「じゃんぷ」リナの場合


「ガ・ウ・リイ♪」
えへへ、とあたしは笑って、彼の腕に自分の腕を絡ませる。
上目使いで見上げると、前を向いているガウリイが固まったのがわかった。
「えへへ〜〜〜。」
そのままぶら下がるように歩く。
実際、ちと歩きづらいのだが。
「リ、リナ・・・」
どもりながらあたしの名前を呼ぶ彼。
「な・あ・に?」
あたしの声はスタッカートだ。
「その・・・。こ、この次はどこに行くんだ?」
空いた手で、ぽりぽりと頬をかいている。
「ん〜?ガウリイの行くと・こ♪」
「え・・・」
「えへへ・・・」


〜〜〜〜これはホントにスレイヤーズのパロディか!?と思った人。
ごめん。
むちゃくちゃ違和感あるかもしんないけど。
あたしはしょーしんしょーめいのリナ=インバースで。
んで、あたしが今ぶら下がってる大木のよーな男は、勿論、ガウリイ。
なんでこんなオープニングかと言うと。

あたしはガウリイの弱点を発見したのだ!
ぱんぱかぱ〜〜〜〜ん♪
はっきし言って。今まで、ガウリイの弱味を見つけたことはなかった。
それがあ〜た、灯台もと暗しとはこのことで。
意外なとこに、彼の弱点はあったのだ。
えっへん。
それは。


「ね〜〜〜。ガウリイ。あたし、疲れちゃった。・・・おんぶ、して?」
瞳はうるうる。
今までは絶対に通用しなかったぶりっこが、今。
「え・・・あ・・・・ああ。」
ぎこちなく、彼はしゃがむ。
あたしはその背中に飛びつく。
「背中で、寝てもい?」
「え・・・い・・・いいけど。」
見えなくても、今、ガウリイがどんな顔をしてるかわかる。
彼は・・・・・・照れてるのだ。


あたしが風邪をひいて倒れた時のことだ。
どうやら危なかったらしいけど、ガウリイが看病してくれたおかげで事無きを得たらしい。その事には素直に感謝してるけど。
あたしは、それまで、ガウリイに対してひどく緊張していたのがわかった。
で、最後には、そんなに肩ひじはることじゃないって、わかったんだけどね。甘えたい時は甘えればいいし、どつきたい時にはどつけばいいって。

キスされてから、初めて、あたしはガウリイの腕の中で安心できた。
それで、まあ、感謝の意を込めて、その、あたしから、・・・・ちゅっと
やったのだ。ガウリイのほっぺたに。
・・・・そしたらば。
何だか関節のオイルが切れた操り人形みたいに、かくかくと出て行ったかと思うと、凄い物音が聞こえてきて、どうやら部屋ですっころんだらしい。
それからというもの、今までは余裕しゃくしゃくに見えたガウリイが、あたしがちょっとひっついただけで、照れてしまうのがわかった。
・・・・・こりは面白い・・・・・。

あたしがこの、新たにみつけたからかいのネタをそうそう簡単に手放すわけはない。当分、遊ばせてもらうことにした。


「ガウリイ〜〜〜。」
「ん?」
「やっぱおんぶより、だっこのがいいな〜〜〜。」
「え・・・・」
「ウソよ、じょおだん♪」
楽しい〜〜〜〜〜(心の中で爆笑中)


そうこうしてるうちに、町が見えてきた。
そろそろ降ろしてもらおうと思った矢先。

「リ、リナさん・・・・?」
「ガ、ガウリイ・・・・?」

聞き慣れた声だった。
あたしは、ぎちぎちと振り向く。
そこにはやっぱし。
硬直してこちらを指差しているゼルガディスと、アメリアだった。







「しかし・・・・・。まさか、あんたたちに出会うとわね・・・」
きまづい雰囲気が、食堂のあたしたちのテーブルに広がる。
ゼルガディスはさっきから一言も喋らないし、アメリアは真っ赤。
もともと、ガウリイは賑やかな方じゃないし。
あとはあたしが盛り上げるしかない。

