「露天風呂」
アキさんに捧ぐ♪理由はヒミツ・笑


「しかし、宿に露天風呂までついてると思わなかったなあ。」

からころと下駄を鳴らし、細い下り道をガウリイが降りて行く。
すでに宿で着替え、浴衣姿だ。
リナも浴衣を着、髪をアップにして洗面器を抱えている。

「お、見えた見えた。あれかあ。」
行く手に、竹を割って並べた塀の入り口が見えてきた。
矢印が付いた看板が二つ立っていて、右が女湯、左が男湯と書いてある。
「お♪じゃ、オレは左だな♪♪♪ んじゃリナ、あとでな♪」
何故か無口なリナを残し、ガウリイは手をひらひらと振って男湯の方へと消えた。少し遅れて、リナは右へ曲がった。





持ってきた洗面器を床に起き、するすると腰帯を解いてリナは無造作にそれを籐籠に放り入れる。
いくつも並んでいるそうした籠には、荷物が入っているものはひとつもなく、先客はいなさそうだ。
リナはふっとため息をついた。
これなら、少しはのんびりできそうだ。


奥深い山の、さびれた温泉宿。
何故ここに宿を取ったかと言うと、リナが突然しし鍋が食べたいと言い出したからだった。それで、しし鍋で有名な某所の観光宿に行ったら一杯で、宿泊を断わられてしまった。血管がぷち切れそうだったリナを引きずり、少し離れたこの宿まで連れてきたのはガウリイだった。
リナは、まだぶうたれていた。
この時期にしし鍋が食べられなくて、いつ食べるってゆーのよ?
と、ガウリイに食ってかかったが、彼はにっこりと笑うと、こう言った。
「別に食わなくても死なないぞ。」

まあ、確かにそうなのだが。
こういう時のリナに、正論を吐くこと自体が自殺行為と言ってもいい。



「ったく、あの脳ミソすかたん男!自分が味オンチだからって、冷めちゃってさ。ふんだ。
・・・・・・ああ〜〜〜〜、食べたかったな、しし鍋〜〜〜〜。」
リナの脳裏に、色鮮やかな赤肉が詰まった湯気の立つお鍋が浮かぶ。
「お肉は言うに及ばず。やきどーふ。おねぎ。はくさい。しらたき。
そしてしゅんぎくうううううう。お野菜も忘れちゃいけないわ。
ああ・・・・・・・今食べられなきゃ、来年まで我慢しなくちゃいけないのよ・・・・・えぐえぐ。」マ◯ニーちゃん♪(意味無し・爆)

湯につかりながらぶつくさ言うリナ。
下ばかり向いていて、周りを見ようともしない。
「それに、あたしがしし鍋食べたかったのは・・・・・。
・・・・・・・まあ、いいわ。そんなことわ。
どーせ、もう食べられないんだし・・・・・・くっすん。」

さらさらと、どこからかお湯が流れる音がする。
他に聞こえるものといったら、風が木々を渡る音くらい。
「ガウリイもへらへら笑ってないで、あたしのために山に入ってイノシシ一頭掴まえてくるくらい、根性見せてくれればいーーのよ。」
何だか勝手なことまで言い出したようだ。
「はあ・・・・・・。」
ため息は続く。

ぽちゃん。

濁り湯から両手を出して湯を掬い、ぱちゃ、と顔に当ててみる。
何で自分がこんなに不機嫌なのか。
心当たりがなきにしもあらず。
わかっちゃいるが、認めたくないこともある。
だから、他のことに当たって、それを忘れようとしているのだ。
つまりは本題から逃げているのだが、まあ、立ち向かったところですぐに解決する問題でもなし、少々逃げても許されるだろう。

風呂の奥に、岩が露出した小山のようなオブジェがあった。
いや実際、小山なのかも知れない。
露天を作ったという宿屋の主人が、掘れずに残ったものかも。
とにかくそれに背を当て、寄り掛かるリナ。

「・・・・胸がおっきくなる温泉てないかなあ。」
「探せばあるかも知れないぞ。」

・・・・・・・。

「ガ、ガウリイ!?」
「おう。」

声は小山の向こうから聞こえた。
慌てて湯舟に顎までつかるリナ。
「ど、どこにいるの!?」
「ん?男湯。」
「そ、そりゃそーでしょうけど。この山みたいなのの、裏にいるの?」
「おう、こっちにもあるぞ。岩がごつごつしたの。」
「・・・・そっか、この山みたいなので仕切ってるのか・・・」
ほっと一安心し、緊張を解くリナ。

