「暗き闇、潜む愛。底に眠るは……想い。」


注意:これは、アクション物です(笑)本編13巻の続きのお話です。
読んでない方は、ネタばれしてますんで、気を付けましょう。(爆)






キス……。

俺は、ゆっくりと、リナから離れた。
掴んでいる剥き身の両肩は、壊れそうなほど、細い。
リナは、スーと、大きな瞳を開く。まるで、余韻を味わうように。
その表情に、俺は今日も魅了される。
「リナ。」
俺は、ゆっくりと、リナをベットに寝かせる。
小さくきしむ音を立てながら、俺も、リナに重なるを様に倒れ込む。

月の明かりが、リナの白い裸体を照らし出す。
俺は、リナの首筋に、吸い付くように唇を落とす。
「やっ!……あっ………………、駄目。キスマーク付いちゃう。」
俺しか聞いた事が無い、リナの弱々しく儚い声。
「いいだろ。それくらい。」
俺は、動きを止める。
「お風呂入る時、ミリーナに言われちゃうもん。」
恥ずかしそうな声が届く。
「俺は気にならないぞ。」
俺は、リナの方に視線を送る。
「あんたねぇ……。」
照れたリナが瞳に映る。俺は、少し意地悪な笑みを浮かべると、
「俺は、リナの物だし、リナは、俺の物だ。これはその証だ。」
おれは、そう言うと、リナの首筋にもう一度口付ける。
甘い吐息を耳元で聞きながら、俺は、鎖骨に、胸にキスを降らす。
「あん、もう。」
俺とリナは、何かに急かされるように、お互いを貪った。



闇の帳が最も深き頃。

「うふふふふふふふふふ。」
いきなりリナが、笑った。
「なんだ、いきなり。気持ち悪いやつだなぁ。」
「あんたに、気持ち悪い呼ばわりされたくないわね。」
眉をひそめるリナ。
「でも、いきなり笑われると、普通驚くぞ。」
「うう。そうかも。」
しな垂れるリナ。その仕種が可愛い。
「そうなんだって。」
呆れる俺の声。
「なんかさ。こう……ガウリイの手の中で居ると、素直になれそうなんだ。あたし。」
返すように、リナの優しい声。表情は、読み取れないが、きっと微笑んでいるのだろう。
「リナ。」
「あの時。ガウリイが、言ってくれなかったら、あたし達、まだ前のまんまだったんだろうね。」
リナが、俺の胸に頭を摺り寄せる。髪の毛の感触が何ともいえなかった。
「そうかもな。」
俺は、あいっている方の手で、リナの頭を撫でる。
「気持ちいい。」
その、何気ないリナの一言が、俺を刺激する。
「なあ、リナ。」
「なによ。」
ゆっくりと、俺の方に顔を向けるリナ、その愛くるしい瞳が、俺の欲望にに火を付ける。
「もう一回いいか?」
たまらず、吐き出した一言。
「なっ!なによいきなり!!」
顔を赤めて、リナが言う。
「お前が悪いんだからな。」
止まらなくなった俺は、そう言い放つと、リナの頬に、口付ける。
「何よそれ!!」
わかる訳ないよな。と、心で笑いながら、俺はリナの非難の声を無視して、リナに覆い被さった。


「寝ちまったのか?」
リナの返事は無い。可愛い寝息が聞こえてくる。
俺も、その寝息に誘われるように、睡魔が襲って来た。
まどろむような意識の中で、あの日の事を思い出していた。






剣も見つかり、俺とリナは、あてのない旅をしていた。
とある街で、どこからかリナが仕入れて来たお宝の情報。
暇つぶしがてらに、リナとそのお宝が眠るという洞窟に探索に出かけたんだ。
「ルーク、ミリーナ!?」
「また会うとは。なんか、因縁めいたもんがあるなぁ。」
その洞窟で出会ったのは、この間一緒に覇王と戦った二人だった。
それから俺達は、またまた偶然出会った、ルーク、ミリーナとしばらく行動を共にしていた。
「これからどうすんだい?」
と、ルーク。
「さあな、こいつに聞いてくれ。」
俺は、リナの頭を撫でる。
「もう、考え事は、あたしに任せるのね。」
「俺、力仕事担当だからな。」
俺は、あっけらかんに答えた。
「あのねぇ。」
リナが、スリッパを握り締め俺の方に振り返った。

