「りんご殺人未遂事件」
(湯けむり温泉急行子づくりツア〜美人スリ姉妹は見たスペシャル・嘘)


とある夜。
ひっそりと立つ一軒の宿に集まった男3人。
暗い部屋で、ただ1本のローソクの明かりを頼りに、頭を寄せあう。
「このままじゃダメだ。」
1人の男が眉根を寄せて言うと、他の二人は頷いた。
「ああ。このままじゃダメだ。」
「何か策はあるのか。」
思い切って1人が切り出すと、最初の男は思いつめた表情で話し出した。
「俺が考えたのは・・・・」





「あ〜〜〜〜〜。やぁ〜〜〜〜っと着いたぞ。町だ町だ♪」
「ホントねガウリイ!これで今晩こそマトモなご飯がぁ〜〜〜♪」
「リナ」
「ガウリイ」
手を取り合って見つめあう二人。
「肉肉肉♪」
「お魚お魚お魚♪」
会話がこれでなきゃね・・・・(笑)

「早速何か食べに行こう♪」
「お〜〜〜♪」
「待って下さい。」
意気揚々と歩き出した二人の、背中から声を掛けた者がいる。
「なぁ〜によ、アメリア。」リナがしぶしぶ振り返る。
「先に宿の予約を取った方がいいんじゃありませんか。」
「なんで?」
「ここはリンゴで有名な町です。この時期、リンゴの収穫で賑わうんですよ。後で休む宿が無くなってるかも知れませんよ?」
「リンゴ?」
「リンゴ。」
「リンゴ〜〜〜♪」

お腹のすいた二人の妄想は広がるばかり。
「さくさくのアップルパイ♪焼きリンゴ。リンゴのコンポート♪」
「オレ、なんだっけ、あの、リンゴのケーキの上にバニラアイスクリームが乗っかってるヤツ♪」
「アップルコブラね〜〜〜♪」
「リナぁ〜〜〜♪」
「ガウリイ〜〜〜〜♪」
「早く行こう〜〜〜〜♪」

「お主らの頭の中には、食べ物以外の事はないのかの。」
アメリアの後から、野太い声。
言わずとしれた、セイルーン王家第一王位継承者、フィリオネル殿下である。
「そんな事はないわよ。」
「そうそう。」
「とてもそうは見えませんが・・・・」1人ツッコミを入れるアメリア。
「全くじゃ。しかし・・・・ホントにリンゴの収穫で賑わっておるのかの?」
一行はフィルの言葉に、辺りを見回す。
宿屋は何軒も軒を連ねているが、通りを歩く者はいない。
ぴゅう〜〜〜と寂しげな風が吹いて、ペンキの剥げかかった看板を揺らし、まるであつらえたかのように回転草なんぞが転がってくる。
その上、お腹をすかせてアバラが浮き出た野良犬なんかがへっへっと歩いてご覧なさい。
「ここってもしかして・・・・寂れた町?」ということになる。

「おかしいですねえ。確かにこの本には・・・」
懐から何かを取り出すアメリア。
「何よそれ。ちょっと見せたんさい。・・・・旅の友ガイドブックぅ!?あんたこんなの持って旅してたわけ!?」
「あ〜〜〜〜!返して下さいよ〜〜〜〜」
「なあ、今年って何年だっけ?」とガウリイ。
「何よ突然。」
「いやあ、ここに、本の発行年てのが書いてあるから。」
「どれどれ。あ〜〜〜〜!これ、もう随分前のじゃない。当てになんないわよ、こんなの。」
「え〜〜〜〜。そうなんですかあ?」

その時。一行の前に進みでた者がいた。
「もし。旅の方々。」
「へ?」
黒い頭巾を頭からすっぽりと被り、腕に植物で編んだ籠を下げ、地面スレスレの長いドレスを纏った初老の女性とおぼしき人物だった。
「何か?」
「ようこそこの町へいらっしゃいました。時に、この町特産のリンゴはいかがですかねえ?」
そう言うと、籠の中から真っ赤なリンゴを取り出し、差し出した。
「甘いですよ。」
「うわぁ〜〜〜。見事なリンゴですねえ。」
「ダメダメ。こーいう観光客目当てのとこは相場より高いと決まってるの。どうせ買うなら、町の市場とかのが安いのよ。」
「わあ、リナさん、さすがは旅慣れてますねえ♪」
「まぁね〜〜♪」と無いムネを張るリナ。
「あの、もし」
リンゴ売りと思われた人物は苦笑したようだった。
「これはサービスですじゃ。町にいらした方に、歓迎の気持ちを込めて、町からのぷれぜんとですじゃよ。」

