「妄想邁進小説・笑」

風呂から上がり、ゼルガディスが階段をとんとんと昇っていた時である。

「ゼルガディスさん、こっちこっち。」
階段の上で、アメリアが手招きをしている。
「?」
昇り切ったゼルガディスの腕を掴むアメリア。
強引に隅に引っ張って行く。
「お、おい。」
「し〜〜〜〜!静かに!」
口の前に人さし指を当て、何だかゼルにとって嫌な人物を思わせるポーズ。
「聞こえちゃいます!」
「・・・聞こえるって、誰に?」
「し〜〜〜!」

引っ張って行ったのは、アメリアたちの部屋の前。
階段を上がって右の方向だ。
ゼルとガウリイの部屋は反対方向。
その間に5部屋くらい空いている。
「なんなんだ、一体。」
洗面器を抱えたまま、ゼルは嘆息する。
「あのですね。今、部屋に入らないほうがいいと思います。」
ここまで来れば大丈夫と思ったのか、アメリアも普段の声量。
「?どうしてだ。」
「・・そ、それはですね・・・。」
きょろきょろ。
「早く言え。」
「ガウリイさん達の部屋に、リナさんがいるからです。」
「・・・・それがどうした?」
「ですから、リナさんと、ガウリイさんが二人きりで部屋にいるんです。」
「別に珍しいことでもないだろう。何か話でもあるんじゃないのか。」
突っ込まれ、アメリアは息を飲み、頬をピンクに染めた。
「・・・話、じゃ、ないみたい・・・です・・・・。」
「・・・・・んなに?」



アメリアによると。
アメリアとリナは、入れ違いで風呂に入った。
先に出たリナは、何だかそわそわとしていたらしい。
そう言えば、夕食の席から何だか様子がおかしかったそうなのだが。
(そんなことには全然気付かなかったゼルは、ただ頷いてアメリアの話に耳を傾けた。)
アメリアが風呂から出て、部屋に戻るとリナの姿がなかった。
たぶんガウリイさんたちと話でもあるんだろう、と男性陣の部屋の前に行ったアメリアは。


「・・・・話じゃなかった、って、どういうことだ・・・」
なかば呆然とゼルが聞き返す。
「で、ですから・・・・その・・・・ごにょごにょ。」
「ごにょごにょでは、わからん。」
「と、ともかく!」
すでにアメリアは真っ赤である。
「入っちゃいけない雰囲気だったんですってば!」
「・・・・・」
ゼル、唖然。
「入っちゃいけない雰囲気て・・・・・まさか、あいつらがあ?!」


思いも寄らない話であった。
夕食の席では、いつものお食事バトルをして(ゼルにはそう見えた)、最終的にはリナのアッパーカットが見事にガウリイの顎に命中し、ガウリイが沈没している間にリナがデザートを平らげた・・・・はずだった。
その二人が、まさか?


「でも、本当なんですってばあ。」言い返すアメリア。
信じられない、という表情のゼル。
「確かめてこよう。」
くるりと踵を返すゼルに、アメリア、タックル!
「ま、待って下さいよう〜〜〜〜!」
「放せ!ちょっと様子を伺うだけだ。」
「ダメですってばぁ〜〜〜」
岩男に生まれたてのマルチーズの子犬のようなアメリアがぶら下がっても、何の効果もなし。
「ゼルガディスさんてばぁ〜〜〜!」
「静かにしろ。聞こえる。」
「ふにゅう・・・。」

すっかり部屋の前に到着。


聞き耳をたてる二人。
・・・二人?
「おいアメリア、お前まで・・・」
「静かに!聞こえちゃいます。」
どこから出したのか。
コップを逆さまにドアに当てているアメリア。
こちらはもっと凄い。
ゼル、七つ道具?のうちの一つ、お手製の聴診器を当てる。
(TRYにて使用・笑)


どきどき?





「う・・・・ん!」
「リナ?」
「・・・・・・・・くひゅ!」
「なんだよ?」
「・・・・・・・・くすくす!」
「なんだってば。」
「だって、だって、・・・くすぐったいんだもぉん・・・。」
「あのなぁ。」
「うみゅ・・・・・きゃは!・・・・きゃははははは!」
「・・・笑うな。
こういう時笑われるのって、結構辛いもんがあるんだぞ。」
「え・・・そうなの?」
「ん。」
「ふ・・・・・くすくす!だって、・・・・・うひゃ!」
「変な声出すなってば。力が抜ける。」
「だってくすぐったいもんは、くすぐったいもん。」
「リナって意外に感じやすいんだ。」
「失礼ね!意外って、何よ、意外って。」
「いや、別に。」
「・・・・・・・・・あ。」
「どうした。」
「そこそこ。」
「ここか?」
「う・・・ん!」
「ちっちゃいなあ、お前の。」