「あ、あはは。ど、どしたの、皆。ほらほら、コーヒーが冷めちゃうわよ?ゼル。アイスクリームが溶けちゃうってば、アメリア。だいたい、何であんたたちがこんなとこにいるのよ?」
話題をまず逸らさねば。
「それは・・・」
「このムスメのせいだ。」
憮然としたゼルガディスが、アメリアを示す。
「へ?」
「このムスメが、いきなり城を飛び出したりするから。たまたまセイルーンに立ち寄った俺が疑いをかけられたんだ。」
「え・・・・なになに。それって・・・。」
また面白そうな話だわ、こりゃ。
「つまり、ゼルガディスがアメリアとかけおちしたとかって、疑い?」
二人は揃って赤くなる。
「ち、違・・・」
言っても遅いわ。赤くなった時点で、キミの負けよゼルちゃん。
「それで、その疑いをはらすべく、俺がアメリアを追っ掛けてきたと、こういう訳だ。」
「ふうん〜〜〜。」

「それで、何で今、一緒にいるの。」
「もちろん、セイルーンに連れ戻すためだ。」
ゼルガディスがそうきっぱり言い放ったところで、アメリアがえっという顔をしたのを、あたしは見逃さなかった。
「アメリアは何でいきなり、城出したりしたのよ?」
「そ・・・それは・・・・。」
アメリアは唇を噛む。
「なあに?あたしにも、言えないこと?」
「そうだ。俺もまだ聞いていないぞ。」

「・・・・。姉さんが・・・」
ぽつり、と言ったアメリア。
「姉さん?」
「姉さんて、お前の姉さんか?フィルさんの第一王女の。」
「そうです。姉さんを、この新大陸で見かけた人がいるっていう噂を耳にしたもんですから・・・・。」
「へええ。じゃ、その姉さんを探しに来たってわけ。」
「そうです・・・。」
今にも消え入りそうな声で、アメリアは言った。
あたしは首をかしげる。
「・・・でも、変ね。今まで、全然気にしてなかったじゃない。何で今頃、急に探そうって気になったのよ?」
「そ、それは・・・・・。」
アメリアは、俯いてしまった。

「・・・まあ、いいわ。」
あたしは攻撃の手を緩めた。
あからさまにアメリアの顔がほっとする。
・・・これは、後でお風呂ででも追求しなくちゃね。
「で、今日はどうするの。」
ちらっとアメリアの方を見たゼルガディスは、
「今日はもう陽も傾いたから、この町で一泊するつもりだ。」
「あら、そう♪奇遇ね♪あたしたちも、ここで泊まるつもりだったの。
・・・ね?ガウリイ。」
「お、おお。」
「・・・・何だかガウリイさん、静かですね・・・」
立ち直ったアメリアは、こちらに攻撃をしかけてくるつもりか?!
「え、そ、そうか?」
明後日の方向を向くガウリイ。
バカ、それじゃ何かあるって逆に相手に教えてるよーなもんじゃない!
きら〜〜んとアメリアの目が光った気がした。






ぶくぶく。

「あたし・・・・セイルーンには帰りたくない・・・・」
お風呂で、アメリアは顎まで湯につかりながらこう言った。
「どうして姉さんて人を探す気になったの、アメリア。」
今が聞き時だわ。
「・・・・・・。」
「アメリア?」
「あたし・・・・・結婚させられるかも、知れないんです・・・」
「そ。結婚ね。・・・・・えええ!?けっこん!?」
「あたし・・・一応、王女ですし。いつまでも独身てわけにはいかないみたいなんです・・・・。」
「う〜〜〜ん。なるほど。で?」
「でも、あたし・・・・・」
「ゼルガディスじゃなきゃ、嫌だとか?」
ばしゃばしゃ。アメリアがお風呂で溺れる。
「リ、リ、リナさん!?」
「なぁ〜にをを今さら焦ってんの?あんたの気持ちくらいお見通しよ。」
「うう〜〜〜。と、とにかく、城を抜け出したんです・・・。そしたらこんな大事になっちゃって。」
「へええ。王女ってのも、大変ね。」