ぴく。

「サービス?」
「つまり、タダ?」
「そ、そうですじゃ。」
途端にちゃはは、と笑い出すリナ。
「なぁ〜〜〜んだ、そうならそうと、ハッキリ言ってくれなくちゃ♪いやこりゃどーもどーも♪喜んで御馳走になりますう♪」
「で、ではこれを・・・・。」
再び差し出されたリンゴを、リナが受け取る。
「ありがとね〜〜〜♪」
手を降るリナに、腰を屈めて挨拶しながら、女性は言った。
「どうぞ、ごゆっくりしていって下さいですじゃ・・・」



「しっかし、気前い〜わね〜♪んじゃ、遠慮なく。」
あ〜〜〜ん、と口を開けたリナ。情けないガウリイの声が重なる。
「あ〜〜〜〜。リナ1人でズルイぞ〜〜〜」
「リナさん、待って下さい!」
「へ?」突然アメリアに呼び止められ、ぴたりと止まるリナ。
その手から、すっとリンゴが消える。
「!?あ、ちょ、ちょっとガウリイ!」
「あ〜〜〜〜ん。」
かぷ。
油断したリナから奪ったリンゴにかぶりつくガウリイ。
「ガウリイ〜〜〜〜!!!」
詰め寄るリナ。
だが、その途端。
ばったりとガウリイが倒れた。
「ガウリイ!?」
「ガウリイ殿?」
「ガウリイさん!」





ぐお〜〜〜。
すぴゅ〜〜〜〜。
く〜〜〜〜〜。

「寝てますね・・・」
「そのようね。」
「はて、一体どういう事なんじゃ?」
倒れたガウリイを、急いで宿の1室に運び込んだ3人。
フィルが軽々とベッドに降ろすと、ガウリイはイビキも高らかに・・・
寝ていたのだ。
「だから、ちょっと待って下さいって言ったのに・・・」
「そう言えばアメリア、何で止めたの?」
「だって、何か怪しいじゃないですか。いきなりタダでリンゴを配るなんて・・・。旅のお方に、って、わたし達しかいなかったじゃないですか。」
「宣伝にならないって訳ね。」
「なるほど。ワシはてっきり、流行らない町の町起こしの一貫かと・・・」
「それもあるかも知れませんが。タダより怖いものはないと言うじゃありませんか。」
「う〜〜〜〜ん。」
考え込む3人をよそに、ガウリイは平和そ〜〜〜な顔で眠っている。
「とりあえず・・・医者でも呼んでみるか。」
「そうですね。」



「これはリンゴの呪いです!」
一目見るなり医者はのたまった。
ずべえ。
一行がコケる。
「ちょっと待ってよ。あんた医者でしょ!?」立ち直ったリナ。
「確かに私は医者ですが。副業でまじない師もやっております。」
「ムジュンした二足のワラジですね・・・」ぼそっとアメリア。
「ともかく。以前にも見たことがあります。間違いなく、リンゴの呪いです。」
「何なのよ、その呪いってのは。」呆れた顔でリナが問い返す。
「恐ろしい呪いですよ。一口食べた者を、永遠の眠りに誘うのです。」
「永遠の眠り!?」
「そぉ〜〜〜です。」
「そんな。リナさん、どうしましょう。」
「ちょ、ちょっと。解決法って・・・ないの?」
半信半疑で聞いていたリナだが、医者がマジメな顔のままなので、ちょっと不安にかられたらしい。
「あります。」
医者の目はきらりと光った。


「王子様のきすぅ〜〜〜〜!?」

「そぉ〜〜〜です。」
きらり。
「古来より、リンゴの呪いには王子様のキスと相場が決まっているのです。王子様のキスが無ければ、この方は眠ったままです。」
「な、なぁにぃ〜〜〜!?」
思いっきりひくリナとアメリア。
きょとん、とフィルが事態のなりゆきを見守る。
「ちょっと待ってよ。他に・・・方法はないの?」
「ありません。薬も魔法も、この場合役に立たないのです。」
「んな馬鹿な〜〜〜〜!」
「どうします、リナさん!」
「んなこと言ったって、こんな町に王子様なんかいるわけないっしょ!」
頭を抱える二人の脇で、医者は口の端に小さく笑みを浮かべていた。
「それでは、おふれを出して近隣より集ってはいかがです。町を上げてお手伝い致しますよ。」

