「おまじない」


リナが攫われたとき、ガウリイに届けられた髪の毛がその後も道具リストの中に入っていると聞き、書いた話です。
某月某日、書くと宣言した話で、その後妄想が膨らみまくったという・・・(汗)
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封印石の一件が終わり、リナたちはつい先日ゼルガディスとアメリアに別れを告げて。
全てが元に戻ったように見えた。
 
 
また、ガウリイとの二人旅。
 
 
「あ〜〜〜今日もいい天気ねぇ」
空は抜けるような青空で、綿菓子のような雲がひとつ流れている。
 
 
ふわり。
 
 
風の悪戯。リナの髪が舞った。
 
 
「あんなおおごとだったのに、全部が元に戻っちゃったみたい。ね、ガウリイ」
リナは軽く笑い、すぐ後ろを歩いていた旅の連れに話し掛ける。
「・・・・・・」
「ガウリイ?」
ガウリイの視線はなびくリナの髪に注がれており、その髪の持ち主にに呼ばれたことすら気づかない。
「ガウリイ!!」
立ち止まって大声を上げたリナに、ガウリイは驚いた様子で顔をリナに向けた。
きょとんとして聞き返す。
「なんだ?」
「なんだ、じゃないわよ!
さっきっから呼んでるのに気づきもしないで!
いったい何考えてたのよ」
 
 
ふわ。
 
 
風がリナの髪を弄んで。
否応無しに、不自然な一房を目にすることになる。
 
 
「ん・・・。髪、切られたとこ、目立つなと思って」
リナが攫われたときのことを思い出す。
髪が届けられたときは、胸が張り裂けそうだった。
 
 
ガウリイはリナに近づき、髪を少しだけ手に取った。
そのまま指に絡めてやる。
「なによ」
「きれいだな、と思って」
 
 
もちろん、リナも。
 
 
普段と違うガウリイの行動に焦り、照れるリナ。
「あ、あ、あ・・・当たり前でしょ!気、使ってるんだから!」
ぷいっとガウリイから目をそらした拍子に、リナの髪はするりとガウリイの指の間から流れ落ちた。
 
 
まだ髪を切られたあとの目立つリナ。
そう。まだ、元通りじゃない。
 
 
ガウリイはリナの髪を一まとめにし、くいっとひっぱった。
「きゃっ」
バランスを崩し、背中からガウリイの胸のなかに飛び込んでくる。
 
 
ほのかに香る、リナの髪。
 
 
そのままガウリイはリナを抱き締めた。
「な・・な・・・!」
身体を硬直させ、ばたばたともがくが、ガウリイの腕は外れなかった。
抱き締めてくれている、腕の力強さを感じる。
 
 
安心・・・するな。なんだか。
 
 
無意識のうちにリナが身体の力を抜き、ガウリイに寄り添うと、ガウリイはリナの耳元で小さく呟いた。
「ごめんな・・・。
オレがリナのこと守れなかった・・・」
すぐにリナは気づく。
攫われたときのことだと。
「・・・なんで?助けにきてくれたでしょ・・・?」
「でも、リナの髪が切られた・・・」
「バカね。髪なんていつかは伸びるんだから」
 
 
ほんとばか。そんなこと気に病むなんて。
 
 
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらくの沈黙。
破ったのはリナだった。
「・・・心配してくれたんだって?アメリアが言ってたわ。
『あんなガウリイさん、始めてみました』だってさ」
「さあ・・・・・・な」
ガウリイはリナの髪に口付ける。
「ガウリイ?」
「髪が早く伸びるように。おまじない」
「・・・・・・ありがと」
 
 
まだ日の高い、街道で。
しかし、寄り添う二人には、まわりなど見えていなかった、のかもしれない。
 
 
えんど♪
 

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