「自称保護者VS自称婚約者!?」
それからどうした。


きんこんかんこん。

どこか懐かしい鐘の音が鳴り響く。
金色に輝くハンマーを片手に、ステージの上にランツが現れた。
「れでぃ〜すえんどじぇんとるみぇん!!ただいまより〜、第8回、リナ=インバース強奪戦『オレの屍を超えていけ!ゲットするのはオレだ!』を行いま〜〜〜〜す。」
轟くダミ声でランツが宣言すると、リナは猛然と抗議。
「ちょっと!何が強奪よ、何が第8回よっ!ランツ、あんたねっ!!」
「いや、8回くらいにしておいたほ〜が箔がつくと思って・・・・。あ。賞品のリナさんは、ちゃんと賞品席について下さい。」
「へっ!?」

審査員席の隣に、避暑地なんかで見かける、背もたれの高い籐細工の大きな椅子が置かれていた。
アメリアがリナをひきずっていく。
「リナさん、おとなしくして下さい〜。」
「いやだったら、いやだ〜〜〜〜っ!!」


「ごほん。さて、勝利の女神が席についたところで。この戦いにおいてはチャレンジャー側であるハルさんから、一言伺いましょう。」
ハル、うながされてステージに昇る。
「僕はリナちゃんと結婚することだけを考えています。ガウリイさんには何のうらみもありませんが、僕とリナちゃんの幸せのために、散って下さいっ!!」
(おひおひ・・・)
ランツ、ガウリイをステージに呼ぶ。
ガウリイ、へたへたとステージへ。
「両者、まずは握手!」
ぎゅっ。
「ではここに、両者が正当なるルールの元に正々堂々と戦うことを、誓って下さい。いいですね?」
ハル、自分より背の高いガウリイに、挑むように笑いかける。
「ガウリイさん。覚悟して下さい。」
ガウリイ、疲れたように笑う。
「ははは。」




第1戦。

「357足す258は?」
「615!」
「4,695かける10,783はっ?」
「50,626,185!」

おお〜。
問題を出すランツに、正解を即答するハル。
思わず審査員席からため息がもれる。
椅子にぐるぐる巻にされているリナが、呆れたように呟く。
「ガウリイにこんな問題、出すほ〜が間違いよ・・・。」
ガウリイは椅子に座ったまま、両手を広げてひいふうと数えているのである。


第2戦。

「ゼフィーリア王国の西に位置し、マインやベゼンディなどと言った都市を構える国の名前は?」
「カルマート公国!」
「魔王である獣王が拠点としているとされる、南方は俗に何と呼ばれている?」
「群狼の島!」


「ねえ・・・。この問題、誰が作ったの・・・。」
げんなりしたリナが言うと、ゼルが顔を赤らめて答えた。
「すまん・・・。俺だ・・・。」
次々に出題される問題に、はきはきと答えているのはやはりハルの方であった。
ガウリイはすでに椅子の上で眠りこけている。


第3戦。

「次は、魔法の種類と属性について・・・」
ランツが一覧表を読み上げようとした時、アメリアがばたばたと走ってきて、それをひったくった。
「ダメですよ、ランツさんっ!そっちじゃなくて、こっちですっ!」
「え。打ち合わせと違う・・・・いってぇっ!はいはひっ、わかりましたあぁ。」
何故かお尻をさすりながら、ランツがアメリアから渡された紙を広げた。
慌てて書いたらしい、乱雑な文字が並んでいる。
「ええと。第3戦は・・・・・かけっこ!?」
「そうですっ!ハルさん、ガウリイさん、がんばって下さい!」


別荘の裏手はプライベートビーチになっていた。
碧青とした海が広がっている。
片側では左右に分かれ、ランツとゼルが白いヒモを持っている。
そこから200Mばかり離れたところに、ガウリイとハルが立っていた。

その脇で、リナにアメリアがこっそり耳打ちする。
「リナさんリナさん。これならガウリイさん、大丈夫ですよ。」
「どーでもいーけど。このぐるぐる巻、取ってくんない。」
「ダメですよ。戦いが終わるまで、おとなしくしていて下さい。」

「よ〜〜〜〜〜い。ドンっ!」

ざざざざざざっ。

両者、走り出した!
「おおっ!?」
「そ、そんな!」
「まあ。」
意外なことに、ガウリイと並んでハルが健闘している。
「うそぉ。ハルさんて、そんなに運動が得意な人には見えなかったのに!」
「あのハムハムが・・・。走るより、転がったほ〜が早いって言われてたハムハムが・・・。」
「あら。ガウリイさん、負けそうですよ。」
「そんな!ガウリイさん、がんばって下さいっ!!」


結果は同着だった。
ゴールに辿り着くと、ガウリイが初めてハルに声をかけた。
「お前さん、やるじゃないか。」
「ガウリイさんにそう言ってもらえると嬉しいですね。」
少し息が切れたハルは、ふうと深呼吸をすると、しみじみと言った。
「僕ねえ。小さい頃はよくいじめられて。それで、リナちゃんに助けてもらってたんです。だから、大きくなったら僕がリナちゃんを助けてあげようって、ずっと身体を鍛えてたんですよ。」
「・・・ふうん。」
「だからガウリイさん。手加減しないで下さいね。僕、頑張りますから。」
ガウリイは一瞬、驚いた顔になったが、にこりと笑ってハルの肩を叩いた。
「ああ。わかった。手加減はしないと約束しよう。」



にこやかに笑い合うガウリイとハルをよそに、アメリアは頭を抱えていた。
「あああ。どうしましょう。体力関係なら、ガウリイさんの絶対勝ちだと思ってたのにぃ・・・。これじゃ、最初に負けてる分、ガウリイさんが不利です。」
ぐるっとリナの方を向く。
「リナさん。」
「な、なによ。」
「ガウリイさんが得意なものって、他に何かあります?」
「な、なんであたしにきくのよ。」
「だって。リナさんは誰よりもガウリイさんと一緒にいたんですよ。それくらい、わかるでしょう。自分でもそう言ってたんですし。」
「あ、あのねえっ。」
「このままじゃ、リナさんはハルさんのお嫁さん確定です〜。」
ぷちっ!!

とうとう誰かさんの堪忍袋の緒が、ぶっち切れたよ〜である。



続きはこちら♪