ぴたりと固まる二人。
「おふれ・・・?」
「そうです。」医者は立ち上がり、手を広げて芝居がかった仕種で言った。
「眠れる美女を救う勇者よ来れ!王子求ム。交通費自腹。時間応相談。容姿問わず。委細面談。」
ぴき。
「あの・・・」
「どうかしましたか?」
口の端をひくひく言わせながら、リナが眠れるガウリイを指差す。
「この人・・・の人なんですけど・・・・」
「え・・・・」

何も知らず、すぴょすぴょと眠るガウリイ。長い金髪を枕に広げ、襟元まで毛布に覆われている。
「男!?」
「男。」
「この人が!?」
「そう。男。」
真顔で肯定され、固まったのは今度は医者だった。
彼はくるりと後を向き、何やらぶつぶつ呟き出した。
「予定が違うじゃないか、あいつ、男と女を間違えおってからに・・・」
「何か言いましたか?」
え!?い、いえ、別に!・・・しかし・・・そうですか、男の人・・・」
明らかにショックが隠せないようだ。
思いつめたような悲壮な顔でしばらくガウリイの寝顔を見ていた医者は、ぽん、と突然手を打った。
「そうだ!いい考えがあります!」
「いい考え・・・?」医者以外の、3人が唱和した。





***************

がやがや。
わいわい。
口コミと、徹夜で町の人間が近隣に張りまくったはり紙のお陰で、町は一気に賑やかとなった。
我こそはと思う自称他称王子の団体が到着したのである。
その数は日に日に膨れ上がり、町の宿屋は全て満室となった。

「ガウリイ起きたら怒るだろ〜〜な〜〜〜」
「そうですね・・・」
医者の『いい考え』を実行するべく、町の人間が総動員された。
先頭に立ったのは町長で、早速ガラス職人に言い付けて特別あつらえのケースを作らせ、衣装担当の呉服屋には突貫でドレスを作らせ、メーキャップアーティストとフラワーアレンジメントの先生が呼ばれた。

町長の家の一室は、美貌の姫の眠るガラスケースで占拠された。
・・・・美貌の姫って?
勿論、ガウリイである。
顎のすぐ下まで襟の詰まった素晴しく豪華なドレスを着せられ、黄金の髪は梳られシャンプーもリンスも完璧、キューティクルぴかぴか天使の輪。
うっすらとお化粧された顔には、ピンクの口紅を塗られた口元がワンポイントになっている。
ガラスケースの中には白いバラが敷き詰められ、部屋にもふんだんに花が生けられていた。

その外では、整理券を配る仮設のテントが設けられ、町に到着した王子達が並んでいた。徹夜組も出ているらしい。
しかもこの整理券、タダではないのだ。
チャレンジ料として、ちゃっかり料金を取っている。
眠る姫を一目見ようと、部屋の窓に張り付いている者もいた。
町長はホウキを持ってそういう不届きものを追い払っている。


ガラスケースの脇に、ぽつんと立っている小さな人影。
その人物の指が、すっとガラスケースの蓋を指で撫でる。
「まあったく。なんでこんなことになっちゃったのかしらね。」
ガラスに顔を近付け、中を覗き込む。
すぐ目の前に、眠るガウリイの顔。
「世話の焼けるあんちゃんだこと。・・・・どっちが保護者だかわかんないじゃないの。」
答えはない。
影はしばらくケースを見つめていたが、い〜〜〜っと舌を出した。
「何よ。男のくせに奇麗な顔しちゃって!せいぜい、王子様からのあっついキスを受けることね!」
指はぴん、と蓋をはじいて、去って行った。





「リナさん。やっぱりおかしいです。」
「何の話じゃ?」
町長の屋敷の客間で、お茶を飲んでいたアメリアは、奥さんが席を立つと小声でリナに告げた。
「おかしいって?」
「ガウリイさんを助けるなら、着いた王子から順にどんどん試させればいいじゃないですか。でも、整理券を発行してる所で見たら、第一回のテストは一週間後だって言うんです。」
「一週間!?」
「ええ。それも、一度に10人までって。次回はまた一週間後なんです。今日来た人なんか、3ヶ月待ちだとぼやいていましたよ。」
「・・・・怪しいわね・・・」
リナは見るともなく窓から外を見ていた。
見事な町長の庭園を、さっきから1人の男性がせっせと手入れをしている。
お抱えの庭師かな・・・。
目が合った。
何故か相手はびっくううと固まって、こそこそと植木の陰に隠れた。
・・・・?

