「Fire cracker」  リナばーじょん♪くくく。この壁紙(笑)

このお話は、そーらさんが書かれた「変化」の続編です。
まずは、そちらをご覧ください。


街は、誕生祭で盛り上がっていた。今も、大通りから宴の笑い声が聞こえる。
「じゃあ、あたし部屋に帰るわ。」
宿屋の食堂で、すっかり周りのおじさん達と出来上がってしまったガウリイに言った。
「おう。俺も、すぐに戻るから。」
酒瓶を右手に持ったガウリイが、あたしに笑って答えた。
「じゃあ、おやすみ。」
あたしは、踵を返すと二階へ続く階段を上がる。
「あの子とは、どういう関係なんだ?」
「ひょっとして、これか?」
「俺は、あいつの保護者ですよ。」
「へぇ〜。」
「あの娘さん、そんな保護者が要るような歳じゃないだろう?」
「俺は・・・・・・・・・・。」
あたしは、その続きが聞きたくなくて、足早に階段を駆け上がった。
ガウリイの真剣な眼差しに気が付かずに。

パタン。
後ろで、扉が閉まる音。
「ふう。」
大きくため息を吐いた。
窓の向こうに大きな月が見える。その側に、自分の存在を消されないようにきらめく星達。
そんな、夜空が広がっていた。
ガウリイは、あの続きをなんと言おうとしていたんだろう。
あたしは、ショルダーガードや、護符(タリスマン)、マントを外すと、そのままベットに倒れ込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガウリイ。
一人の男性の名をつぶやく。
優しい人の名前。力強い人の名前。側に居てくれる人の名前。大切な人の名前。あたしの心を奪った人の名前。
あの日、ガウリイが恐いと思った。あんな事言われて悔しかった。どうしようもなく悲しかった。
「だから、あたしは泣いたの?」
答えは分かってる。でも、自分に問いてしまう。
ガウリイに言われたから、泣いたんだ。あたしは知らなかった。自分の中のガウリイの大きさに。
なんで、こんなにガウリイの事ばかり考えるの?その答えも出ている。でも・・・・・。
こんなに男の人のこと考えるのは初めて。そんな自分がどうかしていると思えた。

思考の海が酔ったあたしを呑み込んでいく。
あたしは子供だった。男の人の怖さを知らなかった。魔導師の自分に普通の男がかなうはず無いとずっと思ってた。
でも、ガウリイに腕を口を押えられ、初めて男の人の怖さを知った。
裏切られた?違う。彼は、あたしに教えたかったんだ。何を?彼が、あたしをどう思ってるのかを。


「はあ。」
あたしは、またため息を吐いた。寝返りをうって、天上を見上げた。
「あたしって、まだまだ子供だったんだなぁ。」
そう、あたしは何も気づいて無かった。彼の気持ちを。
いかに、自分の事だけしか見えてなかったか。
「ガウリイに、子供扱いされるわけよね。」
そんな自分が少し悲しくなった。大人ぶってた自分に。
「あたし、ガウリイの事どう思ってるの?」
自分に問う。答えはもう出ている。いくら仲間でも、あんな事されていつも通りにいれるわけ無い。
でも、あたしはガウリイを嫌いになんかなれなかった。なれっこなんだ。だってあたしは、
「ガウリイの事が好き…………。」
そう、誰よりもあのくらげ頭の事が好き。他の全てを犠牲にしても。
だから、恐い、自分が。どんどんガウリイ事を好きになる自分が。
彼を失う事になったら、生きていけそうにない自分が、恐い。
こんなに弱かったのかな。あたしって。
そんな時、

ぐるるるるるる。

お腹空いた。
はあ、なんて自分に正直なあたしの胃袋。
あたしは、立ち上がって、食堂に向かおうと部屋のドアノブに手をかける。
「………………。」
あたしは、その場に立ち尽くした。
そうだ、まだ下には、ガウリイが居るはず。どうしよう。
さっきの会話が、気になる。
ガウリイは、なんて言おうとしていたんだろう。
「俺は………。」
最後の言葉が蘇る。
しかし、また、

