「ひとつぶの勇気」2ページ目


「ひゃっ!!」
 
 
リナは、突然襲った感覚に、驚きの声を上げた
 
どうやら、冷やしたタオルが、額に乗せられたようだった
 
リナにとって、その冷やされたタオルが、火照った身体に、とても気持ち良かった
 
 
あまりの気持ち良さに、瞳をうっすらと開けると、ガウリィの顔が見えた
 
その表情は・・・真剣そのものだった
 
しかし、リナの視線に気付くと、ガウリィは笑顔を浮かべて
 
「どうした?」
 
と、聞いた
 
リナが黙っていると
 
「なにか、食べたいモノ、あるか?」
 
と、更に聞いてきた
 
リナにとって、それは初めての体験だった
 
ただ・・・ガウリィが、いつも以上に頼もしく・・・
 
 
そして・・・優しく、感じた
 
 
リナは、フッと微笑むと・・・
 
「寝るね」
 
といい、瞳を閉じた
 
ガウリィは、もう何も言わず・・・ただ、定期的に、額に乗せたタオルを交換し続けた
 
 
こうして・・・ガウリィによる、寝ずの看病は深夜まで続いた・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<翌日>
 
 
「おはよう!ガウリィ」
 
ガウリィは、耳元に聞こえる声に起こされた
 
 
ガウリィは飛び起きて、周りを見回す
 
瞳に映ったのは、元気に微笑む・・・リナの笑顔だった
 
 
「治った・・・のか?」
 
ガウリィが、短く尋ねる
 
「うん」
 
リナはこれまた短く答えると、コクンと頷いた
 
「良かったな・・・リナ」
 
ガウリィは、リナの顔色と言葉を聞いて、心底そう思うと、微笑み、リナに言った
 
その言葉にリナは何も答えず、ただ、頬を薄くピンク色に染めると、それを隠すかのように元気良く立ち上がり、
 
「じゃあ、2日遅れちゃったけど・・・出発するわよ!!」
 
と言った
リナに元気な声を聞いて、ガウリィも大きく頷くと、準備をすべく、自分の部屋に戻った
 
 
ガウリィの出ていったドアを暫く見つめていたリナが、ふと下を見ると、昨日、リナの苦しみを和らげようとガウリィが使用した洗面器が目に入った
 
それを見て・・・リナは、改めて、自分に腹を立てた
 
 
さっき、ガウリィが『良かったね』と言ってくれた時に、心から思った『感謝の気持ち』
 
でも、それを口に出す事・・・が、出来なかった事に・・・・・
 
 
 
