『そのままの君で』




黄昏時に現れる黒い影。
「最近、お腹空きますねぇ〜。…おや?」
影の向く方向には栗毛の少し幼い女性がいた。
「ふふ、リナさんが悩むなんてめずらしいですね。
 あっ、そうだ!!ふふふふふ……。」
影は不適な笑いを浮かべ、消えていった。


翌朝。

ドンドンドンッ!
「た、たいへんですーーー!!」

突然、朝にそぐわない音を立て
アメリアが男子部屋(?)のドアを叩きながら叫んだ。
「どうした?アメリア。」
その様子に異常を察してか
ゼルガディスがすばやくでた。
「そ、それが…。
 ガウリイさん!!起きてくださいっ!!」
「むにゃ〜。」
「寝てる場合じゃないんですーーー!!」
「どうしたのよ?アメリア。」
そこにパジャマ姿のリナが入ってきた。
だが…。

「?!!リ、リナ?!」

ゼルガディスは「それ」をみて
かなり驚いている。
「た、大変と言うのはこの事なんです。」
「ナ、なるほど…。」
「ちょっとなによ、ふたりして。
 私の顔になにかついてんの?」
「リナ〜?ん〜。」
リナの声に反応してガウリイはやっと起きた。
そのとたん、顔がぎょっとなる。

「?!!!お…お前…リナか?」

みんなが、ガウリイが異様な目でリナをみる。
「な、何よ、みんなして!!」
「リナさん…そ、そこの鏡を見てください。」
リナはアメリアの指した方向に目をやる。

「えーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

驚くのも無理はない。
なんと?!リナの体は
身長165cm B84W50H87の
スタイル抜群の女性になっていたのだった。


アメリアに買いに行かせた服を着て
リナは3人と目的地の盗賊のアジトへと
宿を1歩でた。

「おお!!いいねえちゃんだねぇ!!」

すると街中の男はリナにくぎづけになった。
ある者は横に美青年(?)が2人もいるにもかかわらず
声をかけてくる。
その様子に
リナはあいかわらず連中をあいてにせず、
アメリアはただびっくりし、
ゼルガディスは「何かある」と疑い始め、
ガウリイは最初複雑な思いでみていたが、
我慢ができなくなり、声をかける男供を
リナの見ていないところでけちらしはじめた。


目的地につき、盗賊をいつものとおり成敗しようとする。
だが、リナはいつものより動きが鈍く
なぜか魔法が使えない、ただの女の子のようだった。
「どうして…?おかしいわね…

 火炎球(ファイアー・ボール)っ!!

 やっぱり、発動しない!!」
そんな様子に盗賊がリナを襲う!!

ジャッ!!!

「きゃあああああああ!!!」
「リナ(さん)!!」
リナは深手をおった。
しかし3人のフォローのおかげで
なんとか盗賊を成敗できた。
「リナさん、どうしたんですか?」
「そうだ…。キレがないというか…
 なんか、変だった。」
「どうしたんだ?どこか悪いのか?」
3人は心配そうに聞く。
「わかんないの…。
 どうして?どうしてなの…?」
リナは泣き言を言い
普通の女の子のように突然泣き出した。
その様子にガウリイは
しかめた表情をしていた。


宿へ帰ると3人は
今日のリナについて話し始めた。
「なんか今日のリナさん変でした。」
「そうだな。いきなりあんな体になって…。」
「それだけじゃないです。
 魔法が使えないし、性格まで変わってしまってます。」
「…。」
ガウリイは何も言わずただ無言だった。
「あんなの、リナさんじゃないです…。」
「そうだ。おい、旦那!
 わかっているんだろう?このままでいいのか?」
ゼルガディスの言葉に
ようやくガウリイが口を開いた。
「良くない…。おい、ゼロス!!
 ずっとみていたんだろう?出てこいよ!!」

「…やはり、あなたにばれていましたか。」
「ゼロスさん!あなたが?」
「やはりな。」
「ゼルガディスさんも気づいてましたか?
 いやいや、こんなんじゃつまらないですねぇ…。」
「リナを元に戻してもらおうか?」
ガウリイは殺気立っている。
「それはできません。」
「なんだと!貴様!!」
「これはリナさんが望んだことなんですよ
 ですから、リナさんが元に戻りたいという
 思いがあればすぐにでも元に戻るんですがねぇ。」
「何!?」
ガウリイの表情がこわばった。
「これがリナの望んだことだというのか?!」
ゼルガディスがゼロスにむかって叫ぶ。
「そうですよ。時間がたつにつれ、
 リナさんはどんどん性格が変わっていくでしょう?」
「じゃあ、リナさんはリナさんは…。」
「性格が変わっていくと元に戻る確率も減ります。」
「そんな…。」
アメリアがガッカリした様子でいった。
「ふざけるな…。
 リナがリナじゃなくなっちまうってことだったら、
 そんなのは、取消しだ。取消しだーー!!」
ガウリイが今にもゼロスにくってかかりそうに
殺気立って叫ぶ。
「だから無理なんですよ。
 元に戻るのはリナさんの気持ちしだいなんですよ。
 あっ、と、僕はこのへんで。まぁがんばってください。」
ゼロスは不適な笑みを浮かべると消えて行った。
「相変わらず…いやなやつだ。」
ゼルガディスがくやしそうにいった。
「リナさんの気持ち次第…。
 ガウリイさん!あなたしかいません!!」
「…そうだな。こうなったら旦那しかいないだろう。」
二人がガウリイにむかっていった。
「でも、リナの…気持ちって…。」
「ガウリイさんが思っていることをいえばいいんです。
 それが一番、リナさんの気持ちに響くと思います。」
アメリアがガウリイを真っ直ぐ見て言う。
「俺達がなにいっても無駄だしな。」
ゼルガディスはため息混じりにガウリイにいう。
「そうか。…わかった。俺がいく。」
ガウリイが意を決してリナの元へ向かった。


