「はにぃ・でいず」
〜いつもよりちょっぴし鬼畜かも??〜


前書き:

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 えーと、これを読んでいただける方々に、諸注意を(笑)。実は、このお話はとある方に「ガウフィリ」を書いてくれと頼まれたことがきっかけで書いたものです。どうしてもどうしても書けなくて、こうなりゃ、ガウリナかゼロフィリを書いて、名前のリナ(ゼロス)のところをフィリア(ガウリイ)に置換かけるしかないという決意を胸に書いたものです。それに人に頼まれて書くというのも初めてだったので緊張しまくってた(^^;)ので、今までつなみが書いてものとはちょっと感じが違うかもしれません。笑って読んでやろうと言う寛容な心をもって読んでいただけると嬉しいです(笑)。
 
 

小心者のつなみより

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 ここは、花の街ラフレシア。新婚旅行の都市。当然、観光資源がこの都市最大の収入源である。そのラフレシアでも最も豪華な宿泊施設のレストハウスでこれまた豪勢な食事をリナとガウリイが優雅(?)に次々と口にほおばっていた。今回の依頼というのが観光名所を訪れるカップルばかりを狙ったせこい悪党退治。本来ならリナ・インバースたるものが首を突っ込むような仕事ではないのだが、その間の寝食にかかった費用がすべて向こうもちでしかも報酬金がかなりの額とくれば話は別だ。

「リナさん、依頼の方は進み具合はいかがかな」
 せかせかと腹に料理を収める2人のそばへ近づいてきた人物がそう声をかけた。年は50をいくつかこえてるあたり。ぱっとみた感じは温厚そうな感じなのだがその実は結構押しが強い。このマクガイアさんこそがラフレシア観光協会々長、つまりは今回の依頼主の代表者ということになる。リナがごくりと口いっぱいに詰まっていた食べ物を飲み下した。
「ええ、まあ。…思ったように情報があつまらなくて」
このまま、情報がないままでは打つ手がないとは言えない。しかし、リナの言葉にマクガイアはうなずいて言った。
「そうでしょうな。えらく勘のはたらく奴等らしく今まで雇ったものたちではその姿さえとらえられなかったぐらいで」
 それもすでに聞いた話であったが機嫌をそこねないようにリナがうなずいた。この3日間で手に入れたその盗賊に関する情報は意外なほど少なく、人数はそうたいして多くないらしいこと、非武装のカップルしか狙わないことの2つくらいしかわかっていない。“小心者達の集まりで小回りがきき、なかなか勘の働く一味らしい”という程度の推測しかできないでいた。
「なんとしてもリナさんにはその盗賊たちを退治していただきこのラフレシアのイメージを回復するのに一役かっていただきたい。
そのために必要な費用は惜しみませんぞ」
 こういったことを聞いていると一見いいことだらけのような依頼なのだが当然その盗賊を捕まえられなかったときにはペナルティがつく。ギブアップするまでにかかった経費をすべて払うことになる。はっきりいってこの施設の一泊の料金はそんじょそこらの宿屋が束になったってかなわないような値段を要求される。ここに1週間もいれば半年は遊んで暮らせるような金が必要だ。もちろんリナはそんなお金を払うつもりはさらさらない。マクガイアの迫力に押されつつもリナが頷きかえす。
「もちろん、私たちもそのための努力は惜しみません。今もガウリイと2人でこうなったらその盗賊たちがよくでるというスポットを探索しようかと話してたところなんです。ね、ガウリイ」
一人、食べる手を片時も休めないガウリイの足をギュムと踏みつけながらリナが笑いかけて言った。
「いっ…ああ、そのつもりです」
 全く話がわからないなりにガウリイが話を合わせる。
「なるほど。囮作戦ですな。しかし奴等は、全く抵抗の出来なさそうな弱いものしか襲わないので剣などを帯刀していくともうそれだけで」
 リナが最後まで言わせない。
「わかってます。私もガウリイも完全非武装で普通の…恋人かなにかを装ってその辺をうろついてみますから」
 ガウリイが何かいいたそうに口を開きかけたのでリナがギロリと睨みつけた。
「そうですか。ではそこでお待ちください、出現率の高そうな場所の地図を用意させますから」
口封じをされたガウリイにかわってマクガイアがくれぐれも油断しないようにと言ってその場から離れて行った。その背中を見送りながらリナが小さく肩を竦めてため息をついた。これじゃ、せっかくの料理もどこにはいっていったのかよくわかんないわ。
「おい、リナ。全然話、聞いてなかったんだけどなにが恋人なんだ?」
毎度のごとくまったく人の話というものを自分の頭で理解しようとしてないガウリイ。どうしてそういう変なとこだけ耳にいれちゃうのよ、このクラゲは。
「早い話が、盗賊を捕まえるために囮になるってことよ」
「うーんと。つまり囮になるために恋人になるってことだな」
こいつわざと言って人をからかっているんじゃないでしょうね。リナがガウリイの表情をこっそりと盗み見たがそんな感じは微塵もない。どこまでも呑気そうなその様子にわれしらず肩透しをくらった気持ちになったリナだった。


