『おいでませ、そらりあむ旅館♪』


 「ったく。どこへいったっていうのよ、あいつわっ!!!」
 
あたしは広大な森の中で、思いっきり叫んでみた。
 いつも隣にいるはずのあいつは、今現在いない。
 っていうか……。見失った、っていったほうがいいかもしんない……。
 よーするに、迷子になったのだ。あいつは。
 この、昼なお暗い、めちゃくちゃ広すぎる森で。
 ことの発端は、今日の昼御飯。
 ちょーど運悪く、携帯食料を切らしており、二人で手分けして食べれるものを探そうということになった。
 待ち合わせ場所はあたしが色彩魔法で目印を付けた大きな木。
 あたしは、食べれそうなもの……キノコと木の実を何種類か手に入れ、その木の下に帰ったのだが。
 ……ガウリイはいなかった。
 もしかしてまだ探しているのかもしれない、と思い、待ってみたけど。
 ……やっぱり、帰ってこなかったのだ。
 しかたなく、翔封界で森を空から見てみたが、それらしき影はないし……。
 しかたなく、迷わないように目印をつけながら、周辺を探してみてるのだが……。
 いないぃぃぃっ!!
 どこにいきやがったのよ、あいつわぁぁっ!!
 腹立ち紛れに、竜破斬を一発、おみまいしちゃろーか、と思ったその時だった。
 すりすりすり♪♪
 足元に何かの気配を感じ、下を見る。
 「みゃぁ、みゃぁ♪♪」
 「……へ……???」
 あたしの足元にいたのは……ちっちゃな黒ぽちがたくさん散らばっている、白い
猫。
 「みぃみぃみっ!!」
 人なつっこいところ、青い首輪をしているところからみて、どっかの飼い猫かなんかだろうか?
 すりすり♪♪
 「みゃぁぁん、みゃぁぁん♪」
 って。ちょっとまったぁぁっ!!
 何よ、そのじぃぃっ、と何かを訴えかけてくるような視線はっ!!
 ……しかも、よだれたらしてるじゃないのぉぉぉっ!!
 ひょっとして、ひょっとして……。
 あたしが持っている食料目当てにやってきたんかいぃっ!!!
 「みゃんみゃんっ!!」
 だめよっ、これはあたしとガウリイとのお昼ご飯なんだからぁぁっ!!
 「……ん?」
 ふと、猫の首輪に書かれている文字が目に入る。
 「旅館・そらりあむ」
 へ……??旅館??
 もしかして、この近くに宿屋があるってこと……??
 おしっ!!となれば、これを利用しない手はないわっ!!
 「ねぇ、ちびちゃん。
  あなたのお家はどこかしら??
  教えてくれたら、これあげるけど……??」
 ふりふりふり。
 あたしは猫の目の前で木の実を振ってみせる。
 って、動物に人間の言葉、理解できるんだろーか……。
 しかし。猫は、どーやらあたしの言葉が理解できたようで。
 「みゅぅぅっ!!みゅみゅみゅっ!!」
 まるであたしについてこい、とでも言うように尻尾をくいくいっ!動かし。
 てこてことあたしの前をいく。
 ……ほんとにわかったんだろうか……??ただ単に食料をあきらめ、どっかいくのかもしんないけど。ま、ここにいてぼぉっとしとくよりいっか。
 旅館についたらガウリイのことをいる人に聞くこともできるし。
 ……あんだけの美形。みかけたら、きっと忘れれないはず……。
 あたしは、猫の後についていこことにした。
 
 「………………」
 歩くこと数分。
 あたしは森の中にたっているとは信じられないよーな立派な建物の前に立ってい
た。
 東方の国風の建築様式の豪華な建物。
 そして、その前には、やはり東方風の立派な庭園。
 大きな池、そしてそれにかかる赤い立派な橋。
 池の中には立派な錦鯉が何匹も泳いでいる。
 ……夢、じゃないわよね……??
 あたしは試しに自分のほっぺたを抓ってみた。
 ……い、痛ひ……。
 とゆーことは、やっぱし夢じゃないらしい。
 「みぃ、みぃぃっ!!」
  くいっくいっ!!
「??」
  がらがらがら。
  玄関を器用に前足で開け、あたしを中へと連れ込む猫。
 「みぃぃ、みぃぃっ!!」
 「お帰り〜。
  あら、お客様……??」
 猫の声に奥から着物姿の女性が。
 ここの宿の女将さんだろうか、20代前後の綺麗な女性である。
 「さ、どうぞどうぞ。お入りになって、おくつろぎくださいね♪」
  女性はそういうとスリッパをあたしの前に差し出してくれた。
 「すみませんね、今丁度みんな出払ってまして……って、もしかして……??」
 女性はしばしあたしを上から下まで観察し、こう言った。
 「もしかして、あなた、リナちゃんっていわない??」
 「……へ??」
 