そうして何日か過ぎて、俺達に依頼が舞い込んできた。
盗賊団から人の救出の依頼だった。依頼人の素性が、町長とはっきりしていたのと報酬が以外に多かった。そしてなにより趣味と実益をかねている、リナはあっさり了解した。
この時感じた違和感を、後で思い知る事となる。



夕闇に、呪文が炸裂する。どうやら盗賊どもは、退散したみたいね。これで、捕まってる町長補佐を助けたら、金貨200枚は、あたしの物♪
「ガウリイ!」
あたしは、ガウリイいる方に振り向く。
「どうした、リナ。」
ガウリイは、視線だけを、あたしに送る。
「見つけたわ!」
あたしは、にんまり笑う。
「そうか、こっちもあらかた片付いた。」
ガウリイは、盗賊の最後の一人を締め上げていた。
「あたし、先に助けに行ってくる。」
待ちきれず、
「まだ、残りの奴等がいるかもしれんから、気をつけろよ。」
「大丈夫よ!」
足音が、遠ざかる。
「おじさま。大丈夫?」
三十路を越えたばかりの渋いおじさまが、縄にくくられていた。
「大丈夫ですよ。……………………リナ=インバース。」
おじさまは、不敵に笑う。なに、この感じ!
「なんで、あたしの名前を!」
思わず飛びのくあたし。
「私の名前はバイストゥル。命ある者には、魔族と呼ばれていますよ。」
「なっ!」
あたしの呪文が、完成するより早く、バイストゥルの眠り(スリーピング)の呪文が完成する。
「…………ガウリ……イ。」
あたしの意識は、闇に沈んだ。




「我が名は、バイストゥル。はじめまして、ガウリイ=ガブリエフ。」
空に浮かぶ人影。
「魔族か?」
「その通り。月並みで悪いが、彼女は、預からせてもらう。」
虚空より、浮かび上がる人間。
「リナ?!」
魔族の腕の中で、身じろぎ一つしないリナ。魔法か何かで眠らされているに違いない。
「ガウリイ=ガブリエフ。高台の上にある屋敷に来い。リナ=インバースと共に、そこで待っているぞ!」
そ言うと、魔族の姿が消える。
「待てっ!!」
俺の手は、何も無い空間に、伸ばされただけだった、

高台の屋敷。俺は、見晴らしの良いところに出て、あたりを見回す。街の外れのあれか!
俺は、一気に街に向かって駆け出した。
「おい、どうしたんだ。」
俺の急ぐ姿を見つけ、走ってくるルークとミリーナ。
「リナがさらわれた。」
立ち止まり、俺はそれだけを呟いた。
「なんだって!!」
「まさか。」
驚く二人。無理も無い、捕まったのが、あのリナなのだから。
「行ってくる。」
俺はそう言うと、
「行くって何処に?」
と、ミリーナが問い掛ける。
「高台の上にある屋敷で、リナが待ってる。」
「私たちも…。」
俺は、ミリーナの声を遮って、
「俺一人で行かせてくれ。」
「待てよ!俺達は仲間じゃないのか?」
ルークが、俺の肩を掴む。
「俺は、あいつを守るって、約束したんだ。」
「…………。」
「もし、俺が、朝まで帰ってこなかったら、後は頼む。」
「おい。何言って……。」
「頼む。」
俺は、頭を下げた。
「嫌だ!」
拒否の声が、即答で返ってくる。
「……ルーク。」
「これから、死にに行くような目をしてる奴の頼みは、聞けないね。」
「なに!?」
俺は、顔を上げ、ルークを睨み付ける。
「図星ついたか?」
「………そうかもな。」
俺は、なんとか、苦笑いを浮かべる。
「お前だけ来いとは、言ってないんだろ?」
「…………そういや、言ってなかった。」
俺の中で、冷静な部分が生まれる。それは、俺の頭を急激に冷やす。
「だったら、俺達がついて行っても問題ないだろ。」
ルークが、笑顔で言った。
「ああ。」
俺もようやく落ち着きを取り戻した。
「行こうぜ!」
「行きましょう。」
ルークとミリーナが、俺を追い越して、走り出す。
「おう!」
俺達の靴音は、夜の街に響いた。

