「わんだふる とぅないと♪」



「はぁ。」
あたしはため息をついた。乙女チックな吐息では無く。単なるため息。
窓の外には雪が音も無く降り続いている。というか、降りまくってる。
「だぁ〜!!暇過ぎる〜!!!!!」
あたしは窓を開けて叫んだ。
雪は、そこに吸い込まれる様に、部屋に飛び込んで来る。
全身に、張り付く雪を感じつつ、あたしは慌てて窓を閉めた。
「し、死ぬほど寒いぃぃぃぃ!!」
あたしは、また絶叫した。


そう、この雪はもう三日も降り続いているのだ。凄まじい勢いで!
一昨日から、まれに見る大雪で、あたし達は足止めをくっていた。ま、急ぐ旅じゃないからいいけどね。ただ、宿代がかかるのが痛いところだが…。
窓の下を見れば、積雪は、一メートル近くになろうとしていた。
宿屋の一階は、かなり雪に埋もれている。雪の重みで、宿屋倒れたりしないわよね?
などと考えてると、
「ガウリイ?」
雪をかき分け、ガウリイが外に出ていくのが見えた。
「この寒さと大雪の中、出かけるなんて物好きねぇ。」
あたしは、気になって、その姿が見えなくなるなるまで目で追っていた。
コンコン!
扉を叩く音。
「リナさん。います?」
自分の名前を呼ばれ、はっと我にかえる。
「なに?アメリア。」
あたしは、ドアを開ける。そこにはアメリアが、楽しそうに立っていた。
「リナさん。今日は、何の日か知ってます?」
「え?今日は、12月24日でしょ。」
あたしは、当たり前の様に答える。
「今日は、クリスマスですよ!」
アメリアが楽しそうに言う。
「で、」
とは、あたし。
「で、って言われましても…。」
しどろもどろになるアメリア。ん?なんか、怪しいぞ。
「アメリア。あんた、なんか企んでるでしょ。」
あたしは、ジト目でアメリアを見る。大きな瞳は、視線を避ける。むむむ、怪しい、怪しすぎる!!
「あの、リナさん?」
怯えるアメリア。ニヤニヤと笑うあたし。
「アメリア、怒らないから、ちゃっちゃと吐きなさい。」
あたしは、アメリアに、一歩あゆみ寄る。
「リナさん。目が怒ってますぅ。」
一歩下がるアメリア。
「さあ、さあ、さあ、さあ。」
あたしが壁際まで一気にアメリアを押しきった。
「いいいいいいい、言いますから。ごめんなさいガウリイさん。」
アメリアは、怯える表情で、言った。
「ガウリイ?」
あたしは、?マークを浮かべた。
「そうです。ガウリイさんに今日はクリスマスだ。って教えたら、いきなり出かけちゃったんです。もしかしたらリナさんに関係あるのかなぁ。なんて。」
から笑いを浮かべるアメリア。
「もしかしたら、じゃなくて、絶対そうだって顔に書いてるわよ。アメリア。」
「えっ?!」
冷や汗を垂らすアメリア。
「クラゲのあいつに、そんな気の利いた事する訳ないでしょ。」
ため息をこぼすあたし。
「わかりませんよ?」
アメリアが、言う。でも、そんなのあるわけない。あいつはあたしの保護者だと言い切ってる。
でも、心のどこかで、クリスマスプレゼントを期待してる。
「だったら嬉しいんだけど・・・・・・・。」
思わず出た言葉。しまったぁ!
「リナさん、やっぱり期待してたんだぁ!」
遅かった。アメリアは、これ幸いと瞳を光らせていた。










情緒もへったくれもまるで無く、雪は音も無く降り続ける。


バサァ!!
外で、大きな音がする。雪が落ちた音以外に何か声がする。
あたしは、気になって思わず窓を開けた。
風は、さっきよりずいぶん穏やかになっていた。
窓の下では、二階の屋根には、赤い服と、赤い帽子をかぶった、ガウリイがジタバタしながら掴まっていた。
「あんた。何やってんの?」
あたしが、呆れた様に言った。
「えっ?!」
屋根にしがみついているガウリイが、顔を上げる。
「リナ!?」
驚いた様な表情をするガウリイ。そんなに、あたしの顔がめずらしかったか?
「なんで、お前、気づいたのか?」
きょとんとした顔のガウリイ。うう、なんか、捨てられた子犬みたいだぞ。
「気づいたのか?じゃないでしょ!そんな大きな音立てれば誰でも気がつくってもんでしょうが!」
あたしは、思わず叫んだ!
「それも、そうか。」
納得すな!。ガウリイ。
でも、なんか嬉しい。アメリアが言ってたのは本当なのかも。
「ところであんた、こんな夜中に、そんなサンタの格好して、なにがしたいわけ?」
そんな考えを、少しも見せずあたしは、思わずつっこんだ。ガウリイは、それを聞き流す様に、
「よっ!」
雪が降り積もる屋根に身を躍らせる。そして、雪を踏みしめあたしの方に歩いて来きて、
「メリークリスマス!リナ。」
そう言うと、サンタなガウリイは、いつもの優しい笑みを浮かべる。
「あ、え、メリークリスマス。ガウリイ。」
慌てて、あたしは答えた。
「リナ。サンタからのプレゼントだ。」
というと、ガウリイは、背中にしょっていた白い袋を開ける。
っておい。空っぽだぞガウリイ。
「いろいろ、考えたんだが、俺クラゲだから。」
そういうと、ガウリイはいきなりあたしに、袋をかぶせた。
「ちょ、ちょっと、ガウリイ。なにすんのよ!!」
あたしはもがいて、袋を取り払う。
そこには、サンタの格好をしたガウリイではなく、いつもの服装のガウリイが立っている。
いつもの顔では無く真剣な顔付きだ。
「リナ。」
吸い寄せられそうな青い瞳。あたしは、突然、動けなくなる。なんで?
「リナ。」
もう一度、あたしの名前を呼ぶガウリイ。
「・・・・・・・・・・」
駄目、言葉が出ない。
「リナ。」
あたしは、ガウリイに抱きしめられる。
固まったあたしは、呪文を唱えるすら思いつかなかった。
「俺は、お前を・・・・・・・・・・・。」
ガウリイは、そっとあたしの耳元で、囁いた。


---------アイシテル。----------



それが、彼からのクリスマスプレゼントだった。





おわる!!
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後書き。

はじめまして!秋月 和至といいます。
今回、初めてスレイヤーズ小説書きました。
試行錯誤の繰り返しで、なかなか他の方の様に上手く書けませんでした。
激甘予告してましたけど、あんまり甘くなかったです。
お許しを、そーらさま!!
でも、最後は、ちょっとブラックガウリイですね。(汗)
でも、このくらいは、白のうち?

次回は、完璧ブラックガウリイ大活躍!?です(笑)

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