ぐるるるるるるるる。

お腹がなる。ああ、自分の食欲が恨めしくなる。
「仕方ない。行くか。」
あたしは、ドアを開けた。

あたしは、そーっと階段を降りると物陰から、下の食堂を覗き見る。
あれ?ガウリイがいない。部屋に帰ったのかなぁ。
半分安心しながら、あたしは、残りの階段を降りた。
「連れの兄ちゃんなら、さっき上にあがったぞ。」
宿屋のおっちゃんは、笑顔で、言った。
「そうじゃなくて。」
あたしは、手を振って、否定の言葉をならべる。
「おじさん。なにかすぐ出来る食べ物ある?」
あたしは、カウンターの席に腰を下ろした。
「ちょっと、待っとくれ。」
宿屋のおっちゃんは裏の厨房に消える。
すぐに、宿屋のおっちゃんは戻ってきて、包みを渡してくれた。
「こんなんで、いいかい。」
中身は、から揚げと、ポテトフライだった。
「上等、上等。」
あたしは、満面の笑みで答えた。そして、お代を払いながら、包みを抱え席を立った。
「嬢ちゃん。」
おっちゃんが呼び止める。
「なに。」
あたしは、やや面倒くさそうに、振り返った。
「もうすぐ、花火が上がるんだ。連れのにいちゃんと見てきなよ。」
宿屋のおっちゃんが、そう言って笑う。うう、そういう関係じゃまだないんだけどねぇ。
「ありがと。考えとくわ。」
そう照れ隠しに言うと、あたしはそそくさと、階段を駆け上がった。

木のきしむ音が、小さく響く。
あたしは、ガウリイの部屋の前に立ち止まる。
が、あたしはためらっていた。何に?もちろんガウリイを誘う事に。
気軽に「花火、見に行こう!」と一言で、簡単に誘えるんだろうけど、変に意識しちゃってる自分が、その言葉をためらわせる。

そんな時、あたしの髪を風が撫でる。
あれ?どこから風が……。
あたしは、辺りを見回した。
屋上に続く階段のドアが、少しだけ開いていた。
あたしは、魅入られた様にドアに向かう。そこにガウリイがいるように思えたから。
そして、その考えは当たった。ガウリイは、屋上に、寝そべっていた。
「ガウリイ…。」
自分で、驚くほどに弱い声。
「なんだ、リナ。」
ガウリイの顔がこっちに向いた。金髪が、月の光に照らされて、いっそう奇麗に見えた。「こんな所でなにやってんの?」
それは、正直な感想だった。なんで、ガウリイは、屋上にいるのか。
「うん……ちょっと酔い冷まし。」
「ふ〜ん。」
あたしは、相づちを打つ。緩やかに吹く風が気持ちいい。
近くにいるのに、なんか、ガウリイが遠く感じて、あたしはガウリイの隣に腰掛けた。
わずかに触れるガウリイの体が、あたしに、ガウリイの存在を確かめさせる。
「今日は、月が奇麗ね。」
見上げた空に大きく光る満月、その光を浴びてると、なんだか心が軽くなる。
「ああ。」
そっけない返事。あたしを見つめるガウリイの視線に気が付く。
「どうしたの?」
あたしは、優しく見つめるガウリイを、見つめ返す。その瞳の蒼さに吸い込まれそうになる。
「あ、なんでもない。」
ガウリイが、顔をそむけた。こら、こっちまで意識しちゃうじゃないのよ!
「ガウリイ、あんた最近変よ。もしかして変な物でも、拾って食べたんでしょ!」
あたしは、変な空気を振り払うようにガウリイに言った。
「……………。あのなあ。」
ガウリイが、こけた。なんだ、違うのか。じゃあやっぱり………あたしの事考えてるの?口からこぼれそうになった言葉を飲み込んだ。

