を抱えるリナ。
「いやだなあ、決まってるではないか。」
どこからか、真っ白なタキシードと、純白のウェディングドレスを出したボラン。
「これはララアさんとわたしで着ようと思っていたものだが、お二人の門出に当たってわたしからのプレゼントにしようと思ってな。二人とも、わたしの分まで幸せになってくれ!!」
「ガウルさん、リラさん♪御結婚、おめでと〜ございま〜〜〜す♪」
『おめでとうございま〜〜〜〜す♪』
船員の大合唱。


ガウリイとリナは。
顔を見合わせ。
二人して。

ぷちいいいいいいいっっ!
























=================================えんど♪
最近、無印にハマったそーらです(笑)
いやあ見直してみると無印もいいですねえ。で、ふと「あの娘にプロポーズ!?」の回で、船上で追いかけ回されるガウリイが見たくなってつい、書いちゃいました(笑)
ボランさん。いいキャラクターだ(笑)
何かガウリイの芸風が変わってますが(笑)まあいいか(笑)ではこんな下らないノリの話をここまで読んで下さった方に、愛を込めて♪こーいうノリ、好きですいません(笑)
ではまたお会いしましょう♪

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