「続・変化」

「リナ・・・・?」
今の叫びは、リナの口から出たのだろうか?

オレはバカみたいに突っ立ったまま、次の言葉を待っていた。

「だって、急にあんなことになって。
どおすればいいのか、全く思い浮かばないのよ。
確かに、あの時はあたしが悪かったのかも知れない。
心配かけちゃったんだな、ってことはわかってる。
でも・・・・・」

ふと生まれる沈黙。
リナが、オレが、あの時の自分を振り返る。

オレ:
わかって欲しくて無理矢理な行動に出た。
だがそれは、自分がそうしたかったらからじゃないのか。
ごまかしてやしないか?
もうしそうなら。
オレは全く個人的理由で、リナを泣かせたことになる。最低だ。
リナ:
リナは・・・・・・どう思った?
泣いたのは・・・・口惜しくてか。嫌だったからか。怖かったからか。

なら何故、最後のキスは受け入れてくれたんだ?




「あたし・・・・・。
自分が、コドモだってこと、あの時わかった。
わかったけど、あんな風に・・・・・その、思い知らされるとは・・・・
思ってもみなかった。」
オレは目を閉じる。
胸の痛みは、消えるどころか激しく波打っている。
「だから。
少しは・・・・気をつけようと思った。少しは、よ。
今までの自分の生き方を今さら変えようとは思わないし。
ただ、その、ガウリイを心配させるよーなことは、やめよと思ったの。」
リナがほんの少し、頬を染めたのを、オレが目にすることはなかった。
オレはずっと目を閉じて、リナの一言一言を聞き漏らすまいと、集中していたからだ。
「で・・・・・・・でも、ね。」
うん。
だから?
だから?リナ。
はっきり言ってくれ。

「お、落ち着かないの。ここんとこ、夜もよく眠れないの。
忘れようと思えば思うほど、はっきりと浮かんじゃうの。
んで、その・・・・・・」
何気ない顔で、朝の挨拶をしたリナ。
拍子抜けしながら、それをあえて受け入れたオレ。
何が間違ったんだろう?
「が、ガウリイがね・・・・・・・。」

オレが?

一緒にいるのすら嫌になったとか。
頼むから、そんな言葉だけは聞きたくない。
オレはいつしか、自分の拳を握りしめていた。

「ガウリイといるとね・・・・・。落ち着かないの。」
・・・・・・・・・・・・・・へ。
オレは目を開ける。
真っ赤なリナの顔が目に入る。
今、なんて言った?
「あ、あんたがね、ふとこっちを見たりとか、い、いつもみたいに頭を撫でたりとか、すれ違うだけでね、その・・・・・。
息苦しくて。
頭がか〜〜〜〜っとなって。
心臓がどくんどくん言い出して。
どおしていいのか、わかなくなっちゃうのよ・・・・・・。」

・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
おい・・・・・・・・。

「リナ・・・・」
「だ、だって今まで、んなことなかったもん。あんたと一緒にいて、こんな思いしたことなんか。あ、あたし・・・・今の状態じゃ、あんたを抱いて翔風界で飛ぶことなんか絶対にできそうにない!」

・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・ぶはっ。

「あっっ!?ちょ、ちょっと笑ったわね!!あ、あたしは真剣に、その、話してたのに!!」
「くっくっく・・・・・」
「ちょっと!!ガウリイてば!!!」
「ぶははははははははは・・・・・・」
「ガウリイ!」

ああ。
全くバカバカしいよ。
リナはリナだ。
オレは何をあんなにヤケになったんだろ。

「っこらぁ!ガウリイぃ〜〜〜〜〜!!」
詰め寄るリナの、腕を捕らえる。
途端にリナが、びくっと体を震わせる。
「悪い悪い。ちょっと・・・・・ウケちまったもんで。」
「な、なにが!?」
「いや悪かった。謝る。すまん。ごめん。」
「な、なによ・・・・。」
「リナ。」

