「初詣に行こう!」


 
今日は大晦日。
年越しそばも食べ終えて、紅白もいよいよクライマックス!
でも、そんなことあたしには関係なかった。
「・・・ガウリイ」
「よぉ」
目の前に、ガウリイの青い瞳がある。
いつもなら、高い位置にあって真っすぐに見ることすらできない蒼。
あたしは何とはなしにそれを直視することが出来ず、俯いてしまった。
そんなあたしの態度にはまったく気付かないガウリイがちらりと腕時計を見て、
「行こう。急がないと間に合わなくなっちまう」
あたしを促す。
「あんたが悪いんでしょ。迎えにくるって言ったのに遅刻するから」
ぶちぶちと文句を言いつつ、あたしは新調したばっかりのブーツに足を入れた。
・・・ヒール、少し高すぎたかな。
「じゃあ、行ってきます。あんまり遅くならないと思うけど」
リビングにいるであろう姉ちゃんに声をかける。
「わかってるわよ♪行ってらっしゃい」
妙に機嫌の良さそうな声が帰ってきて、あたしはなぜか不安を覚えた。
姉ちゃんが嬉しそうにするよーなことでも起きたのだろうか?
あたしがその場から立つと、ガウリイと視線があった。
ヒールが高いからか、いつもより近くにガウリイの顔。
「行くわよっ!」
どきどきと高鳴り始めた心臓を無視してあたしは外へ飛び出す。
ぎいいっ、ばたん。
後ろで玄関の閉まる音がした。
 
 
「ほら、リナ。ヘルメット」
オレは持ってきたリナ専用のヘルメットを投げてやる。
リナは上手くそれをキャッチして
「・・・ありがと」
小さくつぶやいた。
「どういたしまして」
オレもヘルメットを付けて、エンジンの付けっ放しだった愛車にまたがった。
「乗れよ」
声をかけると、リナが後ろに乗っかったような気配がした。
ふと、違和感を覚える。
いつもだったら、ためらいもなく伸びてくる腕が、今日は伸びてこない。
「しっかり捕まれ」
やっと、けれどためらいがちに腕が伸びてくる。
しかも捕まり方がすごくあぶなっかしい。
「もっとちゃんと」
リナの腕を引っ張って、自分の身体に抱きつかせる。
「う・・・うん」
「じゃあ、出発するからな。腕、緩めるなよ」
「わかってる」
ぶろろろろ!
バイクのエンジン音だけが耳に届く。
今日のリナは・・・何か変だ。
いつもの快活さ・・・というか、厚かましさというか、元気がないのだ。
自分から話さないのはもちろんのこと、声をかけても空返事ばかり。
どうしたんだろう?
「!」
そこまで考えたとき、ふとクリスマスプレゼントのことに思い至った。
・・・・・・迷惑だったのかな・・・リナは。
何を録音するか、オレは最後まで迷っていた。
いつもの、何気ない一言でもよかったのに。
よりによって「愛してる」だもんなぁ・・・。
オレが、リナの負担になっているんじゃあないか?
いつもリナはオレのことを男としてみていない・・・と思っていた。
保護者と被保護者の関係。
それでも、リナの側にいられればよかった。
そう思っていたはずだ。
でも・・・いつのまにか、それじゃ満足できなくなっている自分がいた。
「あとどれくらいで着くの?」
リナの言葉ではっと我に帰る。
「あ・・・ああ、もうすぐだ」
次の路地を右に曲がると、小さな神社があるはずだった。
 
 
境内に入る前にバイクを降りて、あたしとガウリイは神社のお賽銭箱の前にきてい
た。
夜の空に除夜の鐘が響いている。
「今、何時?」
「十一時五十分。あと十分で新年だ」
そう、あと十分で今年が終わる。
いろんなことがあった年だった。
そっと、ガウリイの横顔を盗み見ると、寒さに少し頬が赤らんで見えた。
『愛してる、リナ』
「!!」
唐突に聞こえた言葉にあたしは勢い良く横を向いた。
「どうしたんだ?」
ガウリイがきょとんとして聞いてくる。
幻聴・・・・・。やっぱり。
どうしよう。
あの<がうりん>のメッセージが、頭から離れない。
ガウリイの顔を見ると、どうしても思い出してしまう。
・・・ごぉぉぉぉん!
大きな鐘の音に<がうりん>のメッセージがふいっとかき消えた。
最後・・・百八つめの除夜の鐘。
「あけまして、おめでとう」
ガウリイがあたしの顔を覗き込む。
「おめでとう」
二人で、顔を見合わせて笑う。
不思議とこのときだけは<がうりん>のことも、あのメッセージのことも頭から消えていた。除夜の鐘のせいだろうか?
妙にすがすがしい気持ちでお参りをする。
願い事は。
『今年もガウリイが横にいてくれますように』
 
 
「ねえ、ガウリイ。何お願いしたの?」
「ん〜・・・」
ガウリイは唸ったきり、リナの問いには答えなかった。
『リナのことを守れますように』
そんなこと、言えない。
じゃりっ!
境内に敷き詰めてある石が大きな音をたてる。
「あっ・・・」
リナが足を滑らせ、転ぶ。
「リナ!」
ガウリイは無意識のうちに自分の胸を使ってリナを抱き留めた。
一瞬のような、永遠の時が過ぎる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
誰もいない、気の茂った境内。
闇のなか、抱き合う二人。
ガウリイの自然なキスを、リナは拒んだ。
「・・・・・・リナ」
拗ねたようなガウリイの口調。
「だって・・・まだ、好きっていってもらってないもん」
「・・・あのぬいぐるみは?」
「ガウリイじゃない。あたしは・・・ガウリイにいってほしいの」
貰ったときは、<がうりん>のメッセージで十分だった。
でも。いまここには。
それじゃあ満足できない自分がいる。
「一回だけだぞ」
「うん」
ガウリイが息を吸う。
「リナ・・・愛してる」
唇が重ねられた。
わずかに月明かりだけが二人を照らす。
寄り添うように、支えるように。
彼が彼女を、彼女を彼が抱き留める。
「・・・ガウリイ」
リナはいつのまにか自分の目尻に溜まった涙を拭いながら、小さく名を呼んだ。
「ありがと。ガウリイ・・・大好き」
リナは素直な自分の言葉に驚く。
キスの魔法にかけられたように、澱みなく言葉が出てくる。
その夜。
二人の唇は、再び、三度と何度も重ねられた。
 
 
おまけ
 
「ただいまぁ〜」
「あら、リナ。今日は帰ってこないかと思ったのに」
「どーゆう意味よっ!」
「ガウリイさんの家に泊まってくるかと」
「!!!???」
 


===============================おわり
 
うわああっ!つたない文章、わけわからん内容(汗)
期待させてすみません。それとも期待してなかったかな?
うう・・・精進します。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

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スノちゃん、ありがとううう♪自分の続編を書いてもらえるなんて
嬉しかったですう♪ホントに書き上げてくれて、ありがとううう♪(そーら)
 

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