「それよりリナさん。」
ずいっとアメリアが迫る。
「なんかあったんじゃないですか、ガウリイさんと!」
「え。」
「ずるいですよ、リナさんも教えて下さい!」
ずずい。
あんまり迫んないでほしー。ただでさえ、あたしより生意気なムネが目につくじゃない・・・。
「べ、別になんにもないわよ。」
「ウソです。だって、昼間、あんなに仲良く・・・」
「仲良くって、おんぶしてもらっただけじゃん。」
「・・・・・ふ。語るに落ちましたね、リナさん。」
ぎく。

「な、なによ。」
「おんぶしてもらっただけ?いつものリナさんなら、おんぶだけでも照れまくって、真っ赤になってるはずです!それなのに、リナさんは平気な顔で、どっちかというとガウリイさんが照れてましたよ?」
やばい。
「そ、そ〜だっけ?あは、あはははははは。」
「リナさん。」
ずずいずい。
「いや〜〜〜。勘弁してアメリア〜〜〜〜」
「ダメです。言わないとくすぐりますよ?」
「ひ〜〜〜〜ん。」

こしょこしょ。
くすぐられたのではなく、ナイショ話。


「キスうううう!?」
「あ、ば、ばか、そんな大声で!!」
「お、大声にもなりますよ!・・・しかし、そんなことが・・・・!
ああ〜〜〜〜〜。」
うっとりとため息をついたアメリア。
「あたしもその場に立ち会いたかった・・・あ」
「おい。」
「ガウリイさんもとうとう、やりましたねえ。」
「そのとうとうってのは何よ。」
「で、リナさんたちは、いつ結婚するんです?」(まじまじ)
「け!?」
お風呂で溺れたのは、今度はあたしだった。

「なんでそういうことになんのよ?」
「だって。すでに・・・・キスしたじゃないですか。」
「キスしたら皆、結婚するんかい!?」
「え。違うんですか?セイルーンでは、未婚の男女がキスしたら、絶対結婚しなくちゃいけないってことになってますけど。」
「い・・・・・・・。あんたの国って、一体・・・・」
「それが普通だと思ってましたけど。キスしたら、男性が女性に指環を贈って、結婚を申し込むんです。リナさんとこは・・・違うんですか?」
「違う違う違う〜〜〜〜。絶対違う〜〜〜。」
「なんだ。そうなんですか。でも、ガウリイさんと恋人同士なのは、確かですよね?」
言われて、あたしははた、と気がついた。
こ、こいびと・・・・?!

「何を真っ赤になってるんです、リナさん?」
「あ・・・あたし、今までそんな風に考えてなかった・・・」
「え。だって、キスまでしたんでしょ?」
「だああって。だからって、いつもと暮らしが変わるわけじゃないし。
あんたたちと旅をしてた時と、全然変わってないわよ?」
「え。」
アメリアが固まる。
「そ・・・・それは・・・・」
「第一、どういう風に変われっての?今まで旅してて、急に恋人同士になりましたから、そのように振る舞って下さいって言われても、想像がつかないわよ。」
「そ・・・それもそうですね・・・。あ、いえ。」
「しかし・・・」
ぶくぶく。
顎までつかるのは、今度はあたしの番。
恋人・・・・て・・・・・・あたしと、ガウリイが?

・・・・・・照れくさ〜〜〜〜〜〜。






「ダメだ。のぼせたから先に上がるわ、アメリア。」
「はい、どうぞ。あたしはまだ、ゆっくりつかっていきますから。」

アメリアを後に残し、あたしは一足先に浴場を出た。
ふ〜〜〜〜。あちあち。
お。ここは浴衣まで用意されてんのね。ありがたく着替える。
湯冷ましに、外へ散歩でも行こうかな・・・。
あたしの目に、中庭に通じるテラスが目に入った。

備え付けのサンダルをはき、あたしは外に出た。
おっきな月が空にかかっている。

その時だ。あたしの前方で動く人影が見えたのは。
身構えたあたしにかかった声は、いつもののんびりした声だった。
「あれ。リナか?」
「ガウリイ?」
あたしは駆け寄る。
やっぱり浴衣に着替えたガウリイだった。腕を組んで、月を見上げていた。
ちょっと浴衣がつんつるてんなのが、いつものことだが笑える。
「どしたの?」
「いや、月が奇麗だなあと思って。」
「え・・・。あ。ホントね・・・・・」

