「時には昔の話を」

 
「リナさんの初恋の相手ってだれですか?」
 
アメリアの言葉にリナは硬直した。
 
「は?」
「だから…リナさんの初恋の相手って…。」
「なんでそんなこと…!」
「いいじゃないですかぁ。
 ゼルガディスさんとガウリイさんが帰ってくるまで時間があるますし。
 時には昔の話なんていいじゃないですか…?」
「い、いやよ!」
「じゃあ、リナさんは初恋もまだなんですか〜?」
「そ、そんなことないわよ。
 じゃあ、あんたはどうなのよ。」
「わたしの初恋の相手はですね、
 ヒーロー小説の主人公です!」
 
ずるべしゃっ!
 
リナはおもいっきりこけた。
「あ…あんたらしいわね…。」
「わたしは話しましたよ。
 じゃあ、リナさんも話してくださいよ。」
「えっえ〜と…。ほらっ、話すと長いわよ。あんた起きてられないでしょ?」
そういいながらリナは部屋の柱時計をみた。
時刻は11時をさすところである。
「大丈夫です!
 リナさんはガウリイさんに子供扱いされて怒ってるのにわたしを子供扱いしないでください!」
「わ、わかったわよ…。ちゃんと聞いてなさいよ。」
「はい!」
 
時は10年前にさかのぼる。
その日はセイルーンの姫が5歳の誕生日を迎え、そのための盛大なお祭りが行なわれていた。
 
「それって…わたしのですか?」
「おぼえてないの?ものすごく盛大なお祭りだったんだから。」
「お、覚えてません…。」
 
あたしの家は商売一家でゼフィーリアで噂を聞きつけ出稼ぎついでに見物に行こうと家族4人みんなで初めてゼフィーリアを出た。
 
あたしはどうしてもお祭りを回りたくてこっそり家族から離れて一人で遊びに行ったの。
 
「あの広いセイルーンの街中をひとりで?
 …やっぱり、そのころから…。」
 
べしっ!!
 
リナはスリッパでアメリアを思いっきりたたいた。
「いたいです〜!
 ひどいです〜。リナさん〜。」
「聞きたいのならだまってなさいよ〜!」
「わかりましたよ〜。」
 
案の定、あたしは迷子になった。
泣いててもみんな素通りしていく。
あたしは子供ながら一人で遊びに行ってしまったことを後悔していた。
 
そんな時だった。
そのお兄ちゃんに出会ったのは。
 
「どうしたんだい?おじょうちゃん?」
そう彼は声をかけた。
年は12,3歳くらいの肩までの長さの金髪の美少年だった。
 
「…。」
あたしは子供ながらにその容姿にみとれ
なにもいえなかった。
 
「どうした?迷子か?
 まあ、俺も同じようなもんかな?道わかんなくて…。」
「お兄ちゃんも迷子なの?」
「ハハハ…そうだな。」
「?変なお兄ちゃん。」
 
今まで泣いてたのが嘘のように
あたしはそのお兄ちゃんの様子に思わず笑っていた。
 
「よしよし。
 じゃあ、おじょうちゃんの親さがそうか?」
「…いい。お兄ちゃんも迷子なんでしょ?」
「ハハハ…。そうだ。
 じゃあ、お祭りいっしょにみてまわるか?
 そんとき親が見つかるかもしれないしな。」
「うん!」
 
あたしたちは手をつないで
お祭りを見て回ったの。
すごく楽しくて時のたつのも忘れてしまっていた。
そして最後に「占いの館」ってところにいったの。
 
「何を占うかい?」
「う〜ん、どうする?おじょうちゃん。」
「え?え〜と…。」
「じゃあ、二人の将来を占ってあげようか?」
「ふ、二人の将来?」
あたしは子供ながらに真っ赤になった。
「はははは。子供ながらに何を想像したんだい?
 お嬢ちゃん。さてはこのお兄ちゃんが…。」
「な、なんでもない!それよりばあちゃん、占い!」
「ああ、そうだね。どれどれ…。」
 
ばあちゃんはなにか唱えながら水晶をあたし達に近づけその中をのぞきこんだ。
 
「ほう…これまた…。
 将来もお嬢ちゃんたち一緒だね…。
 しかも…有名な…それぞれ魔道士と剣士になれるよ。
 二人は運命…?いや必然的に?二人は一緒にいる…。
 そういうもとに二人は生まれた。離れても必ず一緒になる。
 すごいねぇ。
 こんなに結びつきのいいカップルははじめてだよ。」
「か、カップル…?」
あたしはまた真っ赤になってしまった。
それをおかまいなしにお兄ちゃんは
きょとんとしていた。
「ほんとう?へぇ…そうだったんだ…。」
「あ、あと、お嬢ちゃんは将来いろんなことが待ちうけている。
 お兄ちゃん、お嬢ちゃんを守ってあげな。
 世の中を希望に変えるために…。
 いやあ…良い者を見せてもらった…。」
「はい。」
「…。」
そんなこといわれても
ピンとはこなかった。
でもお兄ちゃんと一緒…
あたしにとってこれこそが将来の希望だった。
 
「じゃあ、暗いんでもう帰ります。
 おじょうちゃんを今度こそ親元に帰さなきゃ。」
「あ、お兄ちゃん…ちょっと…。」
「はい?」
「お嬢ちゃんは先に…ね。」
「?」
 
ぱたんっ!
 