「あんた・・・・さっきの聞いてたの?」
「ん?胸が大きくなる温泉のことか?」
「繰り返すな!!・・・・そっち、誰かいる?」
「ん〜〜〜?いない。貸しきり♪」
「そっか・・・」
「そっちは?誰かいんのか。」
「ん〜〜ん。誰もいない。」
「そんじゃ、ホントに貸しきりだなあ。」
「そういや、宿もあたしたち以外に、泊まり客ほとんどいなかったしね。」
「そうかあ?」
「そーよ。あんたって、注意力とか、洞察力ってもんないの。」
「ん〜〜〜〜〜〜〜。」
しばし考え込む声が聞こえた。
リナには見えなくとも、ガウリイが腕を組んで頭をひねっている姿が、手に取るようにわかった。
「ないかもな♪」
あ、今、にぱっと笑ったでしょ。
「あっそ・・・・」

「なあ。」
「なによ。」
「なんかさっきから、おとなしいな。なんかあったのか?」
「・・・・・。」
ぽしゃん、と顔にあてていたリナの手が湯に落ちる。
「宿に着いてからほとんど黙りっぱなしだったろ、お前。」
「・・・・・。」
「そんなにしし鍋食えなかったのが気にいらんか。」
「・・・・・。」
「また来年、来ればいいじゃないか。付き合うぜ。」
「え・・・・。」
「お前がそこまで執着するなら、きっと旨いんだろ。それなら、オレも食ってみたい。・・・・な?」
「う・・・・・ん。」
「大丈夫だって♪他の処には、もっと旨いもんがあるかも知れないし。
まだまだ、世界は広いんだろ?」
「うん・・・・。」
「それともまだ、何か気になることでもあるのか。」

さらさら。
お湯が流れる。

「・・・・・。」
「オレにも言えないことか?・・・なら、無理には聞かないが。」
「・・・・・。」

しばらく、二人は黙り込む。
風もいつしか止まり、辺りは静まり返っている。

「なあ、リナ。」
「・・・・。」
「上を見てみろよ。」ガウリイが唐突に言い出した。
「え・・・・?」リナはすぐさま反応できなかった。
「いいから、見てみろって。」

一体何を言い出したかと、いぶかしげにリナは眉をひそめた。
だがゆっくりと、上を向く。

「うわ・・・・」

その時。
止まっていた風が吹いた。

ざわりと葉を鳴らしながら、木がリナに向かって落としたものは。

色とりどりの落ち葉。
黄色。
赤。
茶。
それらが、ざあっっと、頭上から降ってきた。

舞い落ちる紅葉たち。
手のひらのような葉が、くるくると回りながら落ちてくる。
虫が食ったように丸い穴が空いた広葉樹の葉が、右に左に揺れながら。
風が木を揺するたびに、惜しげもなく。

気がつくと、リナの周りは落ち葉が一杯だった。
湯に入る時、何故気付かなかったのだろう。
湯舟も、周りも、落ち葉だらけだということに。
目先の問題で手一杯で、他のことには目もくれなかったということか。

「綺麗ね・・・・・」
「な。」

ガウリイも今、紅葉を眺めているのだろうか。
降りしきる落ち葉に囲まれながら。
岩山を隔てて、同じ湯につかりながら、
あたしたちは、まったく違うところを見ていたのだ。


「あのさ・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・。」
今なら、聞けるかも知れない。
落ち葉とお湯に洗い流された、今の素直な気持ちなら。
「故郷にいつ帰るの?」
「・・・・・え?」
ばしゃ、と音がして、ガウリイが動いたのがわかった。

「なんでいきなりそんなこと言い出したんだ?」
「いきなりじゃないわよ、ずっと・・・考えてた。」
「なんで。」
「・・・・忘れたの?こないだ会った人のこと。」
「え・・・誰か会ったっけ。」
あらかじめ予期できた答えだったが、やはり額に一抹の汗は隠せないリナ。
「・・・あんたのことだから、そう言うとは思ったけど。2,3日前に、町で会ったでしょ、あんたを知ってる人に。」
「え・・・・あ・・・・ああ、あのおばちゃんか。」
ホントに忘れてたんか・・・

