悪夢の夜は開け、リナは惚けて朝日が登ろうと白々と染まる東の空を見つめる。骸骨のような城跡の向こうから、まばゆい光。
無意識に、膝の上で眠る男の長い黄金の髪を撫でる。ぴくりとそれが動き、ガウリイの瞳が開く。
青い宝石に朝日が輝きを与える。
「・・・あれ?リナ?・・・・ここは・・・・・」
「城の前よ。」
がばっと跳ね起きるガウリイ。
「リナ!!お前、怪我は!?」
ぺたぺたと体を触られ、リナはぴくぴくとこめかみを引きつらせる。
「どこ触ってんのよ!!」
スリッパは小気味よい音を立て、ガウリイの頭に命中。
尖塔の窓から太陽が登る。
「だけど、どうしてオレたち助かったんだ?」
「決まってるでしょ。美少女にして天才魔導士、このリナ=インバースが呪文を唱えたからあんたは助かったの。」
「だけど、どうやって。お前さん、完全に意識がなかったじゃないか。」
「完全にじゃないわ。少しずつ取り戻してたのよ。それでも敵に気付かれないよう、完全に操られてるように見せ掛けてたの。」
「・・・・!」
「このリナ=インバースが、いつまでも敵の思うツボにはまってないって!勝機を待ってたのよ。あそこから・・・」
見上げた先は、頂上が壊れた尖塔。
「飛び下りた時。彼女の支配が弛んだ時に、一気にカタをつけたってわけ。いやあ、我ながら上手く行ったもんだ。」
「おい・・・じゃあ、支配とやらが緩まなかったらどうしたんだ。」
きょとん、とリナがガウリイを見る。
「そりゃ、一巻のお終い。」
「お前な!!」
ガウリイが振り上げたこぶしに、だがリナは平然と。
「でもあたし、賭けに勝つ自信はあったから。」
「・・・・・・?」
手を伸ばし、輝く黄金の髪の一筋を引っ張る。
「あんたがあの金の何とかじゃないってことくらい、あたしにはわかってたから。どっちみち、あたしの勝ちは決まってたのよ。」
「・・・・・・」
何とも言えない表情で、ガウリイはリナを見下ろす。
「どっから来るんだよ、その自信。」
「自信一発岩をも砕く!」
「違うだろ!」
「いろいろあの人が見せてくれたけど。あれは、あんたじゃなかったもの。だてに一緒に旅はしてないって。」
片手で髪をいじくりながら、片手をひらひらと振るリナ。
暗い表情でそれを見るガウリイ。
くいっと髪を引っ張られ、ガウリイは顔を寄せる。
リナの目の前に。
「あのね。いくらあたしでも、区別がつくわよ。
あんたじゃないか、あんたかぐらい。だってあんたはたった一人だもの。」
にっこりと笑ったリナの顔を、眩しそうに見つめるガウリイ。
「それに♪お宝は手に入ったしね♪」
腰からこっそり取り出したのは、くだんの宝剣。
「〜〜〜〜お前えええ!」
じゃれ合う二人の後ろで、300年前に滅びた栄光の一族の城はただ、沈黙を守っていた・・・・・・・・・・・・。
==========================END.
ダーク月間最後のお話です。先日ある方とチャットでお話ししながら気付いたこと。それはダーク月間なのに、リナがダークになった話がない!という事実でした。そおいや、ダークなのは状況やガウリイさいどでした。ということで、「靴をお舐め!」状態のリナです(爆笑)イヤ、冗談ですってば(笑)
詳しい説明はあえて省いちゃいましたが、おわかりになりましたか?
つまり、この城の城主と王子を殺された王妃が、呪いを込めて自殺し、ゴースト・・・というか、怨嗟の固まりになっちゃって、復讐に出ると。目標はガウリイなのですが。
それがガウリイ本人じゃなかったことは、最後の一文でお分かり頂けたかと思います(汗)え、わからんかった?つまり、300年前の事件なので、ガウリイの御先祖か?とゆーことに。
あれだけの力を持つ剣は、一度は血に染まったことがあるんではないかと。力に引きずられた人間がいたんじゃないかと思いまして。ましてやあれは、ダークスターの分身(または武器)ですもんね。驚きはそおいう御先祖の話をガウリイが覚えていたということ!
いや、これまでそーらの独断と偏見に満ちた(笑)ダークな作品の数々を読んで下さってきた方、ホントにありがとうございました。
とうとう天涯越えのダークは出ませんでしたが(爆笑)、またいずれダークな話も書いてみたいと思ってます。
皆さんに感謝と愛を込めて♪
そーらがお送りしました。
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