ふわり……
風にたなびく白。
純真と無垢を象徴する色。
身につけているのは少女時代から見守ってきた大切な女性。
ついに、最後まで。
彼女が結婚すると言うまで、秘めた想いは告げることは出来なかったけれど。
「……今まで、ありがとう……」
涙で潤んだ瞳。
「ああ……」
こちらに告げる言葉も、震えている。
涙を、流しているのかもしれないけれど。
「……さよなら……」
彼女に、背を向けているのでその姿を見ることはできない。
結婚式の会場に行けば、いくらでも見ることができるのだから。
「少しはこの姿も見てよね……」
掠れた彼女の声。
彼は、振り向けなかった。
振り向いてしまったならきっと彼女を引き留めてしまう。押さえきれないだろう想いが、彼女を縛ってしまう。
「……バカ、ガウリイ……」
衣擦れの音と、扉の開閉する音。
頑固にも自分の晴れ姿を見ようとしない彼に、哀しげなつぶやきを残し、リナは部屋を後にした。
まだ扉の外にいるだろう彼女に向かって、耐えきれず、ガウリイは振り向いた。
「リナっ!!!」
泣き叫ぶような、押さえ込んだ声は。
空気をふるわす事さえできなかった。
−−−−−彼女の『保護者』となった時に決まっていたんだ
そう納得するしかなく。
拳を、握りしめる。
「リナ……」
「なぁに?」
掠れた呻き声に、明るく答えが返った。
「え……?」
驚いて目を開ける。
白い。光。
強烈なそれは太陽の。
不意に視界に入ったのは栗色の髪。
見慣れた姿。
柔らかい微笑みを浮かべ、陽の光の中、こちらを見ている少女。いや、少女と言うにはいささか大人びた、女性というのには幼い娘。
彼女が傍にいる。
それはつまり、これが現実なのか。
握りしめた拳はそのままに、じっとりと体中に汗をかいている。
今までのことが夢であったのだと思いたい。
いや、実際夢だったのだ。
けれど、信じることが難しくて。
ガウリイは、手を伸ばした。
「ガウリイ?」
キョトンとした彼女の細い腕を掴んで、引き寄せた。
「っ!?」
小さな身体が腕の中にすっぽりと収まる。
華奢な身体だ。
「……よかった……。現実だ……」
「え? ちょ、ちょっと……?」
抱きしめて。
腕の中で暴れる彼女の存在を、確かにここにいるというそれを。
ようやく信じられる。
現実と、夢とを−−−−−。
どうもがいても抜け出すことのできない強い腕に、あきらめた少女が彼に身を預けた。
ずっと子供だと思っていたのに。いつのまにか愛しい存在となっていた少女。
『保護者』を卒業して。
永遠に隣にいると誓った。
「おはよう」
ようやく落ち着いた心で、腕に彼女を抱きしめたまま笑顔を向ける。
「おはよう……。
朝食。冷めちゃうから、この手、離してくれない?」
頬をうっすらと染めたリナが懇願にも似た想いで告げた言葉は即座に却下された。
「朝食より。おまえがいい……」
「えっ!?」
言葉と同時に奪われる唇。
「がっ、ガウリっ……!!」
カーテンが揺れる。
白いカーテンが。
夢は夢。
現実は現実。
朝を告げる朝の小鳥の鳴き声が響いていた。
END
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タイトルは不詳そーらがつけさせていただきやした。しかし、『保護と婚約』とシーンが重なってることに今頃気付いたそーらって・・・(笑)ちょぴりん!ネタシンクロは・・・愛?愛よね!(ゴ〜イン)
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