「暗き闇、潜む愛。底に眠るは……想い。」


嘘みたいに、静寂の時が過ぎる。
バイストゥルは、ただ扉を見つめ続けていた。
「もう来たか。」

ドタヂタドタドタ……ダアン!!!

「リナぁ!!!!」
扉が勢いよく開かれる。そこには、、
「ガウリイ!」
あたしは、弾かれたように叫んだ。
「ようこそ、ガウリイ=ガブリエフ。随分早かったな。」
「レッサーデーモンが、いくらいようが、たいした事ないな。」
恐い、ガウリイが。今まで一度も見たこと無い顔つき。まるで、別人みたい。
あの鋭い目だけで、人を殺せそう…。



「ここに住んでいた人はどうした?」
俺は、魔族を鋭く睨み付ける。
「さあ、忘れたよ。」
ニヤッと笑うバイストゥル。
「何処にやった!!」
「美味かったよ。もだえ苦しむ人間の感情は。」
楽しそうに答えるバイストゥル。俺は無性に怒りが込み上げてきた。
「貴様!!」
俺は、すばやく剣を抜く。
「ふはははははははは。ガウリイ=ガブリエフ、貴様のその感情、なかなかのものだな。」
バイストゥルは、床に突き刺した剣を引き抜いた。
「…………っ!!」
「いい目だ!!」
じりじりと、間合いを狭めるバイストゥル。
「リナを返せ!!!」
俺はかまわず叫んだ。
「よかろう。ただし!」
先に動いたのは、バイストゥルだった。
「お前に勝ってから!って言うんだろ!!!」
俺も、前に出る。
「その通りだ!!」
バイストゥルの剣が、振り下ろされる。
「でぇえあああああああああ!!!!!!」
俺も、迎え撃つ為、横に流れる。

ガキイイイイイィィィィィン!!
ぶつかり合う剣と剣、それが、戦いの始まりを告げる鐘の音だった。
「くっ!!」
「どうした。ガウリイ=ガブリエフ!!」
余裕の笑みを浮かべるバイストゥル。
俺の剣は、バイストゥルの持つ剣に、完璧に防がれている。
「斬妖剣(ブラストソード)で、切れない!?」
驚愕の声を上げたのは、俺ではなく、リナ。
相手もバカではない。当然勝算があるから、俺に挑ませるわけだ。
しかし、斬妖剣(ブラストソード)を受け止めるとは、どういう仕組みになってるんだ!?
「魔族もバカでは、ないんだよ!!あの覇王様と渡り合った貴様の剣、知らぬ訳なかろう!!!」
俺の斬撃をことごとく受け止め、なぎ払うバイストゥル。
さらに、バイストゥルの剣が俺に、迫る。
かろうじて、その剣筋を見切り、かわすが、僅かに俺の身を切り付けて行く。
その時、俺は僅かに奴の剣が、魔力を放出してるのが見えた。
おれは、もう一度、剣を振るう。
バイストゥルの剣に、斬撃は止められる。なるほどね。
「どうした?なにがおかしい。」
「いや。あんたの剣の仕組みがわかったんでね。」
「ほほう、それで勝ったつもりか?」
「いいや、これでようやくイーブンだ!!」
俺の剣が、弧を描く。バイストゥルに剣が触れる瞬間、そこから奴の姿は、かき消えた。
俺は、一瞬驚いたが、後ろからくる気配を感じ、俺は、そのまま前に飛んだ。
「よく、かわしたな。」
「反射神経と、カンは、人一倍いいんでね。」
俺は、すぐに体勢を立て直すと、バイストゥルと二度、三度と切り結んだ。
鋼のぶつかり合う音だけが、広間に響き渡る。