「しかし、よくここがわかったな?」
寝っ転がっていたガウリイが、体を起こす。体が触れ合う。あたしの心臓は、ビクッと高鳴る。い、いまの聞こえてないわよね。
ガウリイの視線に気が付いて、
「あ、さっきお腹空いたんで、宿屋のおっちゃんに食べ物もらいに行ったら、ガウリイが、上に上がっていったって聞いたから。」
少し、慌ててあたしは答えた。
まだ食う気か?と、少し呆れた顔のガウリイ。ほっといてよ。どうせあたしは、食欲旺盛ですよ。
「自分の部屋に戻ったとは思わなかったのか?」
ガウリイの的を得た一言。そうよね。普通はそう思うわよね。
「……なんとなく。ここに居るようなきがしたの。」
あたしは、思った通りの事を答えた。なんでか。ガウリイがここに居るような気がした。「そうか。」
「………………。」
嬉しそうに微笑まないでよ。何にも言えなくなっちゃったじゃないのよ!!
下から、曲が流れてくる。宿屋の食堂は、まだ宴が続いてるんだろう。
あたし達の会話は、いつのまにか途切れていた。
すると、ガウリイが、下から流れてくる音にリズムを刻む。
なにをする気なの?あたしがそう思ったとき、ガウリイが、口を開いた。

If I can reach the stars Pull one for you
Shine it on the heart So you could see the truth
Then this love I have inside Is Everyting it seem
But for now I find It's only in my dreams

If I can change the world
I'll be the sunlight in your universe
You would think my love was Really something good
Baby If I could change the world

「ふう。」
歌い終えたガウリイが、息を吐いた。

パチパチパチパチ。
あたしの手は、素直に賛辞を送っていた。
「ガウリイ。歌なんか歌えたんだ!」
あたしは、ガウリイの上手さに驚いた。こんな事出来たんだ!と。
「なんて歌なの?」
「う〜ん。忘れた。」
「あのねぇ。」
あたしは、相変わらずのクラゲに呆れた。
「昔、ばあちゃんに教えてもらった歌だ。」
「ねえ。意味は?」
知らない歌。素敵な歌。意味が気になって仕方がなかった。
「意味?ああ…………。」


"もし星に手が届くなら 君のために一つ摘んで"
”ハートを照らすよ そしたら真実が見えるはず”
”僕の中にある愛が すべてに思えても”
”今はまだ 夢の中だけなんだ”

"もし世の中を変える事ができるなら"
"君の世界の太陽になる"
"僕の愛が本当にいいものに思えるよ"
"もし世の中を変える事ができるなら"