コンコン!
ガウリイがリナのいる部屋の扉をノックした。
リナに今の気持ちを伝えるために。

「アメリア?」
いつもなら扉のノックの仕方で
誰だかわかるのに今やそれさえもわからないらしい。
「俺だ。」
「アッ…ガウリイ。」
リナはガウリイが来た事にびっくりしているらしい。
外はもう夜と化しているからであろう。
「ちょっと…入っていいか?」
「…。」
いつものリナならすぐにいいと返事するのに
今回はかえってこない。
とまどっているらしい。
「…どうしたんだ?」
ガウリイのいつもの様子にリナはほっとし、
「いいわよ。どうぞ。」
と、返事をした。
そして、部屋に用意してあるお茶を用意した。

(いつものリナならこんな事しないのに…。)

ガウリイは変わってしまったリナに対してガッカリした。
「あの…わたし何か、悪い事した?」
ガウリイの様子を察して
リナがとまどいぎみに聞いた。
「…。」
その問いに答えずガウリイはただじっとだまっている。
そして…ようやく重い口を開いた。

「お前…今のままで
 魔法使えなくていいのか?」
「え…?」

意外な質問をされて
リナはビックリした声をあげた。
「良くないけど…。
 原因わかんないし、しかたないわ。」
「昨日までのリナならそんなこといわない。」
「え?」
「昨日までのリナなら
 そんな風にマイナス思考に考えないっていってるんだ!」
ガウリイの声にビックリして
リナは飲もうとしていたお茶のカップを落とす。

がしゃんっ!

その音だけが部屋中に響く。
「俺は…今のリナがいやだ。」
「あ、あなたに言われる筋合いなんか…。」
「俺はお前の保護者なんだ。」
「ほ、保護者が何で関係あんのよ!
 わたしは…魔法使えなくても生きているわ。」
「魔法の事を言ってるんじゃないっ!」
ガウリイの迫力にリナはびくっと
体をふるわせる。

「じゃあなんなの?
 はっきりいいなさいよ!!」
リナがいつものような迫力で言った。

「俺は…昨日までのリナのほうが…、
 小さくても強くてくるくる動いて、
 元気良くて、いじっぱりで、
 照れ屋で、おひとよしな、
 そんなお前が…お前が…
 俺は好きだぁ!!」

「!!」

ガウリイのセリフにリナは硬直する。
やがてみるみるうちに顔が赤くなる。
「ガ、ガウリイ?」
「これは…保護者の言う事じゃないな…。」
「…ぷっ…。ははははっ!!!」
ガウリイの様子にリナは突然笑い出した。
その笑い方でガウリイはリナが元に戻ったと思った。
「リナ…。よかった。」
そっとそのセリフを言うと
突然リナを抱きしめた。
「ちょっ…なっ!?」
ガウリイの中でリナが暴れている。
そのときにはすでに体も元にもどっていた。
ガウリイはそんなことおかまいなしで
さらにリナを抱きしめた。

「リナ…。俺はそのままのお前が好きだよ。」
「バ…カ…。」
二人は唇を重ねた。

少し時がたち
ガウリイが今までのことをリナにいう。
「ゼロスのしわざだったか。あいつめ〜!!」
「なあ、ところでさ、
 なんで『あのリナ』が望んだ姿なんだ?」
ガウリイがリナに質問をした。
「え?そ、それは…。
 どうしてもいわなきゃだめ?」
「盗賊退治で役に立たないお前を
 フォローしたのは誰かなぁ〜?」
「うっ…。」
こういうことになると
ガウリイは頭を使うようになっていた。
「ゼ、ゼルとアメリアには言わないでよ…。
 本当はあんたにいうのが1番イヤなんだから!」
「なんだったのかなぁ?」
「あ、あのね…。
 ただね、昼間宿屋の子が恋人に
 素直に気持ち話してるのをみかけてね、
 その…わたしもね…あ、あんなふうに
 素直になれれば楽なのにって…。」
「で、誰に?」
「ガ、ガウリイに…。」
リナは言い終わったとたん
真っ赤になってしまった。
そんな様子にガウリイは苦笑気味にこういった。
「リナはリナだろ?
 俺はそんなリナが、
 素直になろうとしてなれないお前が
 1番好きなんだから…。」
さらりとそんなセリフを言うガウリイに
リナは悔しさと恥ずかしさに顔を真っ赤にしていた。

「リナ。
 そのままのお前でいてくれよな。」
「バカ…。」

二人は再び唇を重ねた。


The End





後書き

こんにちは!!
加藤 智希と申します。
こんなに本格的に投稿するのは初めてです。
いかがでしたでしょうか?(おそるおそる…)
もっとあまあまにしようと思ったが
なりませんでした(涙)。
このお話を作るのに1番に思ったのが
リナちゃんがもし、スタイル抜群な女性だったら?
ってことでした(笑)。
それとガウリイにこの題名をいわせたかった。
ちょっとくさいですがね(笑)。
それでは、このへんで。(いきなりしめる)

 


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