「ぷれぜんと☆すきゃんだる? 」


寒さも本番。

凍えつつ、町を歩き進めると、ちらちらと目につくのはツリーの灯り。

小さなライティングをほどこし、金銀の飾りでできたツリーは見るものの心をワクワクさせてくれる。

もうすぐ、クリスマス。

目に浮かぶのはテーブルに並べられたご馳走の数々・・・

ローストチキン、焼きたてのパン、シャンパン、それにクリームがたっぷりかかったクリスマスケーキ!

あぁ思い出しただけでヨダレが・・・

「なあ、リナ・・・」

ん、ぴくぅっ

ひ、人がせっかく幸せにひたってるとゆーのにコイツは・・・

「やたらキラキラしたツリーが目につくがなんかのお祭りか?この町。」

すっぱぁぁぁあぁんっ!

寒空の下、あたしのスリッパの音が盛大に響き渡る。

「あんたわ・・・どーしてこの乙女ちっくかつロマンチックなクリスマスを忘れられる?!祝ったことぐらいあったでしょーがっ!」

ぽんっと手を打つガウリイ。

「おぉ、そーいや子供ん時、やたらめったらなんかもらえた日があったっけな。1つはバースデーケーキがあったからー、たぶんもう1つんときがクリスマスだな!こんな感じのツリーとかもあったよーな気もするし・・・」

あ・・・あう・・・

はふ

この剣士にして超美形、金髪碧眼その上剣の腕は超一流!

三拍子どころか八拍子くらいそろっててもおかしかないルックスの彼だが頭はクラゲまたはそれ以下!

あたしの連れ+保護者+最近は恋人?

その名もガウリイ・ガブリエフ!

年齢もイマイチはっきりしないコイツが誕生日を忘れてるとしても、クリスマスの存在まで忘れるとわっ!

う、うーみゅ・・・

どこまでクラゲなんだおのれは!

「ところで・・・」

ぴぴぴぴぴくぅっ

「クリスマスってなんだ?なんでプレゼントもらえるんだ?」

ずがべしゃああああああぁっ

すぱっ・・・がっくし。

盛大にコケた上、スリッパを振り上げる気力もなくしたあたし。

もはや地べたに足をつくしかできることはない。

「ま、とにかくメシ食いにいくか」

「・・・」

もー何もいうもんか。

つ、疲れるわ・・・コイツっ・・・!

                     ・

                     ・

                     ・

「おねーさぁんっ!クリスマス期間限定スペシャルローストチキンセット二人前と七面鳥の丸焼き三人前とデザートにクリスマスケーキ一個!あとシャンパンも一本、こっちにおねがぁーいっ!・・・さて、と・・・」

「いきなり真顔になるな・・・んで、教えてくれないのか?」

「教えるわよ・・・あんたがこのまま、んな一般常識さえまともに知らずに生きてくとロクなこと起きそーにないからね・・・」

「・・・続けてくれ」

「はふ・・・クリスマスってのは、さっきあんたが言ったとおり、一種のお祭りみたいなもんよ」


 


注;ここからはスレイヤーズ世界での説明です。実際のクリスマスとはまったく関係ございません。しかし原作ともまったく関係ございません。ご了承ください。

By 流奈


 


「・・・リナ、今変なナレーション入ったような・・・」

「作者の意図でしょ。ま、それは置いといて」

「・・・」


「昔、キリストっていう魔道士がいて、ある魔物と戦った際、精神が身体から離れ、肉体だけ滅びてしまったの。行き先のなくなった魂はよりどころを探すために、あちこち探し回ってて、たまたまツリーに子供がつけたおもちゃの星を見つけ、魂移しをして、その星はまばゆく輝いたの。それを見た人々がその星をあがめたてたのがクリスマスの始まり。プレゼントはその星に対するお供えもの。なんでも、お供えは肉体を持たないキリストが貧しい人々に分け与えたのが元祖。季節が冬だったこともあって、この時期がクリスマスってなってんのよ。ま、説明はざっとこんなとこかしら?」

「さすがですリナさん。結構マニアックなところまでつかんでいますね。」

「でしょ?まぁこんくらいなら知っててとーぜん・・・〈ん?〉」

気のせいだろうか、後ろから誰かさんの声が聞こえたような・・・

ま、気のせいってことにしておこう!

「ちょ・・無視しないでくださいよぉ・・」

「!」

残念、気のせいではなかったらしい。

声がしたほうに振り向くと、どっから湧いてきたのかテーブルの横のあたりに黒っぽい物体!

