「君が膝で見る夢は」

 

「ああ〜もう疲れた。少し休もうガウリイ。」
リナが、叫ぶ。
「まだ次の町までだいぶあるぞ。野宿になってもいいのか。」
一応聞いてみる。答えはわかってるけど。
「いざとなったら、レイウイングでぶっ飛ばす。
 とにかくいまは疲れたの。ちょうど木陰もあるし、チョットだけ昼寝しよう
ガウリイ。」
やっぱりな。
「へいへい。わかりましたよ。お嬢ちゃん。」
「あ、また子供扱いする。」
上目遣いに見上げてくるふくれっつらの頭をなでながら、オレは笑った。

「どっこいしょ。」
どすん、て感じでリナが腰を降ろす。
ここんとこちょっと強行軍だったし、大分疲れてるかな。
今日はゆっくり休ませてやらないと。
でも口に出すのは、戯れ言。
「おばん、だな。」
「何よう。レディに向かって失礼ね。」
「どっこいしょって言うレディね。」
「あ、疲れてんのよ。しょうがないでしょ。」
「だったら早く休めよ。」
オレは木の幹にもたれ、こてんとリナの頭を膝の上に乗せてやる。
「また、子供扱いする。」
「じたばたすんなよ。よけい疲れるだろ。」
「じゃあ、ガウリイはどうすんのよ。」
「オレか、オレはあんまり疲れてないし
 このままでも寝られるから大丈夫。
 ほら、寝るならさっさと寝て早く起きないと野宿だぞ。」
「う〜。わかったわよ。」
恥ずかしいのか顔の上までマントを引っかぶる。
すぐに寝息が聞こえてきたところを見るとよっぽど疲れていたんだろう。
マントをひけばあどけない寝顔。
こうしていると年相応なんだがな。
そっと髪をなでてやる。
夢でも見ているのだろう。その唇が微かに動く。
オレの名前?まさかな..
今度ははっきりと聞こえた。
「ガウリイ!」
辛そうな叫び。何の夢なんだ。
オレはおこさないようにそっと、でもしっかりとリナの身体を抱きしめる。
耳元で囁く。
「オレはここに居る。リナのそばにいる。ずっと一緒にいるから。」
呪文のように、繰り返していると、ふっとリナが目を開けた。
柔らかい笑みが広がる。
「ここにいたのねガウリイ。よかったあ。」
両腕でおれの首に抱き着き、そのまま、また眠り込む。
「おい、リナ。..ま、いいか。」
リナのぬくもりを感じながら、オレも眠りに落ちていった。

腕の中で激しく動く気配。
目を開ければ、真っ赤なリナの顔が間近にあって、オレは慌ててしまう。
「うわあ〜」
「うわあ、じゃない離しなさいよ。このクラゲ!」
「へっ・・」
ああ、うなされたリナを抱きしめてそのまま寝ちまったから・・
いつのまにか、ずり落ちて、リナを抱き込んだ格好で眠ってたんだ。
起き抜けの頭で考えるオレの髪をリナが引っ張る。
「考え事なら、離してからにしてよね。」
そんなにきつく抱いてるつもりはないんだがな。
「お前さん、ホント非力なのな。」
「ばか力に言われたかないわよ。とにかく離して。」
腕を解くと、マントを引き摺りあわてて離れていく。
「まったく油断も隙もないんだから..。」
むか。
「寝ぼけて、抱き付いてきたのはそっちだぞ。」
「そんな馬鹿な。」
疑いの眼差し。あのなあ。
「なんか悪い夢見たんじゃないのか。いきなりしがみついてきたんだからな。」
こちらを伺う眼差し。思いだしたのか?
「あ..。あたしなんか言ってた?」
「よく聞こえなかった。」
「そう。ごめん、ガウリイ。やな夢見たみたい。」
近寄ってくるリナの頭をなでてやる。
「ま、いいさ。それよりもう夕方だ。ちょっと寝過ぎたな。
 どうする?次の町まで行くか?」
「遅くなっても、そうしたいわ。柔らかいベッドで寝たい..。」
「じゃ、行くか。ほれ。」
「ほれって..。」
差し出した手を不思議そうに見つめる。
「疲れてるんだろ。おぶってってやるよ。」
「ばか、レイウイングの方が早いわよ。」
ちょっと、赤くなりながら、リナがオレの手を取り呪文を唱える。
風の結界に紛れて、小さな声が聞こえた気がした。
「ありがとね、ガウリイ。」


おわり

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