「て感じだな。」
ガウリイはそう言うと、あたしの方を見た。それって……。
「へぇ。でも、なんで、急に歌なんか歌うわけ?」
そう、なんで、急に歌なんて……。
「酔ってるからな。」
彼は笑った。楽しそうに。
「でしょうね。でないと、クラゲ頭のガウリイが、こんなにあたしの知らない歌や意味、言える訳ないもん。」
上手かった。カッコよかった。なんて、恥ずかしくて言えないよぉ。
「おいおい。」
ガウリイが、頭を掻いている。少し可愛い。
「あたし、何も知らなかった。男の人のこと。ガウリイの事。」
ガウリイにあんな考えがあったなんて。ガウリイの男なんだって。
「……。」
黙っているガウリイをそのままに、あたしは、立ち上がって屋上の縁に立つ。
縁に立つ意味なんか別になかった。ただ側にいたら、ここから先の言葉が出そうになかったから。
心地良い風が、あたしの髪を撫でる。なんか、後押ししてもらってるみたい。
「危ないぞ。」
後ろから、ガウリイの声。
「大丈夫。ガウリイが守ってくれるんでしょ?」
あたしは、振り返った。心配そうに見つめるガウリイの瞳。
「ああ。」
ガウリイは、照れくさいのか、ぶっきらぼうに答えた。
「そうだよね。ガウリイ男の人だし、ああいう事考えてるんだよね。」
「………リナ。」
すまなさそうな瞳があたしを捕らえる。あたしの決心を鈍らせようとする。そんなに自分を責めないで。ガウリイ………。
「実際ショックだった。あんな事されて、でも、最後の………キス。嫌じゃ無かった。」
あたしは、自分の体温が上昇するのがわかった。さすがにこのセリフには、勇気が要った。
だって、
「…………………。」
「何も知らない子供だったんだなぁって。ガウリイに、いつまでも保護者扱いされてたわけだわ。」
あたしと、ガウリイの視線が合う、彼はたまらず、
「なあ。」
と、声をかける。駄目、今言わなかったらきっともう言えない。だから、
「もう少し、聞いてくれない。」
あたしは、強引にガウリイの言葉を遮る。
「わかった。」
ガウリイが、大きくうなずいた。
「だから、あたしは大人になろうと思った。ガウリイに見合うような大人になろうと思った。」
そう、ガウリイに近づけるように。あなた事が好きだから………。
「…………。」
「だから。」
あたしは、一呼吸置く。
「だから?」
ガウリイが、思わず聞き返す。
「だから、素直になろうと思うの。自分に、そしてガウリイに。」
あたしは、この一言で、自分の中にあったもやもやした物を吐き出せたと思う。
「おれに?」
ガウリイは、自分を指差す。
「うん。」
あたしは、会心の笑顔でうなずいた。
あたしは、ガウリイが好き。それでいいんだ。なにも悩む事なんか無い。自分に素直に、
ガウリイに素直になろう。それが、最初の一歩なのだから。
「リナ。俺は………。」
ガウリイの声は、明るい輝きと大音響にかき消された。
「……花火」
あたしの声も、花火の音にかき消されそうになる。
「ああ。」
うなずくガウリイ。あたしの声は聞こえたんだ。
「祭りの最後に、花火が上がるんだってさ。さっき聞いたの……でね。ガウリイと一緒に見たかったんだ。」
あたしは、素直に言葉を紡ぐ。ガウリイは、顔を赤らめている。
あれ?あたしなんか、変な事言ったかな?
次々に、花火が夜空に咲き乱れる。
「ガウリイ!」
花火につられて、あたしの声も大きくなる。
「なんだ。リナ!」
花火の音が、まだうるさいので、ガウリイの声も自然と大きくなる。
少し、花火の音に慣れて頃。
あたしは、今なら言えそうな気がした。ずっと思ってた、悩んでた、大切な想いが………。
「でねあたしね。分かったんだ。」
うつむいて、あたしは自分を叱咤する。リナ・インバースとあろう者がびびってどうすんのよ!
あたしは、自分を勇気づけガウリイの方を見た。
「何が?」
不思議そうに、あたしを見つめる蒼い瞳。
「自分の気持ちが。あたしね、ガウリイが………」
あたしは、自分の気持ちを、形(ことば)にした。
「俺はリナが…………。」
お互いの声が、花火の光りと音に吸い込まれる。
「聞こえた?」
そうは言ってみたが、急に恥ずかしくなってしまった。だってガウリイとあたしは、同じ言葉を紡いだのだから………。
「ああ。聞こえた。俺のは?」
「聞こえた。」
あたしは、力強くうなずいた。
「そっか。」
ガウリイは、あたしの側に立つと、そのたくましい両腕で、あたしをそっと抱き寄せた。
心臓が、バクバク言ってる。ガウリイの気持ちがわかったけど、
あたし達は、ただ黙って抱き合い、花火を眺めた。こうする事で、お互いがもっと近づける様な気がしたから。花火は、夜空に花を咲かせ続けた。






「リナ。」
ガウリイが、あたしを見つめる。これってやっぱり。
「ガウリイ。」
あたしは、意を決して瞳を閉じる。
ガウリイの吐息が近づいて、唇が重なる。夜空に一際大きな花火が花開いた。
静まり返る街。ガウリイの唇が、あたしの唇からゆっくりと離れて行った。
「俺の部屋、来ないか。」
そりは、つまり……………どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう………。
「………………うん。」
錯乱したままの頭であたしは答えた。えっ?いまあたし、うんって………。もう、なにやってんだか、あたしって………。こないだのガウリイは、恐かったけど、今日のガウリイは恐くない。大丈夫。大丈夫。大丈夫だよ……ねぇ。
「じゃあ、行こう。」
そんなあたしの肩に、ガウリイの手が乗る。暖かい。
「ガウリイ?」
あたしは、ガウリイの方を見る。
「どうした。」
「ガウリイの手ってこんなに大きかったんだ。」
ガウリイは、あたしの一言に真っ赤になる。なんだ、ガウリイも緊張してたんだ。

