「夢枕」
誰が誰の枕元♪


俺は残酷な魔剣士ゼルガディス。今日も今日とて一人荒野を行く。
そろそろ寝床を探さねば。

その晩ゼルガディスは夢を見た。




「はい、ガウリイ。あ〜〜〜〜〜〜ん♪」
「あ〜〜〜〜〜〜ん。」
「きゃ。あたしの手まで舐めないでよ」
「いーじゃないか。どっちも美味しそうだったから。」
「んもう、ばか。」
「ほらリナ、あ〜〜〜〜〜ん♪」
「あん。あぐ。」
「うまいか?」
「うん♪うまい♪」
「こいつぅ。」

この世には、目には見えない闇の住人たちがいる・・・・・

じゃ、なくて、なんなんだこの状況はあああ!!!
ゼルガディスが目を覚ますと、目の前でこの世の終わりの光景が繰り広げられていた。すなわち、リナとガウリイがいちゃこいてたのだ。
 
「あん。ダメよ。ゼルは独りもんなんだから。あんまり見せつけちゃ。」
「いいじゃん。煽ってやろう。それに人に見られるとオレは燃えるたちでね。」
「あ、ばか、石が痛いったら!」
「じゃ、オレが下になるか?」

「な、なにをしている・・・・・」
絞り出すような声で、ゼルが声を掛ける。
「よ。起きたか。」
リナを胸の上に座らせて地面に寝転んでいるガウリイが、さわやかに返事をする。
「おはよ。」
「あのな・・・・なにをしているのかと、きいたんだ。」
「??なにしてるって、・・・・なあ?」
ガウリイは、胸の上に鎮座しているリナに顔を向ける。
「うん。」
きょとんとリナは、小さなハサミを持って、ゼルガディスを見つめ返す。
「枝毛取り。」

ゼル、脱力。
「なんでそんなカッコで枝毛取ってんだよ。」
「だあってガウリイが・・・」
「この方が楽しいじゃないか。」
「あのな・・・・」
何だかずきずきと頭痛がしてきた。ゼルが頭を抱えて呻く。
「大体、いつお前らが来たんだ。ちっとも気がつかんかったぞ。」
「アメリアのことばっか考えてるからよ。」
「・・・・・・い?」

ぴたりと動作の止まるゼルガディス。
リナは小さなハサミを振りながら言う。

「アメリアに頼まれて来たのよ。何だか毎晩枕元にゼルが立つので何とかしてくれって。あんた、変な術でも使ってんじゃないでしょうね?」
「ま、枕元?」
「そ。いわゆる夢枕ね。アメリアの頭の上に夜な夜な現れて、そのくっらーーーい顔で何も言わずにじーーーーーーーーーーーーーーーっと眺めてるんだって。いくらアメリアでも、さすがに毎晩となるとコワくなっちゃって何とかしてって、手紙が来たの。」
「俺が・・・・・?」

覚えがない。ある訳がない。

「ゼル、そんなにアメリアに会いたいなら生身で会いに行けよ。」
無意識なのか、顔はこちらに向けながら、リナの足を撫でつつガウリイが言う。
「そーよ。あんたみたいにくっらーーいヤツが枕元に現れたら不気味よ、不気味。」
リナもガウリイに足を撫でられていることを、さして気にも止めていない様子だ。
「しかし、そんなことを言われても・・・」
身に覚えがないのだから、止めて欲しいと言われても無理な話だ。
だいいちまだこの状況が飲み込めない。

「リナ、少し太ったか?」
「え。や、やだ。ウソ。」
「少し肉づきが・・・・」
ぽか、とガウリイの胸板をリナが叩く。小さなこぶしで。
「ばか。やだ。」
ウソだろ、とゼルは目を疑う。普段のリナならもうドラ・スレの一発や二発は・・・・
「いや、お前ちょっと華奢だから、この方が手ごたえがあっていい。」
「あ、ちょっとどこ触って・・・」

朝っぱらからもう、やめろよ、こいつらは。

力が抜けたのか、ぱふ、とガウリイの胸の上に倒れ込むリナ。片手でリナを抱きとめ、目線はこちらに向けるガウリイ。ウソだ。ウソだと言ってくれ。冗談だと。
「言ってなかったか。俺たち実は新婚さんなのだ。」
 
う、うえええええええええ?