「そう、その人。その人が言ってたじゃない。そろそろ故郷に戻って、いい加減落ち着いた方がいいって。」
「そんなこと言ってたっけかあ?」
「言ってたわよ。悪いけど、あたしは記憶力良いほうなの。
・・・・・・・・・・そんで、どうなの。」
「どうなの・・・・って、なにが。」
「だぁかぁらあ。いつ帰るの?」
ばしゃばしゃ。
何の音?
ガウリイがお湯で顔を洗った音。

「いつも何も、オレは帰るなんて一言も言ってないぜ?」
「言わなかったけど、あいづちは打ってたでしょ?そうだな、って。」
「え〜〜〜〜、そうだっけか?」
「ごまかすつもり?!」
「まさか。」
「じゃ、なんなの。」
「あのなあ。」

リナの目の前に、真っ赤に染まったもみじが落ちてきた。
何の気無しにそれをつまみ、茎を持ってくるくると回すリナ。

「別に、あたしに遠慮はいらないのよ?無理して一緒にいる理由はないんだし。あんたを縛るつもりは毛頭ないし。
光の剣は無くなっちゃったから、あんたから貰うものは無くなったしね。」
「もともとオレたちが一緒に旅を始めたのは、光の剣からだったもんな。」
ガウリイの声に、懐かしむような調子が含まれていた。
そう、一緒に旅をするようになってから、気がつくと結構時間がたっていたのだ。
「剣が無くなった時、今度は光の剣に代わるものが見つかるまで、って、ことだったよな?」
あれ。
珍しい。
ガウリイがちゃんと覚えてたなんて。
「そうよ。・・・・次の噂こそは、と思ってたのよね・・・・。」
伝説の剣の噂を頼りに、当てのない旅を続けていたそんなある日。
いつもと変わらぬ日常のひとこまに。
町でばったり会ったガウリイの過去を知るひとりの人間によって、生まれた波風。

「剣が見つかったら・・・・どうするの。」
「ん?」
「剣を見つけるまでで、それが見つかったら、ガウリイはどうすんの?」
「リナはどうしたいんだ?」
「え。」
「さっきからオレばっか問い詰めてるけど。お前はどうなんだよ?」
「あたし・・・・?」
「そ。お前は、オレが剣を見つけたら、どうするんだ。」
「そりゃ、その剣を頂く。」
「ならオレがいなくても、剣だけ一人で探しに行けばいいんじゃないか?」
「え・・・・」
そらそうだ。
「あたし・・・は・・・・」

くるくると回していたもみじが、ぴたりと止まる。
先送りしていた問題が、ふとしたことで急展開。

「あたしのことはいいのよ、それより、あんたのことよ。」
「なんでオレ?」
「だから、言ったでしょ?おばちゃんに頷いてたじゃない。
剣が見つかったら、あんたは故郷に帰るんじゃないの?」
「剣がみつかったら?」
「それとも・・・・剣なんかなくても、家に帰りたい?」


ガウリイの過去は。
何ひとつ知らない。
それでも別にいいと思っていた。
今のガウリイしか知らなくても、別に困らないし。
ガウリイはガウリイだし、と思っていたのだ。

「だから。家に帰りたいなんて言ってないって。」
「じゃあ何でおばちゃんにあいづち打ってたのよ。」
「・・・・・・。」

ふいにガウリイが黙り込む。
リナのもみじも止まったまま。
風も止まり、落ち葉も降らず。

何もかも停滞。
二人の会話も。
関係も。


ばしゃばしゃ、という水音がした。
それは遠ざかって行った。

リナは一人、湯に取り残された。




・・・・・素直になれたのに。
素直に、ガウリイの気持ちを聞きたかったのに。
もし、ここでお別れなら。
最後に、美味しいものを一緒に食べたかった。
ひとつの鍋を、一緒につついて騒いで。
それで、笑って別れられると思ったのだ。

もみじが、立ち上がったリナの手から、ひらひらと舞い落ちた。





湯に入る前より落込んだ気分で、リナは浴衣を纏った。
お腹が空いていたのに、何故だか胃がむかむかしていた。
洗面器を抱え直し、下駄を穿き。
入り口の暖簾をくぐって出ると。

