「素直な気持ち」


 冥王フィブリゾを倒し、束の間の平和がやってきた。
 そして、リナ達はそれぞれ別れることとなった、リナとガウリィは、剣を探しに、ゼルガディスは、人間に戻るために、アメリアとシルフィールは、セイルーンに、それぞれ旅立ったが、ゼルガディスはアメリアの申し出でセイルーンの近辺まで一緒に行くこととなった。
 数日後、セイルーンを見渡せる丘までやって来た、アメリアとゼルガディスはここまで必要以上の言葉は交わさなかった。
そんな二人を気遣ってかシルフィールは一足先にセイルーンに入り、二人は丘の上で時が過ぎるのを忘れるかのように立ちすくしていた。
「・・・ゼルガディスさん。」
最初に口を開いたのはアメリアだ、その瞳は真っ直ぐゼルガディスの顔を見つめ、左手はゼルガディスの服の袖を握っている。
「さよならじゃ、・・・さよならじゃないですよねっ、また逢えますよね。」
ゼルガディスの服の袖を握る手が震えている、この数日聞きたくて、聞けなくて、なにより言葉にするのが怖かった、答えが何となく解っていたからだ。

「・・・さあな。」

ゼルガディスは遠くを見つめながら答えた。
アメリアは、`予想してた通りの答えだ`と、解っていたこととはいえ泣き顔は見せまいと、胸が熱く、体からこみ上げてくるものを必死で押さえようとした。
だが、そう簡単に押さえられるものでははなく、ゼルガディスから手を離し、悲しみが全身に伝わり瞳に涙があふれ、そんな顔を見られまいと、悲しみが声になる前に立ち去ろうとした、
 その時・・・

「何時になるか解らないが、
         ・・・逢いたくなったら、逢いに来る。」

アメリアは、その言葉に耳を疑った、当然信じられなかったからだ、
`本当だとしたら・・・`そんな思いがよぎる。
アメリアは、真実を知るために振り返った、流れ出る涙をこらえて
「・・・嘘はいけませんよ、ゼルガディスさん。」
精一杯、いつもの自分らしく、そういった。
その瞬間アメリアは驚いた、ゼルガディスが目の前にいるではないか、しかも、真っ直ぐこっちを見ている、思わず顔をそらしたが、
「アメリアがそう思いたいなら、そう思えばいい。」
そういうと、涙でぐしゃぐしゃになっているアメリアの顔を自分の方に向かせ、ぶっきらぼうに自分のマントで拭った。

 二人に少しの間沈黙ができた。
「待ってて・・・、いいんですか。」
アメリアが不安そうに聞いた、ゼルガディスは細く微笑んで
「ああ。」
「一緒に行ってはダメですか。」
すがる目で訴えるが、ゼルガディスは首を横に振り、
「ダメだ。」
アメリアは項垂れた、
 −逢いに来る−
・・・その言葉が頭の中をよぎる、つまり次があるということだ、そう思うと心が晴れてくるのが解った。
「じゃあ、この次に逢うまでにゼルガディスさんが、一緒に行こうと言ってもらえるように、今よりもっと強くなります、ゼルガディスさんが、ほっとけないくらいに綺麗に・・・なりますね。」
いつの間にか止まっていた涙がまた溢れてきたが、アメリアの顔はいつもの笑顔だった、そんなアメリアを見ているとゼルガディスの心に`連れ去りたい`という思いが溢れ出した、その思いを押し退けるようにゼルガディスは、強く、優しく、アメリアを抱きしめた。
「あんまり無理はするな、
           ・・・と、言っても無駄か。」
自分で言って、自分でつっこみを入れ、ゼルガディスは苦笑いをしながら自分の額をアメリアの額に当てた。
アメリアは、そんな言葉に頬を膨らませ。
「無駄とはなんです。」
ゼルガディスの胸ぐらを叩こうと腕を振り上げたその時、逆に腕をつかまれてしまい、次の瞬間ゼルガディスはアメリアの額に軽くキスをした。

「またな。」

そう言って、呆然とするアメリアを置いて立ち去った。
アメリアは、少しの間幸せに浸り、再会の希望を胸にセイルーンへと歩き出した。

 そして、半年後
ゼルガディスとアメリアは再会する、どうやらゼルガディスには忍耐力が少々なかったらしく、ほとんど連れ去る形でセイルーンを後にするのだった。




















・・・おわり・・・ 

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 いかかでしたでしょうか?
なんかゼルとアメリアが偽物のような気がするのは気のせいでしょうか・・・
とにかくアメリアが幸せな(幸せか?)話が書きたくて考えたらこうなりました、皆様に幸せだったと思っていただけたら幸いです。