とある街の、とある食堂。
突然現れた依頼人らしき男が、あたしに告げたある人物。
それは、あたしのよく知っている名前だった。
 
(ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃららら〜〜〜っ♪)
連続ラジオドラマ:スレイヤーズTRYセラ(笑)第一話
第二回:『気をつけよう あたしは急に止まれない』
 
 
(効果音:小さく食堂の賑わい)
 
「・・・・ブラック・フォックスう〜〜〜〜〜っ!?」
「・・・リナさん。どうしたんですか?ブラック・フォックスって誰のことです?」
「・・・あ。アメリアもゼルもしんないわよね・・・・。」
「いや、名前だけは聞いたことがある。」
 
(BGM:事件を想像させるよ〜なあやしい曲をバックに、ゼルガディスの説明)
 
「怪盗ブラック・フォックス。ある地方では、その名を知らぬ者はいないと言う、その道では有名人の一人だ。何でも、不正に稼いだ金で超え太った連中から金銀財宝を盗み出し、それを困っている人間に分け与えているらしい。お陰で庶民からは義賊と崇められているほどだ。
・・・だが、それはここから随分と離れた場所でのことだが・・・。」
 
(ぱちぱちぱちぱちっ!拍手の音と何故か満場のどよめき)
 
「さすがゼルガディスさんっ!状況を説明させたら右に出る者はありませんっ!これでブラック・フォックスを知らない視聴者にも、じゅ〜ぶん伝わりましたともっ!」
「・・・・そ〜ゆ〜褒め方をされても嬉しくない・・・。」
「リナ・・・・。ブラック・フォックスって・・・!」
 
すっぱあああああんっ!!←視聴者には聞き慣れたスリッパの音)
 
「い、いってえええええっ!!いきなり何すんだよ、リナっ!」
「じゃかましい!何すんだじゃないわよっ!あんた今、思いきり思わせぶりにあたしを振り返っておいて、次の瞬間、『・・・・何者だっけ?』とかボケかますつもりだったでしょおおっ!その前に手を打っただけよっ!」
「リナさんひどい。せめてオチを聞いてから突っ込んであげても・・・。」
「アメリアは黙っててっ!」
「え。オレ、覚えてたけど?」
 
『うえええええええっ!!!』
(↑ゼル、アメリア、リナの大合唱)

 
「ガ・・・・ガウリイが、人の名前覚えてた・・・・!」
「ああああああ。何か世界に悪いことが起こる前触れかも知れません〜。」
「明日はゴルフボール大の霰が降るかも知れんな・・・・。」
「お前ら・・・・・。」
「・・・・あの、ゼルガディスさん、ゴルフボールって・・・・?」
 
(おずおずと青年の声)
 
「あ、あの〜〜〜〜〜。」
「はっ!?ご、ごめんなさい。ちょ、ちょっとド〜ヨ〜してたものでっ!つい、登場人物がもう一人いたことをすうっかり忘れてましたっ!」
「は、話を続けてもよろしいでしょうか・・・?」
 
(BGM:物語の導入部分をさまたげないてーどの静かな曲)
 
「申し遅れましたが、私はカインと申しまして、この街では有数の財産家ワーゲン様にお仕えしている執事でございます。」
「っへ〜〜〜〜。執事ねえ。見たところ、年齢的にお若いようですけど・・・。」
「はい。代々私の家は、ワーゲン様の執事を務めさせていただいているのです。・・・それで、つい1週間前までは、私の父が56代目執事をしておりました。ところがある事件が起こってから、父が腰を痛めてしまいまして。代わりに私が57代目執事になった次第なんです。」

「・・・へ〜〜〜っ♪代々執事さんの家系なんですねっ♪」
「で、ある事件って?」
 
(BGM:夜をバックに犬が遠ぼえしそうな曲)
 
「1週間前、ワーゲン様のお屋敷に、1通の予告状が届いたのです。
・・・これより10日後、貴君がその出過ぎた腹と同じように溜め込まれた、数々のコレクションを盗みに入る、と。
そして書面の最後には、あの人物の署名があったのです。」

「・・・・怪盗ブラック・フォックスね・・・・!」
「そうです。お願いです、ヤツを止めて下さい。父は心痛の余り、夜も眠れないのです・・・。ううっ。」
「わかったわ。その話、受けてあげる。」
「お、おい、リナ?」
「本当ですかっ!?あ、ありがとうございます、ありがとうございますっ!」
「・・・・何だかやけに判断が早かったと思いませんか・・・?」
「お前、聞いてなかったのか。この若い執事とやらが最初に言った言葉を。」
「え?」
「この街有数の財産家、って言っただろうが。」
「あ。納得です。」
「お屋敷ってとこも聞いてたみたいだな・・・。」
「うるさいよ、ガウリイ。・・・・あたしはリナ。カインさん、早速そのお屋敷に行ってみましょうか。」
「ありがとうございますっ!あれから1週間、予告された日まであと3日しかないのですっ!」
 


『東に困っている人あらば、行ってお助けしましょうと手を握る。
西に泣いている人あらば、行ってハンカチをそっと出す。
皆のヒロイン、リナちゃんは、今日もおたから・・・じゃない、あなたからの依頼をぱぱっと片付けてしんぜましょ〜っ♪

・・・・というわけで、次回も聞いてくんないと、暴れちゃうぞっ♪』

『・・・・そのギャグ、ちょっと苦しくねーか・・・・?』
(ガウリイのつっこみ)




 

次回へ続く。