そこにガウリイが待っていた。

「よ。早かったな。も少し、ゆっくりしてくるかと思ったのに。」

何事もなかったかのように、涼しげな目をして、腰掛けていた植え込みから立ち上がるガウリイ。
ふつふつと、リナの中に怒りにも似た感情が沸き起こる。

踵を返し、下駄を音高く鳴らして、その前を無言で通り過ぎようとした。
が、腕を掴まれ、バランスを崩す。
「おっと。」
落としかけた洗面器をキャッチし、ガウリイはにっこりと笑う。
「これはオレが持ってってやる。足場悪いから気をつけろ。」
「あんたが掴んだりしたからでしょ!」
声がかん高くなる。
「そっか。悪い悪い。」
全然悪怯れていない顔で、ガウリイは空いた手で、リナの冷えた手を掴む。
「何すんのよ!?」
「転ばないように。オレが手を引いていってやる。」
「大きなお世話よ。一人で歩けるわ。」
「じゃ、オレが転ばないように支えててくれ。」
「な・・・・」
「行くぞ。」

リナの答えを遮り、洗面器を抱えたまま、ガウリイはからころと歩き出した。手を引っ張られ、仕方なく歩き出すリナ。

なんでさっき、話の途中で行っちゃったのよ。
その一言が、出ない。

「なあ。」
「なによ。」
「きいてもいいか。」
「だから、なに。」
「なんでお前は、光の剣が欲しかったんだ?」
「え・・・」
唐突な質問だった。
「何でって・・・・そりゃ・・・・伝説の剣だし・・・・・
威力だって凄いし・・・・・あたしにも、使える剣だったし・・・」
持つ者の意志力を具現化する武器。
「だよな。じゃ、今度見つかるかも知れない剣て、どんなのだ?」
「え・・・確か何でも切れる剣て・・・」
「何でも?」
「岩とかなら、力を入れなくてもさっくり切れるとか、ゴーストとか実体のないもんも切れるとか・・・」
「ふうん。お前にも、使えるのか。」
「そりゃ・・・・。」
「剣で切り合いながら、呪文唱えるのか。」
「あ・・・・」

もしリナが、そうした剣を手に入れたら。
剣戟の合間に、呪文を放つ。
だがそんな悠長なことを、実際にやっていられるだろうか?
・・・今までの戦闘では。
ガウリイが相手の出鼻を挫き、牽制し、呪文を放つ隙を与えず。
その間に、少々時間のかかる呪文も唱えられた。
だが。
相手が熟練した腕前の剣士なら、切り結ぶだけでは勝てない。
剣で向かってこられた時。
呪文を唱える隙を作るため、剣で立ち向かわなければならない。
リナは決して剣の腕前が下手な方ではないが、ガウリイには叶わない。
彼が手こずるような相手が敵だったら。
果たして、呪文を唱えている隙ができるだろうか?
答えはノーだ。

「そっか・・・」
つまり。
光の剣、もしくはそれに該当するような、魔力を高めるアイテムも兼ねたような武器でなければ、リナが手に入れる必然性はなくなるのだ。
それをガウリイは言いたかったのだろう。
「光の剣はもうない。オレは切れれば何でもいい。
でも、リナを守るには、そんじょそこらの剣じゃダメみたいだし。
それで伝説の剣を探すの、一緒にやってるけどさ。」
「・・・・」
考えてもみなかった話をつきつけられて、呆然としているリナの耳には、今のガウリイの言葉は入らなかったらしい。
「オレは、剣が見つかったとしても。リナと旅が続けたいんだけど。」
「え・・・・・?今、なんか言った?」
やっとリナが我に帰った。
ガウリイは軽くため息をつく。
立ち止まる。
下方で、さっきまで聞こえていた湯が流れるさらさらという音がしている。
「だから。今は故郷に帰るつもりはないって、言ったんだ。」
「・・・そうなの?」
「嘘ついてどうする。だから、剣が見つかっても、オレはリナと旅がしたい。」
掴んでいる手が、ぎゅっと握りしめてくる。



