「Simple is the Best」


「あー良く寝た。」
あたしは思いっきり伸びをする。
やー朝は気持ちいい!
あたしはベットを起き、隣で寝ているアメリアのからだを揺らす。
「ア・メ・リ・ア!ほれさっさと起きる!」
バサァ。あたしはアメリアがすっぽりかぶっていたシーツを剥ぎ取る。
「うっもう朝か・・・。」
!!!?!?!?!???
あたしは自分の目を疑った。
そこに眠っていたのは、ゼルガディス。その人だった。
「おい?どうした。ガ・・・。」
「ぎゃああああああああああああああ!」
ゼルが言葉を終える前に、あたしの絶叫が当たりに響いていた。
「おっおい!」
バン!ドアが開かれる。と、そこにはアメリアが立っていた。
・・・壊すなよ。ドア・・・。
「どうかしましたか?」
「どうしたもこうしたも無いわよ!なんでセルガあたしのとなり・・・おんなじ部屋 で寝てんのよ!」
『へ?』
ゼルとアメリアの間の抜けた声がハモル。
「そんなこと、いつもの事じゃないですか。どうかしたんですか?『ガウリイ』さんおかしいですよ?」
へ?がうりい???
「アメリア!あんた熱でもあるんじゃないの?リナよ。リナ。
あたしは,リナ=インバース!」
あたしの叫びにゼルはやれやれといった感じで、
「アメリア、そいつ熱があるんじゃないのか?リザレクションかけてやれ。
 ところでリナは?」
「私呼んできます!」
言って部屋を飛び出すアメリア。
「だあああああああ!あたしはここに居るでしょうが!」
「ふっそんなことは鏡と相談してから言うんだな。」
鏡? あたしは近くにあった鏡台に駆け寄る。
「!?何これ!ガガガガガッガ・・・」
「うああああああああああああああ!!!!」
これはあたしではない。あたしは恐怖のあまり声も出ないのだ。
「次は何だ・・・。」
ゼルは大きくため息を吐いた。

「リナさん!起きてください!ガウリイさんが!」
アメリアの声が耳に響く。
なぁんだ。リナのやつも寝坊かぁ。
ふう。眠い。
バサァ。シーツがめくられる。見上げると、そこにはアメリアが立っていた。
「寒い・・・。」
「何丸くなってるんですか!リナさん。早く起きてください!ガウリイさんが熱があるみたいなんです。」
「アメリア?すまん。
俺にはお前が何言ってるのか良くわからんのだが・・・。」
俺はベットから体を起こす。
「だから!ガウリイさんが・・・。」
「俺ならここに居るだろ?しかも熱なんて無い。」
「リナさんまで何言ってるんですか!寝ぼけるのもいい加減んにしてください!ガウリイさんみたいな喋り方して!」
「へ?」
「ちゃんと目を覚ましてください!それから、その格好!だらしないですよ!」
アメリアが、俺の胸元を指差す。見ると、胸元がはだけて・・・。
こっこりは・・・?俺は?もしかして?その・・・。
「うああああああああああああああ!!!!」
俺の絶叫が辺りにこだましていた。

「こんなの!正義じゃありません!」
ゴオオオオオオっとバックに稲妻を光らせながら燃えるアメリア。
「正義かどうかは知らんが・・・。信じられんな。」
アメリアを手で制しながら言うゼル。
ここは、あたしとアメリアの部屋。(本来なら乙女の部屋で、なんてことはしないけれど、アメリアがドアをぶっ壊したから。)このどうしようもない状況をみんなで話し合っている。
今、あたしはベットの上に【ドカッ】っと座っている。その横にガウリイが【チョコン】と、その正面の椅子にアメリアとゼルが腰を下ろしている。
「あたしだって分かんないわよ・・。ガウリイは・・・。聴くだけ無駄だと思う。」
「うっ俺だって・・・。」
ガウリイが何かつぶやくが無視である。
「でも実際どうすればいいんでしょう?この状況。」
アメリアがしみじみと言う。
「そうね・・・。心当たりが無いわけでもないんだけど・・・。」
ちらりと、鏡に目をやる。と、そこには珍しく考え事をしているガウリイーーーあたしと目があう。
そういう事か、あたしとガウリイの中身が入れ替わってしまったのだ。要するに、頭の中身のあるガウリイと、頭の中身のないあたしが現れたわけである。
シルフィール辺りが見たら喜ぶかなぁ。
まぁ、実際の話。これはとことん困る。なにせ、か弱い乙女のからだに、むさい男の中身・・・。さっきだって、ガウリイが着替える!とかいい出して大変だったんだから。まぁ、あたしとアメリアが、ガウリイに目隠しして着替えさせたからよかったようなものを・・・。
「まったく・・・。やってくれたわね。ゼロス。」
「おや?気づいてましたか。さすがはリナさん!」
あたしの呼びかけに白々しく出てくる男が一人。謎の神官ゼロスである。
『ゼロス(さん)!?』
みんなの声がハモル。
「いやぁ、ばれてしまいましたか・・・。はっはっはっは。」
「はっはっは!じゃなくてこれはどういうことよ!」
「いやだなぁ。それは秘密ですよ。」
例によってあのポーズを決めるゼロス。
「言うと思った。」
「まぁ、諦めてください。運命だと思って。」
『諦められるかぁ!』
あたしとガウリイが声を上げる。
「とにかく!元に戻る方法を教えなさい!それとも・・・。アメリア!ゼル!ガウリ イ!」
あたしが三人に合図を送ると、アメリアはどこに持っていたのか、メガホンを取りだし、ゼルとガウリイは瞳を潤ませ、手をつなぎ・・・。
『人生って素晴らしぃぃぃぃ!!』
「う!せっ精神攻撃!」
その場にガクッと膝をつくゼロス。
『生きてるって素晴らしい!!!』
なおも言い続ける三人。
「どう?言う気になった?」
「言います。言います、言いますから・・・。」
ゼロスはその場にぱたっと倒れた。

「では、言わさせていただきます。」
コク。なぜかみんなに緊張が走る。
「言いますよ・・・。あれです。皆さん良くご存知の・・・。
 昔からあるあのシンプルな解呪法です。」
ピシイ。俺は辺りの空気が凍り付くのを感じた。
「はっはっはっは。じゃあ、僕はこの辺で。あんまり遊んでると獣王様に怒られちゃ いますからね。それでは・・・。」
言って消えるゼロス。後にはやりずらい空気だけが残った。
「なぁ、そのシンプルな解なんとかって、なんなんだ?一体。」
俺は疑問をそのまま言葉にする。
「リナ?」
リナは凍り付いたままだった。
「ゼル・・・。」
「あーーーーーーだからその・・・。なんだ。おとぎばなしにもあるだろうが!
 その、・・・・。アメリア!」
ひどく言いにくそうなゼル。なぁんとはなく、顔が赤い。
「呪いを解く、一番シンプルな解呪法・・・。やっぱりあれですよね・・・。
 おとぎばなしにもある。お姫様が、王子様のキスで目覚めるって言うやつです。」
「きききききききききききききすううううう???」
「ええ。因みに言いますけど、魚じゃないですから。」
あ、先に言われた・・・。
「でも、それって俺とリナがって事か?」
「そういう事だ。後はお前達に任せる。」
言って、席を立つゼルガディス。
「あっ待ってください。」
後を追うアメリア。ドアの手前でクリンと回って一言。
「あの、がんばってくださいね・・・。」 
パタン。とドアを閉める。
ーーーーーーー。がんばれって言われても・・・。


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