「きちくのたね。」

鬼畜ゼルいきまーす♪いちばん鬼畜っぽいかも♪
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「はあ。」

アメリアはため息をついた。あの夜があけた、朝食の席だ。
「・・・どうした」
アメリアの顔は見ずにゼルガディスが答える。

リナとガウリイは寝不足でぼーーーっっとしてる割に、食欲だけは衰えないらしく、料理のおかわりをしに席をはずしていた。
今頃、宿屋の主人は頭を抱えているに違いない。
よりによって新趣向の『モーニング・バイキング』を始めた当日に、あの二人に来られるとは。

「・・・聞いてもいいですか、ゼルガディスさん。」
「だから、何だ。」
「・・・あのう、私、何でゼルガディスさんの部屋で寝てたんでしょう?」

 ぶーーーーーーーーっ。

ゼルはお約束とわかっていながら、コーヒーを吹かずにはいられなかった。
「今朝目が覚めたら、ゼルガディスさんはもういなかったし、あたし、夕べの記憶がないんです・・・」
「・・・・・・」
「・・・あの、何か、あたし、失礼なことしませんでしたか?」

ぶっ。ごほっごほっごほっ。

むせながらゼルは思った。こいつ、何をどう心配してるんだ。
「・・・別に。夕べ俺の部屋の前で眠りこけてたから、
部屋で寝かせたまでだ。」
「ええっ?あたし、そんなとこで寝てたんですか?」真っ赤になる。
「ど、どーしよーーー、ゼ、ゼルガディスさん、ご、ごめんなさいいいい。」

アメリアの謝罪の言葉を聞いて、何故かゼルの心にむらむらと沸き立つものがあった。
「ほんとに、ごめんなさいいいい。」
「・・・迷惑な話だな。」

「・・・え?」
明らかに拒絶された反応にアメリアは身をすくめた。
そのまま、黙り込む。
朝の賑やかな雰囲気がそこのテーブルだけ取り除かれた感じだ。

ゼルガディスはアメリアに気付かれないよう、そっとため息をついた。
いつもこうだ。
俺ってヤツは。
思ったとおりの言葉を口にできない代わりに、短く冷たく答えてしまう。
今の言葉はアメリアを傷つけた。
わかっていながら、どうすることもできなかった。


そこへしこたま料理をつんだ皿を抱えて二人が戻ってきた。
少し食べたことで眠気もとんだようだ。
「ちょっとガウリイ、そっちのチキンはあたしのだからね。」
「何言ってるんだ。オレがよそって来たんだぞ。」
「いーじゃないの、あんたのものはあたしのもの。あたしのものは」
「リナのものは?」
「あたしのものに決まってるじゃない!」
「あーーー、そうですか。はいはい。」
「あ、また子供扱いしたわね」
「んじゃ、どーしろってんだよ。」
「あたしだってねえ、言っとくけどもう、18なのよ、18!」
「だから?」
「だからじゃないでしょ、18って言ったら、もう世間様では大人よ、オ、ト、ナ。ったく、保護者だからっていつまでも子供扱いしないでよね!ったく、ばくばくばくばくばく。」
「あーーーーーっ!ずるい!人が話聞いてるあいだに食うなんて」
「ほーーっほっほっほっほ。
あんたのものはあたしのものって言ったでしょ♪」


「朝っぱらからイチャつくな。」

「・・・へ?」
 
不機嫌そうな声がして、それがゼルガディスだと全員が気付くまで数秒かかった。

「イチャつくって、何言ってんのよ、ゼル!いくらあんたでも言っていーことと悪いことがあるわよ!」
リナが顔を真っ赤にして怒っている。
対するゼルガディスはそっぽを向いて
「だって、そうだろ。リナが言ったじゃないか。ガウリイはあたしのものだって。」
「言っっってないわよっっっっっっ!!!!!」
「いや、言った。」
「言ってないっっっっつっっってんのに!!!」
リナの顔は今や赤を通り越して深紅に染まっていた。
「ゼル、あんたあたしにケンカ売ってんの!?」
「そうやって、すぐ呪文唱えるから敬遠されるんだ。
素直に甘えてみたらどうだ?ガウリイのダンナが気の毒だぜ。
好きになった女がこんなに幼いとはな。
ダンナだって、あんまり我慢させるとキレちまうぞ。
キレて他の女を押し倒したらどうする。
お前を押し倒してくれるうちに、素直に押し倒されたらどうだ。」