* *******


 ―――アマリリス、カンパニュラ、シネラリア、チューベローズ、その他の名前はおろか見るのも初めてというたくさんの草花がラフレシアの街のそこかしこにあふれていた。さすがに花の街といわれるだけあると感心しながらそのなんともいえない良い香りのなかをリナとガウリイは腕を組んで歩いていた。
白いざっくりとした軽装のガウリイの腕にリナはかるく指をかけて歩く、その姿は同じく白の袖なしワンピースといういでたちでその裾がふわりふわりとゆれた。
「ねえ」
リナがついに先ほどから一言も言葉を発しようとしないガウリイにイライラと声をかけた。おそらくその2人の姿をみたものがいたならば休日を楽しむ恋人同士のように見えたはずだ。しかし辺りには残念ながらその現場をフォーカスするような人影はどこにもみあたらなかった。観光協会がやっきになって盗賊退治をしようとしているのも納得である。その盗賊の被害に遭ったカップルのほとんどがそのことをきっかけに別れ…その噂に尾ひれがつきこの都市の観光名所の一つである「アリアの女神像のところへ行ったカップルは必ず別れる」というジンクスまでできてしまったらしいからこれは観光地(それも新婚旅行の花の街)として有名なこの都市にとって実際にその悪党達から受けた被害に加えてのダブルの大ダメージだったのだろうとリナが同情した。
「―――――― なんだ?」
気の無いガウリイの返事にリナがその腕をひいて顔を自分の方へ向けさせた。こうでもしないとリナからはガウリイの表情を正面から捉える事ができないのだ。
「あのねえ、仕事とはいえ一応、まがりなりにも恋人の「役」なんだからもう少しウソでもいいから楽しそうにしてよ」
 リナの言葉にガウリイがため息をついた。
「―――楽しくっていわれてもなぁ…」
いつになくシリアスな口調でガウリイがぼそりと言ったのでリナが足を止めて見上げた。
「…お前不安じゃないのか?」
「何が?…まさかその盗賊が恐いってんじゃないんでしょ?」
「まさか」
「でしょうね」
ついぞ、ガウリイの口から「恐い」とか「不安」なんて高度な感情が発生したなんて話しは聞いたことがない。それだけにいま何にガウリイが不安を感じたというのか気にかかる。リナはガウリイの次の言葉を待った。ガウリイはリナの表情を見て考えていたこととは違うことを言った。
「…女神像のとこにも行くんだろ」
「あたりまえでしょ、そこが一番出現率が高いんだから」
「そこに行ったカップルって別れる事になるんだろ?俺、やだぞ、リナと別れるの」
 ばかばかしいぐらいまじめな表情でガウリイが言った。リナが一瞬、ガウリイをみつめかえす。しかしすぐに吹き出してゲラゲラ笑い出した。
「ぎゃはは。馬鹿じゃないの、ガウリイ。本気でそんなジンクスに効力があると思ってるの」
 体をよじって笑い転げるリナをガウリイが憎ったらしそうににらんだ。
「だいたいそのジンクスにしたって今から退治しにいく悪党達のせいで出来たものじゃない」
 それでもまだシブイ表情をしているガウリイにリナがしょうがないなあとでもいうかのようにつけたした。
「仮にそのジンクスに確かに何らかの効力があるとしても私たちは大丈夫よ」
その言葉に驚いたように振り返ったガウリイにリナが頷いて見せた。
「だって私たち恋人じゃないんだから」
 ガウリイがすっこけかけた。なんとかそれをこらえつつ、
「ま…あ、そりゃそうなんだが」
 ため息まじりに鼻先をポリポリとかいた。そのガウリイの腕にトスッとリナの重みがかかる。リナがガウリイをふりあおいで言った。
「んじゃ、笑って」
 言いながら、リナがそれまで軽くふれているだけだった自分のそれをガウリイの腕にぐっとまきつけてスリスリした。リナなりの恋人らしさの演出なのか、ガウリイはちょっと考えるように息をつめて、ようやくそれだけを言った。