おかっぱ頭に切りそろえられた前髪、それに線にしか見えない極細目。

錫棒なんか持ってるところからしてごくごくフツーの謎の神官。

中身はそうとうなじいちゃんらしーが無視無視。

フザけたことにたった今きたばかりのあたしのお料理ちゃんをつまんでたりしてうをー許せん!

自称・謎の神官または正体不明の好青年ことゼロス!

そいつの姿が目に入った瞬間、

「天敵!ゴキブリ魔族!生ゴミ!狐目細目!どっから降って湧いてきたの?!ゼロス!」

「う、リナさん・・・湧いてきたってそんなハエかなんかみたいに・・・」

「ハエ以下よっ!」

「うう・・・」

早くもうめき声をあげはじめたゼロス。

「ほら、ガウリイもなんか言ってやんなさいよ・・って」

「・・・くかぁーーーーーーーー」

理解力というものをもたない脳みそ軟体動物のガウリイ。

なんとなく予想はしていたが案の定、テーブルの上で気持ちよさそーに寝ていた。

「起っきんかいこのクラゲがあぁーーーっ!」

げしばすっ

「リ、リナさん・・・何もそこまでしなくても・・・。」

ふー

戦力は削ぎ撮った。

そーよ先手必勝早いモン勝ち!

ほとんど精神で出来てるゼロスにはこの手の攻撃が一番よねー♪

「・・・リナ、そのくらいで勘弁してやれ・・・ゼロスが可哀想だ・・・」

「ガウリイさあぁぁん・・・」

まあ、ガウリイはほっとくからいいとして・・・

「んで?何の用?」

「・・・・・・・・・・」

「すうぅーー・・・」

「わ、分かりましたよぉ、言いますからぁ・・・。」


それでよし。

―――悪いことしてないよね?相手魔族だし。

「本当のこと言いますと『はーい♪サンタさんですよぉ』ってかわいく登場したかったんですけど・・」

「いらん。そんな可愛さ誰も求めとらん。それにゼロスのプレゼントなんか気色悪い。あんたを見た子供たちは言うでしょーね。『ゴキブリサンタが来たぁーーーっ!』って。」

「それも泣き叫びながらな。」

お、分かってるじゃないガウリイ。

「―――って、言うつもりだったんだろ?リナ。」

そーゆーツッコミかいっ。

「どーせ僕なんて、どーせ僕なんて・・・」

ボソボソ何やらつぶやきながらテーブルにのの字を書くゼロス。

スネるな。

後ろに縦線と影が見えるぞ。

「んで?」

「実はこれを・・・」

しゅん。

「・・・?」

ゼロスがアストラルサイドから具現させたのは、小ぶりのシルバーブレスレット。

魔法アイテムのショップになんかによくありそーな、呪符がほどこしてある、普通の魔法アイテム。

まぁ、あたしからすればただのお守りだけど。

「これが、あんたの言う不幸を呼ぶプレゼントってこと?」

「いえ、不幸かどうかはリナさん達しだいですが?――ま、とりあえず・・・つけちゃってください☆」

「え・・・ちょっと、待て」

しゅぱ。


次の瞬間、ゼロスの手の上にのっていたブレスレットが掻き消え、そのかわり、あたしの手首にずっしりとした重み。

これは・・・!

「あ、あんたこれ転送したわね!?はずしなさいよ!!」

しかしゼロスは人差し指を左右に振る。

「とれるかどうかはリナさん次第。その状況をどうするかもリナさん達次第ですね。ま、せいぜい楽しまさせていただきますよ☆」

「くおらぁぁぁああぁあぁぁっ!」


そのときにはもうすでにゼロスの姿は宙に溶けてしまっていて、あたしはなにもない、食堂の天井に向かって叫んでいた――――


「リナ・・・」

「ゼロスーーーーーーー!」

「みんな見てるぞ・・・」

「あ」

――――――――――――――――――

「あのヤロー許さん!許さないったら許さないんだからぁっ!」

「リナ、どっかのキャラが混じってるぞ・・・」

「んなこたぁどーでもいーわいっ!この状況で落ち着いていられるかあぁっ!」

「・・・落ち着けって」

さすがにあの場にそのままとどまるのはヒトの目がイタいので、せっかく出来たゴーカなお食事もそこそこ、宿に戻ったあたしたち。

宿に落ち着いてもあたしは落ち着かんっ!