三段論法と言えないこともない。

「ゼッゼッゼッッゼルガディス、あ、あんた一体どーーーしたってゆーーーのよ?」
ゼルガディスのこんな長いセリフは聞いたことがなかったリナは慌て半分、照れ半分。
「あんた、ちょっとおかしいんじゃない?」
「そーいや、そーだな。ゼルのヤツ、顔がまともだ。」
「ちょっと、それは言い過ぎだって。」
「・・・ゼルガディスさん。」
アメリアはかわいそうなくらい心配している。
その顔が目に入ると、ゼルのイライラはますます悪化した。

「お前さんだって、今18だって言っただろ。
もう結婚してガキの一人や二人いてもそうおかしくない年ってことだ。
うかうかしてると嫁きおくれになるぞ。
この先、いつ次ぎの相手が見付かるか、お前じゃ可能性低いしな。
そろそろ手を打て。ダンナが嫌いなわけじゃないんだろ?」
「ちょっと待て!いきなり話をまとめるなっってば!」
「いいじゃないか。大体、いつも話をまとめるのは俺の役なんだから。
リナ、ガウリイが嫌いなのか?」

う・・・・・。

リナはそおっとガウリイの方を振り返る。
ガウリイの顔は、わかってるんだか、わかってないんだか、いつもと変わらない。

「べ、べつに、き、嫌いってわけじゃ・・・」
「じゃ、好きなんだな?」
「ええ?」
「嫌いじゃなければ、好きなんだろ?」
「そ、それは・・・」
「今日こそは聞かせてもらうぞ。さあ、どうなんだ。」

たたみかけるゼル。
しぼむリナ。
のほほんとガウリイ。
そしてアメリアは・・・。
「ゼルガディスさん、あのう、それくらいにしては・・・」
勇気を出して言ってみる。
でも返ってきたのは氷より冷たい沈黙だった。

「す、好きよ。」
「好きなんだな?」
「で、でもあたし、アメリアもゼルも好きよ。」
「小学生が読む少女漫画のようなおちゃらけたオチは無しにしてもらおうか。」
ゼル、恐い。
「じゃあ、俺やアメリアになら押し倒されてもいいのか。」
「えっ、ちょ、ちょっと、どうしてそうなるのよ?!」
「好きなんだろ?」
ずい、とゼルがテーブル越しにリナに顔を寄せる。
「俺のことも好きなんだよな?」
「ぜ、ゼル・・・?」
「じゃあ、俺が押し倒してやろうか。」

すでに、周囲からは朝食を食べる音や談笑は消えていた。リナたちのテーブルを遠巻きに、またしても野次馬のギャラリーが待機している。2,3人が昨日の朝のことを知っていたらしく、くすくすと笑う声がする。

「やめろ!」
「やめてください!!」
ガウリイとアメリアの声が重なった。

ゼルがテーブルを飛び越えてリナに迫ろうとしていた。
「朝じゃイヤか。
ギャラリーがいちゃ不満か。
食堂は勘弁してほしいか。
わがままな女だな。
じゃあ、今晩、俺の部屋へ来い。夜で、他に誰もいなくて、ちゃんとした場所があれば、いいんだろ・・・」
最後の方は声がかすれていた。
リナはゼルの息を頬に感じるくらい近くにいた。
身動きがとれない。金縛りにでもあったようだ。