あたしは月を見上げる。

ホントに奇麗だ。
しばらく、こんな風に月を眺めたことがなかった気がする。
ことさら奇麗に思えるのは何故だろう。
きらきら。
金色の、誰かの髪を思わせる月の色。
奇麗。

「寒くないか?」
ガウリイに声をかけられ、あたしはびくっとしてしまった。
つい月に見とれて、ぼ〜〜〜っとしてたらしい。
「これ羽織るか。」
ガウリイが羽織を脱ごうとした。
「え、いいよ、それじゃガウリイが寒いでしょ。」
「オレは別に・・・・・。そうだ、じゃ、これでどうだ。」
ばふ。
「これなら二人ともあったかいぞ。」

耳もとでガウリイの声。
うわ。
彼は羽織りをぶわっと広げ、それであたしを後ろから包み込んだのだ。
「が、ガウリ・・・」

あたしは抗議の声を上げようとして。
やっぱり、やめた。
だって、実際あったかいし。
昼間くっつきまくったせいで、何故かガウリイに免疫ができたみたい。
あんまり照れくさい感じがしないのだ。
恋人同士、というアメリアの声が頭に浮かぶ。
それなら、こんなの、朝飯前よね・・・・。

「なあ、リナ。」
「ん?」
ガウリイの声は、すぐ近くで、なんだかくすぐったい。
「オレたちのこと・・・アメリアには話したのか。」
「え。」
突然、あたしは顔が真っ赤になったのがわかった。
オレたち。
オレたち。
あたしたち、ひとまとめ?
うわあ・・・。
「話した・・・って、何を?」
「だから。」
ガウリイはあたしを抱えていた腕をほどき、自分の方を向かせる。
「こういうこと。」

あ・・・。

あたしは、精一杯背伸びをしなくちゃいけなかった。
立ったままキスするのは、あたしたちにとってはお互いがちょっと大変。
ガウリイは屈んで、あたしは背伸び。
それでも届かなくて、ガウリイはあたしを引き寄せる。
長いキスの間、あたしはものの例えでなく、足が地についていなかった。

「ん?」
唇を離し、鼻と鼻を合わせるガウリイ。
目が悪戯っぽく輝いている。
あたしの反応を見て、面白がってる。
う。
昼間とは形成逆転だ。
にっこり笑って、彼はあたしの頬に、おでこにキスをする。
くすぐったくて、目を閉じたあたしを降ろすと、ぎゅっと抱きしめてきた。
「リナは、誰にも渡さない。」

・・・・・・・・。
ガウリイ?

「オレだけのものにして、誰の目にも触れさせたくない・・・・」
え。
顔がまた下がってきて、今度はもっと熱いキスが待っていた。

ちょっと待って。
ガウリイ?
これ、何・・・?

あたしは息が苦しくなる。
それだけ、ガウリイのキスは深くて激しかった。
体から力がどんどん吸い取られ、固く閉じた目蓋の裏で、見えない目がくらくらと目眩を覚える。
でもガウリイの手はあたしの頭を押さえていて、逃げ場はない。
ただガウリイの胸に掴まり、身を任せるだけ。

や・・・・。

何かが浴衣の襟元でごそごそしてる。
・・・・・て、ちょっと待てええええええ!
「ガウリイ!」
あたしは何とか彼の唇から逃れる。
「ガウリイ!ちょっ・・・!」
でもその唇は他の場所にうつっただけで、キスが止まったわけではなかった。
「ガウリイってば!」
あたしは、浴衣の中に入り込もうとした手を必死に押さえる。
「ガウリイ!」
あたしの声が届かないのか、ガウリイは一向に止める気配がない。
「ガウリイ!!」
あたしは、目の前のガウリイの髪の毛を力いっぱい引っ張った。

「いて。」
「いて、じゃないでしょ!」
「・・・・嫌か。」
ガウリイは平然と、こんなことをきくのだ。
「あ・・・・・。」
その瞳を覗き込んで。
あたしは、今まで騙されていたのがわかった。
昼間、あたしがひっついただけで照れてたのは、彼の演技だったという事が。
「騙したわね・・・・」
「なんのことだ。」しれっと言う。
「あたしがくっついたら、あんたってば照れたふりまでして。全然、照れてなんかいなかったんでしょ。」
「ばれたか。」
「ばれるわ!なんでそんなこと・・・」

にやにやとガウリイが笑う。
「ああしてると、お前ってば大胆に甘えてくれるから。」
「え・・・・・。」

たぶんあたしは、付け合わせのニンジンのグラッセよりも、プチトマトよりも、赤くなったに違いない。
「可愛かったぜ、実際。」
耳に口を寄せ、囁くガウリイの声は、いつもの余裕しゃくしゃく。
あたしはだんだん腹が立ってきた。
やっぱり、ガウリイの方が有利なわけ?

