「瞳」

 

夜になると、失われた第三の瞳が開眼する。
その目は可視光線をのみ反射するのではなく。
音や匂いにも敏感である。

周囲の事物を映すというより。
与えられた情報より遥かに多くの出来事を嗅ぎ付け、掘り返し、果ては日常において懸命に作り上げた己の論理構成(つまりは神経シナプスの受容体のつながりとでも言おうか)を気持ちのいいほど捨て去り、飛躍するのだ。

見えない海馬を乗り回し。
次々に、錠が降りたり、固く錆び付いたぎしぎし言う扉を。
あるいは蹴破り、あるいは通り抜け。
額に生まれた亀裂のように、それはあらゆるものを、直接体内に取込もうとする。
痛みは感じない。
そんな奇妙な瞳なのだ。













1992.6.18
(夜になると冴えるってのは、やっぱり若かった証拠なのかも・・・ううう(涙笑))

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