「クリスマスプレゼント」


白い光が差し込む清潔な室内。男が一人、椅子に腰掛けている。
長い金髪、青い目、整った顔。微笑んでいればまるで絵本の中の王子様のよう
だ。
が、その顔にはなぜか不安と怯えが浮かんでいた。
じっと見つめている視線の先には、栗色の髪の少女。
ベットに横たわっている少女は静かに静かに眠っている。
 
「リナ、早く目をさましてくれ」。が返事はない。
手を伸ばし青ざめた頬をなでる。
「冷たい、まるで……。そんなはずないよなリナ、
ドラゴンもまたいで通るお前が、お前が死ぬなんて」。
自らの言葉に不安を掻き立てられ、たまらず少女の体を抱き起こす。
「リナ、リナ、リナ……」。
 
 
「何やってるんですガウリイさん」。
「やめろガウリイ! どうしたんだ」。
あわてた声にハッとして腕の中の少女を再びベットへ寝かせる。
振り返ると扉の近くに黒髪の少女と銀髪の男が立っていた。
 
「すまん。つい」。
「ガウリイさん。リナさんなら大丈夫です。髪の色も栗色に戻りましたし、
きっともうすぐ意識ももどります」。
「そうだ、ガウリイ。医者も、衰弱しているから安静にって言ってただろうが。
心配なのはわかるが起こしてどうする」。
「すまん。アメリア、ゼルガディス。
なんか…このまま…リナが目をさまさないんじゃって気になっちまって」。
目を伏せて言うガウリイを見てアメリアとゼルガディスは顔を見合わせた。
 
「なに言ってるんですか。大丈夫です。この巫女である私が保証します。
リナ=インバースは絶対に目をさまします。
セイルーンの巫女の言葉が信じられないとでも言うんですか」。
心配性の保護者を安心させようと強気に言い切ったアメリアの言葉に
やっと顔を上げガウリイは笑った。
「ああ、信じるさ。ありがとなアメリア」。
 
 
部屋にこもっていないで外の空気を吸ってこいとガウリイを追い出した後。
「ガウリイにはああ言ったが、本当にリナはどうしたんだろうな。
いつもならあれくらいで倒れる奴じゃないだろう。
たいした呪文も使ってなかったのに」。
真剣な顔で言うゼルガディス。
その言葉を聞きアメリアはなぜか顔を赤くした。
「えっと、それはですね……」。
「なんだアメリア。お前、何か知っているのか」
訝しげに尋ねるゼルガディスに向かい、アメリアはますます顔を赤くして
「リナさん…………………………」。
「えぇーーーーーーーーーーーっ、嘘だーーーーーーーーー」
部屋中にゼルガディスの絶叫が響きわたった。
 
 
夜になりシーンと静まり返った中、ガウリイはリナが眠る傍らにいた。
「早く起きろよ、リナ。クリスマスプレゼントに
びっくりする物をくれるって言ったろ。クリスマスが過ぎちまうぞ」。
眠り続けるリナに語りかけながらガウリイは嬉しそうに
笑っていたリナを思い出していた。
 
「ねぇ、ガウリイ。今年のクリスマスはびっくりするものをあげるわ!」
満面の笑みで弾むように言うリナ。
「なんだよ。俺がびっくりするもの? 喜ぶ物じゃなくてか」
「うーん、喜ぶかは……わかんない…」。複雑な表情をしているリナに
「まっ、お前がくれるんなら何でもいいや」
と頭をなぜた日の午後、盗賊団を相手にファイヤーボールをおみまいした直後
「あっ………」
小さい声を上げて地面に崩れ落ちたリナの髪は銀色に染まっていた。
 
 
「こうしていると眠り姫みたいだな。キスしたら起きるか?」
ふっと笑い顔を近づけ口づける。
「ん…」
「えっ、リナ? おい、リナ!」 
小さな声を捉え、あわてて愛しい少女へ呼びかける。
「ガ…ウ…リイ? ここは…」。
「よかった、よかったぁーリナ」。
ガウリイはきょとんとしているリナを思いっきり抱きしめた。
 
「リナ、お前クリスマスに何をプレゼントしてくれる気だったんだ」。
リナの髪を梳きながらガウリイが尋ねる。
「だーめ。クリスマスまではひ・み・つ」。
「だってもう今日だぞ、クリスマス。
お前1週間も意識がなかったんだからな」。
「えーっ、そんなに眠ってたんだ。じゃああげるわよ。ほら手出して」。
「へ、今くれるのか」。
差し出されたガウリイの手をとり、リナは自分の腹部へと持っていった。
「プレゼントはここよ」
ガウリイの顔が驚きにあふれる。
「リナ……、お前」。
「どお、びっくりした? おとうさん」。
顔を赤くしながらリナが言う。「ガウリイ、嬉しい?」
「リナ、リナ、リナ、リナ……………」。
エンドレスでリナの名を呼びながらガウリイはリナをしっかりと抱きしめる。
「ありがとうリナ。生きてきた中で一番嬉しいプレゼントだ」。
 
 
その後、冷静になったガウリイに、何であんな無茶をしたとさんざんお説教を
されたリナであった。
 
おしまい
 
 

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