アメリアが続ける。
「それに私、ガウリイさんを最初に見たお医者さんと、町長が話してるとこ見ちゃったんです。何かこそこそと言い合ってました。さっきも裏口から、お医者さんが入って来たみたいです。」
リナは黙って紅茶をすすった。




***************

「・・・大丈夫なんだろうな。」ひそひそ。
「それはぬかりなく。点滴と、栄養剤の注射をすれば・・・」ぼそぼそ。
「どのくらい持たせられる?」
「見たところ、若くて元気な男性のようですからね。まあ、2,3ヶ月は・・・」
「短いのお。一年くらい、何とかならんか。」
「いざとなったら、次のターゲットを探せばいいんですよ。薬はまだありますとも。」
「それで、王子とやらのキスで本当に目が覚めたりしないんだろうな?」
「それはそうですよ。この薬を打たない限り、目覚めませんとも」
ひそひそ。

「ふうう〜〜〜〜ん。そおいうこと・・・。」

びびくうう。
暗い地下室でいい年をしたオッサン二人が抱き合う。
「だ、だ、誰だ!」
「な、な、何だ!」

上がり口に三つの影。

「何だかんだと言われたら・・・」
「答えてあげるが世の情け。」
「世界の破◯を防ぐため・・・」
「世界の◯和を守るため・・・」
「愛と真実の正義を貫く!」
「らぶり〜びくとり〜な主人公!」
「アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン!」
「フィリオネル=エル=ディ=セイルーン!」
「リナ=インバース!」
「銀河を駆ける正義のご一行様の3人には!」
「ホワイトカラー!白い修整液が待っておるのじゃ。」
「なんじゃそりゃ・・・」

「お、お、お前達は!」
「きーたわよ。全てね。」
ふっふっふと笑いながら、地下室への階段を降りるリナ。
「そうです。悪の企みはここまでです!」びし!とアメリア。
「今すぐ行いを改め、改心すれば許してやらんでもないぞ。」とフィル。
「お上にも、慈悲という物があるのじゃ。」
そう言って、かかげられたこぶしはとんでもなく大きい。

抱き合ったままぶるぶると震えていた二人は、ようやく影の正体に気付く。
「は、ははは、い、一体何の話かの?」と町長。
「そ、そうですよ。悪とか改心とか、何の話ですか?」と医者。
リナはつかつかと二人に歩み寄り、犠牲者の前でぴたりと立ち止まる。
「よくもうちのガウリイに変な薬を飲ませてくれたわね・・・。このお礼は、ハンパじゃ済まされないわよ・・・・」ふっふっふ。
腰に手を当て、ない胸を逸らして(またか)リナは続ける。
「今すぐその薬をこちらに渡すことね。もっとも、こんな事しといてタダで返す気はないけど。」
「だ、だ、だから、何の話じゃと言うておるんじゃ。わ、わしらは何も・・・・」
あくまでシラを切ろうとする二人の前に、どさりと投げ出された物。
毛布でぐるぐる巻きにされているが、てっぺんから人の頭が出ていた。
町長の庭にいた人物だ。
「この人が全部吐いたわよ。」
「ちょ、町長!すみませえん・・・!」
「お、お前・・・!」
「あのリンゴをくれたおばあさんは、この人だったのね・・・」
「うう!バレてますよ、町長!どうします、町長!」
「ええい医者、うるさいわい!」
「すんませんすんません町長!お願いですから謝りますから、給料だけは下げないでぇ〜〜〜〜!」
「何を言うか!貴様がそもそもしくじったからだぞ、観光課課長代理!」
「町長ぅ〜〜〜〜」
「町長ぉ〜〜〜〜」