リナの目を覗き込む。
そこに怯えの色がないか、オレは探してるのか。
「オレといると落ち着かないって、お前は言ったよな。
・・・・だから、あの時の事はなかった事にしてくれって言ったのか。」
「そ・・・・そうよ。」俯くリナ。
「なんで落ち着かないのか、わかってるのか。」
「そ・・・・それは・・・・・。」
「あの時の事を思いだすから、か。そんなに嫌だったら、さっさとオレと別れればいいじゃないか。」
さっと顔が上がる。
それは考えていなかった、という顔だ。
まるで、さっきのオレと同じ。
オレはちょっと自惚れる。
オレたちは、互いに離れたくはないのだ、という事を確認して。
「なあ。何で落ち着かないんだ。わかんないか。」
「わ・・・・・わかんないわ、よ・・・・。」
「じゃあ教えてやる。あのな。」
リナが眉を寄せる。
「なによ?」

オレは彼女の耳に口を寄せ、告白する。
「オレも、お前がいると落ち着かない時があるんだ。」

「え・・・・・・・。」
硬直したリナ。
ゆっくりと顔を離したオレを、おそるおそる見上げる。
「それって、どおいうこと・・・・・?」
「それは。」
再び顔を近付ける。
今度は耳ではなく。
・・・・唇に。

「こおいうこと、さ。」




腕の中で。
リナの小さな体は、一瞬びくりと撥ねた。
肩が震えている。
オレは片腕で包み込むように背中を抱き締めると、引き寄せた。
もう片手は、頭を支える。

華奢な指が、抗うようにオレの肩を掴んだ。
ぎゅっと。
体全体に力が入っているのがわかる。

オレはゆっくりと時間をかけて。
それらを抜き取っていった。


「・・・・ふ・・・・・・」
ほんの少し解放された唇から、かすかな吐息。
それさえも奪っていく。
背伸びしていたリナは、今や全く力が抜けていた。
肩を掴んでいた手も、するりと下に。
両腕でオレは支えてやらなければならなかった。



「っは・・・・・・・・」
ようやく唇を離す。
顔を覗き込む。
リナは目を閉じていた。
腕の力をゆるめると、リナはずるずると下に滑り落ちた。
「お、おい・・・・」
受け止めようとして、二人とも床に座り込む。




「リナ・・・・?」
だらん、とした体を抱えてやる。
リナの頭は、胸にこてん、と当てられていた。
少し、呼吸が荒い。
「い・・・・いつも、いきなりなんだ、から・・・・・」
くぐもった声が、胸の辺りからした。
「これのどこが、教えてやるってこと、なのよ・・・・」

う〜〜〜〜ん。
まだ、行動でわかってくれる年じゃないか?
そうだ。
オレは、まだ、言葉で気持ちを伝えてないことに気がついた。
呆れる。

「オレが落ち着かないのは、な。リナ。
それは・・・・・・オレが、お前を好きだからさ。」
「す、き・・・・・・・?」
「言葉じゃうまく言えないけど。オレはそーゆーの苦手だし。
ただ、リナを愛しく思う。
だから、落ち着かない。」
「好きだと・・・・・落ち着かないの。」
ああもう。
「だから。これは、あれだな、一般的に言えば。
オレはリナに、恋してるってこった。」

「こ、こいいいいい!?」
慌ててリナが顔をあげる。こんなに真っ赤になったリナは初めて見た。
「あ、あ、あんたが、あ、あ、あたしに・・・・・!?」
「おかしーか?」
「お、おか、おか・・・・・」
「おかしーか?だってオレは男だし。お前は・・・・女の子だし。
そういう事になっても、おかしくはねーだろ。」
「そ、そりゃそーだけど・・・・。」ごにょごにょ。
「だから。リナも同じなんだよ。」
「へ・・・・。何が。」
「オレといると落ち着かないってのは。お前さんも、オレを意識してるって証拠だ。少なくとも。」
「い、い、い、意識!?」
「そう。」