「どうだ、リナ。それならいいのか。」
「・・・・・」
「何とか言ったらどうだ」
「あたし・・・・・・・あたしは・・・・・・」

「いいかげんにして下さい!!!!!」

アメリアの大音声が響いた。いつのまにかゼルの後ろに立っていたのだ。
「リナさんがかわいそうじゃないですか!!」
「なんだと?」
ゼルがアメリアの方に振り向くと、まだ硬直していたリナのそばにガウリイが行った。
「大丈夫か、リナ。」
「・・・・・」
「・・・・・リナ?」

アメリアは腰に手をあててゼルガディスをにらんでいた。
「ゼルガディスさんがどういうつもりか知りませんが、ちょっとやり過ぎだと思います!そりゃ、私だって、二人を見ててじれったいなと思うことはありますけど、でもですね、」
「やっぱり、そう思うんだな。」
「え?」
「・・・・・いや。余計なお節介はやめてほしいと言ったんだ。」
「余計なお節介?」
「そうだ、これは俺とリナの問題だ。部外者は口出ししないでもらいたいな。」
「・・・・・いったい、どうしちゃったんですか、ゼルガディスさん?
いつものゼルガディスさんらしくないですよ?」

ゼルガディスの心に、かちんとくるものがあった。

「いつもの俺らしいとは、どういう俺なんだ。
これも俺、あれも俺、俺を他人のお前が型にはめるつもりか。」
「そんなつもりじゃ・・・」
「つもりがなければ、何を言ってもいいのか。何をやっても。」
「・・・・・・・・」
水掛け論である。

「大体、お前が悪い。」
「・・・・・え?」
「お前、ホントに覚えてないのか。何で俺の部屋で寝てたのか。」
「え、だって・・・」
「俺の言葉を鵜のみにするな。少しは疑え。」
「えっっと、でも・・・」
「じゃあ聞くが、今、お前は何で俺を止めた?もし俺が、真剣にリナのことが好きで、マジで抱きたくて言ったとしたら、止めなかったか?
昨日の朝、そんなことつぶやいてたよな、お前。
俺がリナを好きで、リナも俺が好きだったとしたら?」
「・・・・・リナさんが好きなんですか?」
「お前な、人の話をよく聞けよ。正直、俺がリナを押し倒しても、お前は平気なのかどうかきいてるんだよ。」

朝っぱらから人を押し倒すだの抱くだの、全く人騒がせな連中である。

「どうなんだ、アメリア。」
「イヤです。」きっぱりとアメリアが答えた。
「何故?」
「リナさんはガウリイさんのものだからです。」
「・・・そうじゃなくて・・・」
「それに、」
アメリアは一瞬だけうつむいたが、すぐにゼルガディスの瞳を真っ向から見据えた。
「私はリナさんを押し倒すゼルガディスさんなんて、見たくないです。」
「じゃあ、どんな俺ならいいんだ。」
「いつものです。いつものゼルガディスさんが、私は好きなんですから。」

揺るがない、その瞳。
揺るがない、その誇り。
ゼルガディスには望むべくもない、その真っ白な心が眩しかった。
妬ましかった。

「じゃあ、俺になら、押し倒されてもいいんだな?」
アメリアは真っ赤になった。が、ひるまなかった。
「ゼルガディスさんが、そうしたいなら。」
「夜で、二人っきりで、部屋でなら?」
「そうです。」

にやり、とゼルガディスが笑った。

呪縛が解けた。

「・・・ゼルガディスさん?」
まだ赤面しているアメリアに向かってゼルが言った。
「どうだ、鬼畜っぽかったろ」
「・・・・・・え?」


たねがなくたって、鬼畜になりたい時もあるんだよ、男には。


と、言ってやりたかったが止めた。
「ちょっと、からかい過ぎたかな。」
「ゼルガディスさん?!じゃあ、今の・・・・」
「ちょっとした冗談だ。」
「冗談でこんなこと、しないで下さい!!!」

