「見えない未来(あした)、気づかない現在(いま)」



暗闇の中に、あたしは横たわっていた。
自分が起きているのか、眠っているのかもわからない。
目を閉じても、開けても真っ暗。
 
手を持ち上げてみても、自分の指先は見えなかった。
自分に体があるかどうかすらもわからない。
ただ動いた感覚があるばかり。
 
「・・・・そっか。」

呟いた自分の声が、まるで知らない別人に聞こえる。

「これが、見えないってことなのね・・・。」

自分がバカみたいだった。
一人で喋ってる。
誰も答える人もいないのに。
そんな嘲りの後に襲って来たのは、途方もない孤独だった。
 
一人で旅をしていたこともあったけれど、これはそれとは全く違う。
たとえ一人で旅をしていても、そこには世界があった。
自分とは関わりがなくても、人の生活があった。

空気や、食事や、音や、気配。

誰かが笑うと、自分まで何となく楽しくなる感覚。
誰かが争うと、自分まで居心地が悪くなる経験。
交差し、相互に影響を及ぼし、過ぎていく時間。
 
その中で確かに得る、自分の存在。
足下に踏みしめる、己の立ち位置。
 
「・・・結局。
欲しかったのは、そういうことなのかも知れないな。」

誰かが頭の上の辺りで呟いた。

「自分は一人じゃないと、思いたかっただけか。」

その声が誰のものか、考えることもなく。
あたしは思い浮かんだ光景をそのまま口にした。

「一人じゃなかったわよ、あなたは。」
「・・そう思うか。」
「ええ。」

すると声から、やんわりと微笑んだ気配がした。

「・・・お前もな。」
 
 










 
 
 
目を開けると、そこはまだ森の中だった。
あたしはつかのま、意識を失っていたらしい。

「大丈夫ですか、リナ殿!」
上から見下ろしているのは、アメリアの兵士の一人のようだった。
「横になられた方が・・・」
差し出される手を断り、立ち上がる。

目の前にあるのは、気を失う前と同じ光景だった。
白い長衣に身を包んだ白魔道士達が、円陣を組んでいる。
手に手に長い杖を捧げ持ち、一心不乱に祈っている。
「ガウリイさんっ!ガウリイさんっ!」
その中から、アメリアの声がする。
 
あたしはふらつく足を踏ん張り、円陣に近付く。
白い衣の隙間から、必死にガウリイの名前を呼ぶアメリアが見えた。
・・・その足下に。
幾重にも魔法陣が描かれた白い布の上に、ガウリイが横たわっていた。
長い髪は、血に染まったまま広がっている。
 
「出血が多すぎるわ!拡張剤はまだなの!?」
「もうまもなく!」
「リナ!」
アメリアが手を伸ばす。
「ここへ来て、ガウリイさんの名前を呼んであげて!」
「・・・・・っ・・・」

円陣を組んだ魔道士が、脇に避けてくれた。
白く輝く空間に、あたしは踏み入れる。

「ここよ!手を握ってあげて!」
ガウリイは、呼吸をしているのかもわからない状態だった。
あたしは跪き、かさかさの手で手を握る。
「名前を呼んで!意識はなくても、聞こえているから!
呼び戻すのよ、リナ!
アメリアの額には、玉の汗が浮かんでいた。
「まだ頑張ってるのよ、ガウリイさん!
あなたが呼ばなくて、誰が呼ぶの!?」
「・・・・・・!」
ぐるりと並んだ魔道士が、それぞれに軽く頷いた。
詠唱の声が、一層力を帯びる。

その、輪の中で。
 
「・・・・ガウリイ・・・・」
そっと呼びかけた。
呼び慣れた名前を、まるで初めて呼ぶ時のように。
いつもならすぐに答えが帰ってくるのに、来ない空白が心を痛めつける。
首を振り、自分を叱咤する。
「ガウリイ・・・」
いつも暖かくて、優しい大きな手が、冷たい。
その手を、握ってあたしは。
自分の頬に押しつける。
「ガウリイ・・・」

あんたがいなくなるなんて、信じられない。
ちょっと前まで、あたしは。
あんたの存在自体を、全く知らなかったのに。
今は。
・・・・こんなに。

「ガウリイ・・・?」
冷たい肌を、もう一度温めたい。
この手でもう一度、あたしが怒るくらいにわしわしと。
髪をかき回すように撫でて。
見えなくてもいいから。
目を開けて、こっちを見て。
「ガウリイ・・・」
笑って。
「ガウリイ・・・」
呼び返して。
「ガウリイ・・・」

暗闇の中にいたあの人の隣に。
誰かが、いたように。

「・・・あたし・・・いるから・・・・」

・・・あんたの隣に。

「ここに・・・いるから!!!
ずっといる・・・・
いて・・・
・・・あんたに・・・いて欲しいのは、あたしだから!!
だから・・・!
・・・だから・・・・!!

帰ってきて!!

ガウリイ!!!!」


 
何度もガウリイの名前を呼ぶあたしの声と、何かを指事しているアメリア。
そして高く低く、力強く繰り返す詠唱とが混じりあい。
空へと昇っていく。

次第に上がる熱がその場を押し包み。
光の柱となって、長く伸びていく。

「ガウリイ!」
「ガウリイさんっ!」
「ガウリイ!目を開けて!!」
「戻ってくるのよ、ガウリイさん!
大事な人を、置いていくつもり!?」
「ガウリイ!

・・・・ガウリイ!!」


渦のような高まりの中。
光の柱は全てを飲み込んで。
何もかもを白く染め上げて。

・・・そして。




「・・・・・!」



時を止めたように動かなかった体が、突然。
びくりと跳ね。
水から上がった人間のように、ひゅうっと息を大きく吸い込んだかと思うと。
「・・・・・・」
ぱっと開いた青い瞳が、驚いたようにぱちぱちと何度かまばたきを繰り返し。
それから。

「ガウリイ・・?」

そっとかけたあたしの声に、ふっとこちらを向いて。

「リナ・・・?」





彼は。
ようやく、あたしの名前を呼んでくれたのだった。
















 











〜〜〜〜〜〜〜〜〜つづく。


たいっへん遅くなりました(汗)
夏休み中、キクぴんが家にいるとどうにももう(汗笑)ようやく幼稚園に行ってくれました(笑)
おまけにパソコン部屋のエアコンが壊れたまま(笑)むっちゃくちゃ暑かったのもあります(汗)

とにかくガウリイをあのままにしちゃいかんと思っていたので、とりあえずここまで。
あと一話くらいで終わりにしたいと思います。

夏コミに参加しなかったせいか、なんだかふつーの夏休みを過ごしました(笑)新刊も出さずになんとなく申し訳ないので、とりあえず
通販の全品メール便送料無料を継続にしておきます♪

全然関係ないですが、るろ剣が実写映画化・・・このまま特撮の技術が進んだら、スレとかも実写化できるのかなあと夢想したりして(笑)最近少女マンガの実写ドラマ化も多いですしね(笑)ハイテンションを維持できる俳優さんを探さなきゃね(笑)

ではでは。ここまで読んで下さった方に、愛を込めて♪

スレを実写化するとしたら、ぜひこの俳優さんを!という妄想はありますか?


ガウリイはとにかく背が高くてスタイルが良くて目が綺麗で長髪が似合ってるのに、自然なボケができる人を♪

リナはとにかくちっちゃくてパワフルで目がでっかくて滑舌のいいキュートな子を・・・そして激しいツッコミができる子を(笑)

希望がありましたら
掲示板へどうぞ(笑)







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