 
 「たくっ!このくらげがぁぁぁぁっ!!」
  すっぱこぉぉぉんっ!!
 「ってぇぇぇっ!!
  だから悪かったっていってるだろぉがぁぁっ!!」
 数分後、あたしとガウリイは再会していた。
 なんのことはない。
 あたしとの待ち合わせ場所を忘れたぼけクラゲが、先にこの旅館に保護され。そしてあたしを探していたらしい。(だから従業員や仲居さんがいない、とのこと)
 ガウリイからあたしの特徴    ちびでぺちゃぱい、どんぐりまなこの17歳の女の子。髪は栗色、目はルビーのような紅。というのを聞いた女将さんがすぐにガウリイの待つ部屋へ案内してくれたのである。
 「あ〜の〜ね〜っ!!
  あたしがここのペットのちび猫に会ってここまでこれたから良かったもののっ!!
  もし、会ってなくって、ここに来てなかったらどうするつもりだったのよっ!
!」
 「だぁぁっ!!落ち着けっ!!こんな旅館の中で攻撃呪文はやめろぉぉっ!!」
 ぜぇぜぇ…………。
 しばしの沈黙。
 そして、そこを見計らったように誰かが戸をたたく。
 こんこんっ。
 「はい??」
 「……失礼しても、よろしいでしょうか?」
 「みぃう♪♪」
 戸を開けて入ってきたのは女将さんとあのちび猫。
 「見たところ、旅の途中で、だいぶお疲れのようですね。
  ここから街まであと半日ほど歩かなくてはなりませんし。
  どうでしょう?今日はこちらにお泊まりになっては??」
 女将さんはあたしたちにお茶を出しつつ言った。
 ……ここから街まで半日……??だとしたら、かんっぺきに野宿になる……。
 そ、そりわイヤかもしんない……。
 でもっ!!……高そうだし、ここの旅館。
 ………………。
 あたしはしばし、考える。
 そしてガウリイは………………ちび猫と仲良く遊んでた。
 「ほれ、届くか〜??」
 「みゃぁっ!!みゃぁっ!!みぃぃぃっ!!」
 ……どこから持ってきたのか、猫じゃらし持ってるし……。
 こぉいつわぁぁっ!!
 こーゆー状態になったのはきさまのせいってこと、解ってるんかぁぁっ!?
 ……おし、決めた。こうなったら、こーしよう。だったらあたしはお金かかんないし。
 「ええ。ではお言葉に甘えて泊めさせていただきます。
  料金はこいつが支払いますので、お願いしますね♪」
 「でぇぇぇぇぇっ!?をいっ!?りなぁぁぁっ!?」
 あたしに指さされて思いっきり焦るガウリイ。
 ふ。全ての元はあんたにあり。こうなるのも当然よっ!!
 
 
 「……………………」
 「……………………」
 「みゃぁみゃぁ♪♪みゅぅぅぅん♪♪」
 「では、どうぞごゆっくり♪」
 ぱたん。
 戸を閉めて去っていく女将さん。
 後に残ったあたしとガウリイは固まっていた。
 なんと、今日は部屋がここ以外満室とのこと。
 ……よーするに、あたしとガウリイは同室になってしまったのだ……。
 最初、ここに泊まらせてもらう。と言ってしまったので「同室だからイヤ」と断れるはずもなく……。
 「……ま、ぼぉっとしててもしかたないし。寝るか??」
 「そだね……」
 あたしたちは女将さんがご丁寧にもくっつけて敷いたお布団をずりずりと両端に移動させると、灯りを切る。
 「……おやすみ」
 「ああ、おやすみ♪♪」
 
 
 「みゃぁぁぁぁんっ!!」
 翌朝、あたしは猫の鳴き声で目をさました。
 ……う〜、眠い……。
 「とっとと起きんかぁぁぁっ!!」
 まだ幸せそうに夢の中を彷徨ってるらしいガウリイをあたしは布団ごとひっぺがえす。
 「……リナ♪♪」
 がしっ!!
 うわきゃぁぁっ!?
 「何寝ぼけてんのよぉぉっ!!とっとと目を覚まさんかいっ!!」
 すっぱこぉぉぉんっ!!
 いきなり抱きついてきたガウリイを思いっきりスリッパではたいてやった。
 そして、ここの名物料理を朝食に戴いて、出発の用意をする。
 「みゃぁぁん〜♪」
 すりすりすり♪♪♪
 ちび猫があたしの足元にすり寄ってきた。
 「みぃ、みぃ♪」
 じゅるん、とたれた涎……。
 もしかしておまい、昨日の約束まだ覚えてるんかいっ!?
 「はいはい、解ったわよ……」
 あたしは仕方なく昨日戸っておいた木の実を4,5粒猫にやる。
 「みゃぁぁぁん♪」
 それに満足したのか、てこてこと去っていく。
 ……あれ?首輪の色、変わってる……??確か昨日は青だったわよね?今は紅……
??
 ま、いっか。んなことはどーでもいいことだし。
 「んじゃ、お世話になりましたっ!!」
 「近くにこられたら、いつでも寄ってくださいね〜♪♪」
 あたしたちは女将さんに世話になった礼を言うと、旅館をあとにした……。
 
 
 だから。
 昨日の夜、こっそりとあのちび猫があたしたちの部屋に忍び込み、首輪の隠しカメラで盗み取りしていたテープをそこの女将さんと仲居さん、従業員がばっちり見てたことを……あたしたちは知らなかった……。
 
 えんど。
 
 
……書き逃げ。
見つけても、このことは話さないでくださいぃぃぃぃっ!!
 
 
 
 
 






(コメント:かけるん。・・・・・・生殺し・・・・・・(笑)テープの内容を書いてくれ〜〜〜っっっ(笑))

強奪したおまけの小話(注意*ガウリナは出ません・笑)を読みに行く♪

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