ああ・・・ローストチキンちゃん・・・

「このブレス!どーしてはずれないのっ切れないのっ!一体なんの魔法がかかってんのよっ。何がしたかったのよゼロス!」

びしいぃっと手首のリングを指差し、大声でまくしたてる。

――――――実はあの後、いろんな手を使って、このリングをブチ切ってはずしてやろう、と試みたのである。

「カッター、ナイフ、ノコギリ、オノ・・・全部だめだったもんなぁー・・・」

その通り。

触れた瞬間、刃物という刃物を弾き飛ばし、呪文さえ、かたっぱしから消滅させる。

歯が立たないどころか近づくことさえできないのである。

「まぁ・・・光の剣もダメだったとなるとなあー・・・」

光の剣―――以前、ガウリイが所有していた伝説中の伝説の魔剣。ある事件に巻き込まれ、彼がどっかのはぐれ魔族にとっつかまった際、なくなってしまったのだが・・・また違う事件で最近、レプリカは手に入れることができたのである。

本人の意志力により歯の長さは変化する、ちょっとした特典つきのこの魔剣。

それが・・・・あの・・・

レプリカといえどやはり伝説級の魔剣。

その威力は本物に多少劣るといえど、うかつに触れたりなんかはできない。

んなもんで乙女のヤワ肌を傷つけられたりなんかしたら一生もんである。

結局最後までしぶっていた『光の剣での切断』はガウリイの推奨、いやかなり強引な手口によってしぶしぶ・・・
しかし、これがブレスに近づけた瞬間歯が消えてしまったのである。

別にガウリイの意志力がなくなったわけじゃなく。

『しゅんっ』っていともあっさりと。

反則ぢゃないかと思ふ。

「まったく・・・どーしたらいいってゆーのよ・・・・」

なにげなく、ブレスの表面を指でなぞった。

ざらざらとした、冷たい感触。

ところどころ、何かにあたるけど・・・んん?

「ねえ、ガウリイ。ロウソク出してくれる?」

「おう。・・・なんだ?」

火をつけたロウソクを上からかざす。

「・・・・・なんか、ボタンみたいなのがついてる。」

発動スイッチなのだろうか?

下手に触ることはできないがとりあえず観察。

「リナ、ボタンを押すときってどーゆーセリフ言えばよかったっけ?」

「・・・『ポチっとな』でしょ」

「・・・・・・・・・ポチっとな」

ぽち

・・・みょんごわああああああああっ!


「なんちゅーことをあんたは!発動しちゃったらどーす・・・」

へーぜんとした感じのガウリイの胸ぐらをぐわっとつかみあたしはまくしたて・・・ようとした。

その瞬間!

かっっっ

あたしが文句を言い終わらないうちに『それ』は発動してしまった!

「へ、あ、ちょ・・・」

「リナ!」

ライティングの数十倍ほどの光源・・・・!

目を覆いなんとか光を防ぐ。

「リナぁっ!」

「動かないでガウリイっ!」

とっさにあたしはガウリイに制止をかける。


・・・何が起こったのか。

・・・何が起こるのか。

さっぱり分からないけど、下手にガウリイに動かれて、巻き込むのは避けたい。

――――数秒の出来事だった。


光はハデだったが、光自体は大したことなく、おさまりは早かった。

「ガウリイ!」

「リナ!」

足元がおぼつかない。

目がやられてしまったらしい。

手探りで、周りの状況を確かめようと踏み出すと、ふらりとよろめいてしまった。

「おい、リナ!」

よろめいたあたしの身体をガウリイが支えて―――――



ふら・・・ずべっ

・・・くれなかった。

「あう・・・ガウリイ・・・。」

『どーして支えてくんなかったのよっ!』とか文句をいうつもりだったけど・・・・

耳もおかしくなったのか・・・どーも聞こえてくる声が二人いるよーに聞こえて・・・

「おい、リナ、大丈夫か?」

「え・・あ、あの・・・その・・」

「どうした?頭でも打ったか?」

「いえ、その・・・」

ガウリイがだれかに話しかけているみたい・・・

・・・女の子?

部屋にはガウリイとあたし以外いないはず・・・

それがなんで・・・

「おい、リナ。お前さんどーしたんだ?」

「・・・誰に向かってしゃべってんの?ガウリイ」

「へ?」

視力がようやく戻ってきて、あたしはガウリイの方を振り向いた。

そこには―――――

「あ・・・へ?」

あたしと・・・あたし!?

「リナが二人!?リナ、お前妹いたのか?」

「んなワケあるかああああぁあっ!」

すっぱあああああああんっ

本日三度目?のあたしの必殺『超強力クラゲ落としスリッパ攻撃』は見事に決まった。


魔導士ルックの、一見すると十七、十八ぐらいの少女。

ちょっと小柄で栗色の長髪。

目をぱちくりなんかさせちゃってるところが奥ゆかしくてとってもかわゆいのだが・・・

・・・あたしっ!?

 黒いバンダナにショルダーガード。

赤いマントに・・・サーバーナイフ。

うん。この特徴はまぎれもなくあたし。

って、にええええぇえええぇっ!?

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