アメリアとゼル、顔を見合わせる。
真顔のまま、二人は盗聴続行。


「や・・・・」
「ん?」
「そんなとこ、入れちゃダメぇ・・・」
「え。じゃ、こっちか?」
「うりゅ!・・・ぷひゃはははは。やだぁ〜〜〜」
「動くなよ。」
「だああぁってえ。」
「動くと痛いぞ。」
「えぇ〜〜〜・・・・じゃ、おとなしくする・・・」
「痛いか?」
「ん〜〜〜ん。」
「うわ・・・すっげ・・・・。こんなんなってる。」
「やだ!見ないでよ!」
「だあってさ、ほら。」
「〜〜〜〜〜見せないでよぉ!もう、泣くぞぉ!!」
「こっちもやるか?」
「うん。・・・もう我慢できない。」
「わかったわかった。ワガママなお嬢さんだ。」
「早くぅ〜〜〜〜!」


室外の二人は。
それぞれエモノを懐にしまい、あたふたとその場を退散。

階段を駆け降りながら、ゼルは。
「・・・疑ってすまない、アメリア。」
「いえ・・・いいんです・・・わかってもらえれば。」

しばし無言の二人は、そのまま早足で宿を抜け出し、夜の風に当たりに行ったそうな。すれ違った宿の人間の話では、二人とも茹で上がった毛ガニのように真っ赤だったらしい・・・・。






さて。
翌朝。

朝食を取ろうと降りてきたリナの前に、でろりんとした顔のゼルとアメリア。二人は、呆然と席に着いていた。
「あれ。二人ともどうしたの?
アメリア、あんた昨日の晩、どこ行ってたのよ?」
ゼルとアメリアの顔を交互に見比べるリナ。
そこへガウリイ登場。
「あ。ゼルガディス。お前、昨日の晩はどこに行ってたんだよ?」
「え。ゼルもそっちの部屋に帰らなかったの?」
「え。アメリアもか。」

リナとガウリイ、顔を見合わせる。

「あんたたちって、もしかして・・・・・?」
にやにや笑いを隠せないリナ。
「よ!お安くないね!!」


脱力したゼルガディスの口から出たセリフは。
「お前らこそ・・・・」

「え?あたしたち?」きょとん、とリナ。
「なんかしたっけ、オレたち。」と二人は顔を見合わせる。
「だって、昨日お風呂から出たら、リナさんいなかったじゃないですか。」
アメリア、気力を振り絞って(?)反論。
「ああ。あれは。」
「なあ。」

ちゃはは、とリナは、顔の前で手をぱたぱたと振る。


「探してもどうしても無くってさ。夕御飯食べてる時から気になって気になって。そしたら、ガウリイたちの部屋には備え付けがあったのよ。」

「・・・え?」とゼル。

「もう我慢できないって言うから、オレがやってやったの。」
「くすぐったいのなんのって、自分でやればよかった。」
「何言ってる。自分じゃ怖くて奥の方出来ないからやってくれって言ったの、お前だろ?・・・お前のあれ、小さくて苦労したぜ。」
「ふんだ。」
「そしたらその凄いこと。」

「あの・・・何の話でしょう?」おそるおそるアメリア。

振り返る二人。
「なにって。」とガウリイ。
「ねえ。」とリナ。ハモって答える。







『耳掻き』



「ったく、何年やってなかったんだよ、耳掃除。」
「え・・・その・・・一ヶ月よ・・・」
「たった?お前って新陳代謝が激しいんだな。まるで赤ん坊だ。
10年分かと思ったぜ、耳垢。」
「あ。言わないでって、言ったでしょ!わざわざ目の前で取ったヤツ見せるんだから。趣味悪いよ、ガウリイ。」
「だって、大きいの取れたらなんか嬉しいじゃん。」
「変なヤツ・・・・って・・・・あれ。」


リナとガウリイ振り返る。
そこには、椅子から転げ落ちて床に突っ伏しているアメリアとゼル。




「どしたの?そんなとこで。」





















~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ちゃんちゃん♪
くらげ学園の部室に、wwrさんが書かれた「妄想促進小説」があります。よっし。そーらも一度やってみよ♪と前から野望を燃やしてました(笑)
今回のネタは。
またマンガです(笑)あるマンガのドラマCDから思い付きました。
ああ、愛してるわ・・・◯尾さん!

マンガねたが大好きなそーらですが、今まで使ったの、わかりましたか?
使ったマンガを並べてみますと。
「彼方から」「シャンペン・シャワー」「機動警察パトレイバー」
「バスタード」「草原の狼」「TWO」といったとこでしょうか。
上記のドラマCDは、この中にあるマンガのです。

ちなみに、この話はシリーズになってまして(笑)あと三本は既刊『そらりあむ・ば〜じょん1.05』に入っておりました。現代版がもうひとつ別の読書室にあります。その現代版のルクミリばーじょんが『真夏の4.0』に載っております。『ば〜じょん1.05』が完売後は、CDロム『出張牢獄2002改訂版』に三話分収録されています。最後の一話は、そのCDについてる特典である某所に置いてあるかと(笑)結局、計何本書いたんだろう(笑)

ダークが終わってなんかヘン(笑)なそーらでした♪