「――――俺から離れるなよ」
 おもわずガウリイのその真剣な声に今度はリナがその顔をふりあおぐ。ガウリイの耳にはマクガイアの忠告の声が響いていた。相手は無抵抗のカップルばかりを狙うという小狡い盗賊のわりには「男からは金を、女からはそれ以外のものを奪う」という質の悪い連中だから十分気を付けなさい。ガウリイは再びその言葉を飲み込んで言った。
「一応、役とはいえ恋人同士なんだからな。今日ぐらいはいたわってくれよ」
 リナの頭をなでる。
「なによそれ、それじゃ普段私がガウリイをないがしろにしてるみたいじゃない」
「お前なあ、そうじゃないっていうのかよ」
ガウリイが笑いを含んだ口調でそう言ったのでリナがぷんぷんに頬をふくらませた。しかしそれもつかの間のことで腕を組みながら白亜の観光名所を訪ねて歩いていくうちリナはすっかりくつろいでしまっていた。もちろん油断なくあたりの気配を窺っているつもりだったのだが必要以上にガウリイの腕に自分の体をあずけていることに気付いてハッとリナが身を起こした。どーしたっていうの、わたし!!リナが耳まで真っ赤に染めあげた。恥ずかしくてガウリイの顔を見ることができない。夕暮れが差し迫まり遠くにその影をみつけるとリナがほっとしとようにガウリイの腕から手を放して駈けだした。息をきりながら馬鹿でっかいその女神像のそばまでくると足をとめて振り返った。いきなり走り出したその後をあわてて追いかけてきたガウリイに笑いかけながらリナはその像に背中をあずけてぐっと背伸びをしてみせた。しかし近づいてきたガウリイの表情が意外に真剣なことに気付いてリナが取り繕ろうと口を開きかけた。しかし、ガウリイの方がはやい。
「お前なあ、さっき俺から離れるなっていったばかりなのに、もお、忘れたのかよ」
ガウリイの声と引きつった表情にリナが体をすくめた。
「いや…、それはそのお…。そ、そんな目くじらたてて怒るほどのことじゃないでしょ。そんなことより、跡、つけてきてた奴いたのに気付いた?」
リナが話題をかえる。
「―――まあな」
 2人の様子をうかがうその人影はある一定の距離以上近づいてこようとしなかった。
「そいつ一匹だけ捕らえてもな」
 ガウリイがリナの突飛な行動に翻弄されながらもため息をついて言葉をかえした。リナがその言葉の続きを引き受ける。
「なんで襲ってこないのかなあ」
 ガウリイが少し考えて答えた。
「……もしかして俺達が恋人同士に見えないとか」
「どういう意味よ?」
 リナがギロリと睨んだのでガウリイが慌てて体の前で手をひらひらと左右に振った。
「いや、別にリナの胸が小さいからとか、色気がたりないからとかそういうことじゃな…ぐはっ」
 ガウリイの顎にリナのパンチが炸裂した。ひっくり返ったガウリイを助け起こしながら、
「どうしたものかしらね。襲ってくれるまで、も一回、観光コース周ってみる?」
「いや。だから、逆にやばいだろそれは」
何事もなかったかのようにガウリイがリナの手をとって立ち上がりながら言った。
「なにが、だからなの?」
「この人気の無さをみてみろよ、こんなとこうろうろしてる奴なんていかにも「襲って下さい」っていってるようなもんで罠っぽい感じなんじゃないか?んで、同じコースをふらふらとたどってみたりなんかしたらもう絶対囮だってばれちまうだろ?」
 めずらしくガウリイがガウリイじゃないような考察をしめしたのでリナは意地悪をしたくなって言った。
「んじゃ、どうすりゃいいっての?」
「そうだな」
 ガウリイがにやりと笑ってリナに言った。

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