「きちくのたね。」

 

あるうららかな朝、なかよし四人組が朝食を食べていると、ゼロスが現れた。
「おはようございます。実はリナさんに・・・」
「なああにいい?またあたしになんか厄介ごと押し付けよ−と思ってるんでしょ。」4皿目のモーニングセットをぱくつきながら、リナが言った。

「いえ、そうではなくて、プレゼントなんですが」
そういって差し出した小さな巾着袋をアメリアが不審そうに見つめた。
「ゼロスさん、またなにか悪いことを企んでませんか?
リナさん、受け取らない方がいいです、それ。」
「中身はなんだ。」
コーヒーを片手に食事に手をつけないゼルガディスがたずねた。
「きちくのたねです。」

「きちくのたねえ?!」

四人の声が唱和した。

「使い方は簡単。頭にひと粒くっつけるだけでいいんです。
ではたしかに渡しましたよ、リナさん」
テーブルに袋を置いてゼロスが消えた。
出る時も消える時もいつも唐突である。

「しかし・・・」
今度は四人の視線が集中した。
「きちくのたねって、何でしょう?」
「さあ、俺は知らん」
「食い物か?」
「おバカ!!」
ガウリイの首を締めながらリナがにやりと笑った。
「使い方は簡単って、言ったわよね・・・。」

「まさか!!」
「やめて下さい、リナさん、そんなこと!」
「じゃあ、あんたでもいいわよ。」
「え・・・それはちょっと・・・」
「じゃあ、やるわよ。」
「?何をやるんだ?リナ?あれ、なんか頭につぃて・・・」
ふうっとガウリイが倒れた。

「あーーーーーっっっっ。ホントにやっちゃった。わたし、知りませんよ。」
「大丈夫よお、なんか起きたってガウリイの無限の体力ならきっと切り抜けられるわ、あたし、信じてるから。」目がハートだ。
「・・・試してみて、使い物になったらアイテムショップで高く売り付ける気だな。」
ゼルの鋭いツッコミに動じるリナではない。
「おほほほほほほほほ。ああら、何のことかしら?」
高笑いするリナの背後で、むっくりとガウリイが起き上がった。

「・・・・・リナ。」
「ガ、ガウリイ、気分はどう?」
「・・・・・リナ。」
「や、やあね、別にガウリイを実験体にしたわけじゃないのよ、ホントだってば、ホ・・・・やだ、あんた、おっかしーーー、頭に・・・・・・・
ガウリイ?」
「・・・・・リナ。」

「あーーーーーーーーーーーっ!」

悲鳴をあげたのはアメリアの方だった。
やにわにガウリイがリナを押し倒したのだ。

「ガ、ガウリ・・・・」
「リナ。」
「・・・ガウリイのダンナ、とうとうキレたかな。」
あくまで冷静なゼルをよそに、床の上ではガウリイに迫られじたばた暴れるリナが叫んでいた。
「ちょっっっっっ、あ、アメリア、何とかしてっっっっっえっっっっ。」
「リナ。」
「ガウリイ、気でも狂ったの、ちょっっっ、どこさわってんのよっっ、や、
アメリア!!!!!」
じたばたじたばた。
その横ではアメリアが真剣に悩んでいた。
「どうしよう、リナさんが助けを求めてる。・・・でも、もしガウリイさんが、今まで秘めていた欲望を果たそうとしているなら、邪魔しちゃいけないんじゃ・・・・あぁっっ、ど〜〜〜〜しよ〜〜〜〜〜〜」

すでに食堂の入り口は黒山の人だかりができている。
「何だ何だ」
「お〜〜〜〜〜」
「朝からいいもん見てるよ〜な〜」
「でもよ、あのあんちゃん、頭にひまわり生えてるぜ」
「なんか、ちょっと間抜けなかんじ。」

ぞろぞろ集まった野次馬にじろじろ見られて真っ赤になったリナが叫ぶ。
「ちょっっっっと、あんたたち、見てないでなんとかしてっっったらしてえええええええ!」
いつものリナなら呪文の一発や二発口から飛び出しているはずだが、よっぽどパニくってるかそのことに気付いてない。

「・・・え〜〜〜〜なになに。」
ゼルは袋の中に入っていた小さな紙切れをとりだした。
「これは『きちくのたね』です。これを頭につけると、常識や恥じらいを忘れて本能のおもむくままに行動できます。気弱なあなたにぴったり♪
これで恋人もゲット!」
「な、なんですっっってえええええええええ?ガウリイ、
ちょっと正気に戻ってよ!!」
「・・・リナ、小さい胸もかわいいよ。」

ぶちっ。








「・・・俺、なんか変なことしたか?」
リナの炸裂弾を受けて多少ぼろっちくなったガウリイがぼやいた。
「リナ、なんか顔赤いぞ。」
「な、何でもないわよ!」
「何はともあれ、もとに戻って良かったじゃないか。」
結局、何もしなかったゼルがしめた。
「マジックアイテムとしては、どうかな。」
「わかってるわよ、こんなの、モテない男の読む雑誌のこーこくに載っってる筋肉増強剤なんかと変わんないわよ。売るの、やめやめ!どっかに捨てといて、アメリア!」
「何であたしなんですかあ?」
「あんた、あたしがあれだけ言ったのに助けてくんなかったでしょ!
マジでやばかったんだから!!」
「・・・なにがですか?」
「あーーーーーーもーーーーーーー、いーーーーから、捨てといて!!」
「・・・・・はい。」
しゅんとしたアメリアは袋を受け取った。
ガウリイがリナにたずねた。

「・・・なにがやばかったんだ、リナ?」





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「しかし、ガウリイのダンナ、あれが本能だったのかねえ。」
ゼルガディスが意地の悪い笑みを浮かべた。

リナが食堂を飛び出していったので、後を追ったガウリイをのぞいたアメリアとゼルの二人はそのままテーブルに残っていたのだ。
下を向いていたアメリアが、ゼルの顔を見た。
「・・・なんだ?」
「・・・いえ、なんでも。」
 
 アメリアはその日、すぐにたねを捨てなかった。

































============ちゃんちゃん♪

鬼畜ガウと呼び習わしておりましたが、鬼畜でもなんでもないか?(笑)単にほえほえガウさんじゃなくて、リナっちに迫る漢ガウ!?(マテ)しかし、うちのゼロス様はいつもなにやっているんでしょうねえ。ヒマなのかな(笑)有閑マダム!?(違う)
某ツリーに投稿したお話でしたが、著名な方々からの予想外のレスをたくさんいただいた思い出の話でもあります(笑)しばらくの間、そーらの代名詞でもありました(笑)自己紹介の時に『きちくのたねのそーらでぃす♪』と名乗っていたよーな(爆笑)

では、ここまで読んで下さった方に愛をこめてv
はっきりとした恋愛感情はないけどそれなりに意識していた相手から、いきなり迫られたらどーしますか?好きになっちゃう?はりとばす?(笑)
そーらがお送りしました♪

鬼畜アメリア編へ行く。