「せくし〜をあなたに。」


「よおっ、ランツじゃねーか。」
「ああっ!?アニキぃっ♪」


「おひさしぶりです、ルルさん。」
「げげっ!?ミ・・・・・・・・・・・・・ミワン・・・・!?」


とある町のとある大通りで。
仲良し四人組は思わぬ人物とそれぞれ再会していた。
魔道士協会へ向っていたリナとガウリイは、ひょんなことからリナとシリ合い(笑)、事件に巻き込まれてガウリイを兄貴と慕い(笑)、事態が深刻になると逃げ出すという、かなり生存確率の高い(笑)ランツと再会していた。

一方、図書館を目指していたゼルガディスとアメリアは、原作では登場しないがアニメでは多いにゼルを惑わせた(?)魅惑の美少女、ミワンと再会していた。
もっとも、このミワン、見かけは美少女だが中身は・・・・。

「久しぶりだなあ、ランツ。ヒゲそったんだなあ。」
「兄貴は全然変わらないなあ。嬢ちゃんも・・・・・・いっ、いや、綺麗になったなあ♪」
「あたしの顔色見て、言い方変えるのヤメてよね。」
「は、はははははは。」
「そりゃ、お前さんのせいだろ。久しぶりに会ったってのに、全然変わってねーから。」
ガウリイはそう言うと、がばっとリナの首ねっこに腕を回し、真っ赤になったリナの頭をもう片方の手でぽんぽんと叩く。
「も〜少し、色気が出たってバチは当たらないよな♪」
(ぷちっ!)ガウリイぃぃ・・・・・・・
「あっ、兄貴、兄貴、退避っ!」
「でぃるぶらんどぉっ!」
ちゅどおおおんっ♪

「うぉわあああああぁっ!」
「な、なんで俺までぇぇぇぇ・・・・・」
ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・



「で。世界は案外狭かったと、このテーブルが証明したわけだ。」
「そーいうことね。」
宿屋の食堂で一同に会した四人組と二人。
頭を抱えたゼルの言葉に、リナは素っ気なく賛同した。
にこにことおしとやかに座っているミワン。
ぼろぼろのガウリイの隣には、ミワンに目を奪われている同じくぼろぼろのランツ。
アメリアはちらちらと、ミワンとゼルを見比べている。

「で。ランツはいいとして。ミワンはこんなとこで何やってんの?」
「お、俺はいいって・・・・」
「聞かなくてもわかるわよ。てきと〜に用心棒とかそゆ仕事して、どっかの女にフラフラして、てきと〜に流れてきたんでしょ。」
「ひ、ひでえっ!あ、兄貴い、何とか言ってくれよ。」
「・・・・(ぷすぷす)」
「ガウリイさん、まだ言語能力まで復活してないですね。」

「わたくし、母である女王より許可を貰いまして、世界を見聞する旅に出ることにしたんです。」
「はああ。あの、女しか入れない国のね。」
「いえ。今では、そんなことないんですよ。あれから母も考えましてね。」
「えっ・・・・じゃあ、男も入れるようになったのかっ!?」
ランツが目を輝かせて話に入ってきた。
「まあ、そういうことですが。」
ミワンがにっこりと答える。
「ただし、女装している方に限りですが。」

どさどさどさっ!
テーブルについたミワン以外全員がコケる。

「どっ!どーいう理屈よっ、それっ!」
「男性を排除してはいけないことはわかったんですが、なにぶん、長い間男性と接する機会がなかったでしょう?男を見るだけで鳥肌が立つようになったんです、母が。ですから、少なくとも見た目は女性に見えれば何とか大丈夫ということで。女装した男性に限り入国を許しているという訳で・・・・。」
ミワンはくるりとゼルの方を向く。
「ですから、よろしかったらまたルルさんになれば、国に入れますよ♪」
「お・・・・・俺は二度とご免だ・・・・・」
だらだらと汗を流して、俯くゼルだった。

「ところで皆さんはどこへ向っていらっしゃるんですか?」
運ばれてきたお茶を飲みながら、ミワンがリナに尋ねた。
「う〜ん。これといって目的地はないんだけど、とりあえず次の町に行ってみようかと。」
「まあ。それじゃ、ご一緒してもよろしいですか?わたくしも隣の町に行ってみようと思っていたところなんです。」
がたんっ!
ランツが席を立った音だ。
「そっ!それなら俺も同行しますぜっ!いやあ、女の独り旅は何かと物騒だ。」
ランツはつかつかとミワンの脇に周り、ちゃっかりとその手を取る。
「俺でよければ、ナイトになりますぜ。」(きらん)
「まあ。御親切に。」
にっこりと笑ったミワンに、ランツはぼっと赤くなった。

テーブルの反対側では四人のぼそぼそ会話。
「ランツってば、ミワンが女性だと思い込んでるみたいね。」
「そりゃそーだろ。見た目がアレじゃなあ。」
「ゼルガディスさんも騙されましたしね。」
「そっ!それは言うな・・・・。」
「面白いから、黙っとこ♪」
「リナさんてば。でもあのランツさんて人、相当の女性好きみたいですね。」
「そりゃあな。何たって、ここにいるこの色気のね〜ムネもぺたんのミワンとは外見が正反対のリナにさえ、手を出そうとしたんだからな。」
「へ〜〜〜。リナさんにですか。それは剛毅な。」
「だろ。」
「あんたたちぃ・・・・・・」
「リ、リナっ!屋内ではヤメろっ!」
さああっと青ざめるゼルガディス。

「さ、話はまとまった♪とりあえず、出発しようぜ♪」
ランツは意気揚々と宣言したのだった。




でこぼこぼこ六人組は、次の町を目指して街道を歩いた。
「なあ。兄貴。」
先頭を行くリナよりかなり離れて、最後尾を歩くガウリイにランツが話し掛けた。
「あのおっかねー嬢ちゃんと、まだ旅をしてるんだな、兄貴。」
「んあ?」
「・・・・で。手は出したのか?」

つんっ
がごろぐさごけっ!