落ち葉よ、降って。
山のように。
そして流して。
あたしの心にある、もやもやを。

「あたしと旅をして・・・それからどうするの。」
「それから・・・って。ずっと続くんだ。それが。」
「一生?一生そうしてるつもり?」
「できれば。リナが、嫌じゃなければ。」
「あたしのことじゃなく。ガウリイがどうしたいのか、教えて。」
「ずるいぞ。」
「ずるくてもいいの!なんでもいいの!あたしは聞きたいの!
今のガウリイが何を考えて、何を思って、そういうこと言うのかを!」
リナはぶんぶんと首をふる。
おばちゃんがガウリイの背中をばんばんと叩き、言った一言に、ガウリイが笑って『そうだな。』と言ったあの時から、溜まったイライラを放出して。

「よしよし。」

うなだれ、肩で息をつくリナの頭を、ガウリイは撫でようとした。
だが、両手が塞がっていた。

こつん、とリナの頭に何かがあたる。
リナは顔を上げようとして気がついた。
それが、ガウリイの頭であることを。

「言わなくちゃ、不安か。
オレが何を考えて、どうするのか。
・・・オレがどうしたいかは、今言ったはずだ。
オレは、たとえ剣が見つかっても見つからなくても、リナと旅が続けたい。何故かって、きかれても、それは・・・・・」
リナは目を閉じる。
「言葉じゃ言えないよ。」

リナは目を開く。
「それとも・・・理由がなければ一緒に旅しちゃいけないか?」
「え・・・・」
「お前が欲しがってるのは、理由だろ。」
「あ・・・」
「言葉だろ。」
「う・・・」
「違うか?」
「違わ・・・ない。」
「じゃあ、何で言葉で欲しいのか、その理由を言えよ。言葉で。」
「え・・・・」
「言えないのか。」
「あたし・・・」
「そんなに言葉って、重要なことなのか。」
「そうじゃ・・・・ない・・・・」

あたしが欲しがってたのは、そんなに薄っぺらいこと?

「オレがいて。お前がいて。一緒に旅をして。それじゃいけないか?」
「・・・・・」
「じゃ、これはどうだ。・・・飽きるまで。」
「・・・・へ?」
「一緒に旅して。お互い飽きるまでって、のはどうだ。」
「なにそれ。」
思わず笑いがこみあげてきたリナ。
「おかしいか?いい案だと思ったけど。」
ひょい、と肩をすくめるガウリイ。

「飽きたら別れるの。」
「飽きないと思うけど。お前と一緒じゃ。」
「あたしが飽きたらどうすんの。」
「飽きられないよう、努力いたします。」
「ぷ。なんかガウリイらしくない。」
「だろ?オレもそう思った。」
「いい加減ね。」
「お前が駄々こねるからだろ。オレは、言葉なんか必要ないと思ってる。」
「・・・・」
「気がついたら、二人でいた。それでいいじゃねーか。」
「・・・・・」

こみあげてきた笑いは、胃のむかむかを少し、取り除いてくれた。
笑いは笑みになり、リナの口の端に昇る。

「そうね。その方が、あんたらしーわ。」
「だろ。」


その時。
風がひときわ大きく吹き流れ、たくさんの落ち葉を二人の上に降らせた。
まるで祝福しているかのように。
そんな風に感じた自分の心を、リナは不思議に思った。

「宿に帰ろーぜ。せっかくあったまったのに、冷えちまう。」
「・・・・・そーね・・・・・」

手をつなぎ。
二人は歩き出す。
波風をひとつ、乗り越えて。
たった一つの言葉から生まれた、小さな波風だったが。





歩きながら、ガウリイは思い出した。
あの一言を。

リナには聞こえていなかったようだな。
おばちゃんの一言が。
何でオレが頷いたのか。

『あんたもそろそろ、所帯を持っても良い頃だよ?』
























==============================おわじ。

冬なのに〜〜(涙)るる〜〜〜。
露天風呂に行きたいよ〜〜〜〜。と思って書いちゃったお話です。
桜が散る木の下に立つと、体のペーハー値が7になってちょーどいいという話がありますが。降りしきる落ち葉でもいいのかな・・・(笑)
二人の答えはすでに13巻に載っていますが。
なんとなくこういう話になりました。では、読んで下さった方に、愛を込めて♪そーらがお送りしました♪

 

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