「な、リナ。」
愛おしそうに、胸に抱いたリナの髪を撫でる。
「うん。ガウリイ。」

もうお互いしか目に入ってないようだ。
ゼルガディスは意識が遠のくのを感じた。

「おはようの挨拶してよ。」
「ん。おはよ。」
「じゃ、あたしも。ん。」
「ゼルに気を使ってたんじゃなかったのか。」
「あれ、そうだっけ?ま、いーじゃない。ね?」
「この際存分に見せつけてやろう。」
「あ。ばか。それはいくらなんでも・・・・・」
「じゃこれは?」
「あ。だめ。やん。」
「んじゃここは?」
「ばか、くすぐったいってばあ!」

きゃはは、とリナが嬌声をあげる。
もうゼルガディスは意識を完全に手放してしまいたかった。

「というわけでえ、ゼル、あんたもう夢でアメリアのとこ行っちゃダメよ。」
なにが、というわけで、なんだ。
「ねえ、ゼル、固まっちゃってるわよ。」
「刺激が強すぎたかな。」
「んじゃ、もっと刺激しちゃおう♪ん、ガウリイ。」
「新婚さんの定番だな。」
「耳掻き?膝枕?それともだっこ?・・・添い寝?」
「添い寝だけはないな。」
「やん。」

ぐるぐると回り出した大きな青い竜巻きに飲み込まれ、ゼルガディスの意識は宇宙へと飛んでいった・・・・・・












朝。
ゼルガディスは飛び起きる。
ぜえぜえと呼吸が苦しそうだ。

「わ、悪いもんみた・・・・・・・・」
そろそろと辺りを見回す。

ほっ。誰もいない。

がさ、と頭に違和感を感じて手をやると、髪の毛に何か刺さっていた。
「?」
大きな白い封筒で、金の縁取りがしてある。裏返してみると、御丁寧に印章つきで、封蝋がしてある。だが署名は見たことのある字体だった。
「アメリア?」
急いで封筒を開ける。中には凝ったデザインのカードと一枚の手紙。先に手紙を開く。

『拝啓ゼルガディスさん。
いかがお過ごしでしょうか。このたびセイルーンにて挙式が行われることになりましたので、是非ゼルガディスさんもお越し下さい。
お二人も、わたしもお帰りをお待ちしております。』

その下に、アメリア、とだけ書かれた署名。
国名はついていない。
ばかだな、気を使って、とゼルは微笑む。

「ん?挙式?お二人って・・・・・」

またぐるぐると竜巻きが起こりそうで、急いでゼルはカードを開く。

『新郎:ガウリイ・ガブリエフ
新婦:リナ=インバース』
の2行が目に飛び込んできた。


まさか。ウソだろ。
誰かウソだと言ってくれえええええ!



苦悩するゼルガディス。
彼はセイルーンに着くまで悪夢にうなされ続けたという。

合掌。


























====================================おわる!!

元ネタは沙夜さんのHPにある「結婚式はセイルーンで」です。だから、ウソじゃないのよ、ゼルちゃん。結婚式する前に結婚してる(うふふ)ので、新婚さんというわけなのです。
夢枕に立ったのは、ゼルじゃなくて、リナとガウリイだったんですよ。「生身で会いにこい」と言いたかったんですね。アメリアのために。
謎が一つ残っています。あの手紙は誰が配達したのでしょう?ふふふ♪
もしまだ沙夜さんの螺旋回廊読んでない人がいらしたら、是非読んで下さい♪リンクから行けますよ♪

では、朝っぱらから読んでる人にはごめんなさいの展開で(笑)
そーら、逃げます!! 

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