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 得体の知れない音は、唐突に途絶えた。

 ガウリイは耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。だが、無意識に腰のスナブノーズを確認する。

 全身の神経が敏感になり、ほんの小さな音でも聞き逃すまい、変化を見逃すまいと緊張していた。こんな感覚は久しぶりだ。

 先ほどの二回に渡る咆哮・・・・そう、確かにあれは獣の咆哮だ・・・は、一度目より二度目の方がより近い場所から聞こえた。つまり、対象はこちらに向かって来ているのだ。今となっては、三度目の咆哮が聞こえないのが不気味に思える。

 ヤツはこちらに迫ってきている。

 足場の悪い崖の上から移動しながら、ガウリイは油断なく周囲に気を配っていた。いつのまにか、対象を「ヤツ」と、目に見えない音ではなく、生きて呼吸している何者かだと断定を下していた。

 

 しぃん・・・・

 

 静寂がねばり付く。

 

 っっっぎぃぃぃぃいいうううううううう!!

 

 「!」

 やはりヤツは接近していた。

 100メートルと離れていないだろう。

 相手が獣であるなら、そしてこれだけの声量を持つものなら、身体の大きさに比例して獰猛な種類には違いない。ヤツとの対面が、あと数秒後のことなのだとそれは声高に物語っていた。

 ガウリイはホルスターから銃を抜く。

 

 がさがさがさっ!!

 

 地リスの時とは比べ物にならないほど大きく茂みが揺れ、茶色っぽい塊が飛び出した。鋭い牙と、鋭い爪を予想し、ガウリイは銃を構える。

 

 「・・・・・なにっ・・・・!?」

 ガウリイは現れたものの正体に驚く。慣れたその指は、トリガーを引かなかった。

 彼の前に姿を現したのは、銃口を向けるにふさわしい対象物ではなかったからだ。