責任をなすりあう3人の背後にぬ〜〜〜っと立つ影。
「あんたたちぃ〜〜〜〜〜」
「ひ、ひえええええ!」
「お、お助けを!く、薬ならここに!」
「お願いです、お慈悲を!!」
「あっま〜〜〜〜い。」

氷結弾!(フリーズブリット)

かちこ〜〜〜〜〜〜ん。





「しっかし、フィルさんの言ったことも当たらずとも遠からずだったのね・・・」
暗い地下室から出て眩しそうに目を細めるリナ。
「父さんが?」とアメリア。
「町起こしだって言ったでしょ?つまりそういう訳よ。」リナは地下室の氷の固まりを指差す。
「リンゴの収穫で賑わうはずが、近年さっぱり観光客がよりつかなくなったってんで、一芝居打った訳よ、あの連中。誰でもいい、観光客を眠らせて、リンゴの呪いとか出まかせ言って、王子でもなんでも、話題になるヤツらを集めたのね。おかげで町の宿屋は満杯、チャレンジ料としてお金も入る。あいつらは、当分ガウリイを眠らせといて、その間に稼ぐつもりだったのよ。」
「ひどいです・・。悪ですね!」
「悪かどうかはね・・・。まあ、苦肉の策というか。でも眠らされたガウリイにすれば、いい迷惑でしょ。」
「おお、そうじゃそうじゃ。早くこの薬をガウリイ殿に・・・」
医者から取り上げた、ガウリイを目覚めさせる薬である。
「ふむ・・・・。」
リナはしばし考えた。



「あ〜〜〜。やあっぱし。」
リナ達がガウリイの眠る部屋に着くと、辺りは統制を失った町の観光課の役人がおろおろするだけで、自称他称の王子たちが取り巻いていた。
中の1人はさっさとガラスケースに近付き、ケースの蓋を開けようとしていた。
「リナさん!どうしましょう。」
「う〜〜〜ん。やっぱこうなってたか・・・。」
「冷静に見てる場合じゃないです!このままじゃ、ガウリイさんの唇は・・・」
「ま、キスくらいいいでしょ。」
「そ、そんな!」
「とまあ、冗談はこれくらいにして。こっちにも策があるわよ。」
「策?何ですか?」
リナはにっこりと笑った。
「決まってんじゃない。本家本元の王子に御登場願うのよ。」
「本家本元・・・?」アメリアの顔がさ〜〜〜っと青ざめた。

「おいそこのヤツ!抜け駆けは許さん!」
「何を言うか!オレは徹夜で整理券並んだんだぞ!」
「オレもだ!オレの整理券番号はA-6だぞ!」
「オレはA-5だ!」
「早い者勝ちだ!」
「オレも」
「わしも」
「ぼくちんも〜〜〜〜」

「ええい、控えよ!!」
混乱を極める部屋に、朗々と響き渡る声。
「皆の者、道を空けよ!」入り口に立つ女性二人が、ガラスケースに群らがる王子達に向かって呼ばわっている。
中の1人が印ろうを掲げる。
「ここにおわすをどなたと心得るか!聖王都にして白魔法の加護厚き世界の警察セイルーンが第一王子!フィリオネル=エル=ディ=セイルーン殿下であるぞ!!」

おおおお!?

室内にどよめきが起こる。
女性の間から、ぬっと巨漢が現れた。
たくわえた顎鬚といい、割腹のいい体格といい。
威厳は十分である。
ましてや、セイルーンは名高き王国。
知らぬ者はいない。

人垣がさ〜〜〜〜っと分かれ、その中をケースに向かってずんずんとフィルさんは歩いて行った。
その後から、女性が二人ついてゆく。
二人はケースの前でひざまずいた。
「さ、殿下。こちらが呪いにかけられた哀れなる姫でございます。どうか殿下のご慈愛を持って、かの美しき女性の呪いをお解き放ち下さいませ。」
「うむ。」

きい。
ケースの蓋が開かれ。
おもむろにフィルさんが・・・・・
(あああ、書けない・笑)








がらがらがらがらがらがら。
「あの〜〜〜〜。」
がらがらがらがら。
「ガウリイ?」
がらがらがらがらがらがらがら。
「お、怒ってる・・・?」
目覚めてから、ガウリイは着替えを済ませ化粧も落とすと、洗面所からしばらく出てこようとしなかった。
そ〜〜〜っと様子を見に行ったリナは、執拗にうがいをするガウリイを発見。声をかけても返事がないのである。