バイストゥルの剣は、甲殻化する剣で、俺の斬撃を受け止める。そのたびに、斬妖剣は、悲鳴のような、音を立てる。
激しく、俺は剣を振るうが、バイストゥル当たらない。逆に、焦りからか俺は、奴の斬撃をかわし切れない。細かい傷が俺の腕や足に増え、血の筋を作っていく。
焦りと、細かい傷で、動きが鈍っていたのか、バイストゥルが俺の斬撃の筋をわかっていたように、空間を渡ってかわす。
消えたそこにはリナの閉じ込められている、黒い球体があった。
マズイ!俺は、とっさに振り下ろす腕を、止める。当然そこに隙が生じる。
背中から、風を切る音が聞こえ、
「ガウリイ!!」
リナの痛々しい叫び。
「ぐはぁ!」
腹部に焼けるような痛み。
「もうお終いか?人間。他愛も無いな。所詮その程度のものか。」
剣を引き剥くと、俺を見下す様にバイストゥルが、言った。実際見下してるんだろうがな。
「くっ!」
動けない、たまらず俺は、斬妖剣を床に突き刺す。
「ならば、そこで見てるんだなぁ。自分の女がどうなるかを!」
頭の上を、バイストゥルの狂喜の声が届く。
「リナ!!!」
声に力無く、俺はその場に膝をついた。鮮血が、床に滴る。
「ガウリイ!!!!」
遠くの方で、リナの俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
全身から力が抜ける。マジで、やばいなぁ。何回かもう死ぬと思ったが、今回は一番やばそうだ。
霞かける俺の眼に、リナの姿が映る。なっ!!!
結界内で、バイストゥルがリナの後ろから、体を弄ぶように胸に手を伸ばし、首筋に舌をはわせている。
リナは、苦悶の表情を浮かべている。その目尻には、光る物が。
泣いてる?!リナが!

ぶちっ!

俺の中で何かが切れた。
動けよ!俺の体!!!俺はあいつを守るんだろ!!約束したじゃないか!!
俺は、あいつの泣き顔なんて見たくないんだ!!!
どす黒い感情を握り締め。俺は、立ち上がった。
膝に力が伝わらない。今は、そんなことどうでもよかった。リナを辱める魔族が、どうしようもなく許せなかった。
「リナから離れろ!!」
荒い息で俺は言った。
「立ったか。」
「もう一度言う。リナから離れろ!!!」
言葉に力を込める。
「まだやると言うのか。そのまま倒れておけば楽に死ねたものを。」
「最後だ、今すぐリナから離れろ!!!リナは、俺のもんだ!!誰にも渡さん!!!!!」
剣先を、バイストゥルに向ける。
「………ガウリイ……。」
悪夢の様な魔族の凌辱から開放されるリナ。
「楽には殺さんぞ!!」
床に突き刺した剣を拾うと、バイストゥルは、俺の前に躍り出た。
「やってみろよ!」
俺の剣は、唸りを上げる。

「そこまで、貴様がこの娘に固執する理由はなんだ?!」
「俺は、あいつを守るって約束したからな!」
俺は、バイストゥルの斬撃を、ぎりぎりのところでかわす。
「それだけの為に、貴様は自分を賭けるのか?」
俺の一撃が、わずかにバイストゥルをかすめる。いける!!
「魔族には、わからんだろうな!俺の気持ちは!!!」
剣先の速度が、加速する。俺の剣が、バイストゥルの体を捕らえ始める。
「チィ!!」
「疲れたんで、そろそろ終わりにしないか?」
本音だった。体が、言う事を聞かない。
「いいだろう。」
バイストゥルは、不敵に笑うと、俺との間合いを取る。
俺は、両手にから、力を抜く。自然体の体勢から一気に前へ飛び出した。
「おおおおおおおおお!!!!」
「でぇええええええい!!」

そして、それは刹那の出来事だった。

二本の閃光が交錯する。

俺の、ブレストアーマーとショルダーアーマーが砕け散る。
俺が放った渾身の一撃は、バイストゥルの体を袈裟懸けに二つに引き裂いた。
「ばかっ………な………!!」
バイストゥルの体は、砂塵と化し、そして消えた。
「リナ!!」
俺は、リナの方を見た。黒い結界から開放されたリナが、駆け寄ってくる。
「ガウリイ!!!」
泣きそうな顔するなよ。俺、勝ったじゃないか。
俺は、そう言いたかったが、膝の力が抜けてリナに倒れかかってしまった。
俺を、優しく抱きしめるリナ。リナが俺に何か話かけている。聞こえない。
「ちょっと疲れた。少し休ませてくれ。」
俺は、なんとかそう言葉をひねりだした。
「ガウリイ!?ガウリイ!!」
霞む視界に、泣いているリナの姿が見える。ごめんな。守ってやると言った俺が、泣かしちまったよ。
そう思った直後、俺の意識は、闇に落ちた。