「ふんだ。もう、やってあげない。」そっぽを向く。
あたしはガウリイの腕から離れ、歩き出そうとした。
「待てよ。」
ガウリイの大きな手が、あたしを捕まえる。
「離してよ、ばか。」
「やだ。離したくない。」
「もう、子供みたい。」
「子供で結構。お前さんもコドモだから、釣り合いが取れていーだろ。」
「あたしのどこがコドモよ。」
「怖くなったんだろ?さっき。」
あっというまにその手に引き寄せられ、あたしはガウリイの腕の中に逆戻り。
「な、なんのこと。」
「襟。このまま部屋に帰ったら、アメリアに問い詰められるぞ。」
「う。」
下を見ると、そこは少しはだけていた。
「も、もう、やらしいんだから!」
「男がやらしーのはしょーがないの。本能だから。」
「そんなんでごまかされるかあ。」
「じゃ。行動で証明してやろうか?」
「え。い、いいですいいです・・・ってば、や、ガウリイ!」

いきなり彼はあたしの襟元に顔を埋め、胸と胸の間に唇を落とした。
つん、と痛みが走る。
顔を上げたガウリイは、会心の笑みを浮かべていた。
「ほら。今度は、ちゃんと襟を戻しておかないと。」
「い、言われるまでもないわよ!」
あたしは襟を直すと、逃げるようにその場を去った。


部屋に帰ってから、アメリアがまだ戻っていないのにほっとして、
そっと襟の中を覗いてびっくりした。
・・・・・・きすまーくだ・・・・。
ガウリイのやつ。明日とっちめてやるんだから。






「不本意ながら。しばらくこの町に逗留することになった。」
憮然としたゼルガディスが朝食の席で宣言した。

「へ。どうして?」と、あたし。
「恥ずかしながら・・・・路銀が底をついた。」
顔を赤らめながらゼルガディスが告白する。
「あたし・・・ぜんぜんお金を持たずに出ちゃったもんですから・・・。
それまで溜まったツケとか、ゼルガディスさんが払ってくれて・・・。」
「なるほど。・・・で、どうすんの。」
「リナから借りるなんておそろしい真似はできんから、この町で稼ぐ。
幸い、仕事は見つかった。この宿の主人が紹介してくれたんだが、町外れにレッサーデーモンが出るらしい。それを退治してくれということで。」
「へええ。それはよかったけど。なんか聞き捨てならないこともさりげなく言わなかった?」
「う、い、いや、気のせいだろう。」
ごほごほと咳をしてごまかすゼル。
相変わらず、からかいがいのあるヤツ。

「リナたちはどうする。」
「ん〜〜〜。別に急ぐ旅じゃないし。・・・ね?」
あたしはガウリイの方を見る。
ところが、ガウリイはずっとあたしの顔をみていたらしい。
まっすぐな視線とぶつかって、あたしはたじろいだ。
「そうだな。」
ふっとその視線を外して、ガウリイは同意してくれた。
「急ぐわけじゃないし。そのデーモン退治、手伝うよ。」
「え・・・。いいのか。」
「いーのいーの。あ、それから分け前もいらないから。」
「え・・・・・」
だらだらとゼルの額を伝う汗。
「リ・・・リナがそんなことを言うなんて・・・・」
「あんたのためじゃないわ。アメリアのためよ。それをどう使うかは、アメリアに任せることが条件よ。」
「・・・・・どういうつもりか知らんが、わかった。」
そう。
戻ったらアメリアは結婚させられるかも知れない。
それをゼルガディスは知らないらしい。

そしてあたし達は、しばらく逗留することになった。

次のページへ進む。