あの後、フィルが口移し(うっ)で飲ませた薬のおかげでガウリイはめでたく目を覚まし、手柄を立てた王子殿下はそのまま美貌の姫を大勢の観衆の前から連れ出すことに成功したのだった。

「ガウリイってば〜〜〜。」
姫奪回計画がリナによるものと聞いて、寝起きの悪さと相まってガウリイは相当ご機嫌ナナメだったらしい。
「しょーがないじゃんかあ。あんたを助けるには、あれしか方法がなかったんだからあ。・・・そんなに、怒んないでよ・・・」
かたん。
コップが洗面台に置かれる。
くるりとガウリイが振り向く。

「な・・・なによ。」
その視線にうろたえるリナ。
つかつかと歩みよるガウリイ。
両者の間隔は50cmとない。

「リナ。」
「な、な・・・によ。」
「お前、責任取れよな!」
「な、なんであたしが!」
「お前のお陰で、オレ、男とキスしちゃったんだぞぉ?」
「だ、だからしょーがないじゃんか、って言ったじゃん・・・」
「それで済まされるか。」腕組みをして、そっぽを向くガウリイ。
「ぢ・・・ぢゃあ、どうすれば・・・」
珍しく、リナが気弱な態度を見せる。普段、滅多に怒らないガウリイが怒ってるのでどうもペースが掴めないらしい。
「そうだな。」そっぽを向いたまま。
「まず、メシを奢ってもらう。」
「うえ!?ま・・・まあ、仕方ないっか・・・・」
「おかずは1品なんて、セコいことは言いっこなしな!」
「う・・・バレてる・・・」
「デザートもだぞ!」
「ち・・・。」
「それから。」
「そ、それから!?まだあるの!?」

「アメリア。覗き見はいかんぞ。」ひそひそ。
「は!わたしとしたことが!これって正義じゃないですか・・・?」
「うむ。人の道に反するぞよ。」
「はう!わたしもまだまだ修行が足りません!」
「ムスメよ!道は遠く険しいが、決して諦めてはならんぞ。」
「はい!父さん!」がし!
「ムスメよ!」がし!
「でもやっぱり気になりますよね・・・」
「う〜〜〜む・・・」

「あとひとつだけ。」
「ひ、ひとつね。よ、よ〜〜し。きいてあげようじゃないの。」
「目えつぶれ。」
「・・・・え。」リナが固まる。
「だから。目ぇつぶれよ。」
「ちょ・・・・何考えてんのよ!?」
「お前が変なこと考えてんだろ?オレは目をつぶれって言っただけだぜ?」
う。リナが真っ赤になる。
ヤケクソになって目を閉じる。
「はい。これでいい!?」
「よろしい。」

ふと、唇に触れた。
何かが。

「リナ・・・。口開けて。」
「え・・・」

ほんの少し、開いた口から滑り込んだもの。
ひんやりとして、あまずっぱい。

リナがびっくりして目を開く。
しゃくしゃく、と口の中のものを嚼む。
うまうま。
・・・・リンゴ!?

正面ではガウリイが、真っ赤なリンゴをひとつ持ってにやにやしていた。
「うまいか?」
「うん、うまい♪・・・じゃ、なくて!!何で・・・」
くら、とリナの視界が揺れる。
あれ・・・・。
遠のく意識の彼方で、ガウリイがそっと忍び笑いをしながら言った言葉が響いていた。
「リンゴの呪い、うまかったか・・・・?」




ガラスケースで眠る、赤い髪の少女。
今度は誰もいない部屋で、長い金髪を床に垂らした青年から、目覚めのキスを受けたのはその後のことだった・・・・。























================================おしまい♪
ああ。何だかラストが。わけわかめ(笑)
ギャグで押し通すつもりだったのに、何故だか最後にガウリイにブラック入ってしまったらしい(笑)よっぽどフィルさんとのキス(笑)がショックだったとか(笑)
ああもう。ちょっとそーら壊れてます(笑)

でわこんなオバカなお話をここまで読んで下さった方に。
責任取って肩をお揉みします。揉み揉み。
ありがとうございました♪
そーらでした。

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