「こういうのもアリかもね」



 
今一度人間に戻る為に、ゼルガディスは旅を続け
それらしい情報を得ては
西へ東へ地の果てまでも出向いた。
しかし、結局は空振りに終わり
何度も何度も振り出しに戻る繰り返し
そんなある日ふと頭をよぎったのは
 
『人間に戻ったら失う物は多く大きくはないだろうか?』
 
と、いう思い。
 
人間に戻って失う物…
頑丈な身体、
人並み外れた腕力
強力な魔力
膨大なキャパシティ(魔力容量)。
 
残るのは、
豊富な知識と、凡人と比べれば強い精霊魔法と剣技。
 
まぁ、別にそうなったところで昔なら
苦にはならなかっただろう。
だが、今は守るべき者が居る。
人間に戻たその時、守りきれるだろうか?
もしかしたら、逆に守られる立場になるんじゃないだろうか?
いや、それならまだ良いが、下手をすれば………
と、考えるようになった。
 
やがてその考えから解放されるべくとった行動は
 
 
「よっ、アメリア。」
やって来たのはセイルーンの王宮、アメリアの元
「……ゼルガディスさん…旅はどうなされたのです。」
アメリアは、ゼルガディスの突然の訪問に驚き
ゼルガディスは
「旅は止めた、もう人間には戻らない。お前の側に居る。」
と、
「もう心配することも、待つことも無くなるんだ。」
と、言うのだが
アメリアは嬉しいようで素直には喜べなかった。
なにしろ、あれほど人間に戻ることを望んで旅をしていたのに
いきなり”人間には戻らない”と言い出したのだから喜べるはずもなく
アメリアはいったい何があったのかとゼルガディスを問いつめた。
 
「大切な者を守る力も術も失いたくなかっただけだ
それとも、キメラ(合成人間)のまんまじゃ不服か?。」
 
ゼルガディスは、何かを得ると、何かを失う
人間になることで、大切な人を守る力と術を失うか
キメラのままで力と術を得続けるか、人間に戻ることを止めるか
それを天秤にかけ、悩んで悩み抜いた結果であった。
勿論、悔いはない。
また、当然アメリアがゼルガディスがキメラのままであることを
拒否する筈もなく
ぷるぷると首を振り、
 
「人間に戻られたゼルガディスさんの姿を見られないのは
ひじょ〜に残念ですが、これからはずっと一緒に居られるのなら
問題なしです。」
 
と、笑顔で答え
数日後、セイルーンに幸福の鐘が鳴り響くのだった。
 

















終わり
 
 




コメント:
人間に戻ってアメリアを迎えに来るのも良いけど、キメラのまんまでも
良いじゃないかと考えて書いた作品です。