ドアを閉めてそのガラスから
中の様子をのぞく。
ばあちゃんとお兄ちゃんは少しお話をしていた。
 
「よ、またせたな。
 じゃあ、いくか。」
「…なに…はなしてたの?」
「う?あ、ああ。
 ちょっと目をつぶってて。」
「?」
 
ぎゅっと目をつぶる。
すると耳のすぐそばで
ぱちんっ!と音がした。
 
「目をあけてごらん。
 そして耳障ってごらん。」
「?…あ…。」
 
耳にはまだぶかぶかした
金色の球形のイヤリングがあった。
 
「これはよくわからないが…魔力が少し高くなるアクセサリーだって。
 有名な魔道士になるおじょうちゃんにつけてくれって。」
「え…?」
「俺もおじょうちゃんには魔道士になってほしい。」
「なんで?」
「俺、剣をやってるんだ。
 だから剣士になるつもりだから。
 また俺たちは会っておじょうちゃんを俺が守りたいから。」
「え…?」 
「俺がおじょうちゃんをまたみつける。
 おじょうちゃんは俺がみつけられるように目印にこれつけて。
 このイヤリングが似合うようになったら…必ずみつける。
 それまでこれを大事にもってて。」
「か、勝手よ、お兄ちゃん…勝手なこと…ばかり…。」
「おじょうちゃんは…いやなのか?
 それともボーイフレンドとか…。」
「い、いるわけないでしょ!?
 い、いやじゃない…わよ。
 お兄ちゃんといて…その…楽しかったし…。」
「そっか!」
 
ぱあっと顔を明るくし
お兄ちゃんはやさしくあたしの頭をなでた。
 
「よし、広場に行けばみつかるかもしれないな。
 じゃあ、いくか。」
「うん。」
 
二人は手をつないで広場にむかった。
 
「よし。ここならみつかるだろう。」
「お兄ちゃんは?」
「あ?俺は…帰るよ。
 道はおじょうちゃんとお祭りまわってたおかげでわかったし。
 ありがとうな。」
「う、ううん。お兄ちゃんこそ…ありがとう…。」
あたしが恥ずかしそうにやっとそれだけいうまた前みたいに頭をやさしくなでた。
 
「じゃあ、また会おうな。
 俺、おじょうちゃん守れるようになるまでがんばるよ。」
 
あたしの瞳をのぞき込むよう近くでお兄ちゃんはそういった。
青空のような蒼い瞳。
それを細めて笑いながら。
 
「…うん。」
いつのまにか自然に素直にあたしはそう答えていた。
お兄ちゃんの瞳の中のあたしは真っ赤でそれをみてさらにあたしは真っ赤になっていた。
 
「リナー!!」
 
遠くで姉ちゃんの声が聞こえた。
「あ…姉ちゃんが探してる。」
「おじょうちゃんってリナっていうんだ。」
「うん。」
「そっか…。じゃあ、俺、いくよ。
 またな。リナ!」
 
笑顔で手をふりながら
お兄ちゃんは遠くに消えていった。
 
「…それで…結局そのお兄ちゃんの名前は聞きそびれちゃって。
 で、今にいたるわけ。」
ZZZ…く〜〜〜〜〜。」
「だぁーっ!!」
 
ずるっ!!
 
リナは思いっきりこけた。
「ア、アメリア…あたしの話を…。」
「むにゃむにゃ…。」
「い、いい度胸だぁ…。」
 
リナは眠っているアメリアに向かって
攻撃呪文を唱えようとしている時だった。
 
「ただいま〜!!」
 
ガウリイとゼルガディスが帰ってきた。
「お、おいリナ!なにしてるんだ。」
「あ…、ゼル…だってアメリアが…。」
「…寝ちまったか。
 じゃあ、部屋まで運んでくるが…鍵を借りていいか?」
「え?あ…はい。」
 
リナは怒ってるのも忘れて
ゼルガディスに鍵をわたした。
その鍵をうけとりゼルガディスはアメリアを抱え2階の部屋までいった。
 
「…先に寝ててもよかったのに。」
ガウリイがリナに話しかけた。
「あ、…ちょっと二人ではなしてたのよ。
 それでアメリアあたしが話してたら寝ちゃって…。」
「リナの話聞かないなんて…度胸あるなぁ…。」
「ちょ、どーゆー意味よ!」
「あ、え〜と…。」
「はあ…もういいわ。怒る気も失せた。
 寝るわ、あたしも。」
「ハー…良かった…。」
「何!?」
「な、なんでもありません…。
 おやすみなさい…リナ様。」
「よろしい。
 …じゃ、おやすみ、ガウリイ。」
「ああ。」
 
ガウリイはリナの背中を見送りながら
つぶやいた。
 
「…覚えてたんだ…。最初のプロポーズ…。」
 
「え…?なんかいった?」
「いいや。何も。
 それより、ちゃんと寝ろよ。」
「うん…。」
 
リナは2階にあがり部屋に入っていった。
 
「もうそろそろ、2度目もいわなきゃ…
 気付かないかな?」
 
少し笑いながらまたガウリイはつぶやいた。
 
 






















END
 
 
 
(後書き)
どうも、加藤です。
短くて…ああ、すみませんでした…。
ええと、これはミィさんの短冊にあった「子供の頃にあっていたリナとガウリイ」をもとにかきました。ど、どうでしょうか?(おそるおそる…)
あたしはなんだかの形で過去で二人は会ってるんじゃないかなぁ?と思ってかきました。
それ+(プラス)…旅の途中女の子同士アメリアとリナはこーゆー初恋話してたんじゃないかな?と少女漫画チックに小道具(?)とむすびつけてみました。
修学旅行とかって部屋でみんなあつまって恋の話をするとかってありませんか?
あたしは他人の話聞くのが大好きで他人の聞いといて自分のは話したとしても一部…しか話さないというひきょうな奴でした(笑)。
 
リナの初恋…あたしとしてはガウリイでいてほしいですね。
そんな願いもこめて書きました。
ではこのへんで。加藤でした。
 
 


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