「誓い」



今日もリナ達は旅を続けている。
「……リナ。」
不意にゼルガディスがリナに声を掛けてきた。
「んん、何ゼル?。」
リナが聞き返すとゼルガディスはアメリアの方を見て
「悪いが、アメリアと少し別行動をとって良いか。」
ゼルガディスの急な言葉にアメリアは、きょとんとなり。リナはガウリイの方を見て、ガウリイが頷くと
「別に良いけど、どうしたの?。」
「………ちょっと…な。」
ゼルガディスは遠方を見つめながら答え、「すぐに追いつく。」と言って、アメリアを連れ、一端リナ達と別れた。

暫くして、黙って着いて来たアメリアが口を開く。
「何処へ行くんですか?。」
「ん…ちょっとな。」
ゼルガディスは振り返ることなく黙々歩く。
アメリアは黙々歩くゼルガディスに必死で着いて歩いた。
だが、もともとコンパスの長さが違うので徐々に離されていき、アメリアは離されまいと、前を、ゼルガディスの背中ばかりを見ていたせいか
「ぎゃふん。」
と、言う声と共に石につまずいて倒れてしまう。
ゼルガディスは何事と振り返るとアメリアが10mほど後方で倒れているのに気がつき、アメリアの元まで引き返す。

「すまない、大丈夫か?。」
倒れているアメリアを起こし上げ、アメリアは「大丈夫ですぅ。」と、答えながらも何処か打ち所が悪かったのか、苦笑いをする。
「つい自分のペースで歩いてしまったようだ。」
ゼルガディスはアメリアの歩調にあわせて歩こうとすると、アメリアはゼルガディスの背中を押した。
「わたしは平気ですから、ゼルガディスさんのペースで歩いて下さい。」
「だが。」
「大丈夫ですから、ねっ。」
ゼルガディスは心配ながらも「解った」と言い、さっきと同じように黙々と歩くのだが、アメリアと一定の距離を保ち、スピードを緩めて歩く。
そんなゼルガディスの優しさがアメリアに伝わる。


それからだいぶ歩いただろう。二人は荒れ果て、瓦礫の山と化している街にたどり着いた。「ここは?。」
アメリアは辺りを見回し、ゼルガディスに聞くと、ゼルガディスもまた辺りを見回し
「俺が生まれ育った街だ。」
その言葉にアメリアは驚く。
「ここが…ゼルガディスさんの故郷…。」
「そうだ、そしてこの街で俺はキメラ(合成獣)になった。
この街を廃墟にしたのは、レゾに裏切られ、誰も信じられなくなった、俺がやったことだ。」
確かに街は廃墟と化しているが、廃墟と化してから長い月日が流れていない、ざっと見て5・6年いや、4・5年といったところだろうか。
ゼルガディスは、自分の手を握りしめ、ある方向を睨み付けた。…多分そこにあったであろう建物が、キメラ研究所なのだろう。
アメリアはゼルガディスの握り拳を両手で包み、ゼルガディスを安心させようとする。
そしてアメリアの気持ちが伝わったのか、ゼルガディスはにっこり笑い。
「楽しかった思い出より、悪夢的な思い出しかない街だが、アメリアに知っておいてほしかたんだ。」
ゼルガディスはアメリアの手を取り、街外れの墓地までつれて行き、迷うことなく突き進むと、大きな墓に前に立つ。
アメリアは何だろうと、墓に書かれた文字を見て声を上げた。
「グレイ…ワーズ家……、グレイワーズって!!。」
ゼルガディスは片膝を着き、墓石につくツタや草、汚れを払う。
「両親の墓だ。」
「……………。」
ある程度まで綺麗になるとゼルガディスは立ち上がり
「本当は、人間に戻って、お前にふさわしい男になれたら、来ようと思ったんだがどうも我慢が出来なかったらしい。」
と、苦笑いで話し、墓を見つめると
「彼女<アメリア>は、俺の大切な奴だって、親に報告しに来たんだ。」
その言葉にアメリアの顔が瞬時に赤くなる、
「ええっ、あっ、はううううううう。」
アメリアは意味不明な言葉を発し、頭から湯気が立ちこめる。
「大丈夫か、アメリア。」
「…大丈夫じゃないですぅ。」
アメリアはゼルガディスの胸に顔を埋め
「嬉しすぎて、オーバーヒートしそうです。」
と、ゼルガディスの腰に腕を回し、ゼルガディスの顔を見上げた。
「でも良いんですか、わたしで。」
「…じゃなかったら、ここまで連れては来ない。」
アメリアは再び、ゼルガディスの胸に顔を埋め、ゼルガディスの腰に回している腕に力を込めるた。もちろんゼルガディスもこれに答え、アメリアを抱きしめるのだった。

そしてこの後、二人は誓いをたてるのだ。
再びここへくるときは、ゼルガディスは”人”として、アメリアは”娘”として、逢いに来ると…
















おわり