「木漏れ陽のように」


 
「きゃあ〜〜〜〜ん。これ素敵ぃ♪」
「どれどれ。」
「これこれ♪こっちのぉ♪」
「・・・・・。」
「買ってぇ〜〜〜〜ん♪」
「え!?い・・・今?」
「ん〜〜〜ん、誕生日に!」
「あ・・・ああ、そう・・・・。
う〜〜〜〜ん。考えとくよ・・・・・。」
「きゃ♪やったぁん♪きっとよぉ♪」
 
仲良く腕を組んで宝石店のショウウィンドウの前から立ち去る二人。
勿論、リナとガウリイではない。
どこかのバカップルである。
 
そのすぐ後を歩いていたリナは、呆れた顔でそれを見ていたが
ふと興味が湧いたのか、ウィンドウに近寄る。
 
「よくやるわね〜〜〜。どれどれ。ああ、これか。」
「お〜〜〜い。何やってるんだ、リナぁ〜〜〜。」
「え?いやあ、今のバカ女がねだったのがどれかと思ってね。ははあ・・・これか。
いやあ、あの彼氏、破産ものだわ。」
「へ〜〜〜。そんなに高いのか?」
「そりゃあもう。だあって見てよ、この透明度の高さ、大きさ、色、カットの仕方、どれを取っても一級よ♪」
「ふ、ふ〜〜〜〜〜ん・・・・」
「ちょっと。何後ずさりしてんのよ?」
「いや、別に・・・。まさかお前さんも、誕生日にこれ買ってぇ!とか言い出すかと思って・・・・」
 
リナは吹き出した。
 
「な、何言ってんのよ?あたしがそんな事言う訳ないでしょ?
だいいち、そんな甲斐性があんたにある!?」
「う・・・ありましぇん・・・・」
「そーでしょ!大体、欲しかったら自分で買うか、どっかから頂くかするわよ。」
「頂くってお前・・・また盗賊いぢめする気か?」
「悪人に人権はのわ〜〜〜〜い♪」
「でもお前さん、ホントに光り物好きだからなあ。」
「・・・な・・・・なによ。なんか言いたそうね。」
「んにゃ。ただ、誕生日に何が欲しいのかと思ってな。」
「え!?く、くれるわけ!?」
「なんだよ、その驚きは。オレだってなあ・・・・。」
「いーわよいーわよ、無理しないで。アンタの財布の中味はあたしがよ〜〜〜くわかってるから。それに、誕生日なんてずっと先よ。」
「あ。そーなのか・・・。」
「そーよ。はい、これでこの話題はおしまい♪」
「ほいほい。」
 
 
 
しばらくして町を出た二人は、午後のお日様もまだ高いうちに見晴らしのよい草原に出た。遠くで、家畜の群れを連れた牧夫がのんびりと歩いている。
 
ふわ〜〜〜〜。
ガウリイがあくびをした。
ふえ・・・・。
リナに移った。
 
二人は顔を見合わせ、言った。
「昼寝、してこーか・・・・。」
「そうだな・・・。」
 
 
お日様が眩しいので、青青とした枝を目一杯広げた、
大きな木の根元で横になることにした。
ガウリイはナップザックを枕元に置くと、それに頭を乗せて寝転がった。
リナは、腰を下ろしたが何故かすぐに寝る気にはなれず、ぼ〜〜〜っと景色を見ていた。
 
名も知らない、だがよく見かける、そんなポピュラーな花が、すぐ目の前に咲いている。
ぶんぶん、と呟くような音を立てて、羽虫がその周りを飛び交う。
暖かくて、眠くて。
でもすぐに眠ってしまっては勿体ないような、そんな時間。
 
とっくに寝付いていたと思ったガウリイの方から、声が聞こえたのはその時だった。
「オレ、お前の誕生日にはなんかやるけど。宝石とかはやらない
からな。」
リナは、きょとん、として、次いで背中を向けて横向きに寝ているガウリイの方を見る。
「・・・なによ。突然。」
「いや、ちょっと言いたくて、な。」
「宝石とかじゃなくって、が?」
「そ。何故だかわかるか。」
「・・・・・。」
 
羽虫は2匹になった。
 
「わかんない。」
「金とか、金目のものはやらない。言っとくけど、甲斐性がないから、じゃないからな。
まあ、確かに甲斐性ないけどさ・・・。」
「じゃ、なに?」
 
羽虫は、戯れ合いつつ、花の周りを浮遊する。
 
「モノでお前さんを買いたくないからさ。」
「・・・・え。」
 
その意味を確かめようとして、リナがガウリイの顔を覗き込もうとすると。
次に聞こえてきたのは軽いイビキだった。
 
リナは、固まり、次に赤面し、頭を掻き、そしてわざとらしく明後日の方を向いた。
 
「・・・ばか。」
小さく呟いた声は、羽虫の羽音に消えた。
 
ごろん、とリナは寝転がる。
相変わらず、ガウリイは気持ち良さそうに寝ていた。
目を閉じて、リナは寝息に耳を澄ませる。
 
風の音と、それが枝の葉を揺らす音。
羽虫はどこかへ飛んで行ってしまった。
他には何も聞こえない。
静かで、でも退屈しない。
眠る前のほんの一時の至福。
 
ああ。
ガウリイがくれるとしたら。
こおいうものなんだろうな。
 
 
リナは目を開いた。
目を見張った。
木漏れ陽が差し込む。
それはきらきらと輝いて、リナの目に焼き付いた。
なんだ。
その辺の宝石よか全然奇麗じゃん。
そう言おうと、ガウリイの方を振り返ると。
彼の髪が、木漏れ陽を受けたところが黄金のごとく輝いていた。
 
リナは呟く。
「うん。あたしってば、やっぱ光り物が好きだからね。」
 
 
 
 





















=================おそまつ!!
 
 
ちなみにリナが言ってたのはダイヤモンドの級を決める
4つのC。
(クラリティ、キャラット、カラー、カット)一時期、宝石売り場でバイトしてました(笑)ああいうバカップルはやまほど見ましたわ(笑)
お気付きの方もいらっしゃると思いますが。木漏れ陽のような、と思いついたのはまたも小松未歩さんの曲「未来」の一文からです(笑)

でわ、変わらぬ愛をあなたに♪
そーらがお送りいたしました。

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