怒るアメリア。
だが、そのでっかい目には大粒の涙が浮かんでいた。
その涙を見たら、今朝お前の無邪気な寝顔を見て腹が立ったとは言えなくなった。たねがついてたとしても、自分のそばで安心しきって寝ているアメリアが許せなかった、と。
代わりにゼルはこう答えた。
「アメリア、お前はエライよ。」
「え?」
「いや。なんでもない、なんでも。」


鬼畜になったからこそ、聞けたセリフもあったから。





その頃、ガウリイは固まったままのリナをなんとか部屋まで引きずっていった。椅子に座らせても、反応がない。
ガウリイはリナの前で膝を折って彼女を見上げた。
「・・・リナ?」
髪をかきあげてやると、リナが震えていたのに気がついた。

「・・・・・リナ」
「・・・・・恐かった。」
やっと口がきけるようになって、リナは自分の腕で自分を抱き締めた。
「ゼル、真剣だった・・・」
「分かってたのか。」
「あ、あたしを、どうこうしようと思ってたわけじゃない。」
「うん、それはオレも分かってた。」
「ゼル、答えを欲しがってた。それだけ。・・・・・でも、」
ぶるるっとリナが身を震わせる。
「分かってても、恐かった・・・・」
「うん。」
「恐かったよ、ガウリイ」
「ああ、よしよし。」

かがむリナを下から抱きとめてやる。
まだ震えている小さな肩をしっかりと両手でくるんでやる。
リナはがっしりとした力強い肩に頭をあずける。

「・・・それで、リナ」
「ん?」
「なんて、答えるつもりだったんだ?」
「え?」
「だから、さっき。」
「・・・・んーーー。わかんない。」
「わかんないって、お前・・・」
「もちろん、イヤに決まってるじゃない。」
リナの声はくぐもっていた。
「そうか。」
「そうよ。」

「・・・オレは、お前のもんだからな。」
「ナニよ、いきなり」
「だって、お前が言ったんだろ?」
「っっっったぁく、言ってないってば!」
涙声でリナが笑う。
なんだか可愛かった。
「あたしのものはあたしのもの、
あんたのものはあたしのものって、言ったのよ。」
「お前のものはオレのもの、オレのものはオレのもの?」
「・・・もう、」
ガウリイの腕の中でリナが笑いながらもがいている。
「だぁーかぁーらぁ、」

つい、と体を離してガウリイがリナの顔を覗き込んだ。
「だから?」
「・・・ガウリ・・」

「オレも真剣だぜ、答えが欲しいな。ただし、もう恐がらないように。
もう恐がっても誰も助けてくれないぜ?」
からかいながらも、ガウリイの表情は真剣そのものだった。
ゼルと変わらないくらい。
息が詰まったが、さっきみたいに恐くはなかった。

「だから?リナ」
「・・・・・だから、・・・・あたしは、・・あんたのもの。
あんたは、ガウリイは、あたしのもの。」
「・・・よく出来ました。」
「また、子供扱いする。」
「してないよ、今はね。」

 

















==================おわりる。

うひゃーーー。ちょっとはらぶらぶになったかしらん♪
鬼畜最後のネタなので、ちょっと壊れてます、そーら。段階踏んでるしね(笑)テンション上がっちゃった♪
最後のひと粒ですが、行方不明のようです。たぶん、頭につかないで、ゼルやんの心に根付いちゃったんじゃないでしょうか。だからヒマワリ出なかったのかも♪
頭にヒマワリつけたゼルも捨てがたかったんですが♪ナンパなゼルになる予定でした。ウェイトレスのお姉ちゃんに手を出そうとしたり、ね。
日頃たまった鬱憤、というか(笑)反動で(笑)

でもちょっと最後なのでらぶらぶにしようかな、と思いまして。
それぞれの組が、このあとどうなったかはご想像にお任せして♪
条件のうち、どうしてもクリアーしたいのは『ギャラリー』だけだったんじゃ・・・はははははははは。

そーらは楽しませていただきました♪

ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!

PS:最後のひとつぶはリナっちが持っていたのでした(笑)リナ編はCDロム『やれ行け、仲良し四人組っ♪』に入ってます(笑)


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