リナの鼻先に、顔を近付ける。
「今、キスしてた時。胸がどきどきしなかったか?」

大きな目が、さらに開かれる。
ぱちぱち、と瞬く。
「どうなんだよ?」
「・・・・・・・。」
「言えよ、リナ。」
「・・・・・・・・・・し、・・・・・・・・・・・・・」
「嫌なら、もうとっくにオレは吹っ飛ばされてるよな?」
「う・・・・。」
「この間の時もそうだ。無理矢理あんな事をしたのは悪かったけど、オレは。」
酔いは醒めていた。ウソじゃないぞ。
「オレは。最後のキスは、謝んないからな!」

「が、ガウリ・・・・。」
「オレが嫌か、嫌いか?なら、オレはお前の前から姿を消してやる。
消したくは、絶対、ないけど。
でももし、そうじゃなくて。
お前が単にとまどってるだけなら。
オレは絶対にお前から離れたりしないぞ。」
「と・・・とまどってる?あたし・・・・?」
「そうだよ。素直になれ、リナ。オレの事は、嫌いじゃないって。
今のキスは嫌じゃなかった、って。言えよ、リナ。」
「ガウリイ・・・・」
「オレ達はな。今、最初のスタートラインにたったところなんだ。
ま、最初はオレのせいでちょっとつまづいちまったけど。
・・・・・あのキスから、もう一度始めよう。リナ。
好きだ、リナ。
お前と、別れたくない。ずっと一緒にいたいんだ。」
「ガウリイ。」
「酒場で、女にキスされたオレを見た時。
どうして逃げ出したのか、教えてくれ、リナ。」
「あれは・・・・」
「それとも。オレがあそこに戻ってもいいのか?」
「やだ。」
「・・・リナ。」
「あたし・・・・・。」
また失敗しないよう。
自分を戒める。
ゆっくり。
ゆっくり、だ。
「・・・・最初は、落ち着かない関係でもいい。
それはまた変わるよ。
でもそれは、・・・・・悪い変化じゃない。
新しい変化だ。
でもリナに一番わかってもらいたい事は。」

頭を撫でる。
何度も、手触りを確かめながら。
いつものように、撫でていても。
愛しさは増していくから。

「一番大事な事は変わらないということ。
オレが、リナが。
一緒にいたいと思ってる、その気持ちだよ。」



どきどきして。
何気ないことに一喜一憂して。
時にはひどく落込んだり。
意外な時に、大きな力を貰ったり。

一緒にいるなら。
これからも、一緒にいるためなら。
そんな変化を受け入れよう。
いつか、恋は愛に変わるから。
もっと大きな、力になるから。
その時、後を振り返ってくすりと笑えるように。
逃げないで。
ひとつひとつ、乗り越えて行こう。
ほら、手をつないでいるから。




「ガウリイ・・・・。」
「ん?」
オレの胸に、寄り掛かりながら呟くリナの声は、甘くて心地よかった。
「あたしね・・・・。」
























==================================================END.

ひええ。やっと終わりましたあ!!1週間もかかっちゃった。
ブランクがあると、それまでの話の運びがすっかりと消えてしまうそーらの頭はトリ頭(笑)また一から読み直し、読み終わる頃には時間がなくなってしまう、の繰り返しでした。あう。

なんだか途中、壁紙に呷られたか(壁紙をつけた状態でないと書けないんです・笑)ガウリイがフェ◯モン大放出(おいおいおいおい・・!)で、困ったちゃんでしたが、まあ、キス止まりで良かったっす(爆笑)

変化。秋月さんも書いて下さいましたが(おうぢ・さんくす♪)、そーらのは何だかガウリイが暗いというか、ヤバいというか(笑)
最後はリナのおかげで明るく終われて良かった良かった(ほ)。
このさらに続編が本の『そらりあむ・ば〜じょん4.0』に載っています。
最後のリナちゃんのセリフは、ぶったぎってありますが、続くのは素直な一言だと思って下さいませ。

さて。
では皆さんからの反応をどき×2しながら待ちつつ。
(反応、くるかなあ・笑)
こんなそーらの自分かってパワー炸裂なお話を読んで下さる皆さんに、変わらぬ愛を込めて。
そーらがお送りいたしました。

 

この感想を掲示板に書いて下さる方はこちらから♪

メールで下さる方はこちらから♪