「あんた、リナの事、ほんとに大事なんだな。」
ルークは、俺の方を見ずに話し掛けて来た。
「俺は、リナの為ならなんでも出来る。たとえ、それが全てを敵に回す事になっても。」
「そういう事は、本人に言ってやってくれ。」
吐き捨てるように、ルークが言う。
「そうだな。こんどから、お前を見習うことにする。」
「そうそう!俺は、いつでもミリーナに愛を囁いているぞ!」
ルークの声が弾む。
「……………………はぁ。」
後ろで、大きなため息が聞こえる。
「そういや、いつもくらげなのに、今日はえらく冴えてるじゃないか。」
隣で走るルークが問う。
「あれは、全部演技だ。」
俺は、さらりと答えた。
「なっ!?」
驚くルーク。ま、驚くわな。あれが俺だと信じこんでる人間には。
「クラゲのふりする方が楽なんでね。」
「でもなんで!」
「あいつの保護者気取るには、それが一番楽なポジションだった。」
「………………。」
なにか、考え込むルーク。
「バカだな。あんた。」
と、一言。
「バカ……かもな。」
俺は、小さくうなずいた。
屋敷は、目の前に迫っていた。



黒い球体の中に、閉じ込められているあたし。結界を打ち破ろうと、呪文を唱えはじめる。
「その結界内では、魔法は御法度だ。」
「なっ!?」
いきなり、あたしの目の前に、人の形をした魔族が現れた。そう、さっきのおじさんの姿をした魔族バイストゥルだ。
「死にたければ、呪文を唱えるがいい。その結界は、呪文が発動する瞬間、木っ端微塵に爆発する。中に物があれば、どうなるか、容易に想像できると思うがな。」
呪文を唱えるのを止めて、あたしは歯ぎしりをする。
「くっそ!」
その様子を見たバイストゥルは、
「まあ、ゆっくり自分の仲間が息絶えるのを、見物するのだな。」
あたしの顎をとると、自分の方に向ける。あたしは、力いっぱい睨み付けた。
「なんで、あんたガウリイに固執すんのよ!あんたらの狙いは、あたしじゃなかった訳!?」
「それも、任務として受けているが、私は、興味があるんだよ。」
瞳をぎらつかせるバイストゥル。
「興味?」
「そう、魔族に興味を抱かせる、あのガウリイ=ガブリエフに!!」
「ガウリイに…。」
バイストゥルは、あたしの顎から手を放すと、虚空から、剣を召喚する。
「私は、試してみたいのだよ。リナ=インバース。我が剣技に人間がかなうのか。」
バイストゥルは、楽しそうに残忍な笑みを浮かべる。これから始まる事を楽しみにしているように。
「狂ってる………。」
あたしは、思わず口走った。
「私は人間ではないんでね。その表現は正しくない、リナ=インバース。格調高く、狂気に取り憑かれる。とでも、言ってもらいたいねぇ。」
剣先は、あたしの目の前に差し向けられる。
「さて、そろそろ準備にかかるとするか。」
バイストゥルは、地面に剣を突き刺すと、あたしたち人間に聞き取れない音で呪文を唱える。
「ぐっ!!」
結界内に黒い光が走り、あたしの、両手、両足を束縛する。いよいよ本格的に囚われのお姫様状態だなぁ。
「ガウリイ=ガブリエフが。この屋敷に入ってきたようだ。丁重におもてなしをしないとな。」
おびただしい数のレッサーデーモンが召喚される。
「行ってこい。」
バイストゥルが、一言呟くと、レッサーデーモンは、扉をくぐり抜けて行った。

「まじかよ!!」
館に入ったルークの驚愕の叫び。
「本気みたいよ。」
ミリーナの諦めに近い一言。
「凄い数だな。」
何十体いるだ?とにかく、通路に次から次に現れるレッサーデーモン。
「ルーク。」
呪文を唱え始めるミリーナ。
「おう!ミリーナ。先手必勝!魔王剣(ルビーアイ・ブレード)!!」
「崩霊裂(ラ・ティルト)!」
炸裂する魔法。
俺も、負け時と剣を握り駆け出した。
「おりゃああああああ!!!」
紙のように切れていくレッサーデーモン達。
僅かの間にデーモンの数は、最初の3分の1以下になっていた。
「ここは、俺らに任せて先に行きな!」
ルークの指が、通路の先を指す。
「悪いな。先行かせてもらうぜ!!」
俺は、床を強く蹴り出すと、何体かのレッサーデーモンをなぎ払い、通路を前に進む。
俺の方を追いかけようとするレッサーデーモンをルークが呼び止める。
「お前ら雑魚の相手は、俺とミリーナが相手だ!愛のパワーをなめんなよ!!」
ルークの声が響き渡る。
「だれと誰の、愛のパワーですか。」
ミリーナは、大きくため息をついた。



つづく。

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