「ああっ!?ガウリイさんがこけて地面にのめりこんでますう!」
「全く。何をやっとる。」呆れるゼル。
「あ、兄貴っ!?」慌てるランツ。
「まあ。大きい男の人がそんなに派手に転んで。子供みたいですね。」
おかしそうに口に手をあてて微笑むミワン。

「ガウリイっ!?あんた、何やってんのよっ!?」
リナがつかつかと先頭から戻ってきた。
のめりこんだままのガウリイの襟首をひっつかみ、ぐいっと引っ張る。
「ほら、しっかりしなさいよっ。なんでこんなへ〜めんですっ転ぶのよっ?」
「い・・・いや、ちょっと・・・。」
ぽりぽりと頭をかきながら、ガウリイが起き上がる。
「あ。こんなとこにドロつけて。まったく、あんたわ小さい子供かっての!」
ぶつぶつ言いながら、リナはポケット(あるんだろ〜か・笑)からハンカチを出して、ガウリイの鼻の頭についたドロを取り払った。
「わ、悪い。」
「ほら、動かないでよっ・・・」

じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

びびくん!
背後から不吉な視線を感じ、リナが振り向くと。
ゼル、アメリア、ミワン、ランツの面々の視線が集中していた。
途端にバネのように跳ね起きるリナ。
「まっ!まったく世話が焼けるんだからっ!じ、自分で後は拭きなさいよねっ!」
乱暴にハンカチを投げ付け、ずんずんと先頭へ戻るリナ。

「なあ。」
ランツは秘かにアメリアに耳打ち。
「あの二人、実のところどうなってるんだ?」
アメリア、ため息。
「それがですね・・・。何とも、こう、一言で説明できないっていいますか。見ていてひじょ〜〜〜にじれったいと申しますか。」
拳を握り、ふるふると震えるアメリア。
「ガウリイさんはいつもアレですから、実は何を考えているのかそれとも何も考えていないのかわからないんです。で、リナさんなんですが。」
地獄耳のリナに聞こえないよう、ますますランツの耳に口を近付けるアメリア。
横で誰かがやきもきと見ているのには、全く気がつかない。
「わたしの見たところ、あれは絶対脈アリです。でも、素直になれないせ〜かくが災いして、今のところ何も伝えてないんですよ。まあ、他にも原因があるんでわないかと、踏んでいるんですが・・・」
「俺が思うに・・・・。嬢ちゃんにもうちょっと色気があったらと・・・。」
「あ。それは言えますね。」

一方、ミワンはそっと、落ち着かないゼルガディスに寄り添う。
「若い男女って、いいですね・・・・♪わたしも、素敵な恋がしたい・・・」
潤んだ瞳。
「hっ・・・ごほっごほっ。」
思わず咽がいがらっぽくなったゼルガディスだった。





次の街に着いた。
海が近く、潮の香がする。
「ん〜〜〜〜〜〜っ♪いい匂い♪こーいう匂いのとこで食べると、何でも美味しく感じちゃうのよね〜〜〜♪」
のびをするリナ。
「ってえことは、今日の昼飯は・・・?」
今度は隣を歩いていたガウリイが話し掛ける。
「もっちろん♪海の幸食べ放題よっ!ガイドブックでもう目はつけてあるっ!」
人さし指を天に向け、ポーズを取るリナ。
「さっすがリナっ♪早く行こう行こう♪」
「わかってるわよっ!」

目指す店に向けて走り出す二人の後ろで、ランツとアメリアは同時にため息。
「やっぱり・・・。まだまだ色気より食い気か・・・。」
その時、ミワンがゼルガディスにしなだれかかった。
「あっ・・・。気分が・・・。」
「ミ、ミワン?大丈夫か?」
「日射しが暑くて・・・・。どこかで休ませていただけませんか・・・・。」
さすがに顔が青白い。
ミワンを抱き上げながら、ゼルは思うのだった。
これでホントに女だったら・・・。(おひおひ)

先に宿にミワンを連れていったゼルを除き、ガウリイ、リナ、アメリア、ランツは食堂で食い放題に突入。
「おっ♪これ旨いぜ♪」
「なになにどれどれ。」
「これこれ。」
「あ〜〜〜。あたしが行った時はなかったわよ!?ひとくちよこせ〜〜〜〜!」
「え〜〜〜。やだよオレ〜〜〜。」
「ずっる〜〜〜〜〜〜い!いいもん!他の取ってくるからっ!」
「あ、待てよリナ。オレも行く。」

相変わらずのお食事戦争の二人を見ながら、ランツは呟く。
「あのミワンって娘さん・・・。可愛かったなあ。それに、どことなくたよりなくてそこが色っぽくて。」
「は・・・はは。そうですか?」アメリア、じと汗。
「あの嬢ちゃんにもほんのちょっとでいいから、あの娘さんの色気がありゃ・・・。」
「う、う〜〜〜ん。」

悩む二人は、ふと壁のポスターに目が行った。
しばし読みふけり。
次に目を合わせた二人は。

「これだっ!」

がっちりとスクラムを組んだのだった。

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