「ここは?どこだ。」
昏く深い闇。俺は立っていた。


「ガウリイ。」
リナが浮かんでいる。
「リナ!」
叫んで追いかけようとするが、足が動かない。
「ガウリイ。」
遠ざかるリナ。
「リナ!行くな!!」
俺は、力の限り叫んだ。
「ガウリイ。」
遥かかなたに遠ざかるリナ。
「リナ!俺は、俺は、お前が………」
闇の底に落ちる感覚。俺は、ありったけの想いを込めて叫んだ!!
「好きだぁ!!!!!!!俺の側に居てくれぇ!!!!!!!」
そこで、俺は、何かにしがみ付いていた。
「………………………………ガウリイ?」
リナ?俺は、どうして、魔族は?混乱する俺の頭。
「ガウリイ、苦しいんだけど。」
腕の中でリナが言う。
「す、すまん。」
俺は、あわててリナを開放する。顔が真っ赤なリナ。俺は、一呼吸おいて、
「なんで俺、ベットに寝てんだ?」
「あの後すぐに、ルークとミリーナが来てくれて、あんたを運んでくれたのよ。」
まだ、顔の赤いままのリナが答える。
「そうか。」
俺は、うなずいた。
そして、しばしの沈黙。
さっきから、リナが俺の方を見たまま動かない。俺の視線に気づいたのか、ようやくリナが口を開いた。
「あの……。さっきの、寝言……。」
再び、顔を赤く染めるリナ。
「寝言?ああぁ!」
ずっと隠していた言葉。言いたかった言葉。闇の底で叫んだ言葉。
「好きっての………。」
「………………………お前の事だよ。」
俺自身、びっくりするほど素直に言葉が出た。
「……………あたしも、が、ガウリイのこと……好きだと思う…………。ううん、好きよ。」
リナは、照れてうつむいた。その姿が、可愛くて仕方ななかった。

「リナ。」
俺は、リナを見つめる。
「なに?ガウリイ。」
俺は、腕の中から見上げる瞳に、吸い込まれる。いままで押さえていた欲望が、首をもたげる。
「お前が欲しい。」
「ふぇ?」
俺が、何を言ったか理解できなかったらしい。俺は、心で意地悪く微笑むと、
「リナ!」
リナをベットに引き込む。
「ええええええええええっ!ちょちょっと待ちなさいよ!」
顔をこれ以上にないくらい赤らめて驚くリナをそのままに、俺は、体を入れ替えリナに覆い被さる。
「いや待たない。もう、俺は十分待った。」
俺は、リナの服の中に手を伸ばす。ずっと、こうしたかった。お前を俺の物にしたかった。
「なに、一人で決着してんのよ!!あ、やだ。」
リナの声は怒ってるが、瞳に脅えの色がかすかに見えた。
「駄目か?」
俺は、止まらない気持ちを何とか止め、笑顔を作る。
「駄目………じゃない…。」
リナは、消え入りそうな声で、そう言った。
「本当にいいんだな。」
もう一度問う。かっこ悪いが、それでもリナを傷つけたくない。
「ガウリイじゃなきゃ、やだ。」
俺はそれを確認すると、
「寝かさないからな。」
俺は、リナの耳元でそうつぶやき、すばやくリナの唇を奪う。
「んんんんんんんん。」
リナがなにか言いたそうだったが、無視して俺はリナの服を脱がしにかかった。




「ガウリイ。」
「なんだ?」
「責任、とんなさいよね。」
「ああ。一生、俺がお前を守ってやるよ。」
「…………うん。」






朝日が、俺の両眼に染みわたる。俺はそれに答える様に、ゆっくりと瞼を開く。
腕の中には、天使の微笑みを浮かべた寝顔があった。




おわるです。
------------------------------------------------------------

後書き。

妄想大爆発!!(笑)めっちゃ、王道ネタです。すみません。
まさか、小説(本編)13巻の表紙見て、考えた話とは思うまい。(笑)
あのズタボロガウリイをなんとか使いたかったんです。

うわぁ。前半と、終わり部分は、ちょっと?エッチな感じ(笑)になってしまった。(爆)
すんません、そーらさん。
もう、なんかリナもガウリイも別人っすね。
今回は、ブラッツクガウリイ大活躍のはずだったんですが…。
あんまり活躍しませんでした。(笑)
ああ、らぶらぶは疲れますね。(爆)

この感想を秋月さんご本人にメールしましょう♪
がうりな読書室4号室(お客様の過去作品)へ戻る。
この感想を掲示板に書いて下さる方はこちらへ。