精算をして・・・二人は、宿屋を出た
 
 
「どっちに向かう?」
 
ガウリィの質問に、リナは
 
「取り敢えず、北へ」
 
それは、根拠があった訳ではなかった
 
ただ・・・何故か、北へ・・・・・リナは、行きたくなった
 
 
町中を歩きながら・・・リナは、黙って考え込んでいた・・・真剣な表情で・・・・・
 
いつもなら、ガヤガヤ騒ぎながらだったので、沈黙を嫌ってガウリィは声を掛けようとしたが、そんなリナの様子に、なにやら難しい事を考えていると感じて、黙々と歩いた
 
 
リナは・・・宿屋を出てから、ずっと考えていた
 
何故、ガウリィに素直になれないのか・・・・・
 
 
今までを振り返って・・・昨日を思い出して、素直になれない自分を、腹立たしく思う
 
その思いは・・・考えれば考える程、強く・・・大きくなっていった
 
 
素直になりたい・・・そう願う自分が、自分の中に確かにいる
 
っが、それを邪魔する<自分>も、自分の中に確かにいるのだ
 
リナは、二人の・・・相反する自分を感じていた
 
 
ふと、昨日のガウリィとの数分の会話を、思い出した
 
 
それは・・・・・夕闇が地に落ち、闇があたりを支配しようとしていた頃・・・・・
 
 
「ガウリィ?」
 
朝から寝ていたせいか・・・中々、寝つけなかったリナは、ガウリィに声を掛けた
 
「どうした?リナ?」
 
ガウリィの声は・・・朝と変わらず、優しさが籠っていた
 
「うん・・・」
 
「どうした?」
 
リナは、言いにくい事なのか・・・中々、言葉がリナの口から出てこない
 
「・・・・・・・・・昨日、ガウリィも、風邪・・・ひいたでしょう?」
 
「ああ・・・そうだったな」
 
ガウリィは、少し温かくなった額の上のタオルを取ると、冷水に浸けて、ぎゅっと絞りながら答えた
 
リナは瞳も開かず、再び、冷やされたタオルを当てられ、気持ちよさそうに微笑むと
 
「昨日・・・一人だったんだよね」
 
と、再び、会話を始めた
 
「ああ」
 
短く答え・・・ガウリィは、少しズレた掛け布団を直す
 
「・・・・・・・・昨日、アタシは、看病しなかったよ」
 
リナは、小さな声でそう言った
 
「看病しなかったんだよ」
 
ガウリィは、何も言わない・・・答えない・・・・・
 
「なのに・・・なのに、なんで、アタシの看病をしてくれるのよ」
 
ガウリィは、答えない・・・・・いや、答えようか答えまいか、悩んでいた
 
リナは、うっすらと瞳を開く・・・・・と、悩んでいるガウリィの表情が瞳に映った
 
「リナが・・・辛いだろうと、思ったから・・・・・」
 
それは、思いもしなかったガウリィの言葉
 
そして・・・改めて、突き付けられた、自分の気持ち・・・そして、淡い『恋心』に・・・・・
 
しかし、リナは『それ』を悟られまいと、ガウリィに背を向けると、眠りについた
 
 
(そう・・・・・あの時も、自分の気持ちから・・・逃げたんだ)
 
リナは、そう思い・・・そして、考えた
 
これからも・・・自分の気持ちから、逃げるのだろうか・・・と・・・・・
 
 
結論は、簡単に出た
 
 
自分の気持ちに、嘘はない
嘘はつきたくない
 
アタシは・・・ガウリィが・・・・・・・・
 
 
やがて、道が険しくなって、通行人も自分達だけになった時・・・・・
 
リナは、ガウリィの少し後ろを歩きながら・・・ひと粒の勇気を、奮い起こしていた
 
 
そして・・・何度か、躊躇った後・・・リナは、ガウリィに声を掛けた
 
振り返ったガウリィに、
 
 
「昨日は・・・ありがと、ネ・・・ガウリィ」
 
 
リナは、触れるか触れないかのキスを・・・ガウリィに、言葉とともに送った
 
 
そのまま、照れ隠しに、リナは小走りで先に進んだ
 
ガウリィは、あまりに突然の衝撃的な出来事に、呆然とその場に立ち尽くした
 
 
(やった!言えた!!・・・・・それに・・・)
 
リナは、感謝の言葉を言えた事に満足し、自分の行動・・・キスを自然としちゃった事に、軽い驚きと大きな喜びを憶えた
 
(ガウリィと・・・・・キス、しちゃった)
 
そして・・・一方のガウリィも、
 
(リ・リナと、キス・・・・・をした)
 
つい、昨日まで、夢にも想わなかった事が、いきなり起こって、ガウリィは、ただ、事実を確認するだけで、精一杯だった
 
 
・・・やがて・・・・・
 
 
「なにやってんの!!行くわよ!!」
 
リナの言葉に、ガウリィは我を取り戻して
 
「今、いく!」
 
とだけ、答えた
 
その答えに、リナは微笑むと
 
「早くおいで!!」
 
と、手招きをした
 
ガウリィは、さっきのキスとリナの表情に、まだ戸惑いが残っていた・・・っが、それ以上に、喜びの感情が勝った
 
 
「おう!!」
 
 
ガウリィは、久々の笑顔満点でそう大きく叫ぶと、駆け足でリナに向かった
 
 
 
たった一つの・・・ほんの些細な出来事が、二人に小さな奇跡が舞い降りた
 
でも、まだまだ、二人は『恋人未満』
 
 
でも、二人は・・・
 
二人の距離は・・・・・
 
 
 
ちょびっと、縮まった・・・確実に・・・・・
 
 
 
それは・・・・・ひと粒の勇気がもたらした・・・出来事
 
 
 
そして・・・二人の旅は、まだまだ続く
 
 
 
二人の『恋』も、現在進行形
 
 
 
形になるのは・・・・・まだまだ、先のお話・・・・・・・・
 
 
 
 
<Fin>
 
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 <御挨拶&コメント>
 
どうも、この世界<スレイヤーズ・ネットSS>では、無名のRintarouです(笑)
という事で、皆様、初めましてm(__)m
 
一応、自分のページを持ち、アニメ・EVANGELION(エヴァンゲリオン)のパロディーSS・・・通称・LAS作品(ラブアスカ×シンジ)を書いてる者です
 
この度、縁あって、こちらのページを知り、元々、好きな作品だったので、書いてみようと思い立って、軽くそーらさんにお約束して・・・苦しみました(爆)
 
いや、難しい難しい・・・難産でしたが、漸く、完成しました(^^;)
出来としては、どうなんでしょうか?少々、不安なんですが・・・生っ粋の『がうりなファン』の方々に、楽しんでいただければ、幸いです
 
にしても・・・このガウリィとリナ・・・幼く見えるのは、気のせいだろうか(汗)
 
では・・・次回作が出来ましたら、また・・・・・(←出来るのか?自分(爆))

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