「おまえだけ」


    
 
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 これは「あなただけ」のガウリイサイドです。
 …きっと、これとペアで読まないと、
 いまいち読みきれないところが多々あると思います。
 えと…その…読んでほしーです(T-T)
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 俺は、ドアの前に気配を感じていた。
 しかし、それは俺がよく知ったものだった。
 
 
 トントン…
 
 
 ドアがノックされる。
 「…ちょっといい?」
 予想していた通りの声が聞こえる。
 「ああ。入れよ。」
 
 部屋に入ってきた彼女の顔は、
 何かを思いつめた、強ばった表情だった。
 
 きっと……今日のことだろう。
 
 彼女の腕の中で、目の前で仲間が息を引き取った。
 
 
 彼女は、全責任を背負っている。
 たった一人、その小さな身体に。
 悔やんでも悔やみきれない、
 そんな遣る瀬無さを胸に抱いている。
 
 彼女の放つ沈黙の闇は、
 部屋までも飲み込みそうなほど、
 虚無感に満ちていた。
 
 そんな空間を少しでも和らげたくて、
 俺は進んで口を開く。
 「……どうしたんだ?おまえさんらしくもない。」
 彼女が休まるように、
 低く、静かに話す。
 「あの後から、ずっとそうじゃないか。
  無理に明るく振る舞おうとしてるのがよくわかるぞ。
  ……だが、もし何か悩んでいるんだったら、
  俺には到底解決できっこない。
  でも、話さないよりは、ずっと楽になるぞ。
  …………な。」
 「…………うん…………」
 
 彼女は顔も上げずに頷く。
 
 「………ごめんね。なんか突然押しかけちゃって。
  まーったく、どうかしてるわね。
  もう……、もう平気だから。それじゃ……………」
 早口に捲し立てると、そのまま部屋を出ていこうとする。
 
 おまえはそれでいいのか?
 俺は、ちっともよくない。
 
 咄嗟に彼女の肩に手を掛ける。
 「本当に……大丈夫なのか………?」
 
 彼女は気づいていない。
 自分の肩が、細かく、頼りなく震えていることを。
 俺を見上げたその瞳は、
 既にあふれんばかりの涙を湛えていることを。
 
 普段は強がっている彼女の、
 とても弱い部分。
 少なくとも、俺は知っている。
 
 彼女が泣いているのを、俺は見たことはない。
 だがこうして、
 彼女は涙をこらえている。
 
 
 「…………泣いても、いいんだぞ……」
 
 
 そう言っても、尚笑おうとする彼女がいとおしい。
 
 彼女の身体を自分に引き寄せ、
 俺の胸に顔を埋めさせる。
 そして、背中に腕をまわし、しっかりと抱きしめる。
 「………これなら、俺にも、誰にも見えないから、
  思いっきり泣いていいんだぞ。」
 
 彼女が小さな嗚咽を漏らす。
 華奢な肩が震えている。
 
 …泣いている……
 俺の愛しい彼女が、
 この胸で泣いているのだ。
 
 いつも強がって、自分をガードしている彼女が、
 全てをさらけ出しているのだ。
 この、俺に。
 
 しっかりと抱いていないと、
 そのまま何処かへ消えてしまいそうだった。
 
 俺は黙って抱きしめる。
 
 
 
 「…なんだって、おまえさんはすぐに自分だけ責任を
  背負い込んでしまおうとするんだ?」
 少し落ち着いた彼女に、優しく声を掛ける。
 しゃくり上げる背中を、いつの間にか撫でていた。
 「…俺にも…それを分けてくれよ……」
 「…そんなことっ………できっこ…ない……」
 
 涙で潤む声が、俺の理性を揺さぶる。
 
 いや、それだけは絶対にだめだ。
 そんなことをするのは、
 彼女の弱みに付け入るのも同じだ。
 
 自分に言い聞かせ、更に彼女に語りかける。
 「じゃあ……さっきも言ったよな?
  俺に解決はできないが、話せばずっと楽になるって。
  …それだけで、俺も安心できるんだ……」
 そっと頭を撫でる。
 彼女が落ち着くまで、幾度も、幾度も。
 
 
 ふと、彼女の呼吸が整いつつあることに気づく。
 「……うれしい……」
 「…ん?」
 小さな囁きに、俺もトーンを合わせて返事をする。
 「あたしのこと…こうやって支えてくれる人がいる。
  それだけで、うれしいし…元気になれる……」
 
 …俺の行動は、無駄ではなかったようだ。
 彼女は、ちゃんとわかってくれている。
 安心して、腕の力が抜けていった。
 「…そっか。
  でもな…俺としては、リナ一人が悩んで、苦しんでいるのは
  耐えられそうにないんだ」
 俺も本音をさらけ出す。
 
 「だから…あなたがあたしの話を聞いてくれるの?」
 身体を少し話した彼女は、
 俺を上目遣いに見上げてこう言った。
 「ああ。そうだ」
 泣きはらした顔に、いつもの彼女が戻ったのを見て、
 自然と頬が緩む。
 「ダメよ、あなたじゃ。
  話しているうちに、眠っちゃってるんじゃない?」
 
 ……輝く笑顔……
 俺は、このためならどんなことでも切り抜け、
 彼女を守り抜いていける。
 
 …そう、おまえだけ……
 
 また光を帯びた彼女の頭をくしゃくしゃにする。
 「ったく……。
  元気になったと思ったら、すぐそれか?」
 「やーっ!!
  もう、そんなかき混ぜないでよねっ」
 跳び退いて、膨れっ面で俺をにらむ。
 それがおまえだ。
 俺を惹き付けて離さない、
 いつも一緒にいるおまえだ。
 
 でも………
 「また、駄目になりそうだったら、いつでも来い」
 
 
 「おやすみ、ガウリイ」
 はにかみながら、ドアノブに手を掛ける。
 
 
 「おやすみ、リナ」
 
 ゆっくり休めよ。
 明日もその光で俺を照らしてくれ。
 
 
 
       おしまい。
 
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 あああああ〜。
 本当に私の人生はおわりだぁ……。
 こんなものまで書いてしまって……。
 いや、でもね、
 どちらか一方の語りだけでは表現しきれないし、
 かと言って、三人称では決して表現できないところが
 発生してしまうのですよ……。
 ………ごめんなさい言い訳です(T-T)
 
 読んでくださった方の手厳しい感想(^^;)
 とてもとてもお待ちしております……。
 
   悲しく沈む夢ってゃんでした。
 

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