それでも、胸の鼓動は、最高潮に早鐘を打っていた。
これからの事を考えたら、緊張してもしかたないじゃん。
その………そーゆ事するの初めてなんだし。

「どうぞ。」
ガウリイが、扉を開けてくれる。えええい。静まれ心臓!!って無理よね。
「ありがとう。」
あたしは、動揺を隠す様に、さくさく歩いてベットに腰掛ける。
どうなるんだろう、これから。やっぱりしちゃうのかなぁ。
それでも全然かまわない。ガウリイの事、好きだもん。
気が付けば、ガウリイが目の前に立っている。
「リナ。」
「なに。」
「いいのか?」
「なにが?」
思考の海に沈んでいたあたしには、話が見えない。
「俺と、その、このまま夜を過ごしても。」
ああああああああああああああああああああああああああああああああ。
やっぱり、そういう事!!
「えっ?あ、うん。」
あたしは、うなずいた。いよいよなんだ。
「ほんとにいいんだな。」
念を押すガウリイ。そんな事言われたら、決心にぶるじゃない!
「これが、すべてじゃないけど、ここから始めたいから。」
そう、なにか、確かな絆が欲しかった。それが、なんであっても。
ガウリイが、あたしの顎に手を添える。
そしてゆっくり口付けを交わす。
最初は浅く。すぐに深く唇を重ねる。
えっ、なに、舌がええええ、そ、そんな事するの?!
あたしは、仕方なく、ほんとに仕方なくよ!!ガウリイの舌をおずおずと受け入れた。
ガウリイの手が、あたしの服に伸びる。
駄目!!やっぱり、恐い。頭の中で、あの時のガウリイが思い出された。
ガウリイを、押しのける。
「ちょっと待って。」
互いの吐息が触れ合う距離で、たまらずあたしは制止の言葉を吐いた。
「うん?」
ガウリイの、手の動きが止まる。
「前みたいに無理やりしない?」
あたしの瞳に涙が溢れる。この前のようなに強引にしないよね?
「ああ。お前が嫌だって言えば、いつでもやめるさ。」
青い瞳が、優しく微笑む。こないだみたいな恐い眼じゃない。大丈夫だ。
「………………うん。」
あたしの言葉が終わると同時に、ガウリイとあたしは、ベットに倒れ込んだ。



眩しい朝日に、あなたの寝顔。
これから、一緒に歩いていこう。
きっと、二人ならきっと大丈夫。
これから先なにがあっても……。
この気持ちを、忘れないでいよう。
そして、あなたをもっと好きになれるように、
あたしは努力しつづけよう。この気持ちに甘えることなく。
それを人は、心の「変化」と呼ぶのかもしれない。



でも、なんて幸せそうに寝てんのよ、こいつは!
あたしの悪戯心に火が付いた。
ガウリイの髪をひと房握って、いろんな所をくすぐる。
ガウリイの眉間がピクピク動く。これはもうすぐ起きるな。
「おはよ。」
あたしは、笑顔でガウリイを覗きこんだ。
「う、うんん。おはよう。」
すっごく寝ぼけてる。こんなガウリイは、初めてだ。
「………。」
あたしは、その姿が珍しくて、じっと眺めていた。
「どうした?」
たまりかねたようにガウリイが、言った。
「あんたが、あんまりうれしそうに寝てるから、起こしたの。」
意地悪く微笑えんでやった。あたしより遅く寝てたガウリイが、悪い!
「あのなぁ。」
ちょ、ちょっと。あたしの思考が読まれたのか、ガウリイは、あたしの体を簡単に持ち上げると、あたしと場所を入れ替える。ガウリイの金髪が、あたしの頬を撫でる。
ガウリイが、昨夜あたしに刻んだ赤い印に口付ける。なにすんのよ。
「あ、うんんん。やだ。まだ朝なのに。」
あたしは、非難の声を上げる。朝早くから何する気!さんざん昨日したでしょ!!
「知らないのか?男は朝の方が元気なんだぞ!」
「あ、……ちょっと……。ガウリイのバカ!」
固い物が、太股にあたってるぅ!!!ガウリイのばかぁ!!
「いいよ。バカでも。」
意地悪な笑みを浮かべた彼は、あたしを抱きしめたのだった。
くそ〜。あとで覚えときなさいよ!絶対あたしから離れられないようにしてやる!!!
そう、心に固く誓うのだった。




おしまい

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